
年末に録り溜めていた映画をイッキ観した。
前評判ではケッコーな残酷ホラーと聞いていたので
カミさんが出かけて留守になったチャンスを活かしての視聴となった。
彼女は最近“あまりに残酷なのは観れない”というスタンスなので
アニメの「マルドゥック・スクランブル」とか「ヘルシング」さえも
一緒に観ていて心配になってしまった。
で、雑駁な感想としては「1」と「2」では
まるっきり感触が違う作品になっている。
監督も同じで登場人物も同じであるにもかかわらず、だ。
「1」 よくあるスプラッター&サイコ・ホラーのパターンで
殺人鬼一家の家に拉致された訪問者の悲劇を描いたものだ。
狂気の笑いとスプラッターが織りなす地獄絵図だ。
系としては「ホステル」シリーズに近いかな。
「2」 上記殺人鬼一家が警察に追われながら
殺人を重ねていく70年代のアメリカンなロード・ムービー仕立てだ。
非常に乾いた感触で、音楽の選曲が抜群に良いのが特長。
「バニシング・ポイント」とか「ナチュラル・ボーン・キラーズ」あたりに近い。
監督のロブ・ゾンビ(すげーイカシた名前でしょ?)は
アメリカのヘビメタ(インダストリアル?)系のミュージシャンで
自分は彼のデビューとなるバンド「ホワイト・ゾンビ」からずっと聴き続けていた。
彼は結構な映画&アニメおたくで、ヘビメタ・ナンバーのSEに
日本エロ・アニメの黎明期を支えた傑作「うろつき童子」のセリフなんかもサンプリングしていた。
そんなロブが満を持して作ったのが「1」だ。
当時の彼の志向性が見事に結実した映画になっていて、
ホラー映画の“いいとこどり”をしたような楽しい?作品になっている。
しかし、「2」で化けたのだ。
多くの人が言っているように“傑作”と呼んで差支えないだろう。
もうオープニングからして素晴らしい。例の殺人鬼一家が
警察に囲まれて一斉射撃の中を逃げきるところから物語は始まる。
逃げる道すがら老女を殺して車を奪うところで出演者とタイトルが出るのだが、
バックには牧歌的なサザン・ロックが流れている。
どピーカンの炎天下の中、ナイフで老女を刺し殺す場面が
ブレブレのストップ・モーションで流れていく。
なぜか「イージー・ライダー」の一場面をも思い起こされる。
残酷なのに、ミョーに軽妙なのだ。
乾いたテキサスという土地も非常に効果的に映されている。
2作品目でこんなにシブイ?映画を作ってしまうなんて!
やはり“おたく”の拘りは凄いと言うべきか。
惜しむらくは「1」の続編であったことだ。
別のタイトルで作っていたら、もっと別の評価が下されたかもしれないし
ホラー・ファン以外の人にもアピール出来たかもしれない。
殺人鬼一家も「1」で見せた“顔の皮剥ぎ”こそ「2」でも健在だったものの
今度は一応“殺人”にも目的や理由が出来てしまっている。
“逃げるために邪魔なもの”といった理由だ。
これは“ナニを考えているか分からない不気味な殺人者”から
一挙に人間味が出てしまったと言える。
もちろん理不尽な暴力も至る所に出てくるのだが、
隙をつかれて、拉致した獲物から反撃されたりもしている。
最後なんかは、兄を殺された復讐心で殺人鬼一家を追い詰める警部と
どっこいどっこいの感情移入をしてしまう有様だ。
いや、むしろあの殺し屋(トレホ!)を雇ってまで追い詰める警部よりも
ひ弱に映るあたり、こっちの一家を応援してしまう人もいるかもしれない。
…ぐらいの演出なのだ。
最後のシーンからエンド・ロールに移行する流れも傑作の佇まいだ。
ロード・ムービー・ファンならホラーというジャンルに惑わされることなく
ぜひ観てみたら?とオススメ出来る“珠玉の”名作だと思う。
ちょっと褒めすぎか?