(み)生活

ネットで調べてもいまいち自分にフィットしないあんなこと、こんなこと
浅く広く掘っていったらいろいろ出てきました

( ´艸`)☆更新履歴☆(´~`ヾ)

(ガラスの・Fiction)49巻以降の話、想像してみた*INDEX (2019.9.23)・・記事はこちら ※ep第50話更新※
(ガラスの・INDEX)文庫版『ガラスの仮面』あらすじ*INDEX (2015.03.04)・・記事はこちら ※文庫版27巻更新※
(美味しん)美味しんぼ全巻一気読み (2014.10.05)・・記事はこちら ※05巻更新※
(孤独の)孤独のグルメマップ (2019.01.18)・・記事はこちら ※2018年大晦日SP更新完了※

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ep第21話【架空の話】49巻以降の話、想像してみた【勝手な話】

2015-06-25 14:28:27 | ガラスの・・・Fiction
ep第20話←                  →ep第22話
********************
「着いたぞ、マヤ」
呼びかけになんの反応もない助手席に真澄が目をやると、
そこにはスース―と寝息を立てるマヤがいた。
"ここしばらく働きづめだったからな"
亜弓の屋敷を後にして伊豆の別荘に向かう高速で、
寝ててもいいんだぞという真澄の言葉にかたくなに
大丈夫ですっ
と起きていたマヤだったが、
いつしか日も沈み、別荘の外観が見えてきたことで
安心したのだろう、一気に疲れがマヤに眠気として襲ってきた。
"本当に加減を知らない子だ、君は"
優しく頭を撫でた後、真澄は助手席側に回り、
ゆっくりとマヤを抱き上げて屋敷へと連れて行った。

「あれ?ここ・・・・いつの間に」
私寝ちゃったんですね、といってマヤがソファから体を起こしたのは、
伊豆について1時間ほど経った頃だった。
「よく眠れたか?マヤ」
声をかける真澄は一足先にシャワーを浴び、部屋着に着替えていた。
「お湯をはっておいたから、ゆっくり入ってくるといい。長時間座りっぱなしで
 疲れただろう」
真澄の言葉に、半分まどろみながらマヤは浴室へと向かっていった。

"マヤは今の関係に満足しているのだろうか"
紆余曲折を経てマヤと恋人関係になって数か月、
自らの責任とはいえ公にできない関係を強いているという思いは
常に真澄の心の奥深く根をはっていた。
個人的にはマヤとの関係を隠すつもりはないが、マヤの女優としての人生を
思うと、結果として周囲に明らかにすることが出来ないのが現実でもある。

『・・・結婚とかしちゃ、だめなのかな・・・』

今日の亜弓とマヤの会話、席を外していた真澄が部屋に戻ろうとした
その耳にふと届いたのは、消えそうなくらい小さなマヤの言葉だった。
"マヤ、君の本当の幸せは一体なんだ?"
演じるために生まれてきた少女、舞台の上で誰よりも輝ける天性の女優
俺は君が幸せになるためだったらどんなことでもする覚悟も自信もある。
しかし君の人生にとって、俺の存在は果たして・・・・。

「あがりました~~!長くなっちゃってごめんなさい!」
風呂上りの上気した顔で、マヤが元気に部屋に入ってきた。
既に眠気も醒め、すっきりした様子だ。
「冷凍庫にアイスがあるから、食べていいぞ」
わ~~~いとキッチンに向かうマヤの様子は、いつもと変わらない。
"俺だけか、どうかしてるのは"
開けた窓から流れ込む晩夏の風は少し秋の色合いを帯びていた。
「ちょっとテラスに出てみないか?」

**
「やっぱりここは空がきれいですね。星がきれい!」
伊豆で一緒に星を見よう・・・その言葉が不安定だったあの頃の自分にとって
どれほどの支えになっていたか、天空の輝きを数えながらマヤは今の幸せに
浸っていた。
そしてそんなマヤの背中をカウチにもたれながら真澄はじっと見ている。

"速水社長はどうお考えですの?北島マヤの結婚について。"

