山口 香の「柔道を考える」

柔道が直面している問題を考え、今後のビジョン、歩むべき道を模索する。

新システムの行方

2009-11-29 17:06:42 | Weblog
 今週末は中国・青島にてグランプリ大会が開催されている。日本からも重量級に鈴木選手などいくつかの階級にエントリーしている。先週末はアラブ首長国連邦・アブダビにて同じくグランプリ大会が開催された。この大会にも日本からは選手を派遣している。
  今年から国際大会をグランドスラム、グランプリ、ワールドカップを格付けし、それぞれの成績を得点化して選手のランキングを作った。これらの大会に加えて大陸選手権や世界選手権も当然ポイントとなる。  12月のグランドスラム東京大会が今年最後の大会となる。大会後には、1年間このシステムを行ってみてどのような成果があがったのか、選手にとってはどうであったのかなどといった総括が行われていくだろう。というよりは行われてほしい。
  このシステムになってとにかく大会の数が増えた。世界選手権、世界ジュニア、世界カデも毎年行われるようになった。ランキング制を用いたことでポイントをエサにして多くの大会に出場するように促した形である。確かに日本チームは以前よりも多くの大会に派遣しており、ポイントを獲得している選手も多い。
 しかしながら、それぞれの大会をみていくと参加者の数が国際大会とは呼べないような大会もでている。ちなみに最近の2大会をみると、アブダビ大会の出場選手は、男子でもっとも人数が多かった階級が90kg級で14人最も少なかった階級は100kg超級で6人であった。女子は最も多かった階級が70kg級と78kg級で7人、最も少なかったのは78kg級で3人であった。イスラム圏での大会であったことから女子の参加が少なかったことを差し引いても選手数の少なさが明らかである。どの階級も参加国を含めて同じ国から複数国が参加していることを考えれば各階級の出場国は非常に少ない。
 現在行われている青島大会もアブダビよりは出場選手が多いものの男子は平均12~13名、女子は10名といったところである。いずれの階級も中国選手が4人参加しているのでそれを差し引くと・・。
 他の大会もみていくと、チュニジア大会やブラジル大会、カザフスタン大会などは出場選手が少ない。アジア地域の大会にはアジア諸国、中央アジアにはロシア周辺諸国などといったような出場国が限定されている傾向が見られる。ヨーロッパでの各大会はヨーロッパ諸国が集まっただけでも多くの出場国となる。こうしてみてみると、大会として規模やレベルを維持できるのはやはりヨーロッパでの大会に限られてきそうである。
 もちろん、今年の出場人数やレベルをみてポイントを獲得できそうな大会に来年以降、選手が流れる可能性は考えられるが、来年以降も今年のような傾向が続けば各大会のスポンサー獲得も難しくななり大会の存続自体も難しくなる可能性がある。
 敗者復活戦の変更も大きい。大会に行っても1回戦で敗れればそれで終わりでは・・レベルの低い国は、なかなか遠隔地への大会へ派遣しにくくなる。
 日本はおそらく世界の中で最も選手を多くの大会に派遣したくにではないだろうか。今年は各大会の規模、レベルなど未知数であったから仕方がなかったかもしれないが、来年以降は今年のように平均的に選手を派遣するようなやり方は見直されるだろう。
 大会が多くなっているために選手の派遣も全階級ではなくピンポイントで派遣しているのはよいと思うが、選手数に対してコーチの数が多いのは気にかかる。アブダビ大会では選手8名に対してコーチを含む役員が6名であった。青島大会は選手7名に対して5名である。世界選手権やオリンピックならともかく、この割合は多すぎるのではないか。スポーツの予算が問題とされる中で、こういった派遣の仕方は指摘されても仕方がない。また、日本のコーチたちはその多くが選任ではないので大会数が増えて派遣が多くなれば勤務先への影響も大きい。海外のコーチは一人で男女10名以上を連れて遠征なども珍しくないし、日本のコーチたちも能力的には問題なくできるはずである。
 ただし、コーチたちの名誉のためにいっておけば、コーチたちも飛行機はエコノミークラスで移動、日当は3千円であり決して贅沢をしている訳ではない。個人的な意見だが、大人を拘束して、さらに専門的な仕事をさせるのであれば日当はもっと払ってもよいと思っている。
 グランドスラム東京大会は多くの選手が出場を予定している。この大会は他の大会とは違い、招待国に関しては大会中の宿泊費を日本側が負担する。世界選手権のメダリストについては旅費も負担での招待となっている。こういった条件を出さなければ出場人数が増えないのも悲しい。招待されたからくるのではなく「柔道と言えば日本、だから日本で闘いたい。」と言ってもらいたいものだ。百歩譲って日本はスポンサーやテレビの関係でそういった招待ができるが他の国はそうはいかない。IJFが今年一年このシステムをやってみてどう総括するのかが興味深い。

