山口 香の「柔道を考える」

柔道が直面している問題を考え、今後のビジョン、歩むべき道を模索する。

第3回筑波大学少年柔道錬成大会

2010-12-05 10:20:14 | Weblog
筑波大学柔道場において、「第3回筑波大学少年柔道錬成大会」が開催された。900名を超える子供達(幼児の部から小学校6年生まで)が参加した。試合形式は団体戦でトーナメント戦。朝10時から夕方の6時までノンストップで行われた。筑波大学の道場は狭いわけではないが、さすがにこれだけの人数が集ると息苦しさを感じるほどである。シニアの大会と違って子供の大会は、親がもれなくついてくるので参加者の倍の人数はいたはずである。

主催は筑波大学内にある「つくばユナイテッド柔道」。つくばユナイテッドとは、筑波大学の運動部が力を合せて周辺地域のスポーツ活動を応援することを目的として、平成17年3月に設立された体育系コーチング分野の教員を中心とした連合体であり、「スポーツを通して地域社会と大学に豊かで創生的な育みを提供すること」を理念として活動している。少年柔道教室もこの活動の一環であり、平成17年から4月からスタートした。

柔道教室の運営及び指導は、保護者の協力を得ながら、主に柔道部の学生(大学院生も含む)が中心となって行っており、日本や世界トップレベルで活躍する選手達から直接指導を受けられる点も特徴である。学生にとっても普段は競技として行っている柔道であるが、指導することによって競い合うだけではない柔道の意味や価値に触れるチャンスともなっている。大会の運営、審判も学生(大学院生を含む)が中心で行っている。

3回目を迎えるこの錬成大会には、朝飛道場、小川道場、春日柔道クラブ、古賀塾、力善柔道クラブなど強豪も多く参加し、レベルの高い大会であること、団体戦ということで個人戦以上に盛り上がり、皆熱かった!お父さん、お母さん、ビデオ片手に大声で声援を送る。後でビデオを見たときに自分の声にビックリ!なんて人も多いのではないだろうか。以前に世界で闘っていた元選手達も父兄として指導者として熱い声援を送っている姿もみられた。柔道経験のないお母さんも多いのだろうが、「門前の小僧」で、結構的確なアドバイスを送っていた。柔道に限らず子供のスポーツにかける親の思いは凄いものがある。試合数も多いので親の協力がなければ続けられないという現状もある。

負けると涙を見せる子供が多かった。自分の子供時代を考えると、負けて泣いただろうか?と考えてしまった。負けて悔しいと思う気持ちは重要だが、今の子供達は昔以上に勝つことへのプレッシャー、親のプレッシャー、指導者のプレッシャーが大きいのかもしれない。柔道の質も変わってきた。私達は試合でも組み手争いや切ったりといったことはなく、「組んでからやりましょう」といったのんびりとしたものだったが、今の子供達は組み手争いは当たり前だ。組み手のうまい子供も驚くほど多い。おそらく、柔道の技術として完成するのは昔よりもずっと早い。そのことが、頂点を極める上ではプラスなのかマイナスなのかは、もう少し検証が必要になるだろう。

体格の向上にも驚く。小学4年生で私よりも体格の良い子供達が結構いた。体格差のある対戦も多かった。子供の場合、体格が大きいとそれに頼ってしまい、技術の習得を怠ってしまう傾向もある。これは本人の自覚が云々という問題ではない。小学生の場合には学年別の大会がほとんどだが、並外れて体格の大きい子は、一つ上の学年にもエントリーできる方式をとってもよいのかもしれない。小さな体格の子供よりも実は恵まれた大きな体格の子供を伸ばすことは難しい。日本人の体格は良くなっているにもかかわらず、重量級で勝てなくなっている現実からもわかる。

子供達の懸命に頑張る姿、流す涙は見ていて気持ちがいい。こういった大会が毎週末のように全国各地で行われているのだろう。

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13 コメント

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よろしく! ()
2010-12-05 16:52:41
今年の、ひのまるキッズ九州大会もよろしくお願いします。
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Unknown (泰輔)
2010-12-05 19:55:15
素晴らしい事やと思います。先生、つくば大って嘉納師範が教育者育成で作られた学校ですねんてねえ。柔道の授業?やら中味の濃い嘉納師範の人間教育のノウハウ?も有るとか?派閥やなくて
そういう面ではやっぱしつくば大が中心なんですかね。だから ぼく何かが柔道をやってこれたんですね。ゴマするつもりやなく 山口先生って凄いし、つくば大や嘉納師範って凄い思います。ホンマに金メダリストだけやなく国の為や世界の為になる人材がいっぱい出てくるといいですね。
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少年柔道 (山嵐)
2010-12-05 23:39:09
自分も最近小中学生の試合を見に行くようにしてるんですが 毎回親や監督の熱心さには驚かされてしまいます
つくばユナイテッドは以前見たことありますが確か岡田さんが監督をやってたと思いますが
小川道場なんかは子供よりも監督の大きさに圧倒されてしまいました
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最近わからない (よくわからない)
2010-12-06 21:38:57
 大会が成功に終わりおめでとうございます。ただ 柔道に携わってきて このような大会をみて最近よくわからなくなってきたことがいくつかあります。

1 大会の目的が少年層への柔道の浸透にあるとするのなら その効果はあるのだろうか?