真澄は、亜弓の家を出る間際に、亜弓が自分にこっそり投げかけた質問を
思い返していた。
以前マヤのマネージャー、大原にも同様の質問をされたことがある。
その時は女優としてのマヤの成功を優先させると答えたし、その言葉に偽りはない。
しかしこうして東京から離れ、マヤと二人きりで過ごしていると、
仕事の仮面が少し不安定になってくるのかもしれない。
マヤと演劇が切っても切り離せないものであることは明白だし、
自分も、演技に情熱を燃やすマヤを見ることが何よりも好きだ。
しかし時にその瞳に自分がちゃんと映っているのか不安に思う気持ちがわかないわけではない。
もし許されるのなら、このままずっと二人で、二人だけで・・・

「夜風が冷たくなってきた。寒くないか?マヤ」
自分の心の中の妄想を振り払うかのように、無理やり現実世界に頭を切り替えようとするように
そろそろ部屋に入るか、と声をかける真澄に対し、
マヤは黒髪をゆるくなびかせながらゆっくりと振り返り、
「う~~~~んと」
と言うや否や真澄の膝の間にもぐりこみ、そばのブランケットに真澄と一緒に
くるまった。
「!?」
「もう少し。星を見ていたいです・・・・・一緒に・・・・」
マヤを背中から抱きしめる格好になった真澄からはマヤの顔は見えないが、
その真っ赤になっている耳同様、赤く染まっているのだろうと思うと愛おしさが高まり、
思わずギュッと抱きしめた。
「・・・・すごく分かります。」
唐突なマヤの言葉になにがだ?と尋ねると、
「速水さんの言ってたこと。」
とマヤがつぶやいた。
「俺が言ってたこと?」
「ええ。ここに来ると、本当の自分が取り戻せる気がする。」
本当に、ここに来ると、自分の気持ちに素直になれる気がする
「私、今はドラマの事とか、映画の事とか、とにかく演技の事で頭いっぱいで、
 速水さんの仕事の事とか全然分かってないし、何もできないけど、
 それでも速水さんが私の事を一番に思ってくれていること、私分かってます。」
突然のマヤの言葉に、まるで先ほどまでの自分の不安を見透かされていたような
驚きを感じた。
「でもやっぱり、普段の生活ではどこか緊張しちゃって、気付かないうちに速水さんとの間に
 距離を置いてしまっているのかもしれない。」
そんなつもりはないんですけどね!と首だけ振り返って真澄の顔を覗き込んだ。
「自分は大都芸能に所属している女優だし、速水さんは社長さんだし、
 周りの人に知られちゃいけないって気を使ってると、いったいどこで気を抜いたらいいか
 よく分からなくなってきちゃって・・・・」
でも、こうして伊豆に来ると、ただの北島マヤと速水真澄として一緒に居られる
それがうれしいんだとにっこりと話すマヤの声を聞いていると、これまでの漠然とした
不安感がまさにそれだったのだと真澄は気づかされた。
「俺の方こそーーー」
君に優しい言葉の一つもかけてあげられず、仕事の鬼の冷徹社長として
接しなければならない日常生活、もっと会いたいと思っても
なかなか互いのスケジュールを合わせることも難しい毎日。
21歳という一番恋をしたい年頃に、我慢を強いている自分を改めて悔やむ。
「悪いって思わないで下さいね。」
私全然気にしてませんから、とマヤは言った。
「速水さんがやることは全部私のためを思ってのことだって、ちゃんと分かってますから。
 そりゃ会えなくてさびしいって思う時もあるけど、こうしてわざわざ時間を作って
 伊豆にも連れて来てくれるし、仕事も私の事を考えて選んでくれてる。
 普段のこんな私も、演じている私も、両方ともしっかり見ていてくれる人は
 速水さんしかいません!それに・・・」
こうしている時は、どんなにか幸せーーー
消え入るようなか細い声で、自分の体に回された真澄の腕をさらに強く
自分にまきつけるようにしながら
マヤはいつかの阿古夜のようにそっと発した。
「・・・マヤ、君は俺の事が好きか?」

