カオパット・タレー
食事が済むと予約してあった某マッサージ屋へ・・・・・
某マッサージ屋とは俺が元経営していた店だ。
店に入ると受付には新人君ではないタイ人女性が座っていた。
新人君は仕事終了し帰宅したようだ。
10台ある足マッサージの椅子は殆んどお客で埋まっている・・・相変わらず繁盛しているようだ。
まっすぐ店内に目を向けると太った丸い顔をしたマッサージ師と目が合う・・・・NOIだ!
あれっ?彼女は俺が経営してたときに辞めたんじゃなかったか??出戻ってきたって事かな。
NOIは施術中であるにも関わらず手を止めるとご丁寧に俺に向かってワイをして嬉しそうに微笑んでいる。
他の施術中のスタッフも皆手を止め俺にワイをしてきた。NATやNUN、PUKだ。
勿論俺と面識の無いスタッフは俺が誰だか分かるはずはないからそのままだ。
ワイをしてきた者達は俺が経営していたときから勤続しているスタッフだ。
7年ぶりだ。
「あんまや」のスタッフが俺にとって曾孫(ひまご)や玄孫(やしゃご)なら今目の前にいるスタッフ達は子に当たる。
俺が面接をし採用し日本式マッサージを直接教えたわけだ。
新人君の話では俺が経営していたときのマッサージ師は7人残っているとのことだ。
足マッサージの椅子に座るとYAOが上から降りてきた。
予約のときに彼女を指名していた。俺を見るなり「シャチョー!」
彼女を指名したのはマッサージが上手なのは勿論だが話しが通じやすいというのが一番の理由だ。
辞めたスタッフの情報も聞き出したかった。
彼女が施術を始めると手の空いたスタッフが続々と俺のところへ来た。
中には目を潤ませている者も・・・・良かったよ。俺は嫌われていなかったようだ。
いやいや、当時俺はかなり小うるさかったからな。
7年経ち俺に対する思い出や印象がかなり美化されているのだろう。
しかし、こうして久々に会って嬉しそうにしてくれるなんて感激だよ。
アジャーン(指導者)をしているKEYやUBONも来た。
2人共歳取ったな。
2人とも目に涙を溜めて今にも泣き出しそうだ。
俺に会って泣いてくれるなんて・・・・・・・もし今この場で死んだとしても俺は「幸せだった!」と思って死ねるだろう。
・・・・そんな有り得ないことを考えながらYAOにインタビューを開始する。
まず一番気になっていたのはキティポンのことだ。
彼は盲人だが日本に留学し日本の盲学校に通い日本の国家資格である鍼灸指圧師の資格を取得した。
平日はタイの盲学校で教員をしていて土日になると店に来ていた。
YAOの話しでは3ヶ月前まで来ていたが遠いのと土日休まないと平日の本業に差し支えるとのことで来なくなたとのことだ。
まっ、彼も歳だしな。
TAはロシアに出稼ぎに行った。
HOMはマッサージ師は疲れるから辞めたと言って物売りやっている。
PINは病気になり歩くのもやっとの状態。
夫婦で来ていたWATとDENは3年前から来なくなった。
REAMは有馬温泉・・・・・・・・・・・・
そんな話しを聞きながら足マッサージは終了した。
続いて身体のマッサージのため上の階に移動する。
店の看板や備品全て俺がやってた当時のものそのまま使っているようだ。
子である彼女のマッサージは非の打ち所が無いのは言うまでも無い。
日本に来ても十分指名取れるレベルだな。
俺が教えたこと守って勝手にアレンジせずやっていることが大変嬉しかったよ。
帰り際、皆でご飯食べてねと言って1万B渡した。
ここで嫁と別れて在タイの友人と飲む為夜の街へ・・・・・・・・・・・・・
店が閉店するAM3:00まで飲んでいた。
ホテルに帰りAM5:30に起床しTAXIで空港へ向かう・・・・・・
店を譲渡して約7年。日本に帰国して丸6年経った。
あの店に一度でも来たことある人に出会うと何故あの繁盛していた店を譲渡したのか?と尋ねられることしばしばだ。
そんな時は必ずこう答える・・・・・「飽きたから」
「飽きた」とは生活に飽きたということだ。
タイに住みたくて渡タイしたわけだが生活していく為には収入を得なければならない。
収入を得る為に開業し休み無しで齷齪働き店を軌道に乗せた。それは夢中でできる楽しくやりがいのあることだった。
生活に飽きてきてくると休み無しで齷齪働いていることが苦痛になってきた。
こうなると銭金の問題ではなくなる。
夫婦で出した結論は日本に帰国だった・・・・・・・・・・・・・
現在日本で普通に暮らしている。
タイ時代より収入は遥かに少ないが今はそれなりに幸せだ。
あのまま店を続けていたら・・・・・・・と考えることも時々あるが後悔したことは全く無い。
今回5年ぶりにタイに行き在タイ当時から思っていたことを再び実感した。
「旅行で来ると何て楽しいところなんだ!!」
たった72時間の旅行記がこんなに長くなるとは思わなかった。
最後まで読んでくれた方々・・・・きっと良いことあるよ!