 確かに 子供の大会はよく開かれ いずれも盛況ですが 参加選手のかなりは長野の大会でも 埼玉の大会でも 茨城の大会でも 選手であって 彼らが 今週は どこ 来週はあちらと いるような気がします。しかし、今まで 柔道になじみの無かった少年たち 薄かった少年たちが このような大会を契機として 柔道をしようとしているのでしょうか?
少子化の影響大ですが けつして 柔道人口は広がってないと思います。

 大会主催者は本当に大変だと思いますし立派だと思います。ですから 批判しているわけでなく また 感情的な反論をうけるのは いや なので まず一つだけ 投稿いたします。   
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ハイレベル少年柔道 (関東の指導者)
2010-12-07 12:02:47
少年柔道の組み手争いはホントに激化しています
そして、どちらか片手だけ持ち一本背負い。
引き手だけ持って巻き込み。
両袖を絞って袖釣り。
高度なテクのオンパレード
相手がどんなに危険でも関係ない、勝負に徹する厳しさ。
指導者が奥襟を一瞬だけ持たせたり、首を巻かせ払い腰。5秒だけ肩襟を持たせる。両膝が駄目なら片膝でつぶれる背負いや体落し。
ルール内であれば、逆にどんどん活用する。
テレビに出る強豪チームでも・・・

少年規定では安全管理を謳っているはず。
中途半端な少年規定(巻き込み・奥襟など)ではなく、ハッキリした少年規定を作らないと柔道での重篤な事故はなくせないのでは?
山口先生のご意見をお聞かせ願いたいです。
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自己責任 (彦左衛門)
2010-12-07 13:53:09
体が大きくなれば有利だと子供にどんどん食べさせる親。自分の適正体重で戦えばよいとあえて特別なことをさせない親。
今の試合に勝つ為に徹底的に組み手、試合運びを教える指導者。まず得意技を作るのが第一、今は負けてもいいと考える指導者。

たったこれだけの考え方の違いでも間違いなく子供たちの将来は大きく違ってくる。そこは親はちゃんと意識しておかなければならない。

指導者を選ぶ時は慎重に。子供は親を選べないけど。
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熱い親は時として見苦しい (クロコダイルダンディー)
2010-12-07 15:09:14
自分の子が一番かわいいでしょうから気持ちはわからないでもないのですが、無意識に相手の子のことを悪く言ったり、相手の反則を喜ぶ親とか、どうなんでしょうね。

少年柔道は熱いなあと思いますが、本当に熱いのは指導者を含む周りの大人ですよね。子供は親や指導者が喜ぶから言うことを聞いて頑張っているし、それは尊いことなんだとも思いますが、一方の大人は自分たちが楽しむために子供に押し付けをしている面はあると思います。引いて見ていると誰のための柔道なんだかわからないことがあります。
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柔道の目的 (わからない)
2010-12-07 21:14:45
 柔道の目的は、なんなんでしょうか?

 嘉納先生は、鍛錬をとおした人間形成をし世の中に有益な人間とさせる。つまり 柔道は、人間教育の手段といっているように思います。

 しかし 各種の大会をみると まず 第一に勝つことのみ であって 人間形成うんぬんはかなりなおざりにされているような気がします。

 それで なければ 上はメダリストを含めた各大学の監督や指導員が大学などの大会で 下は、各種の子供指導者たちが ボランティアの役員が勤めている各大会の審判員に 恫喝とも思えるような抗議をしているのが 理解できないし コメントされている方々がのべているような 少年選手の厳しい組み手が指導されているわけはないと思います。

 いいほうに考えていると それだけの厳しい状況で戦うから 選手も鍛錬されるんだ。甘いこというな。という意見もあると思いますが。

 また 以前は、勝利した選手が大きな大会などで万歳のようなことをするのはもってのほか
という風潮だったようですが 現在は どうも違っているようです。

 私は、勝つことが 一番。それに向かって鍛錬しろ 全力をつくせ という考え方もあり かなとも思います。

 本当 最近よくわかりません。上の方たちは、どのように考えているんでょうか。
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Unknown (Unknown)
2010-12-07 22:10:09
勝ってガッツポーズもなんですが、負けてワンワン泣くのもどうかと思います。嘉納師範曰く『勝って勝ちに傲ることなく、負けて負けに屈することなく・・・』勝ち負けよりもこれからの人生において大事なもの・・・例えば『胆力』・・・柔道本来が持つ価値にもっときづきべきでは・・・柔道ルネッサンス(最近ではあまりつかわれないんでしょうか?)を唱えるならそこまでルネッサンスして頂きたいものです。
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覆面座談会? (泰輔)
2010-12-09 16:22:14
結構、柔道界の有名な面々が投稿されてませんか?(笑) この先生のブログを雛型に柔道界が発展
繁栄すれば素晴らしいかと思います。皆さん方々の手記を拝見させて頂きますと非常に勉強になります。有り難うございます。思うに 信心にしても神さんを基準にと言うても 神さんやない人間です。基準に生きる努力をすると言うのが正解かと思いますねん。子供 親
指導者 嘉納師範の御遺訓を僕の場合は信心に当てはめて考えるようになると心が楽になりました。そら理想と現実は全く違うし正論であっても対象に対して白刃を突き付けるものであってはイケないし
本当に覆面座談会であってもケンカせずに(笑)みんなで柔道界を発展繁栄させて行きましよう
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