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Dutch Life 備忘録

オランダのミュージアム、コンサート、レストランなどについて記録するノート。日常的な雑記も…。

本「昭和16年夏の敗戦」

2015-05-22 07:46:23 | Book
猪瀬直樹著「昭和16年夏の敗戦」を読了。
戦前に作られた総力戦研究所では、各所から召集された若手エリートが、入手できるあらゆるデータを使ってさまざまな演習を行いました。その一つが、模擬内閣で、それぞれのメンバーが総理大臣、内務大臣、外務大臣、大蔵大臣などになり、想定された状況でどういう政策をとっていくかを考え、そうしたときの次の状況ではまたどうなるかということを繰り返し考えていくシミュレーションが行われました。
その結果でた結論が、日本は負けるということでした。
総理官邸の裏にあったこの研究所、この結論は東條総理の前でプレゼンもされたのですが、なしのつぶてで、日本は戦争へと突き進んでいきます。
本では、この総力戦研究所のこと、どのように開戦へと進んでしまったのか、東條総理のこと、研究所第一期メンバーの成り行きについて、書かれています。
ところどころ、難しい文書などがでてきて読みにくいところもありましたが、かなり興味深く読みました。
体調は良好です。


本「わたしのマトカ」

2015-05-14 09:06:28 | Book
片桐はいり著「わたしのマトカ」を読了。
映画「かもめ食堂」の撮影でフィンランドへ1か月滞在したときのことを書いたエッセイ。旅のことだけでなく、自分のこれまでの人生や現在の思いも織り交ぜながら、ユーモラスに描かれていて、とても面白く、すらっと読めました。
読んでいるとフィンランドへ行きたくなりました。ヘルシンキなら週末旅行で行けそうだけど…。
マトカはフィンランド語です。意味は、本を読んでのお楽しみに。
映画「かもめ食堂」は好きな映画なので、そのシーンを思い出したりして、楽しめました。
この本を読む人は、映画「かもめ食堂」を見たほうが二倍楽しめます。
体調は良好です。


本「二十五の瞳」

2015-05-07 10:06:02 | Book
樋口毅宏著「二十五の瞳」を読了。
以前に話題になっていて、今回やっと文庫本になったので早速購入して読みました。
小豆島を舞台にしたファンタジーと現実が絡まり合った時代が違う4つの物語が、ニジコという不思議な生物を軸としてつなぎながら、展開されます。
「二十四の瞳」という映画の製作時の様子、実在の人物のエピソードも絡められており、また東日本大震災とその後の原発事故を踏まえた寓話的啓発も入っており、なかなか良質の物語でした。
ニジコの正体についての謎解きもあるので、最後まで興味を持って読みながら、小豆島についての知識が増え、原発事故についても考えさせられ、恋愛物語も入っていますから、人間関係についても考えさせられます。
まあ軽く読めるので、電車なんかで読むのにいいかと思います。
ちょっとなかでは違和感がありましたが、小豆島で病気の末亡くなった俳人の尾崎放哉の話は、かなり印象的でした。創作も多く入っているとは思いますが、大正期の俳人で、東京帝大法学部を卒業し企業のエリートコースを進みながら、途中で退職し、離婚し、一人小豆島に流れ着き、そこで病気で亡くなるんですが、ひどい生活状態の様子や、それにもまして廃人的な彼のひどい性格が素行が描かれています。
この著者は他にもいくつか評判の作品を書いているのですが、手を出すかどうかはちょっと迷っています。
体調は良好です。

