SDGs(持続可能な開発目標)とは、持続可能な社会を実現するために2015年に国連で採択された、2016年から2030年までの世界共通の国際目標です。
SDGsの前身は、2015年までに達成すべき目標としてまとめられたMDGs(ミレニアム開発目標)ですが、これは主に途上国の人々に向けた施策であり、結果として貧困や飢餓に苦しむ人々の生活環境を改善しました。
しかし、その一方で、MDGsの達成状況から、様々な格差が浮き彫りとなり、「取り残された人々」の存在が明らかになりました。
そこで、格差をなくす「誰一人取り残さない」ことをキーワードとし、MDGsの取り組みをさらに強化すると共に、先進国を含めたより広範な社会問題や環境問題の解決をゴールとしたSDGsが採決されることとなったのです。
現在、世界は、飢餓や人権侵害、経済格差、気候変動に伴う自然災害など様々な問題に直面しており、これらは、私たちの社会とビジネスの持続性の脅威となっています。
これらの問題を解決するため、SDGsでは持続可能な世界を目指すための17の目標、目標を実現するための169のターゲット、取り組みを評価するための244(重複を除くと232)の指標が設定されています。
SDGsは全ての人に関係があり、持続可能なビジネスを実現するための目標でもあります。
ビジネスの成長や持続可能性を脅かす要因となるのは、ESG問題と呼ばれ、自然災害を含む環境問題(Environment)、社会問題(Social)、組織統治問題(Governance)から成ります。
例えば、環境問題(E)は、事業拠点の被災や資源価格の高騰、社会問題(S)は、顧客の購買力低下や市場の縮小、組織統治問題(G)は、法的規制の強化による企業の自由の制限といった形で、ビジネスの成長を脅かします。
近年、ビジネスの世界でもよく用いられる「VUCAの時代」。
VUCAとは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取った造語であり、予測が難しく、変化が著しい新たな社会状況を指します。
世界のグローバル化、テクノロジーの進化ゆえの弊害に、様々な環境問題、社会問題が付随し、これまでの当たり前が全く通用しなくなっています。
そんな先の見えないVUCAの時代を生き抜く術として求められるのは、多様性・柔軟性・可変性。
今あるものから正解を見つけ出すのではなく、自分自身の、自分たちのよりよい形を見つけていく。そのためには、様々な関係性の中で、対話を繰り返し、時にはぶつかり合いながら、最適解を導き出していく必要があるのです。
予測不可能な時代の中で、企業に求められる''新しい働き方''、それは、ただ法令遵守に捉われるのではない、自社に応じた柔軟な働き方です。
では、この働き方改革の中で、ESG問題をどのように捉えていけばよいのでしょうか。
そのポイントは、ESG問題を社会のニーズと捉え、市場としての可能性を見出すことにあります。
ESG問題は、いわば「みんなの困りごと」の集合体、つまりニーズの集合体と言えます。眼前の顧客のニーズだけでなく、より広範囲なESG問題がニーズとなる時代であり、そこにソーシャルビジネスとなりうる新しいビジネスの可能性が存在するのです。
SDGsの実践で言えることは、「決まった型はない」ということです。
SDGsを過度に意識すると、内容の壮大さに困惑し、身動きが取れなくなってしまいます。重要なことは、単なるトレンドとして迎合するのではなく、自社に合った適切な目標を選んで取り組み、社会と自社の持続可能性のために、主体的にSDGsを実践することです。
企業理念やノウハウ、社会的信用、ネットワークといった、無形資源をも評価し活用することが必要であり、自社の「らしさ」を活かすこと、つまりパーパス(存在意義)が重要です。
決まったやり方がないからこそ、自社が社会に提供している「本質的価値」とは何か、自分たちが届けたいものは何かを問い直すことが必要なのです。
近年、働き方改革やSDGsと深く関係するものとして、ウェルビーイングの概念が重要視されています。
1946年に署名された世界保健機関(WHO)憲章の前文によると、ウェルビーイングの概念について、「健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあること」と定義されています。
企業の価値向上に向けて、個々人のウェルビーイングを高めていくことが、多様な人材を取り込む術となります。
例えば、価値観やライフスタイルが異なる個々の能力を発揮できるような環境を整えたり、意欲がありながら就労できていなかった高齢者層や、家事や育児、介護といった家庭の事情と仕事を両立したいと考えている人材等を積極的に取り込み、健全かつ意欲的に働ける環境を作り出す必要があります。
こうしたウェルビーイングの実現に取り組むことは、企業にとってもメリットがあります。
ウェルビーイングの取り組みは、働き手にとって働きやすく、やりがいを感じられる企業を整備すること、つまり、就労者にとっての魅力となり、新たな人材獲得や定着率の向上に繋がります。また、仕事にやりがいを感じられるようになることにより、従業員の業務パフォーマンスが上がり、生産性向上や企業としての業績向上が期待できます。
さらに、ウェルビーイングに積極的に取り組むことは、企業のイメージ向上にもなります。従業員の健康や価値観を大切にする会社というイメージが浸透し、金融機関や取引先、顧客等、様々なステークホルダーからの信頼獲得に繋がるのです。
これは、近年、人々の意識が心身の健康や、やりがいといった内的側面に高まっていると言えるのではないでしょうか。
このように、ウェルビーイングを向上させることが、働き方改革の一手として個々の働きがいや、やりがいとなり、SDGsの目標達成に繋がっていきます。
SDGs、ESGを単なるリスクではなく、むしろ変革の機会と捉え、実践を積み重ねていくことが自社が生き残る術となり、結果として、社会問題の解決の一途となるのではないでしょうか。
企業の中に、ウェルビーイングの視点を取り入れていくことで、多様な価値観をもつ個々人が歩み寄り、皆が身体も心も充実感・幸福感を得られる、そんな働き方ができる社会を目指していきたいと思います。
引用:ユニセフ協会「SDGsって何だろう?」
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