心に響く、秋の蝉しぐれ

穏やかな春の風景。川面に浮かぶ小さな舟。

乗っている男が空を見上げるようにしてゆっくりと仰向けになる。

ゆったりとした川の流れは、まるで
人の世で何が起こっても変わらずに流れる時間のようだ。

やがて風景はセピア色に染まり、エンディングのテロップが
スクリーンに流れだす。


・・・終わった。

場内が明るくなり、オレはロビーに出る。
なんとなく空気が軽い。

映画館の外にでて久しぶりの秋晴れの空を見上げると
まるで遠いところへ長く旅をしてきたような疲労感を覚える。

と同時に、

その遠いところが一気にもっと遠いところにいって
しまうような、さみしい感覚。

見終わった後にこんな感覚になった映画に出会ったのは久しぶりだ。

それは、この秋公開の映画「蝉しぐれ」


この映画は藤沢周平の同名小説を映画化した作品。

物語の舞台は藤沢氏の故郷、山形の庄内藩をイメージした架空の小さな藩
『海坂(うみさか)藩』。

物語の中心人物はその藩の下級武士の子、文四郎と彼の家の隣りに住むやはり
下級武士の娘、おふく。

淡い恋心を持つ幼なじみの二人が、社会や運命に翻弄され、引き裂かれ・・再会
そして永遠の別れに至るまでの物語。


「文四郎さんのお子が私の子で、私の子どもが

 文四郎さんのお子であるような道はなかったのでしょうか・・・」

「この世に、後悔しない人などいるのでしょうか

                   はかない世の中」


誰もが、もしあの時、○○していれば、自分は違った人生を歩んでいたかも
ってことはあるのでは?

映画の中で文四郎もおふくも、そう思いながらも、
そんな自分の運命を受け止める。
そんな二人の生き方が、
せつなく、哀しく、それでいてどこかすがすがしい。



自分はあまりにも物語の中に引きずり込まれすぎて
この映画を見終わった後に、感動したとか良かったとかを
考える余裕はなかった。

胸がいっぱいで、

できればオレも冒頭に書いたこの映画のラストシーンの
文四郎のように舟にゆられて、空を流れる雲を眺めたい気分だった。


20年、人を想いつづけたことはありますか。

ずっしりとした見応えのある映画を見たい方にはお薦めしたい.


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