山口 香の「柔道を考える」

柔道が直面している問題を考え、今後のビジョン、歩むべき道を模索する。

就任を祝う会

2009-06-18 23:07:39 | Weblog
 6月16日6時30分~東京ドームホテルにおいて「嘉納行光 講道館名誉館長・全日本柔道連盟名誉会長、上村春樹 講道館館長・全日本柔道連盟会長就任を祝う会」が催された出席者は800名を超える数であり、盛況であった。ほとんどは柔道関係者であったが、JOC・文部科学省、政財界、報道、スポンサー関係と幅広い層の人たちが集まっていた

 嘉納名誉館長(いつも困るのだが、講道館と全柔連の役職を兼ねておられる場合、どちらの肩書きで言えば良いのだろうか?やはり、講道館なのか?それとも?)の挨拶のなかで印象に残ったことをいくつか挙げると(→からは私の考え)

*嘉納名誉館長が館長に就任したのは48歳のとき→今回、上村氏が館長になって若返ったと言われたが、上村氏は現在58歳であるので、前回の人事を考えれば決して若いとは言えないということ。また、いかに長く前館長がその職にあったかということ。講道館の館長は任期8年再任を妨げないからか。
*講道館館長はこれまで世襲というイメージが強かったが、嘉納治五郎師範は欧米的な感覚、先進的なセンスを持たれていたので、決して世襲ということにはこだわっておられなかった→とすれば、柔道の専門家ではなかった現名誉会長が就任されたのは如何なる経緯だったのだろうか?
*私(嘉納氏)の役目は、それにふさわしい次期館長を選び、引き継ぐこと→話の中で、「私が選んだ」といった「私が見込んでお願いした」といったニュアンスの言葉があった。館長というのは後継者指名ができるということか?

とにもかくにも大役の任を降ろされてホッとされたのか、とてもお元気そうで、少し若返られたようにお見受けした

 上村新館長の挨拶が続いた。やはり、800名を前にしてということもあってか、普段以上に緊張されている様子が言葉の端々に感じられた。就任当初、メディア等へのインタビューでも述べられていたことを繰り返して述べられた。つまり、「嘉納治五郎師範の目指された人間教育」と「日本が強くあって世界の柔道をリードしていく。しっかり組んで一本をとる柔道を目指す。」という2点。確かに言われることは最もである。しかし、理念はそうとして、具体的には何をしていくのかという話が正直言って聞きたかった就任直後であれば、理念のみでも良いが、2ヶ月経った今、講道館や全柔連の問題点や課題などについて以前よりもより明確にわかったのではないかと推察できるからである

 もしかしたら、改革をすることは嘉納前会長のやられてきたことを否定してしまうのでは?と遠慮している?のだろうか。嘉納氏は、現在の柔道を取り巻く環境の変化は著しく、それに順応し、対処できる若い人材ということで上村氏を選んだというのだから遠慮する必要はない!と思う

 個人的にまず着手してもらいたいのは、講道館館長の任期の改正である。現在は「8年再任を妨げない」というもの。一般的に考えて8年は長過ぎる「任期は4年2期まで」がよいのではないか。8年でできないことは、それ以上長くてもできない。水も流れなければ淀んでしまう

 昇段についても改革を実行してもらいたい。上村氏は就任直前に嘉納前会長から特別昇段で9段となった。58歳での9段は異例の昇段である。このこと自体は決して悪いことではないと思うが、大事なのは特別昇段が行われた事由を述べることだろう。これがあれば全国の修業者が目標とできる。またその説明がないと、昇段は館長の専権事項で私物化している?との疑念も持たれかねない
男女ともに現在の昇段システムには問題が多い。その点についてはこのブログで何度も指摘している昇段は講道館の根幹を支えるものであるだけに、できるだけ早く改革に着手してもらいたい

 他にもたくさんあるが・・・変えることは難しいことはよく理解している(とくに柔道界では)。しかしながら、まずは改革ののろしのようなものをあげてもらいたい

 今回のパーティーに集まった人の多さを見れば、新しい改革への期待がわかる。私もその一人である。危惧しているのは、館長、会長の他、JOC、IJFと役職が多すぎてあまりにも多忙なことだ。能力があるのはわかるが体は残念ながら一つであり、時間も24時間しかないどの役職をとっても、それだけに専念しても大変なものである。他の役職があるから、こちらが疎かになったという訳にはいかない。次を担う人材を育てることも考えて、仕事を分配することも大事ではないかと思う。優秀な人材を発掘し、育てていくこと、その人間を生かすこともリーダーとしての資質だろう。忙しすぎては見えるものも見えなくなることもある

 最後に写真の説明をしたい。これはパーティーのお土産「本嘉納正宗」である。嘉納師範は灘の酒造家嘉納本家の一族に生まれ、嘉納本家は現在の菊正宗株式会社である。まだいただいていないが、さぞかし美味しいのであろうこの日はあいにくの雨であった。ありがたいお土産ではあったが持ち帰るには重い!と思ったのは私だけだろうか


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1 コメント

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就任演説 (元柔道家)
2009-06-19 05:50:30
私はその場にはおりませんでしたが、山口先生のブログを読む限りでは上村館長は全日本選手権放送(NHK)の決勝直前休憩時間に短く編集された内容と似た事を述べられたようですね。

おそらく上村先生のお話は抽象的で無難な内容かと思います。上村先生も58歳とはいえ大勢の諸先輩方を前にして敬意を表現する意味で無難なところに落ち着いたのでしょう。

ということは日本の柔道社会は、特に上村先生の世代は未だに男社会であり、自由な発言がためらわれる社会だということです。上村先生の決断力が乏しいとは思いません、しかし立場上、いろいろな方を気遣って穏健に済ませたというところでしょう。

いずれ、全柔連のHPで定期的に文書pdfファイルでもっとつっこんだ内容を提言していくべきかと思います。今のままでは単に世襲が終わりましたということしか分かりませんから。

上村先生の複数ある重要な肩書きも近い内に(2,3年以内に)実力ある先生方に引き継ぐべきです。(IJF理事と全柔連会長の2つ)
もう上村先生が全柔連会長として日本柔道が五輪で金メダルを取ることに精力を注ぐ、という時期は過ぎてるはずです。

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最後に山口先生がたびたび指摘された昇段制度についても明確なガイドライン(つまり誰にとっても公平な)が必要かと思います。

ただ、私みたいな外野からすると 仮に上村先生が6段でも7段でも8段でも9段でも彼の価値には変わりがない(つまり段位による重みは本人にとって大切なものであるだろう)ということです。段位という評価システムも古いのかもしれませんね。
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