山口 香の「柔道を考える」

柔道が直面している問題を考え、今後のビジョン、歩むべき道を模索する。

凛とした美しさ

2009-02-13 08:20:02 | Weblog
 日本で始めて講道館9段をいただいた女性、福田敬子先生に会いにサンフランシスコに行ってきた。訪問するのは実は2度目で、1度目は1980年に第1回世界女子柔道選手権の後にチームで寄ったが、残念ながら、その訪問の際には先生は違う場所に行っておられたので、お目にかかるのは初めてだった

 第1印象は、品の良いおばあちゃんという感じで、とても小柄で華奢、とても柔道の大先生とは思えない

 お話を伺っていく中で、先生がいかに嘉納先生の教えに影響を受けられたかが随所にわかった。「私はいつでも、今でも、嘉納先生の’精力善用・自他共栄’の精神を胸にしまって生きています」「当時、高段者の先生の中にも’僕は嘉納師範に会えるから講道館にくるんだ’とおっしゃっていた先生もいた」「アメリカには来たのは、師範が’今後は女性でも海外に出て柔道を広めるように言われたから」などなど

 師というのは、当たり前のことですが、柔道のみならずその人の人生の師であるということを改めて思わされた

 そういう意味では、福田先生も多くの人に影響を与えた。それがわかるのは、95歳という年齢で脚が不自由だが、多くの弟子が道場の行き帰りはもちろん、先生のお世話を献身的にしていることだ。こういったことは義務でできることではない。これをみただけで先生がなさってきたことが想像できる

 先生が9段をいただいたのは2年前の94歳の時である。女性では初めてであることは素晴らしいが、8段をいただいてから実に30年の時を経ている。同じ時に先生より年下の男性3人は10段をいただいている。もちろん、男女の別だけではなく、個々の修行の度合いによって昇段の時期は変わってくるのはしかたがない。しかしながら、もし、先生が女性だからという理由で30年もの長きに渡って9段をいただけなかったのだとしたら非常に残念としか言いようがない

 先生の素晴らしいところは、柔道界の中にあって女性差別かと思われるような場面にも多く接してきただろうが、決して対決することなく、静観され、自分のやるべきことをなし、相手が変わるのを待ってきたところだ。古き良き日本女性の強さがそこにある

 先生はお習字がお得意で、頼まれると筆をとり「強く、やさしく、美しく」と書かれる。柔道の理もそこにあるように思う。

 海外で柔道を広めておられる先生方は今でも多い。そういった方々の努力があってこそ柔道がここまで発展してきた。私たちが海外に遠征に行くと必ずそういった先生方にお世話になった。しかし、いつも簡単なお礼だけでそれ以上なにも大したことはしていない。今さらながら申し訳ない気持ちがある

 柔道が国際化する中で、海外の人たちとのネットワークやコミュニケーションの必要性を強く感じる今日この頃だが、海外に住まわれている日本人の先生方との関係ももっともっと大事にすべきだと強く思う

 今回のインタビューは、雑誌柔道4月号に掲載予定。また、月刊武道にて4月から連載が始まる女子柔道のコーナーで詳しく紹介します


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1 コメント

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Unknown (ピカリン☆)
2009-02-16 10:48:09
サンフランシスコ、お疲れ様でした

「強く、やさしく、美しく」
素晴らしい言葉ですね
「美しく」はチョット厳しいですが(笑)
「強く やさしく」ありたいです
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