印象に残っている出来事を時系列に沿って書いている。
1999年10月某日の出来事。
タイに移住して2週間くらい経った時だろうか。
部屋の内線コールが鳴った。
受話器を取ると・・・・・・
「ハロー!オフィスからね!アナタの部屋クサイ!クサイ!ベリークサイ!!!
掃除はしてるの?犬も洗ってるの??アナタ、メバーン(メイド)雇わなきゃダメ!!!
メバーンは月2000Bね。メバーン今から部屋に行くからね!!」
電話口で叫んでいるのは大家のオバサマのようだ。
一方的に英語で捲し立てられ、さっさと切られてしまった。
しばらくするとドアがノックされた。
ドアを開けると物凄く太った中年後期のタイ人女性が立っていた。
タイ人女性は入っていいか?と言うと、こちらの返事を待たずに入ってきた。
勝手に椅子に腰を下ろすと「オフィスからここに来るように言われて来たけど・・・・週に3回掃除に来るからね。
あとアイロン掛けもやるよ。月に2000Bね。部屋の鍵頂戴!!」
いやいや、さすがにこの初対面のタイ人女性に鍵を預けるのは気が引けた。
「俺の居る時間に来てよ。午前中は居ないけど午後は大抵居るから・・・・・」
すると、ジャラジャラと沢山の鍵の束を見せながら「皆、私に鍵預けてるのにねえ・・・・まっ、いいわ。
明日の2時ごろ来るからね!」と言うと部屋を出て行った。
翌日、学校から帰り部屋に居ると昨日のタイ人女性が来た。
昨日のニコリともしない表情から一変し、今日は大変にこやかだ。
部屋にある掃除用具を確認すると「これじゃあ、やりづらいな~・・・」と言うと部屋を出て行き
再び掃除用具を手にして戻ってきた。
どうやら俺の使っていたスポンジ製のモップが使いづらいのだそうだ。
代わりに持ってきたモップは初めて見る形のものだった。
面相筆を巨大にした形と言う表現が分かりやすいか・・・・
まずは掃き掃除を一通り終えると、バケツに溜めた床用洗剤を薄めた水にモップを浸し、それを絞ることなくビシャビシャと床に塗りたくっていく・・・・
こんな表現がピッタリの掃除の仕方だった。
初めて見るタイ式清掃方法に少々面食らったが、掃除が終わると部屋は綺麗になり床用洗剤の良い香りが部屋に漂っていた。
「ナイハーン!アイロン掛ける服持っていくからね!!!」そう言い残し部屋を出て行った。
この時、初めて聞いた「ナイハン」とは日本人男性に対して「旦那さん」という意味らしい。
第一印象は横柄なオバサマだったが、実は愛想の良い仕事の出来るタイ人女性のようだ。
全てのタイ人に共通することではないが、初対面の人間に対し舐められないようわざと横柄な態度を取る人もいるようだ。
こちらの出方を見て態度を決める・・・・ってことだろう。
無職の身には痛い出費だが、これで面倒な掃除、アイロン掛けをしなくて済むようになった。
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