山口 香の「柔道を考える」

柔道が直面している問題を考え、今後のビジョン、歩むべき道を模索する。

がっかりの決勝戦、がっかりの選考

2009-04-29 23:16:02 | Weblog
 今年の大会は役者不足で盛り上がらないのでは?と思っていたが、開けてみればやはり全日本選手権の伝統を継ぐ重みなのか、一本勝ちも多く、好試合が展開された例年よりも中量級の選手が頑張っていたことが、無差別級の大会にふさわしい盛り上がりを演出していた

 「やっぱり全日本は特別。役者はいなくても見るべきものがある!」との思いを壊され、がっかりさせられたのが決勝戦だった

 穴井対棟田、どちらが勝っても初優勝ということで、いずれも譲らぬ好試合が期待された。しかし、始まってみたら棟田選手が準決勝で痛めたのか、穴井選手の攻めに突っ伏したり、起き上がるのに時間を要したり・・・

 棟田選手の持ち味は、重量級としては長身ではない体で相手と密着して思い切った技を仕掛ける、返すといったところである。ウィークポイントは、受けが強いことがあるからか、攻めが遅いことと、痛みに弱いのか、どこかを痛めて試合を中断するのが目立つところだ。とくにここ数年は、持ち味よりも悪い部分が目立つ。本人は一生懸命やっているのだろうが、見ている人には伝わってこない

 穴井選手は対照的だった。初戦から豊富な練習量を裏付けるようにポイントを先行されても攻めて攻めて攻め抜いて勝ち上がった。決勝戦も棟田選手の「のらりくらり」とは対照的に、つねに前に出て攻め続け、勝ちへの執念を感じさせた

 決勝戦では、会場のほとんどが穴井選手を応援していたのではないかと思われる。穴井選手を応援するというよりは、棟田選手のふがいなさへの抗議があったようにみえた

 全日本選手権は、日本男子選手にとって、世界選手権やオリンピック以上に価値のある大会といわれる。その頂点を決める試合があまりにもお粗末だったこれが今の柔道の現状なのかと情けなくなった棟田選手が怪我で足を痛めたことはわかるが、「覇気のなさ」はいかんともしがたい。会場からは「痛いならやめろ」という声まで跳んだ。通常の場合、観客はけが人に対しての方が同情的になるものだが・・・。

 大会後に行われた強化委員会で100kg級の世界選手権代表は棟田選手に決まったようだ。確かにこれまでの実績ということで選べばこういった選考もあるのだろう。しかし、こんな選考をしている余裕が今の日本男子重量級にあるのだろうか?

 先に行われた選抜体重別選手権で棟田選手は準決勝一本負け、今日の大会でも準々決勝、準決勝は、どちらが勝ってもおかしくない試合だった。怪我の影響もあるかもしれないが、棟田選手の力が以前よりも確実に落ちていること、練習が十分にやれていないことは明らかである

 どうせ負けた選手を選ぶのであれば、なぜ若い選手を抜擢しないのか?3年後のロンドンを見据えたならば今年は守りの選考の必要は全くない。また、厳しいことを言うようだが、今日の棟田選手の試合は日本代表として日の丸を背負うに値しないように思う。今日だけであったのであれば、怪我の影響とも言えるが、ここ数年、何度となく無気力とも思える試合で応援してくれる人たちをがっかりさせてきたか

 今日の試合を見た限りでは、棟田選手はしばらく練習はできないだろう。若い選手を選ぶということは、これから大会の日までの伸びシロに期待が持てる穴井がそうであるように、若い選手達の向かっていく力は想像以上に大きい。穴井選手が鈴木選手に背負いで一本勝ちすると誰が想像しただろうか?これが伸び盛りの選手の勢いだそういった若い選手はチームに勢いも与える

 篠原ヘッドコーチがどう考えての選考であったかわからないが、ここで思い切った勝負の選考ができなかったことが「あの時に・・・」と悔いることにならなければいいが・・・


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7 コメント

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あかんね (三四郎)
2009-04-30 00:54:08
棟田はホント不甲斐ない…子供に一番見せたくない姿ですよ。学舎精神とは何なのか?情けなくなりました。石井慧君が、山口さんのブログ見て勇気付けられたと、自身のブログに書いてましたね。山口さんが石井君の先生だったら、今年も彼が優勝してたのにと思ってしまいました。
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質問です♪ (Unknown)
2009-04-30 01:28:13
準決勝で棟田選手が単に相手に押されて2度場外に出ていましたが、「場外注意」の基準(審判の裁量事項)を教えてください。

