ランキング上位16名によるトーナメント、ワールドマスターズがアゼルバイジャン、バクーにて行われた。上位16名といっても欠場する選手がいれば繰り上がるので階級によっては30位ぐらいまでが出場権内となった。
アゼルバイジャンでこのような大きな国際大会が開催されるのは珍しいが、会場の様子をネットで見る限り、満員の観客で盛り上がったようである。旧ソ連から独立し、カスピ海に面し、石油やガスという資源を持ち、発展を遂げている国のようである。イスラム教徒が95%を占める。東京での世界選手権では男女1個ずつ銅メダルを獲得している。
日本選手は多いところでは階級3名のエントリーだった。男子は100kg超級鈴木選手、90kg級小野選手、81kg級、73kg級粟野選手が3位を獲得したが、決勝進出したものはなく、100kg級穴井選手を含む6人が1回戦負けという厳しい結果だった。女子は3階級で金メダル、2位が5人(うち3人は日本人同士の決勝)、3位が2人とまずまずの結果であった。
上位ばかりの選抜大会であるので、1回戦から強豪とあたる可能性を考えれば1回戦負けといっても気落ちする必要はないのかもしれない。また、以前にも書いたが選手は連戦の疲れもあり、出る大会全てで勝利するというのは難しい。ここのところ負けなしだった57kg級松本選手や63kg級の上野選手も決勝で敗れている。
難しいのは、こういった敗戦をコーチや強化がどのように判断するかだろう。これだけ大会に出場していれば全てで勝つことは難しく、逆に全てに全力を注いでいれば、肝心のオリンピックを前に精神的にも力つきる可能性がある。しかしながら、日本人の感覚でいえば「負ける=弱い、だからもっと鍛えろ」という安直な方向にいきやすいのが心配だ。東京での世界選手権、グランドスラム大会での活躍は地元の利があって額面通りには受け取れない面もあり、今回の結果をみて、浮かれた気持ちを締める必要はあるだろうが、これ以上選手達にムチを入れるのはいかがなものか
ランキングポイントをみると、上位にランクしていて2位以下に大きく水をあけている選手もいる。こういった選手達は大会派遣を見送って国内でじっくり研究、調整をさせた方がよいのではないだろうか。トップの選手は2月に行われるヨーロッパの大会に平均して2大会に派遣される。さすがに女子の何名かは1大会となっている。強化からすれば派遣しないという選択肢はないのかもしれないが、選手によってはそれもありだろう。ランキング制だから出場させるのではなく、ランキング制だからポイントをみて出場させないという戦略もあるはずだ。日本の派遣の仕方をみているとランキング制の大会になる前同様にパリから始まる2月の3大会のいずれかに選手を派遣するようだ。大会のシステムが変わったのに派遣の仕方には全く変わりがない
今大会で81kg級の中井選手が関節技を決められて肘を負傷したようである。彼は技が決まっているのに「参った」しなかった。見ていた海外の関係者によれば、外からみても肘を脱臼もしくは折れているように曲がっていても「参った」せず、その後も、苦痛な表情で試合続行が不可能なようにみえたがコーチ陣は続行を促したという。「日本はいまだに何十年も前のような根性主義なのか」といった質問を受けた。そのときの状況がわからないし、怪我の状態も不明だが、もし、彼が「参った」できないような、怪我をしても試合をやめられないようなプレッシャーをコーチ陣から受けていたとしたら問題は大きい。仮定で話をしてはいけないが、もし怪我の具合が重く、4月の体重別にまで影響を及ぼすことになったら、世界選手権、オリンピックの可能性にまで影響を及ぼす可能性も否めない
厳しく指導をすることは結構であり、選手も勝負に厳しく臨むのはよいが、この時期に怪我をしてしまったら何にもならない。残念だが、怪我をして泣くのは選手だけで強化とすれば代わりがいる。選手が自己主張をしすぎて我がままになるのは良くないが、結局、オリンピックの切符は自分でつかむしかない。オリンピックは生涯に一度のチャンスかもしれず、後悔しない闘いをしてほしい。コーチの顔色をみて言うことを聞いていれば勝てるものでも、選んでもらえるものでもない
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所属のコーチも選手も全日本のコーチと正面からやりあってオリンピックへのベストな道を模索してほしい。