独り合点(ひとりがてん)

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地貌季語(1)小夏日和

2011-05-23 | きもの

地貌(ちぼう)。初めて見る方もいると思いますが、もともとは地表面の高低や起伏など土地の形態を表す地理用語ですが、俳人・宮坂静生氏は「ことばには貌(かお)がある。そのことばが使われている土地の貌がことばに映し出される」と南北に細長い日本の風土に展開される季節の推移やそれに基づく生活や文化、歴史まで包括することばで、その土地の暮らしを豊かに表現する「土地の貌」を伝えることばを、季語になぞらえてスタンダードな、いわゆる「季語」とは一線を引いて「地貌季語」として愛用している。

そのひとつが「小夏日和」。一般には「小春日和」が知られていますが、同じ時期、11月の沖縄では一気に30度以上の日が続き、夏が戻ったようになります。アメリカでは「インデアンサマー」、ヨーロッパでは「老婦人の夏」といのだそうですが、熱い沖縄では「小春日和」という言葉は確かに実感が伴わない。宮坂氏は本州の「小春日和」と言う季語、俳句の世界が余りにも現実の世界に鈍感なことに大きな衝撃を受けたという。俳句の世界が多様な日本の文化や歴史を無視?し、京都や江戸を中心とした狭い地域の世界を頂点に成り立っていることに実感が伴わない不自然さ、表現の限界を感じたことから「地貌季語」に注目したようです。「京都、江戸」を中心とした文化とともに「沖縄の文化」「北の文化」などなど、それぞれの地域の人の実生活に寄り添った俳句、文化があるという宮坂氏の「地貌季語」は刮目です。