独り合点(ひとりがてん)

きもの業界をステージとした、ビジネスと生活スタイル、および近況。

地貌季語(2)若夏

2011-05-25 | 日々雑感

これも沖縄の季語です。地上がみずみずしい木々の緑におおわれる4月下旬~5月中旬までの梅雨に入る前の時期をいうそうです。青い空の下、県花のデイゴが真っ赤な花をつけ、月桃が咲き乱れ、浜には浜木綿や龍舌蘭が香気を放つ季節を鮮明にイメージさせます。「若夏」初めて知る言葉ですが素敵な言葉です。宮坂氏は「美しい日本」というよりも「ゆるやかな日本」のあり方、多様性をもう一度考える手がかりにしてくれればいいと、その著作「語りかける季語 ゆるやかな日本」の中で語っている。同じくこの著作の中で例えば「桜」。奈良、平安時代から梅に代わり花と言えば「桜」を指すようになり、さらに「華麗ではあるが、散るためにどことなく物憂いもの」という共通のイメージ、連想が歌人たちに共有されてくる。このように共通の連想を喚起する美意識によって選ばれた言葉が、歌ことばであり、やがて歌ことばが季題、季語となってゆきます。いわば平安朝の歌人たちによって決められた「桜」に関する約束事が、やがて普遍性を持った季語になってゆきます。