事業仕分け

2009-11-27 08:43:37 | Weblog
 事業仕分けが話題になっているが、予算削減の対象はスポーツにも及んでいる。日本オリンピック委員会の選手強化事業などに対する国の補助金が事業仕分けで「縮減」と判断された。

 これに対してJOCは反発し、民主党への直談判やメダリストの緊急会見などを早急に行う予定のようである。

 現在のスポーツは高度化し、世界のレベルで闘う、メダルを獲得するには選手の努力はもちろんだが情報戦略、国際戦略も含めた総合的な強化が求められる。また、日本は島国であり、日本でトップになってしまえばより強い相手を海外に求めなければならず渡航費用などお金が必要になることは間違いない。

 東京五輪招致に対しても日本国民は比較的冷めた現実的な態度であったが、国民がスポーツに何を求めるのかという議論が前提としてなければいけない。慢性的な不況のなかにあって多くの人が荒廃した気持ちになっている。そういった苦しい状況でも頑張れるのは「夢」であり「希望」である。現実の世界は厳しくても暫し夢をみさせてくれるのがスポーツである。

 科学技術も議論の対象になった。研究開発の分野はある意味でスポーツと似ていて、人間のロマンや夢がある。一朝一夕には結果も出ないが、夢を追うことをやめてしまったら人間は日々何を求めて生きるのか。「無駄」といってしまえば、女性のオシャレや音楽、芸術にいたるまでそうなってしまう。実は「無駄」こそが人間の憩いであるのかもしれない。

 ただし、スポーツ界も自ら評価を行い、必要なものとそうでないものとの仕分けを行うことは必要である。例えば柔道の強化費は増加傾向にあるが競技成績は男子に関しては下降線をたどっている。費用対効果があがっていない。お金があれば強くなるならこんな簡単なことはない。逆にお金がないほうが、無いなりの工夫をしたりする。駅前の汚いそば屋が小金を貯めてビルになると味が落ちることがある。それは見かけの奇麗さで客を呼べるので本来の味の部分に手を抜くからである。

 日本の選手がオリンピックで活躍することは素晴らしいことであり、それにお金をかけるのはやぶさかではない。しかし、「出してもらって当たり前」ということではなく、援助してもらったお金をより有効に活用するための方策を積極的に論じていくことが大事だろう。

ありがとうラスティー

2009-11-24 08:08:15 | Weblog
 アメリカの柔道家ラスティー・カノコギさんが21日お亡くなりになりました。74歳でした。彼女は女子初の世界女子柔道選手権をアメリカ・ニューヨークで開くために自分の家まで抵当にいれ奔走された「女子柔道の母」といわれる方です。

 ご自身が選手の頃にはアメリカにおいても女子の試合はなく、男装をして大会に参加したこともあります。その後、そのことが発覚し、メダルを剥奪された経験から女子の選手に道を開くべく戦われました。

 私は15歳で彼女が開いた(そういっても過言ではありません)第1回世界選手権に出場したとき以来、ずっと気にかけていただきました。保守的な日本で女子が柔道で活躍することは世界の多くの女性達に多くの夢と希望を与える、ともいっておられました。

 数年前から骨髄腫を患われてからも「負けない」といって不屈の精神で頑張ってこられました。メールでのやりとりでしたが、いつも前向きで逆にこちらが励まされることが多かったように思います。

 現在、女子の柔道は競技として男子にひけを取らないほど盛んに行われています。しかし、ここに至るまではラスティーのような人の力があったことを私達は忘れてはいけません。そして彼女が敷いてくれた道をさらに伸ばして、次の世代につないでいかなければなりません。

 彼女は生前「競技はできるようになっが、女性がもっと、審判、指導者、組織で活躍するようにならなければならない。」と言っておられました。おそらくその道をつないでいくことが私達世代の役割なのだと思います。