例えばですが、世界選手権100kg超級代表も穴井選手というような、一人の選手で2階級掛け持ち代表ということは大会規約で不可だったのでしょうか?
以上質問ですよろしくおねがいします。

全日本の決勝戦は延長再延長再々延長で「一本」で決着つけられるようなルールにすると見る側の柔道がもっとおもしろくなると思いました。

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Unknown (SY)
2009-04-30 02:23:17
今年は例年に比べ見るべきところがないかと思ったのですが、
意外な初出場の斉藤制剛選手、中量の松本選手などの頑張りもあり、個人的には面白かったです。
全日本は20年くらい見続けていますが、役者不足のときは、こういう脇役の活躍が多いような気がします。

あと、棟田選手に対して準決勝、準々決勝ともに場外注意を与えてもいいように思いました。与えなかったは、全柔連側の「すっきり代表にしたい」という意思のようなものを感じました。
仮に立山選手が決勝に、斉藤選手が準決勝に進むような展開だと大荒れになるのは目に見えてますから・・・。
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Unknown (Unknown)
2009-04-30 03:09:32
場外注意は当然です。場外に出た場合は反則。
技の攻防の中で出てしまうのは反則ではないですが、単に圧力に耐えられなく下がったなら注意、棟田のはこのケースです。
故意に出たなら警告ですよ。

今回1番気力が充実していたのは穴井で間違いないと思います。
超級は思い切った人選もありとは思いますが、若手でもそれに見合う覇気を持った選手がいなかったように思います。
消去的に棟田になったとは思いますが、厳しい態度と方向性を指針するために、代表者に相応しい選手該当なしで、超級不参加というのも良かったのでは。荒療治ですが…
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棟田君擁護します (元柔道家)
2009-04-30 06:29:12
山口先生の棟田君へのご指摘は的を射ています。

棟田君のコンタクトをつけなおす部分は仕方ないですし、穴井君の内股を場外に堪えた部分は看板に打ち付けられています。その後の痛みの時間かせぎは見苦しいとはいえ彼の場外戦術のひとつですので許容される範囲内で認めて差し支えありません。

棟田君は追い込まれた試合展開の場合、やはりメンタルの弱さが出るようです。それが時間かせぎ、覇気のなさと思えるしぐさに見えてます(対照的に穴井君は怒濤の攻めをみせて、本来は追い込まれたらこうあるべきでしょう)

棟田君に足りない何かを指導者たちがヒントを与えたり、アドバイスして補完してあげなければいけません。
練習が足りない、気合いが足りない、と虐待するばかり。これが教育でしょうか?こんな事ばかり言う指導者が本当の意味での指導者でしょうか?

いい加減目を覚まして欲しいですね。

外部から感想や印象を書く分にはある程度の自由は良いと思いますが、棟田君周囲の指導者達、篠原監督も含めて指導者としての資質を疑います。厳しい評価だけなら、ここの掲示板にいる人たちだってできますよ。

穴井君のように怒濤の連続攻撃ができるようになるにはどうしたらいいか。手数が少ないスタイルを修正していく時期にきてるのではないか。指導者ならよりよい方向へと足りない部分を補って上げるべきなんです。

報道向けにであっても「むかつく」と不快感のみ表現して何が生まれるのでしょうか?
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Unknown (Unknown)
2009-04-30 09:18:24
確かに棟田君はふがいないですね。石井君の爪の垢を煎じて飲むべきでしょう。

ただ今回の選考はしょうがない面もありますね。超級はベテランはいまいちですが、世界に通用する若手もいない現状だと思います。上川選手がもっと上位に上がれば「賭け」をしてもいいかと思いますが。よって、選考はどうしても消去法になってしまってもしょうがないかと。

まぁ、今の柔道ファンは超級にはそんなに期待していないのが本音かと思います。
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はじめましてm(__)m (Tる監督)
2009-05-01 23:37:43
さすが
山口さん

俺も感じていることを
ズバズバ言って気持ちがいいね。

これからも
普通にズバズバ
やってくださーい。

http://blog.livedoor.jp/morote/
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