山口 香の「柔道を考える」

柔道が直面している問題を考え、今後のビジョン、歩むべき道を模索する。

フェンシング連盟の挑戦

2009-01-10 18:37:48 | Weblog
 今日はフェンシング協会が開催したシンポジウム及び講演に行ってきた。ご存知のようにフェンシングは、北京五輪ではじめて太田選手が銀メダルを獲得するという快挙を成し遂げた。その成功の要因は何であったのか、これから目指すものは?といったことがテーマで展開された

 はじめに専務理事から北京までの挑戦について話があった。ポイントは

1組織、意識の改革・・・メダルをとる、勝つための組織とする
2国際競争力の向上・・・国際フェンシング連盟の役員に入る。審判員を送る。
3外国人コーチの招聘・・・ウクライナからオレグコーチを招いた。
4強化資金の確保・・・「やまや」の会長を中心にスポンサーを募った。
5日本で国際試合を開催・・・国内にいながら多くの選手が多くの経験を積む。
6北京までの500日合宿・・・選手を絞って東京に集め、徹底的に強化

 ある意味では強くなるためには必要なことばかりで最もだという内容ばかりであるが、これだけのことをやり、結果を出したことが素晴らしいと思う。わかってはいても出来ない競技団体も数多くある。言い訳は様々あるだろうが、フェンシング協会の取り組みをみれば、「やればできる」と言わざるをえないはずである

 オレグコーチの講演では日本のスポーツ組織の脆弱さに言及した
1日本にはクラブがないので子供達は学校にクラブがない限り、フェンシングに接
 する機会がない・・・このことが原因で始めるのが遅くなる→世界で戦えない
2選手もコーチもプロフェッショナルではない・・・競技に専念できる環境が整っ
 ていない
3優れたコーチの不足・・・中国は一人ではなく、多くの外国人コーチを招き、各
 地に派遣した。そのことによって彼らとともに活動した中国人のコーチが多くを
 学ぶことができた。こういったように指導者の層を広げていくことが大事
4フェンシングはサッカーのように多くの観客を集められるスポーツではないので
 国が支援することが必要

 柔道はフェンシングなどとは対極にある。彼らが求めるような練習環境、優れた指導者、強化費など、ほとんどすべてがあるといっても過言ではない。しかしながらそれだけに伝統にあぐらをかいているようにも思えてしまう。考えてみれば諸外国の柔道連盟は日本のフェンシング連盟のようなものである。彼らは伝統も歴史もサポートのないなかで強化を行っている。そして結果を出している国も多い

 日本人は彼らの努力に対してリスペクトしているだろうか?日本人の多くは外国人は「柔道をしらない」「外国人に柔道がわかるわけがない」という上から目線でみているように思う。確かに外国人のなかには、柔道を競技としてのみ考えて、柔道の持つ理念や精神性などを理解しない人もいる。しかし、外国人でも日本人以上にそういった部分を学び、大切にしている人も少なくない。柔道が国際スポーツになった以上、海外の人たちの試みや努力に敬意をはらいつつ、日本の柔道の理念や本質をどう伝えていくかが私たちの役割だろう。試合場にあがったら敵であっても柔道の世界は一つであり、皆がファミリーだと私は思っている


最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (佐々木勝宏)
2009-01-11 11:41:46
 あけましておめでとうございます。昨年は講演会でお世話になりました。
 
 さまざまなメディアを通して山口先生のご意見に触れ、共感することが多々ありました。ブログでの発信を期待していただけに、うれしいです。今後も楽しみにしております。

 さて、フェンシングの協会取り組みについては、私も昨年12月の「スポーツコーチサミット」や「JISSスポーツ科学会議」で知る機会がありました。協会首脳陣のコンセプト、JISSのサポート、オレグコーチの講演も聴くことができ、深い感動を覚えました。

 現在、県体協に勤務し、柔道をはじめ、さまざまな競技団体の課題を目にすることが多くなりました。行政が絡む複雑な問題も少なくありません。ただ一つ言えることは、現場の選手や指導者たちは、みんな柔道が好きで情熱を持って頑張っているということです。道衣を着る機会はほとんどなくなりましたが、愛する柔道に恩返しをするつもりで、自分の立場でできることをやっていきたいと考えています。今後もよろしくお願いいたします。 
返信する