本「蒼路の旅人」

2015-04-11 08:23:51 | Book
上橋菜穂子著「蒼路の旅人」を読了。
全10巻の「守り人」シリーズの7巻目です。シリーズの主人公の女用心棒バルサや呪術師のタンダが登場しなくて、新ヨゴ皇国の皇太子であるチャグムが活躍する作品です。
以前の作品で、チャグムはまだ10歳くらいの少年でバルサと出会います。まだ幼かったチャグムがだんだんと成長し、この「蒼路の旅人」では15、6歳になっています。この成長を、いままで読んできたシリーズ作品のところどころで見知っていますから、チャグムにはとても親近感をもって読めます。
今回のストーリーは、海の国サンガルが帝国タルシュの侵攻に合い、隣国の新ヨゴ皇国に援軍を依頼してきます。この罠とわかっている依頼に、チャグムの祖父である海軍大将が送られることになり、それに反発したチャグムも帝である父の命令により、サンガル国の海域へ送られます。
父と有望な息子との間の微妙な関係、自分の想いとは別に国同士の争いに巻き込まれていき、国民の幸せのためにそれをなんとか良い方向に導くたずなを握っているために、苦難の選択をしていかねばならないチャグム。
この物語では、タルシュ帝国の王子側の事情も語られ、王子の人となりも描かれています。国同士の戦いは、一方が善で他方が悪なのではなくて、それぞれの事情があり、それぞれの個人の事情もあるということが、多音声的に語られているのが、効果的に感じました。
この「蒼路の旅人」は、次の3巻からなる「天と地の守り人」へのステップとなる作品で、早く次を読みたいと思いました。
2015年の本屋大賞が上橋菜穂子の小説「鹿の王」になったというニュースを聞きました。児童文学、ファンタジーの枠組みで語られがちな著者ですが、こうして一般の読者にも大きく広がって受け入れられて当然です。
どんどんと次の作品を読むのが楽しみです。
体調は良好です。




本「テンペスト」

2015-04-04 07:41:32 | Book
池上永一著「テンペスト」を読了。
沖縄(琉球)を舞台にした、文庫本で全4冊の長編大河ロマンです。
琉球王朝のころの話で、主人公の真鶴が、宦官の寧温と素性を偽って、琉球版の科挙である科試に挑戦し、王府に入り手腕を発揮し、一方では友情、兄弟愛、恋愛などの要素が組み込まれ、めくるめく物語が展開します。
史実にはかなり忠実のようで、欧米列強が東アジア進出をもくろみ、中国や日本との関係が変わっていく時代を、琉球王国からの視点で描かれており、とても興味深かったです。
琉球がいかに日本とはちがった文化圏で、独自の文化をもち、優雅で洗練されたものであったか感じられます。
ストーリー展開は、浅田次郎著の「蒼穹の昴」によく似ているなあと思いました。こちらは中国が舞台ですが、宦官の天才が活躍する部分や歴史に翻弄される部分などです。
ただ、「蒼穹の昴」のほうが文学作品として格は高いです。「テンペスト」は、女性が宦官に扮して誰も気づかないとか、のちに真鶴と寧温の一人二役を毎日続けるとか、ちょっと現実ばなれした部分が多いです。王宮の女性たちが住む<内>の世界でのやりとりもとてもマンガちっくで、読んでいてちょっと気が引く部分が多々ありました。
まあ、娯楽エンターテイメント小説として読むのにはいいのかもしれません。歴史の勉強にもなるし。
琉球王朝のことがよくわかったのはとてもよかったです。その点だけでもこの本を読む価値はあると思います。
体調は良好です。


本「Inferno」

2015-03-13 09:28:00 | Book
ダン・ブラウン著「Inferno(インフェルノ)」を読了。
英語版を読みました。「天使と悪魔」「ダ・ヴィンチ・コード」「ロスト・シンボル」と読んでいますが、今回はもうパターンがわかっているせいか、いまひとつでした。読みはじめたら、どんどん読めますが、内容の深みが欠ける感じです。ダンテの人生についての薀蓄、フィレンツェ、ベニスの町や建築物に関する薀蓄、そして人口爆発についてが、物語の胆でした。
私が読んだ中では、「天使と悪魔」がいちばんおもしろかったです。ヴァチカンで次の教皇を決める方法や、反物質のことなど、当時知らなかったことが書かれていて、わくわくしながら読みました。
ダン・ブラウンの本は旅行ガイド的にも読め、「天使と悪魔」を読んだときは、ローマに行きたくなりました。
昨年か、ダン・ブラウンがアムステルダムを訪れ、アムステルダム国立美術館などを見てまわっており、もしやアムステルダムを舞台にした作品を書くのでは?と言われていました。実現したら、面白いと思います。
体調は良好です。