 ラスティーはとても温かで会うといつも抱きしめてくれました。そうすると自然と悩みや不安が消え、安心できました。そして迷った時でもいつも「大丈夫」と背中を押してもらいました。彼女がいなくなってしまったことは本当に悲しく、言葉になりませんが、目をつぶると彼女の笑顔が浮かびます。

 ありがとうラスティー。天国で私達をみていてくださいね。

全日本学生柔道女子選抜体重別団体優勝大会

2009-11-22 22:44:54 | Weblog
 今日、埼玉県立武道館にて第1回全日本学生柔道女子選抜体重別団体優勝大会が開催された。出場校は全日本学生柔道優勝大会女子5人制において上位16校に勝ち上がった大学、ベスト16に入った大学のなかった地区から2校を加えて18校が出場した。

 大会前の予想は、帝京大学、東海大学が優勝候補、それについで山梨学院大学、淑徳大学、筑波大学といったところであった。

 波乱が起こったのは山梨学院大学のパートである。山梨学院大学は日本体育大学と初戦。誰もが山梨の勝利を疑わなかったが僅少差で日体が山梨を下した。その後行われた日大と立命館の試合も日大有利かと思われたが立命館が勝利。意気上がるこれら2校の準々決勝戦は立命館が先鋒から4人続けて勝利をあげて試合を決める圧勝であった。立命館は準決勝で敗れたが大健闘の3位であった

 もう一つの波乱?は、東海大学の入ったパートの準々決勝戦。東海大学対筑波大学。学生チャンピオンの田知本姉妹をポイントゲッターとする東海大学に対し、今年の世界ジュニアチャンピオン二人を擁した筑波大学だったが、層の厚さで東海大学の優位は動かないと思われた。

 勝敗を左右したのは70kg田知本対藤田のところだった。田知本はこの階級の学生チャンピオン。対する藤田は57kg級の選手である。筑波大学は7階級すべてに選手を揃えることができずに下の階級の選手を何人か上の階級で起用せざるを得なかった。田知本は是が非でも勝たなければならなかったが、藤田の巧さのまえに取りあぐんで引き分けとなった。最後は4-2で筑波が勝ったが、勝敗を分けたのはこの試合だった。団体戦では勝ちよりも価値のある引き分けもある。藤田は強化選手であったにもかかわらず、全日本学生個人戦には関東予選で敗れて出場できなかった。最終学年である彼女が筑波大学を背負って戦う最後の試合。そういった思いがあったのか、今日の試合は一試合、一試合が集中した素晴らしいできだった。

 決勝戦は第1シードの帝京大学対筑波大学。帝京は今大会は4年生の石山(78kg超)、松本(57kg)を出さないで臨んだ。試合は一進一退だったが勝負と思われた副将戦で牧(筑波)がポイントをとって流れを決定づけた。結局、4-2で筑波が勝利。

 帝京大学、東海大学、山梨学院大学は部員数も多く、部内での競い合いが厳しい。そんな中から勝ち抜いてくる選手は非常に気持ちが強い。また、出場できない選手達の分の思いも背負ってという思いもある。応援もすごい。個人戦もそうだが、団体戦はそれ以上に力を発揮するような気がする。

 これに対して筑波大学、淑徳大学等は部員数は少なく、競い合うというよりは個々が大事に育てられる。また、団体戦となれば総力戦であるので階級が一つ上であろうと「やるしかない」という思いがある。

 それぞれの大学に良さがあるが、今大会をみる限り、大型大学の気持ちの隙をついた勝利だった。帝京、東海、山梨は誰がポイントゲッターというよりも、どこからでもポイントがとれるし、穴がない。しかし、こういったチームの場合、自分の役割がボケてしまうことがある。「自分がダメでもきっと誰かが・・・」という甘えのような気持ちもでる。そこに巧くつけ込んで勝ったのが筑波大学だった。

 筑波は伝統校ではあるが、しばらく優勝からは遠ざかっていた。優勝経験のある選手もいない。しかし、今日は非常にバランスが良かった。1年生の世界ジュニアコンビが積極的な試合でグイグイ試合を引っ張れば、2年生の牧は落ち着いて自分の役割を果たす。そして4年生の藤田、伊部が試合をしめる。このバランスが団体戦ならではの勝利を導いた。今日ばかりは選手達に心からの祝福と賛美の言葉を贈りたい「ほんとうによく頑張った!」と。

