山口 香の「柔道を考える」

柔道が直面している問題を考え、今後のビジョン、歩むべき道を模索する。

昇段規定改正

2010-04-07 16:03:34 | Weblog
 4月1日付けで講道館昇段規定が改正された。改正前後のものを詳しく見比べていないが、女子柔道家にとっては非常に大きな改正となった。これも新館長の英断といえるのだろう。

 これまでの昇段規定は男女の間に大きな違いがあった。例えば昇段審査の内容である。女子の場合には初段から「柔の形」が義務づけられていた。(男子は5段の昇段時)また、昇段に必要な修行年数にも開きがあった。

 今回、4段までは審査内容、修業年限に男女の違いはほとんどなくなった。5段以上については依然修行年数などに違いがある。

 女子の競技がここまで盛んになり、人口も増えていることを考えれば改正は当たり前であり、遅すぎるといえる。しかしながら、講道館の昇段に関してはこれまでアンタッチャブルとでもいおうか、誰も触れないような部分があった。それが、新館長になって2年目において実現されたことは嬉しい驚きである。逆に言えば、なぜこれまではできなかったのか?という疑問も残る。

 以前にも書いたが、講道館の段の権威が徐々に薄れている現実がある。若い選手達は、競技成績こそが自分の実力の証明であり、段にこだわらなくなってきている。オリンピックのメダリストや強化選手が現役時代はもちろんのこと、引退後にも昇段を望むかどうかも段の価値を左右する。岡野功先生とお話をしたときに「現在6段だが、もう段なんていらない。」とおっしゃっていた。先生が海外で講習会をしたときに教わる方に何人も紅白帯をつけている者がいてびっくりしたともいっておられた。岡野先生はカリスマ的な柔道家のお一人だが、そういった先生が6段ということになると、段の価値はなんなのか?という議論にもなるだろう。今後は、引退後に柔道を離れてセカンドキャリアを築く選手達も増えてくるだろう。その人たちが昇段にこだわるだろうか?

 段は資格である以上、そこに権威がなくてはならない。柔道に比べて剣道の段位は明確な権威がある。とくに最高段位の8段は日本で最も難しい資格審査とも言われるほどハードルが高いが、毎年、多くの人たちが審査に挑戦している。何度落ちても挑戦する理由は、全日本チャンピオン、世界チャンピオンというものとは違う権威があるからであろう。

 今回の改正は非常に大きな一歩であることは間違いない。年々減少していく登録人口に歯止めをかけたいという思いから、改正は必要に迫られてのものであったとも読み取れる。しかしながら、今後、講道館が段の権威を維持し、多くの修行者が昇段を目指すものとしていくには講道館の更なる取り組みが必要であろう。

講道館段位昇段に関する審議規則

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3 コメント

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驚き (海外柔道家)
2010-04-08 22:18:58
あの岡野先生が六段以上の昇段をしていないことに対して、講道館が何の対応もしていないことに驚いています。

昔、ヘーシング先生も講道館の五段でしたが、何度申請しても六段に昇段させてくれないので、六段以後はヨーロッパ柔道連盟が認定し、十段は国際柔道連盟が認定しました。

アメリカでも柔道連盟が独自に認定していますが、希望者は講道館にも申請して講道館の段位との同時昇段も出来るシステムです。

昭和の三四郎と歌われた岡野先生が六段では、講道館の段位の権威がなくなるのも当然です。最近の日本のブラジル柔術の幾つかのサイトでは、柔術の青帯は柔道の二段相当などと、勝手な比較までしています。

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白線入り黒帯について (アラフォー初段)
2010-04-08 22:35:24
いつも先生のブログを楽しく読ませていただいています。

まだ完全ではないようですが、男女の性差に基づいた規定が改定され、男女平等になる事は良いことだと思います。

しかし、黒帯も男子と同じものになるのでしょうか? それとも今までと変わらずに、黒帯に白の線が入った帯になるのでしょうか?

日本の女子柔道家だけが、黒帯に白線が入ったものを締めていることに違和感を感じるのは私だけでしょうか?
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女子の黒帯 (山口 香)
2010-04-09 23:23:55
 女子の黒帯の白線は継続されるようです。変えない理由は定かではありませんが差別ではなく、男女の段の区別だという説明を以前聞いた記憶があります。男女の段を区別する必要があるのかという議論が根本的な問題として解決されない限り変更は難しいと思われます。
 しかしながら、国内の試合もIJF審判規定に統一されたことを考えれば、近い将来、国内においてもブルー柔道着の使用や女子の白線入り帯などもIJFのルールに従ってという方向に流れることが予想されます。
 昇段規定の改正について、改正内容は公表されていますが、そうなった経緯については説明がなされていないので、その辺りが明らかにならないと女子の段位について講道館がどのように考えているかが図りかねます。HPや雑誌柔道などを通じて説明されていくのではないかと期待しています。
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