昨年の北京オリンピック以来、物議をかもしてきた水着騒動が今年度を区切りに治まりそうである。国際水連は水着の規定をラバーやポリウレタンを認めず、織物と決め、さらに体を覆う部分についても限定するというルールを決め、来年1月から実施するという
この提案に対して全日本の平井ヘッドコーチは「これでやっと競泳本来のスタイルに戻る」と歓迎する意向を示した。こういったルールが決まった背景にはアメリカを中心とした各国の有力なコーチたちが集まって「水着にばかり話題が集中する」といった批判的な意見を集約し国際水連に案を提出したようである。つまり、現場が組織を動かしたのである
柔道においても、2004年アテネ五輪の年に、IJF(国際柔道連盟、以下IJF)は試合を予選日、決勝日に分けて行うといった案を持っており、世界ジュニアで試験的実施、世界選手権で採用といった形で進めようとしていた。しかしながら、怪我などをしても1日で終われば痛くても頑張れるが、1日空けば欠場を余儀なくされるケースがでたり、体重を予選の日に計るだけで決勝は計らなければ体重別の意味がなくなるなど、コーチ中心の現場サイドでは反対意見が多かった。そのため、各国のコーチたちが署名活動を行い、この案を退けたという経験がある
正直言って国際連盟のトップの方々は、選手やコーチなど現場のことを親身になって考えているとは思えない水連の今回の決定でも、もっと早くに対策を打ち出せればこんな混乱は生まれなかったおそらく企業への配慮によって決断が遅れたのだろう。しかし、企業へのダメージも計り知れない。高速水着開発のために競わせたことは事実でこれにかかった費用は膨大だろう。そして結局は使用禁止という企業にとっては開発費をどぶに捨てたに近い。選手にとってもそうだ。高速水着を使用して出た山のような世界記録はどうなるのか?おそらく、これから何十年も、あるいは永遠にこの記録を抜けない可能性が出てくる。現代スポーツの魅力の一つは記録の更新だけに、水泳は大きなハンディーを背負うことになる。記録保持者も自分自身の実力として評価されるだけでなく、「高速水着を使用した記録」というレッテルが貼られてしまう
柔道でも同じような問題は多い。IJFは「コーチ席のコーチの態度が非常に悪いので試合場近くのコーチ席を排除する」として今年の1月から試合場の側に置かれたコーチ席を排除した。しかし、1年も経たないうちにコーチたちからの批判が大きかったのか、「コーチたちの態度が改善された」ということでコーチ席を復活するという。ただし、コーチ席に座る場合、予選はナショナルチームのジャージで着席が許されるが、決勝ラウンドではスーツにネクタイ着用を義務づけたこのルールに何の意味があるのかがわからない。柔道をよりスマートな競技に見せたいのか?日本のように何人もコーチを帯同できる国ならいいが、選手一人、コーチ一人で参加という国もある。こういった場合に、決勝の直前までコーチがアップを手伝うしかない。アップを受けて、すぐにスーツに着替えて行けというのか?IJFトップの人間たちは現場で柔道の指導などしたことがないのだろうと想像がつくさらにいえばドレスコードとは国それぞれであり、スーツが正装とは限らない。
最近の政治をみても信頼感が得られないのは「ぶれる」という現象が多いからだ。なぜ「ぶれる」のか?それは何かを決定するときに、あらかじめ起こりえるであろうと思われる事態を想定して決定を下していないから、いざ実行してみて起きた事柄に対処できずに引っ込めたり、変更せざるを得なくなる。また、リーダーや組織がしっかりとした理念のもとにビジョンを持っているかということもある。国際水連もIJFも行き当たりばったりで物事を決めているという印象が拭えない。こういったリーダー、組織への信頼感は持てるはずがない。また、そういった組織がリーダーシップを発揮できるわけもなく、組織自体の発展も望めない
さらに困るのは、往々にして組織の上に立っている人たちは人の意見を聞くという寛容な精神がない。「自分たちは偉い」「自分たちは優秀だ」という自負が強い。しかしながら、国際水連の決定をみてもわかるように、現場の声は無視もできないのである。柔道におけるコーチ席の復活もそうだ。であるならば、何かを決定する前に意見を聞くようなシステムを取り入れることが賢い策だ。
IJFは新規にアスリート委員会を作り、現場の意見を聞くという方針を打ち出した。正直言ってこの委員会がどの程度機能し、影響力をもてるのかはわからない。しかし、大きな一歩であることは間違いない。このアスリート委員会の構成は選手達の投票によって大陸からの代表が選ばれ、IJFが指名する数人とで構成されるようだ。IJFからの推薦という紐付き人事は若干気になるがbetter than nothing!
