jump in the box

この小さな箱の中で飛んだり跳ねたりしてみます(笑)

高原へ行きましょう ~3~

2004年08月28日 | 家族
湖の上の人口密度はまだ高いままでボートは全部出払っていた。

チケットを買おうと販売機に並び順番が来たところで
財布を開くと中には1万円札が1枚しかなかった。
20分1000円のスワンボートのチケット代には十分なのだけれど
その販売機には1万円を受け付ける資格がなかった。
まるで1万円札に過剰反応するファストフードのアルバイトみたいだ(笑)

仕方がないので一度列を離れてロッジで両替してもらうために
坂道を上りかけると父がこちらに向かって歩いてきた。
まさに助け舟(笑)

父から1000円を奪うと急いでお釣りの出ない販売機に向かった。
ようやくチケットを買ってボート乗り場に向かう。
チーちゃんの提案で父も一緒にボートに乗ることになった。
昔あれほど怖かった父もいまや孫の言いなりである(笑)

まだボートは全て湖面に浮かんでいたが
乗り場に並ぶと5分ほどで順番が回ってきた。

3人乗りの大きな白鳥は奥から漕ぎ手、舵取り、漕ぎ手という作りになっている
僕と父が漕ぐんだろうと思っていたら
真っ先にチーちゃんが乗り込み奥のペダルに足をかけていた(笑)
僕がその後に続いたので舵取り役になり
もう62になる父が漕ぎ手2の座を射止めた(笑)

スワンボートの推進力は恐ろしく弱い。
9歳のチーちゃんと還暦越えた父が必死になってペダルを踏むが
勢いがいいのはバタバタと水をかく音だけで
スワンは本物同様優雅にゆっくりとしか湖面を進まない。

大きな八の字を描くように進路を取る。
バタバタハァハァと中の人とは正反対にスワンはゆっくり進む。

さっきまで僕とニパちゃんがいた石を見つけた。
そこには熟年のカップルが腰を下ろし
水筒のお茶を飲みながら湖面を眺めていた。
「チーちゃん、手を振ってみたら?」僕が耳打ちする。
「うん!」ペダルを漕ぎハァハァ言いながらチーちゃんが岸に向かって手を振る
その石にいた熟年カップルが気づいて手を振り返してくれた。

あの時の僕らはボートからこんな風に見えていたんだ。
漕ぐのに必死なのに手を振ってくれていたんだ(笑)

対岸に嫁さんの姿を発見した。
僕は取り舵いっぱいに切り嫁さんの方向にスワンの首を向けると
左右のエンジンに向かってこう言った
「全速前進!」
「アイアイサー!」
二人同時にこの返事…
まったくノリのいい祖父と孫である(爆)

スピードを緩め嫁さんに何枚か写真を撮ってもらって
僕らは再び航海に出ようとしたのだがそこで時間切れ。
そのまま港に帰ることになった。

スワンから下りるとチーちゃんは嫁さんに向かって走っていった
興奮気味にスワンの感想をまくし立ているようだ。
嫁さんの苦笑いの表情と生返事がチーちゃんの興奮度を物語っていた(爆)

再びロッジへの坂道を上る。
やや坂道が辛そうな
ペダルを漕ぎ続けた還暦すぎたエンジンの背後に回り背中を押す(笑)
あの大きかった背中が僕の両手に納まってしまいそうだった。
「コラ!年寄り扱いするな」と笑う父の背中からそっと手を離した。

まだ陽は高かったが
遅くなって渋滞に巻き込まれたくなかったのと
今夜は弟家族が来ることになっていたので
早めに高原を後にすることにした。
チーちゃんは名残惜しそうだったけれど…

熱がこもりきった車の窓を全開しすると
高原の風が一気に熱気を奪っていった。

駐車場を出てしばらく走ると車内が静まり返っていることに気づいた。
チャイルドシートのニパちゃんもその隣のチーちゃんも
助手席の嫁さんまでもが眠っていた(笑)

来た時とは別の道の途中の峠にある展望台で休憩をする。
手前の緑の山々が幾層にも重なって奥行きを演出し
もっと遠くにある赤石の青い山並みの高さを際立たせる。
「あぁ、僕はここで育ったんだ」
思いもかけず帰省したことをあらためて実感させられた
その風景の前に寝起きでちょっと機嫌の悪いチーちゃんを立たせて写真に収めた。

窓を全開にして峠を下っていると民家が増えてきた。
高原の空気を持って帰ろうと窓を閉めた。

車は村役場の上を抜けて実家に向けアクセルを少し余分に踏んだ。





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11 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
上手いなぁ。 (kissh)
2004-08-28 22:31:50
文章上手いなぁ。

風景が目に浮かびますね。

愛情を感じます。
返信する
旅行記 (ほにゃらか)
2004-08-29 12:36:54
楽しく読ませて頂いてます。

ところで、jumpさんは「キヌガサ」に入ってますか?