 女子の試合は見ていて面白い。なぜだか考えてみたが、選手達が駆け引きを多くせずに攻めるからだと思った。とにかく攻める。だからやられることもあるのだが「やるかやられるか」の醍醐味がある

 同じ団体戦でも7人戦ならではの面白さがある。国体のように3人戦では試合が殆ど動かず面白みが薄い。来年はこの大会が男子の大会と合同で行われるようになる。もっと多くの人の目に触れるのは間違いない。女子の団体戦の魅力を多くの人に見てもらい、理解してもらい、国体の3人戦が男子同様に5人戦になるような議論につながっていってもらいたい

トータル オリンピックレディース会

2009-11-20 08:47:50 | Weblog
 昨晩はTOLこと、トータル オリンピック レディース会の集まりがあった。この会はもともとは東京オリンピックレディース会という名称で、東京五輪に参加した女性の選手の親睦が目的で始まった会だった。初代会長は元参議委員議員の小野清子氏。これが、東京をトータルとしてすべてのオリンピックを対象にして現在に続いている。2代目の会長は故木原美知子氏で現在の会長は橋本聖子氏である。

 この会の主旨は、オリンピックに参加した女性達が引退後もスポーツの普及発展に貢献していくこと、種目の壁を越えて交流を持つことなどである。昨日は最高齢は昭和9年生まれ、ヘルシンキ五輪参加(昭和27年)に参加された人から、アテネ五輪に参加した人まで非常に幅広い年代が集まった

 すべての種目、年代を超えてのスポーツの集まりは意外と少ないので、こういった会の活動は貴重だと思う。私も数年前からこの会の幹事をしており、会の活動に積極的に関わっている。

 女性は引退してした後でも競技、スポーツ活動に関わる割合が男性に比べて極端に低い。これは結婚、出産等、女性のライフスタイルに大きく関係している。環境的には難しくてもスポーツの能力や愛情といった部分は男性に劣らないわけで、こういった人たちを活用しなければスポーツ界や社会の損失である。選手の間は投資をするが、競技を終えたら「さようなら」ではもったいない。もちろん、社会やスポーツの世界でこういった人たちを生かすシステムができれば最高だが今の段階では難しい

 そこでTOLのような会が必要なのである。現在のところ、活動は年一回のフォーラムの開催と「TOLたより」の発行が主なものだが、今後はスポーツ教室、講演会等積極的に活動を広げていきたい。現在の会員はオリンピック参加者のみだが、将来的にはパラリンピック参加者も含めてという発想もある

 この会に参加していて思うことは、一人一人が非常に個性的だ。おそらく周りから見たら恐ろしい集団に映るかもしれない。そして皆パワフルである。競技の特徴も垣間見える。私がいうのもなんだが、テレビで見ていた印象とはずいぶん違う人も多い。(わたしもよくいわれる)

 この人たちのパワーをもっとスポーツ界で活用すべき!という気持ちが集りのたびに湧いてくる。あとは方法論である。それぞれがそれぞれの立場で忙しく、儘ならぬことも多いが「皆で力を少しずつ出し合って頑張ろう」と気勢を上げた夜であった

 余談だが、某参議院議員で会長は、東京の街を自転車(もちろんママチャリ)で颯爽と帰っていった。さすがオリンピアン、母は強し

厳しい現実

2009-11-15 22:39:06 | Weblog
講道館杯2日目男子7階級が行われた。さすがに男子、昨日とはうってかわって会場は8割ほどの観客が入り、熱気が感じられた

しかし場内の熱気とは裏腹に・・・・。準決勝までの段階で世界選手権メダリストの2名を含む代表5名が早々に姿を消した。どの試合も「たまたま」とかいうものではなく完敗が多かった

今回は男女ともに世界選手権の代表、たとえメダリストであっても金メダル以外は出場が義務づけられた。怪我や調整の失敗等言い分はそれぞれあるだろう。しかし、世界選手権後すぐに講道館杯への出場は伝えられていたことであり、8月末の大会から3ヶ月以上も経過している。この期間で調整できないのであれば、ランキング制が導入され多くの大会をこなす現在のシステムでは生き残れない。

残念だったのは負け方だ。日本の代表であった意地や気迫が感じられなかった。普通、強い選手と対戦した場合、そのオーラに相手がビビってくるのが普通だ。ところが相手はビビリもせず普通に向かってくる。つまりオーラが出ていないということだ。意地や気迫は努力した分だけしかでない。厳しいようだが、彼らが命がけで柔道に取り組んでいるとは考えにくい。そうであるならば、彼らは何を目指し、何に向かっているのかが疑問だ。