**
"なんだか速水さん、疲れているみたい"
お風呂から上がったマヤは、お酒を飲む真澄の様子がどこか沈みがちな事に気が付いた。
"ずっと働きづめで、今日なんて長時間運転して、そりゃ疲れてるにきまっているわよね"
それなのに自分はすっかり車で寝てしまい、お風呂まで沸かしてもらって、でも・・・
真澄が用意してくれたアイスを食べながら、真澄の表情が疲れによるものだけではないような
気がしていた。
「テラスに出ないか?」
真澄に誘われるまま外にでたマヤは、頭上に広がる星空を見上げながら、
かつて梅の里で見た星、船上で見た星、そして互いの思いを確認しあった日の星空を
順に思い返していた。
"思うだけではだめ。ちゃんと伝えないと"
自分の後ろにいる真澄が、今一体なにを考えているかは分からない、
その原因が自分かどうかも分からない、だけど私はそんな気持ちも全てまとめて
速水さんのために出来ることをやってあげたいーーーー
速水さんのため?違う、自分のため。
「寒くないか?」
部屋へ戻ろうと言いかけた真澄の言葉に、マヤの視点がピタリと止まる。
"もう少し・・・・このままで・・・・"
そう思った次の瞬間、マヤの体はするりと真澄のカウチに滑り込んでいた。
もう少しこうして、速水さんのあったかさを感じていたいから・・・
真澄の温かな胸に抱かれていると、ふとマヤの頭の中に阿古夜のセリフが浮かんできた
こうしている時は、どんなにか幸せーーー
今、間違いなく私は幸せだ・・・・

「君は俺の事が好きか?」
「・・・・はい。」
真澄の手をギュッと握ると、マヤは後ろを振り返り、真澄の目を見つめると改めて
「好きです、速水さん。」
と告げた。
「・・・・本当か?マヤ」
マヤの頬をなでながら、どこか切迫した表情で真澄が再び問う。
「はい、速水さん。私あなたの事が好きです。」
まっすぐ返すマヤの言葉にためらいはない。
「俺は・・・・俺は君を幸せにできているか?」
何度答えても真澄の瞳の陰りは消えるどころか、更に思いつめたように語気が強くなる
「俺は・・・・君に本当にすまないことをしてきた。どんなことをしても償えないようなことも・・・。
 そんな俺でも、君は好きだと言ってくれるのか?
 そんな俺が、君と一緒にいることは、君にとってしあわ・・・・」
真澄の抱える心の闇を溶かすように、マヤは真澄の言葉を唇で封じた。
「・・・・・・・」
「・・・・・・・幸せです、私。こうして速水さんが心を開いて、
 その本心に触れることができる今がとても幸せ。」
しばしの沈黙ののち、再び目を合わせたマヤの瞳は黒く濡れ光っていた。
真澄の不安は、自分に対しての負い目だったのだ、それが分かったマヤは
優しく包み込むように真澄の首に両腕を回した。
「速水さんは、どうですか?幸せですか?」
私と一緒にいて、幸せに感じてくれますか?今の私のように・・・
「・・・・信じられないんだ」
マヤの胸に顔をうずめるように強く抱きしめた真澄は、吐き出すように言葉を発した。
「俺なんかが、幸せになることを望んでいいのか。
 これまでいろいろな人を傷つけてきた。
 もちろん仕事として、必要な事もあっただろう。しかし、紫織さんや
 君に関しては、全くもって自分の責任で取り戻せない不幸に突き落としてしまった。
 全て俺のせいだ。
 それなのに今こうして、君を胸に抱き、君に好きだと言ってもらえる、
 そんな資格、俺にあるのか。・・・」
この幸せは、現実なのか・・・・・
「よく分からないんですけど・・」
マヤの拍子抜けするような声に、真澄は顔を上げた。
「速水さんが幸せじゃないと、私も幸せじゃないから、
 だから速水さんには幸せになってもらわないと困ります」
そう言ってぷっとほっぺたを膨らませたマヤの顔に、思わず真澄はふきだした。
「・・・そうか、俺の幸せは君の幸せか。」
「そうです!私は今、速水さんと一緒に居られてとっても幸せだから、
 速水さんもそうだといいなーって・・・・、そう思ってるんですけど・・・。」
そこまで言ってマヤは、自分はなんと恥ずかしいことをさっきから大きな声で
言っているのだろうという事に気が回り、一気に照れが顔に湧き上がってきた。
「・・・・・愛しているよ、マヤ」
悩むことなどなかったのだ、ただその都度、思う事をそのまま口に出して伝えれば良かったんだ。
「俺は君を幸せにしたい。なぜなら・・・」
君の幸せは俺の幸せなのだからーーー

