長年に渡って女子柔道を牽引してきた2人の選手が引退を表明した。78kg超級の塚田選手と63kg級の谷本選手である。塚田選手は先日の世界選手権で銅メダルを獲得した後、今後、国際大会には出場しない旨の意志を表明した。10連覇のかかった来年4月の全日本女子選手権は目指すようである。
この階級では杉本選手が無差別級と2冠を達成した。塚田選手との直接対決はなかったが、バトンを渡した形となった。杉本選手の活躍も塚田選手が注目を集め、プレッシャーを引き受けたからこそであったと思う。アテネ五輪で金メダルを獲得してから第一人者として常にプレッシャーと闘ってきた。もう少し前に引退を考えた時期があったのではないだろうか。しかし、バトンを渡す若手が思うように育ってこず、彼女の責任感がここまで来させたに違いない。
身体は大きいが繊細で優しい性格である。私は高校時代から彼女を知っているが当時はその「優しさゆえに勝負事には向かないのでは」と思ったほどである。その後、薪谷選手という好敵手を得て大きく成長していった。金メダリストであるにも関わらず驕るところが全くなく、合宿でも他の選手と変わりなく淡々と稽古をしていたのが印象的であった。「塚田先輩でもやっているんだから私たちが休むわけにいかない」と感じた若手は多いはずである。強い選手が驕らず努力する姿勢があるからこそ雰囲気が締まる。これこそが現在の女子柔道の強さを支えているといえる。
谷本選手はアテネ、北京五輪と全て一本勝ちで2連覇という偉業を達成した。男子に負けない豪快な技で魅了した。若い頃には、その豪快さが諸刃の剣で豪快に負けることもあった。一本をとる柔道を貫くことに迷った時期もあったようだが、北京五輪決勝の見事な内股一本が彼女が目指した柔道を証明してくれた。
五輪2連覇となると引き際も難しい。自分の気持ちだけでは決められない面もあったのではないだろうか。周囲の期待も半端なものではない。
北京五輪の後に彼女とトークショーをさせてもらったことがある。以前に比べて一つ一つの発言に重みと深さを感じた。明るく人懐っこい性格で誰からも好かれるタイプ。苦しい練習でも怪我の時でも、辛さを人に見せることはなかった。外見とは違い、物事を深く突き詰めて論理的に考える内面がある。
2人は今後、新たな道を歩き出す。指導者になっても、全く違う道を進んだとしても、きっと地に足をつけてしっかり歩いていくに違いない。今回の世界選手権において女子は圧倒的な活躍を見せたが、この成功の裏には彼女たち先輩たちの頑張りがある。バトンを受け継いだ若い選手達は、勝つことのみならず彼女たちの精神も引き継いで次につなげてもらいたい。
塚田選手、谷本選手には、心からの賛辞と感謝を伝えたい。本当にお疲れさまでした。
この階級では杉本選手が無差別級と2冠を達成した。塚田選手との直接対決はなかったが、バトンを渡した形となった。杉本選手の活躍も塚田選手が注目を集め、プレッシャーを引き受けたからこそであったと思う。アテネ五輪で金メダルを獲得してから第一人者として常にプレッシャーと闘ってきた。もう少し前に引退を考えた時期があったのではないだろうか。しかし、バトンを渡す若手が思うように育ってこず、彼女の責任感がここまで来させたに違いない。
身体は大きいが繊細で優しい性格である。私は高校時代から彼女を知っているが当時はその「優しさゆえに勝負事には向かないのでは」と思ったほどである。その後、薪谷選手という好敵手を得て大きく成長していった。金メダリストであるにも関わらず驕るところが全くなく、合宿でも他の選手と変わりなく淡々と稽古をしていたのが印象的であった。「塚田先輩でもやっているんだから私たちが休むわけにいかない」と感じた若手は多いはずである。強い選手が驕らず努力する姿勢があるからこそ雰囲気が締まる。これこそが現在の女子柔道の強さを支えているといえる。
谷本選手はアテネ、北京五輪と全て一本勝ちで2連覇という偉業を達成した。男子に負けない豪快な技で魅了した。若い頃には、その豪快さが諸刃の剣で豪快に負けることもあった。一本をとる柔道を貫くことに迷った時期もあったようだが、北京五輪決勝の見事な内股一本が彼女が目指した柔道を証明してくれた。
五輪2連覇となると引き際も難しい。自分の気持ちだけでは決められない面もあったのではないだろうか。周囲の期待も半端なものではない。
北京五輪の後に彼女とトークショーをさせてもらったことがある。以前に比べて一つ一つの発言に重みと深さを感じた。明るく人懐っこい性格で誰からも好かれるタイプ。苦しい練習でも怪我の時でも、辛さを人に見せることはなかった。外見とは違い、物事を深く突き詰めて論理的に考える内面がある。
2人は今後、新たな道を歩き出す。指導者になっても、全く違う道を進んだとしても、きっと地に足をつけてしっかり歩いていくに違いない。今回の世界選手権において女子は圧倒的な活躍を見せたが、この成功の裏には彼女たち先輩たちの頑張りがある。バトンを受け継いだ若い選手達は、勝つことのみならず彼女たちの精神も引き継いで次につなげてもらいたい。
塚田選手、谷本選手には、心からの賛辞と感謝を伝えたい。本当にお疲れさまでした。