私自身も選手をやっていた頃を振り返れば自分を日々律して厳しい稽古を継続することがいかに難しいことかは理解している。若く、山を上っている途中であれば頑張れても、柔道のみならず多くを手に入れてしまった後では、どこか自分を追い込めなくなる。しかし、追い込んでいないことは自分が一番良くわかっているはずで、それができなくなったときに一線から引く覚悟をする。

趣味や道楽ではなく彼らは日本を背負う立場である。柔道はプロではないが、国の補助金等を使って強化している以上、責任という意味では同様だ。

今回の結果を受けて来月のグランドスラムや強化選手の選考がどのようになるのかも興味深い。おそらく負けた代表選手の多くは選ばれるに違いない。しかし、そうであるのならば、強化スタッフはこの大会、選手に何を求めたのだろうか。「負けても選ぶ」のであれば強化が大会前に打ち出したかった姿勢はなんなのか?選手も「やっぱり負けても選ばれる」と思うに違いない。まあ、選手の選考が発表になったわけではないので言及は避けたいが、今日の試合の有り様は8月の世界選手権以上にショックを受けた

女子ほどではないが、若くて勢いのある選手も見られた。こういった伸び盛りの選手を抜擢してほしい。もちろん、すぐに結果は出ないだろうがどこの国でもこういった原石を時間をかけて育てているのである。ここでこそ強化の腕の見せ所だろう。世界選手権で活躍した選手の中には10代の選手も含まれている。いまから育てなければロンドンにはとても間に合わない。

東京、関東地方は「秋晴れ」だった。雲一つない天気とは裏腹に日本男子の現状は暗雲が立ちこめ、はれる気配が見えてこない

大器を感じる中学生

2009-11-14 17:28:04 | Weblog
 千葉のポートアリーナで講道館杯が行われている。一日目の今日は女子7階級が行われた。8月の世界選手権において金メダルを獲得した48kg級福見選手、52kg級中村選手、63kg級上野選手は出場が免除されたが、それ以外のメダリストは出場が義務づけられた。強化選手の他にジュニア、大学選手権、実業団大会等の上位者が出場するために、人数が多く試合数も多い。7試合上で各階級が行われているために試合間隔も短い。この大会で3位以内に入るのは実力者といえども簡単にはいかない

 日本の女子は世界においてもその実力が証明されており、勢いがある。この力の源は国内のレベルが高く、競争力があるからである。今大会も試合数は多いものの次々と好カードが続いて退屈しなかった。

 今大会注目していた選手の一人が、全日本ジュニアで若干中学校3年生で52kg以下級2位に入った山本杏選手ジュニア選手権でも思い切りの良さ、バランスの良さがあり、将来が期待できると感じたが、講道館杯でその力がどこまで通用するのかがみてみたかった。伸び盛りなのだろう。ジュニアの時よりもさらに安定感を増し、試合運びもうまくなっている。準々決勝戦では第一シードの西田選手と対戦。負けはしたが、物怖じしない攻めは次の対戦が今から楽しみと思わせる戦いぶりであった。敗者復活戦を勝ち上がり、3位になった。女子といえども中学生で3位に入ったのは賞賛に値する。彼女の良さは組み手、仕掛けの早さ、足技がうまいところだ。もちろん、このまま一気に駆け上がれるほど甘くはないだろうが、女子はどの階級にもこのような楽しみな若手が2~3人はみられる。女子柔道の将来は明るいと思わせるに足るものだ

 優勝者は第一シードの選手が7階級中5人で、安定した実力と意地を見せた。興味深かったのは、第一シードが敗れたのは57kg級と78kg級であり、いづれも世界選手権でメダルを逃した階級であったことである。つまり、世界でメダルが取れないということは国内の選手層も薄いという証明だろうか。また、決勝戦は勝ちにこだわるあまりか、組み手争いが多く面白みの少ない試合が多かった。講道館杯は国内最高峰の大会であるにも関わらず観客が少ないのは残念であるが、やはり一般の観客をも魅了する柔道の醍醐味がもっと随所に見られないと・・・とも感じる