重ね合わせた大小の指は、時に言葉より饒舌に気持ちを伝えあう。

**
"本当に元気だな・・・"
これが若さか、とは言いたくないが、という気持ちで真澄は波と戯れるマヤの姿を
少し離れた場所から眺めていた。
今朝は少し遅めの起床となった二人は、陽が高くなる前に海に出たいという
マヤの希望を叶えるため、浜辺へと出ていた。
ひとしきり砂の鳴る音やカニと遊んだりして過ごしたマヤは、
来週からは山籠もりだからと、波打ち際まで出て遊んでいる。
絶え間なく打ち寄せる波と追いかけっこをするようにはしゃぐマヤを見ながら、
真澄はこれからの事を考えていた。
"マヤ、君を縛り付けるようなことはしたくない・・・だが・・・"
一つの仕事の成功は、次の仕事へとつながる。
これから先、きっとマヤには更にたくさんのオファーが舞い込んでくることだろう。
芸能事務所の社長として、北島マヤをどう売っていくかは常に最重要懸案事項であることに
違いないが、同時に恋人としての自身のエゴも隠しようもなく存在する。
今までは憎まれ役に徹していればそれでよかった。
君の反抗心をたきつければ、それで君は必ず結果を残してきた。
意図的に君を挑発することは、同時に自分の気持ちを隠すための隠れ蓑でもあった。
しかし今は・・・・
「・・・・っうわっ!! な、なにするんだ、マヤ!!!!」
突然真澄の視界が歪み、一瞬息ができなくなった。
「・・・・うぎゃはははは!!だって速水さん、せっかく海に出ているのに
 なんだかつまんなそうなんだもんっ」
カニを獲りたいからと持ち出したバケツで、マヤが思いっきり真澄に水を浴びせたのだ。
「速水さん、水も滴るいい男です!」
全身ずぶ濡れの真澄に対し、けらけら笑いながら喜ぶマヤ。
「・・・俺を誰だと思っているんだ?」
ぴったりと顔に張り付いた髪の毛で、真澄の表情はうかがい知れない。
「ええ・・・っと・・・・」
「言ってくれていいんだぞ。封印したあだ名でもなんでも。」
「・・・・冷血漢の仕事の鬼・・・ゲジゲジで血も涙もないヤツ・・・・」
「分かってるじゃないか」
次の瞬間、逃げようとするマヤを一足早く捕まえると、強引に抱え込み、
そのまま海へとダイブした。