日本からアスリート委員が選出されるかどうかはわからないが、こういった委員会に挙げていく日本の現場の意見を集約していくためにも全柔連内にアスリート委員会の設置が求められる。IJFの動きに連動した全柔連の迅速な動きに期待したい
この提案に対して全日本の平井ヘッドコーチは「これでやっと競泳本来のスタイルに戻る」と歓迎する意向を示した。こういったルールが決まった背景にはアメリカを中心とした各国の有力なコーチたちが集まって「水着にばかり話題が集中する」といった批判的な意見を集約し国際水連に案を提出したようである。つまり、現場が組織を動かしたのである
柔道においても、2004年アテネ五輪の年に、IJF(国際柔道連盟、以下IJF)は試合を予選日、決勝日に分けて行うといった案を持っており、世界ジュニアで試験的実施、世界選手権で採用といった形で進めようとしていた。しかしながら、怪我などをしても1日で終われば痛くても頑張れるが、1日空けば欠場を余儀なくされるケースがでたり、体重を予選の日に計るだけで決勝は計らなければ体重別の意味がなくなるなど、コーチ中心の現場サイドでは反対意見が多かった。そのため、各国のコーチたちが署名活動を行い、この案を退けたという経験がある
正直言って国際連盟のトップの方々は、選手やコーチなど現場のことを親身になって考えているとは思えない水連の今回の決定でも、もっと早くに対策を打ち出せればこんな混乱は生まれなかったおそらく企業への配慮によって決断が遅れたのだろう。しかし、企業へのダメージも計り知れない。高速水着開発のために競わせたことは事実でこれにかかった費用は膨大だろう。そして結局は使用禁止という企業にとっては開発費をどぶに捨てたに近い。選手にとってもそうだ。高速水着を使用して出た山のような世界記録はどうなるのか?おそらく、これから何十年も、あるいは永遠にこの記録を抜けない可能性が出てくる。現代スポーツの魅力の一つは記録の更新だけに、水泳は大きなハンディーを背負うことになる。記録保持者も自分自身の実力として評価されるだけでなく、「高速水着を使用した記録」というレッテルが貼られてしまう
柔道でも同じような問題は多い。IJFは「コーチ席のコーチの態度が非常に悪いので試合場近くのコーチ席を排除する」として今年の1月から試合場の側に置かれたコーチ席を排除した。しかし、1年も経たないうちにコーチたちからの批判が大きかったのか、「コーチたちの態度が改善された」ということでコーチ席を復活するという。ただし、コーチ席に座る場合、予選はナショナルチームのジャージで着席が許されるが、決勝ラウンドではスーツにネクタイ着用を義務づけたこのルールに何の意味があるのかがわからない。柔道をよりスマートな競技に見せたいのか?日本のように何人もコーチを帯同できる国ならいいが、選手一人、コーチ一人で参加という国もある。こういった場合に、決勝の直前までコーチがアップを手伝うしかない。アップを受けて、すぐにスーツに着替えて行けというのか?IJFトップの人間たちは現場で柔道の指導などしたことがないのだろうと想像がつくさらにいえばドレスコードとは国それぞれであり、スーツが正装とは限らない。
最近の政治をみても信頼感が得られないのは「ぶれる」という現象が多いからだ。なぜ「ぶれる」のか?それは何かを決定するときに、あらかじめ起こりえるであろうと思われる事態を想定して決定を下していないから、いざ実行してみて起きた事柄に対処できずに引っ込めたり、変更せざるを得なくなる。また、リーダーや組織がしっかりとした理念のもとにビジョンを持っているかということもある。国際水連もIJFも行き当たりばったりで物事を決めているという印象が拭えない。こういったリーダー、組織への信頼感は持てるはずがない。また、そういった組織がリーダーシップを発揮できるわけもなく、組織自体の発展も望めない
さらに困るのは、往々にして組織の上に立っている人たちは人の意見を聞くという寛容な精神がない。「自分たちは偉い」「自分たちは優秀だ」という自負が強い。しかしながら、国際水連の決定をみてもわかるように、現場の声は無視もできないのである。柔道におけるコーチ席の復活もそうだ。であるならば、何かを決定する前に意見を聞くようなシステムを取り入れることが賢い策だ。
IJFは新規にアスリート委員会を作り、現場の意見を聞くという方針を打ち出した。正直言ってこの委員会がどの程度機能し、影響力をもてるのかはわからない。しかし、大きな一歩であることは間違いない。このアスリート委員会の構成は選手達の投票によって大陸からの代表が選ばれ、IJFが指名する数人とで構成されるようだ。IJFからの推薦という紐付き人事は若干気になるがbetter than nothing!
日本からアスリート委員が選出されるかどうかはわからないが、こういった委員会に挙げていく日本の現場の意見を集約していくためにも全柔連内にアスリート委員会の設置が求められる。IJFの動きに連動した全柔連の迅速な動きに期待したい