大島の空の下で

伊豆大島在住の中年のおっさんのブログです.日々の出来事を綴っていきます.一部は mixiとマルチポスティングしています.

乳と卵

2008-02-14 01:38:21 | Weblog
作家 川上未映子.またまた美貌の芥川賞作家の誕生です.掲載誌のラジオ広告はたしか「平成の樋口一葉の誕生です」だったか・・・どうやら作家の容姿よりは話題になった幼少期の貧困生活と作品が「たけくらべ」のオマージュであることから想を得たコピーのようです.


物語に登場するのはじき四十を迎える母と初潮寸前の年頃の娘.そしてその叔母にあたる母の妹の3人.舞台は三ノ輪にある叔母のアパートです.豊胸手術を考える母,大人の身体になっていくことに苦痛を感じる娘,というフィジカルな悩みを抱えて上京してきた母娘と久しぶりに一緒に過す叔母が語り手となっておはなしは進みます.
一葉というよりは往時の野坂昭如を彷彿とさせる句点の少ない長センテンス文で綴られるのは乳房と月経.
五十歳過ぎのおじさんには一番縁遠いところにあるテーマです.多くの男性がファンタジーとして持っているであろうオンナの性と身体感覚とはまるで異なる女性の身体に対する感覚が女性自身の手で丁寧に描かれています.叔母がたまたま始まった月経を処理する克明な描写はスーパーなどでうっかりコーナーに紛れ込んでしまいドギマギする生理用品が即物的な道具であることを強く訴えていて無意識に目に入らないようにしていた自分に意識改革を迫まってきます. 総じて「あっ.女の人ってこーなんだぁ」という発見がある短編です.題名をみて舌なめずりをしながら読み始めると大きな勘違いをしますので男性読者はご注意ください  ^_^;