本「スペインの宇宙食」

2015-03-05 09:12:08 | Book
菊地成孔著「スペインの宇宙食」を読了。
菊地成孔を初めて知ったのは、1990年代の後半東京のどこかのライブハウスででした。たまたま見に行ったライブにTIPOGRAPHICA(ティポグラフィカ)が出ていて、そのライブでバンドは解散を告げ、かなり熱狂的な雰囲気でした。
そして解散を告げる長い文章が載ったチラシが配られ、その文章の饒舌かつ絢爛さに、興味をもった記憶があります。
その後も頭の片隅にありながら、熱心なファンにはならず、異才な人だなと注目はしていました。
そして、この「スペインの宇宙食」というエッセイ集を2003年に刊行。そしてブレイクし、かなり知名度が上がりました。私の記憶では、「東京大学のアルバート・アイラー-東大ジャズ講義録」という本も書評などでよく見かけました。
読んでみたいなと思っていた「スペインの宇宙食」ですが、最近ふと思い出し検索してみたら、文庫になっていたので早速手に入れました。
まずは「スペインの宇宙食」というタイトルが絶妙で読む気をそそられます。中身は、いろんなもののごった煮で、いま一つな部分もあるのですが、著者のユニークさ、饒舌さ、料理への愛が溢れています。
中に短編小説が一つ入っていましたが、これは私にはまったく興味が沸かない文章でした。
この著者は、自動書記的にどんどん言葉が出てくるタイプのように感じました。中には、口から出まかせ的なこともあり、真剣に受け取ると馬鹿を見そうなこともところどころあると思います。
そして、エクリチュール(書く行為)に耽溺できるタイプなんだろうなと思います。これって才能です。
この本では、1999年から2001年あたりのエッセイをまとめていて、その頃の文化や出来事や雰囲気に触れているので、読んでいると自分の若い頃のことを思い出します。そういう点で、面白かったです。
好きな人と嫌いな人が極端に分かれる種類の文章及び内容だと思います。私は、あまり好きな文章じゃないですが、3本くらいとてもいいエッセイがありました。
同著者の他の本に手を出すかどうか思案中です。時代を思い返すという点で少し興味があります。
体調は良好です。




本「Stalker」

2015-01-31 11:03:15 | Book
ラーシュ・ケプレル(Lars Kepler)著「Stalker」を読了。
ヨーナ・リンナが活躍するスウェーデンのミステリー小説シリーズ第5弾。ずっとオランダ語版を第1弾から「Hypnose(邦題「催眠」)」「Contract(邦題「契約」)」「Getuige」「Slaap」と読んでいて、最初の2作はとても良くて、このシリーズにはまりました。
著者のラーシュ・ケプレルはペンネームで実際には夫婦が二人で共同執筆しています。
第5弾の「Stalker(ストーカー)」は半分以上の物語の主役が、これまでも重要な役割を担ってきたカロリンスカ医科大学の精神科医エリック・マリア・バルクです。もちろんヨーナ刑事も活躍します。
はっきり言って、この第5弾は駄作です。これといったサブストーリーの深みがなく、シリーズの他の作品では歴史上の事実に基づいた興味深いエピソードなどが絡んでくるのですが、そういうのが一切なく、あまりおもしろくありませんでした。
犯人もだいたい見当がつき、ノルウェイの刑事ハリー・ホーレのシリーズ「The Snowman」と同じかと思ったのですが、少し違いました。
物語の時期がこれまで冬が多かったのですが、今回は夏に始まります。そこが少し印象が違い、よかったです。
シリーズで読んでいるので、また第6弾がでたら読むと思いますが、クオリティを下げずにシリーズを続けてほしいです。
体調は良好です。