もし、まだで興味がおありでしたら、招待メールを送りますので、

アドレスを教えてください。

もし、すでにお入りでしたら、つながりたいな~と思うのですが、

どこらへんにいるか教えてくださいますか?

アドレスは、コメントくださる時に送信して頂いてもかまいませんし、

メールをくださるなら、ほにゃらかはgooのフリーメールを使ってますので、

そちらの方へお願いしまする。

キヌガサ、ぜんぜん興味ないよ。とか、

忙しいからできないよ。という時は、

このまま、すっかり無視して頂いてかまいませんです。
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そうか! (しなたま)
2004-08-30 03:35:25
三世代の物語はここまで複雑で切なくて美しいのか!

まだまだ知らない世界が多いです。

まるでスワンのひとつにのってjumpさん一家をみているような、そんな記事だと思いました。



彼女、作るか!(大爆発w
返信する
照れる照れる(笑) (jump)
2004-08-30 11:53:29
kisshさん

 普段褒められ慣れてないものですから

 そんなに褒められると照れますってば(笑)

 

しなたまさん

 彼女つくらないのはわざとでしょ?(爆)

 田舎に帰る度に年を重ねる両親と

 増えている電化製品に驚かされます(笑)



ほにゃらかさん

 えー?

 つながりたいんですか?いいんですか?げへへへ(爆)

 僕は「キヌガサ」って何?というレベルですので(苦笑)

 とりあえずメールさせていただこうと思います。
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やっぱり、 (blue_rex)
2004-08-30 11:57:56
> 昔あれほど怖かった父もいまや孫の言いなりである

ですよね。



自分の父とは殆ど遊んだ記憶もないのに、息子に対してはべろべろですから。



信じられない光景が目の前に繰り広げられるんですよねぇ。



自分もそうなるのかなぁと。(まだ早い?!)
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メモ? (kawakero)
2004-08-30 13:41:53
jumpさんの旅行記は、本当に細部が細かく描写されていますよね~。

行動しながら、

“こらはblogのネタにするか、メモメモ”

とかやってるわけでは・・・ないですよねぇ?



夏休み最後の日曜は大雨。

結局、博物館に連れて行って、家族サービスは終了です。

カヌー漕げずじまい。はぁ~。



※家族サービスと言っても、付き合ってくれたのは下の娘一人。

 俺の居場所がないと最近感じるんだよなぁ(涙)
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まだまだ (jump)
2004-08-30 19:07:01
blue_rexさん

 早すぎでしょ(笑)

 でもねぇ、孫にデレデレでおもちゃとか買ってあげちゃう父の姿は

 やっぱり違和感あるんすよねぇ(笑)



kawakeroさん

 僕が先に娘とボート遊びしちゃいました(爆)

 

 メモなんてマメなことしてませんよ(笑)

 ただ生活している中で

 「これはネタになるな」と思うことはしょっちゅうです(笑)



 家での居場所がないと思う事は僕もありますよ。

 朝みんなが寝てる間に家を出て

 帰ると子供達はみな寝ていますからねぇ…

 最近はPCも嫁さんに占領されつつあるし(苦笑)
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あ、そうだ! (jump)
2004-08-30 19:16:35
kisshさん、kawakeroさんに伝言



blue_rexさんのところで

「皆さんにとってのBLUE_SKYを大募集! #1」という企画をやっておられます。

気持ちのいい画像をTBする企画なのですが

kisshさんやkawakeroさんならきっとそういう感性お持ちだと思ったんですけどいかがですか?



詳細はこちらで

http://blog.goo.ne.jp/blue_sky_blog/e/fd379f35c10f6e02090d7f686741666d

僕もエントリー予定ですのでご一緒にいかがですか?



返信する
むむっ・・・ (kawakero)
2004-08-30 21:24:38
>>jumpさん



こう言った企画を紹介していただくと・・・。

挑戦するしかないでしょう~♪



超高速で頭の中を検索してみましたが、該当するような画像orテキストがまったく思いつきません。

さて、どうしましょうか(笑)



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ほうほう (kissh)
2004-08-30 22:32:59
面白いですな。

挑戦しましょう。

どれがイイかな・・・。
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