 明日は男子が行われる。60kg級野村選手、100kg級棟田選手は残念ながら欠場だという。ベテランの復活、活躍も楽しみだが、やはり将来に期待の持てるような荒削りでも輝きのある選手が出てくることを期待したい

生き残りをかけた闘い

2009-11-10 18:53:51 | Weblog
 今週末、講道館杯が行われる。今大会の注目はなんといっても男子であろう。8月の世界選手権で金メダル0に終わり、メダリストであっても出場を義務づけた。ベテラン勢も来年度のIJFの大会からオリンピック出場のポイントがスタートされるために、講道館杯、12月のグランドスラムから指導して、大会への出場資格を獲得しなければならない。

 選手の調整がどの程度できているかによって試合のレベルは変わってくるが、近年の講道館杯にない顔ぶれとなったことは間違いない。先日、カザフスタンのワールドカップで復帰戦を行った野村選手も出場する。彼としては国際大会である程度の結果を残してこの大会には余裕をもって臨むつもりであっただろうが計算通りにはいかなかっった。

 年齢を重ねると計算通りに行かないことが多くなる。鍛えればいいというわけでもない。鍛えすぎて疲労がたまれば怪我をする。これまで超一流の選手が引退していったのは、実は相手に負けたのではなく、自分の身体に負けたケースが多い。調子は良かったのに、試合直前や大会中に怪我をすることが増える。どんなに技術はあっても酷使ししてきた身体がいうことをきかなくなる。

 本来であればこういったベテランは大会を選んで十分な準備、調整をして試合に臨ませたい。しかしながら、現在日本男子が抱えている状況がこれを許さない。「ベテランであろうと這い上がってこい」という考え方である。

 まさに生き残りをかけた闘いとなるだろう。ここで結果が出せなければ、極端にいえばオリンピックへの道を断たれるといっても過言ではない。だからこそ、どの選手からも今大会は欠場という声が聞こえてこない。強化スタッフの覚悟が選手に浸透しているのだろう。

 こういった新旧の選手が揃うときには大きなドラマも期待できる。貴乃花が千代の富士を敗って引退に追い込んだようなことも起きる可能性がある。世界選手権やオリンピックとはひと味違った緊張感がある。

 フジテレビでは深夜に放送されるようだが、この豪華メンバー達の闘いぶりをすべて見せるのは時間的な制約があって難しいだろう。柔道ファンには是非、会場「千葉ポートアリーナ」に足を運んでもらいたい。手負いの虎ではあっても「さすがにこのメンツ!」と頷ける試合が多く見られるに違いない

登録

2009-11-08 17:38:34 | Weblog
 先日、全日本柔道連盟から登録手続きの案内が届いた。また、その後、知り合いの先生からも「山口さんは数年前から登録していないらしい」との情報もいただいた。詳しく調べていないがどうもそうらしい。近いうちにもう少し詳しく調べてみようと思う

 先週、急ぎ今年度の登録を行ってきた

 今回のことでよくわかったのは、数年前から登録をしていなくても実際にはなんの支障もなかったということであるまた、登録を促す催促の手紙をもらったのも始めてである。また、今年度も半分が過ぎようとしているこの時期での催促というのも面白い。おそらく、登録の状況が思わしくないために連盟が急遽手紙を出したのか?

 予測できるのは、私のような人間が結構多いのではないだろうか?登録する意志がない訳ではないが、特に連絡もこないので失念しているといったケースである。また、登録していても実際には「全柔連だより」一枚送られてくる訳でもないので、登録していなくてもその違いに気がつかない。

 おそらく、選手でない場合に関わってくるのは昇段だろう。しかし、高齢、高段者になれば昇段の間隔もあいてしまうので気がつかないケースも多いはずだ。わたしのケースが特別であればいいが、もし、何の連絡もないから登録をしていない、もしくは、しているかどうかもわからない、という人が多いとすれば大きな問題だろう

 連盟にとって登録料は事業を支える大きな資金源であることは間違いない。その財源を確保するために、やはりもう少しきめ細かく、サービス精神をもって行っていくべきではないだろうか。前にも述べたが、登録した以上、せめて一年に1~2度はニュースレターなどの送付があってもいいのではないか?また、そういったサービスが会員をつなぎとめる手段にもなる。さらにいえば、インターネットを使って登録が行えるようにするのもよいと思う。講道館とリンクする形で、ログインすれば自分の昇段の履歴などがわかるようになれば便利だ。講道館と全柔連が一体化しているのであればそのメリットをわかりやすく示す努力もしてほしい