本「苦海浄土」

2015-01-21 09:32:52 | Book
石牟礼道子著「苦海浄土」を読了。
1969年の作品ですが、2004年に発行された講談社文庫の新装版で読みました。
「わが水俣病」という副題がついているとおり、水俣病を扱った作品です。
水俣の近くで詩歌を詠む文学好きの主婦だった著者が、地元で起こったこの悲惨な病に衝撃を受け、近くで見て、話を聞き、独自の文学にまとめあげたものです。ノンフィクションといえば事実に沿って書かれておりノンフィクションですが、病気になった人が心のうちを吐露する場面は作者の心も耳で聞いた部分があるようです。そのことについては「解説 石牟礼道子の世界」という文章がこの文庫には収められており、作者が方言を駆使して、水俣病患者たちの海や漁業に対する愛情を表現し、それを無残に毒の海に変えてしまった大企業そして産業社会の大きな論理を告発しています。この本が「聞き書き」のルポルタージュだと思われているようだが、そうではないということも、この文章の中に書かれていました。
水俣病については、映像のドキュメンタリーや写真などで見たことがありましたが、その凄まじい病の悲惨さについては、この本でより明らかに心に響きました。作者が病によってものが言えぬ患者のことばを文学的手法で再現しているのです。
作者の文学的言い回しが、ときおり私には読み辛いこともありましたが、絡みつくような文章が魂の叫びというか、囚われたくないものに囚われてしまった身動きのできない凪のような雰囲気を感じさせ、この本の独自さを増しているように思います。
大企業のチッソが君臨し、以前はこの会社が自慢でもあった小さな地方の町で、奇病が発生し、原因は海の魚介類だということが明白なのに、原因究明はなかなかすすまず、熊大が原因を有機水銀と発表した後も、汚染元のチッソは理由をつけて有機水銀を垂れ流し、政府の対応も遅れ、賠償も何もよくわからない初期にこれ以上は補償を要求しませんという文句がついた証文に捺印するのを条件に死亡の場合大人10万円、子ども3万円という少額で手を打たされ、胎児性水俣病についても異常な数の脳性まひ的症状をもつ子どもがこの地域で生まれているのに、その子どもの一人が亡くなって解剖で水銀が検出されるまで水俣病とは認められず何も補償はなく、病気なった人々そして家族がどんなに貧しく、肩身の狭い思いをして過ごさなければならなかったのか、こういうことが全体的に読んでわかるのはやはりこういう本でなくてはだめだなあと思いました。映像や写真で訴えられるものもあるけれど、文章でなくては伝わらないものもあるのです。
大企業の論理、利益優先の論理、政府の対応の悪さ、取り残され苦しむ個人という構図は、前世紀から繰り返されています。
「苦海浄土」には第二部「神々の村」、第三部「天の魚」があります。これらが手軽に手に入るように文庫化してほしいです。
体調は良好です。オランダは氷点下前後の気温で外は寒いです。

本「神の守り人」

2015-01-13 08:52:38 | Book
上橋菜穂子著「神の守り人」(上)来訪編(下)帰還編を2冊続けて読了。
短槍の達人バルサが活躍するファンタジー小説の第五弾、第六弾です。今回は主人公のバルサとその友人の呪術師タンダが活躍します。
また先住民族と支配民族、支配民族によって書かれた歴史、言い伝えが絡む物語です。
抑圧されている民族タルのまだ幼い少女アスラに窮地になったとき「助けて。悪い人たちを殺して」と強く思うことで周りの人々を殺戮してしまう能力が宿ります。アスラには少し年上の兄チキサがいて、彼は妹を守って逃亡の旅にでます。
ここで思い出したのが、アメリカ大人気だったTVドラマシリーズ「HEROS(ヒーローズ)」に登場するアレハンドロとマヤの兄妹。年齢は少し上ながらも、妹のマヤに念じることでおこる殺戮能力が宿り、二人でメキシコから逃亡します。妹が無垢に描かれ、兄はとても妹思いで、妹にその力は使わないでほしいと嘆願するところや、妹自身は殺戮時にはコントロールがきかないことなどよく似ています。
本の最後には児玉清さんの解説があり、「実は、僕がSF物やファンタジー物といわれる物語が余り好きでなかったのもこの点にあった。リアリティが無いと物語に喰いついていけなくなってしまうのだ。」とあり、私も同じだったなあと思いだしました。SFやファンタジーはほとんど読んだことがなく、避けていたのですが、上橋菜穂子にははまってしまったのです。
児玉さんも最初に読んだのは『獣の奏者』だそうで、数ページ読み進めるうちに物語にのめり込んでしまったそうです。これも私も同じで、きっかけは『獣の奏者』でした。『獣の奏者』のほうが作者の最近のシリーズなので、もっと洗練されているような気がします。まずは一冊と思う人は、『獣の奏者』をおすすめします。
体調は良好です。