世界ジュニアと審判ランキング

2009-11-04 16:27:24 | Weblog
 先日行われた世界ジュニア選手権では日本選手の活躍が目立った。男女ともに4個の金メダルを獲得した。女子に関してはある程度予測可能なものであったが、男子はここのところ金メダルがとれなかっただけに大健闘と言えるだろう。8月の世界選手権で男子が金メダルゼロという結果に終わり、柔道界も意気消沈気味であったが若い選手達の活躍は将来に希望の光が見えた。

 この大会はいくつか新しいルールが試験的に適用された。ひとつは、帯から下に手で技に入ることを規制したものである。一度目は「指導」、2度目は「反則負け」という非常に厳しいルールとなった。肩車や双手刈、朽木倒などを得意とする選手達には大きなハンディーとなったに違いない。このルールが日本選手に追い風になったかどうかはこの大会だけでは判断できない。このルールは試験的に行われたもので、この後、理事会で議論されたあとに最終的な判断がくだされる。聞いたところによると、11月には決定を下すという予定であったが、2月まで決定が持ち越される見通しだという。日本が突然過半数のメダルを獲ったことが、ヨーロッパの理事たちには脅威にうつった可能性もある。

 ヨーロッパの選手達はルールへの適応が非常に早い。今回は適応しきれずに力を発揮できなかった選手も次回は調整してくるに違いない。こういったことを考えると日本選手はこの勝利に慢心することなくさらに上を目指してもらいたい。

 柔道がレスリングスタイルに近づくのを懸念した今回のルールだが、以前にも触れたが「講道館柔道」にある技が反則技、それも危険という理由以外でなるというのは方向性としては危険である。こうやって技を短絡的に規制していくことは嘉納治五郎師範が長い時間を費やして研究された技の体系自体を揺るがすことにもなりかねない。そういった意味で結論が先送りされたこの間に、講道館を中心に活発な議論を展開し、講道館としての声明を発表してもらいたい。

 もう一つの大きな試みは1人制の審判であった。聞いたところによると、思ったほどの大きな混乱はなかったという。しかしながら、センターテーブルのジュリーからの指示におどおどしている審判も見受けられたという。また、ジュリーの目が行き届かずに誤審とまではいい難いが、副審がいればおそらく訂正されたであろうというケースも少なくなかったという。世界ジュニアだから良かったとはいわないが、世界選手権やオリンピックとなると審判にかかるプレッシャーも計り知れない。この案が採用されるかどうかにも注目したい。

 IJFのホームページに選手のランキングと同様に審判のランキングが発表されている。これは今年の世界選手権に参加した審判員のランキングである。32名中、1~15位がAランク、16~26位がBランク、27~32位がCランクとなっていた。説明がなされていないのでよくわからないが、ナンバーが振ってあるということはAランクの中でも順位があるという解釈で良いのだろう。日本から参加した天野氏は3位にランクイン。日本人審判のレベルの高さを顕示した。2位にもフランス代表の女性審判がランクインしている。天野氏は今回はピンチヒッターでの参加であったが、これだけ評価が高ければ日本で最も権威のある全日本選手権大会でも近い将来審判をする日が来るやも知れない。

 よくわからないのは、このランキングは誰がどのように作成したものなのかということである。それぞれ世界ジュニア選手権などハードルを越えてきた一流の審判という自負がある人が多いと思うが、その人たちが評価基準も明らかにされないでホームページに載せられるというのはいかがなものだろう。また、このランキングはいったいどういった目的で作られたものなのかも不明である。選手であれば大会後との成績で入れ替わるが、審判はどうなるのか?どの大会が対象になるのかなどもわからない。

 IJFの最近のやり方はこういったものが多い。「なんとなくあったらいいかも?」と思えるようなことを議論を煮詰めることなくやってしまう。もちろん、議論ばかりで実行を伴わないのもいかがなものかと思うが、やってみたものの穴だらけですぐに訂正が必要になったり、廃止になったりでは組織としての信頼を欠く。いまのIJFは理事会がおよそ全てを決定できる権限を持つので余計に決定する際には注意が必要だともいえる。多くの人の目で見ないと大きな穴に気がつかないことも多い。知らないうちに柔道自体が大きな穴に落ちてしまわないように願うばかりだ。