「・・・ははははは」
「ん?何がおかしいんだ?」
笑ってるんじゃありません、と言いながら息も絶え絶えにマヤは
速水さん・・・無茶しすぎ、と続けた。
「最初にやったのは君だぞ。お陰でこんなに濡れて、砂まみれだ。」
逃げるマヤを海に投げ込んだ真澄は、返す刀でマヤに引きずり込まれ、
結局二人して服を着たまま海の中で格闘を繰り広げることになった。
「大人気ないです、速水さん。」
「そうだな。少しはしゃぎすぎた。」
ここまでくればどうせ一緒だと、びしょ濡れの服のまま砂浜に寝転んだ真澄とマヤは
ふと目を見合わせると、互いのあまりにひどい恰好にどちらからともなく
笑い出した。
「とてもあの大都芸能の社長には見えませんね。」
「そっちこそ。絶世の天女様はどこにいった。」
「目の前にいますよ」
「・・・・見えんな」
再び笑い出したマヤを胸に抱くと、上半身を起こしながら
「昨日君は、正直に何でも言ってほしいと言っていたな」
と声をかけた。
「・・はい。速水さんが何を考えているか、ちゃんと知りたい。」
「それならば君も、正直に答えてくれるか?」
「もちろん!ていうか私はいつだって正直です。」
「そうか?その割には紫のバラの人の正体を知っていることは
 ずっと隠していたようだが・・・」
「それは!! だって・・・」
私が気づいたって知ったら、もう送ってくれなくなると思ったから・・・それに
「分かってるよ。君の気持ちは。」
それに紫のバラに関しては、自分の方がずっと隠してきたことだ。
「すまない、マヤ」
唐突な謝罪に、マヤはびっくりして真澄の顔を凝視する。
「俺は今まで女優を商品としてしか見ていなかった。
 商品として、どうやって売れば利益がでるか、
 旬の内にどれだけ稼げるか、そういう目でしか見てきたことがない。」
しかしだからこそ、的確にこの業界で実績を上げてきたのも事実である。
「君に関しても、そういう目で見てしまう事があるかもしれない。」
女優・北島マヤーーー紅天女女優としての肩書がありながら、
そのどんな役でもたちどころに憑依してしまう天性の才能・・・
「俺は君が13歳の頃からずっとそばで見守ってきた。だからこそ、
 君にとっての演劇がかけがえのない情熱の源であることを知っている。」
この小さな体に宿る演劇への燃えるような思いが、俺をひきつけてやまないんだ、
しかし・・・・
「もしこれから先、君が演劇か俺かどちらかを選ばなければならなくなったら、
 君はどっちを選ぶ・・?」
「え?」
思いもよらない質問に、マヤは口ごもる
「・・・・・いや、すまない。変なことを聞いた。忘れてくれ。」
そういって無理やり笑ってやり過ごそうとする真澄の噛み殺したような苦悩が
口の端に残っていることに気づいたマヤは、
「らしくないですね、速水さん。」
と鋭く射抜いた。
「言ってくれないんですか、いつもみたいに高飛車に。」
俺は欲しいと思ったものは全て手に入れるーーー
「女優の私も、普段の私も、欲しいなら両方とも手に入れるのが速水真澄でしょ?」
その顔は完全に大人の女性のものだった。
その迷いのない目に、真澄は自分が北島マヤをあなどっていたことに気づかされる。
"君はいつからそんな顔ができるようになったんだ"
「・・・・ふ、そうだな。そうだったな。欲しければ両方手に入れる。
 それが俺のやり方だ。」
じゃあ改めて言わせてもらう、と真澄はマヤを強く抱きしめた。
「俺から逃げられると思うなよ。女優としてのお前も、素の北島マヤとしても、
 お前は一生俺のものだ。」
二度と手離しはしないからな・・・覚悟しろ。


ep第20話←                  →ep第22話
~~~~解説・言い訳~~~~~~~~
いちゃいちゃラブラブするのかと思いきや、
もんもんしてしまいました、真澄さん。。
(ほんとはもっともんもんしていたのですが、
さすがにイラついたので削除しました)
それにしてもこの速水さん、いわゆる
「ワタシと仕事とどっちが大事なの!?」
って事言っちゃってますよね。女々しすぎたので
後半俺様です。
私の書き方として、目の前に映像があって、
それを文章で表現している所があるので、
自分では分かっているんだけど書いてない描写が
多々あると思います。すみません。
こういう時、絵が描けるといいのになと思います。

次の話からはまたしばらくフィクションメンバーに
よるオリジナルストーリーが続くでしょう。
~~~~~~~~~~~~~~~~


ep第20話【架空の話】49巻以降の話、想像してみた【勝手な話】

2015-06-22 00:28:15 | ガラスの・・・Fiction
ep第19話←                  →ep第21話
********************
「これは・・・・いったい何だ?マヤ」
マヤのマンションに帰ってきた真澄は、ダイニングテーブルの上に置かれた
謎の茶色い塊に目をやりながらひとり呟いた。
「あ、おかえりなさ~い、速水さん・・・って、あ!!!それは!!」
ちょうどシャワーを浴びて出てきたマヤが、その視線の先に気付き
慌ててその塊を抱える。
「何かのおまじないか?」
ネクタイを緩め、上着をハンガーにかけながら真澄が
マヤに声をかけた。
「ひどい!!一応これ・・・・」
・・・・マグカップです・・・というマヤの声は最後まで聞き取れないほど小さい。
「マグカップとは・・・・」
飲み物を入れて飲むものだよな、とどこに液体がたまる部分があるのか
分からない塊に目をやる。
「初めて作ったから!!今はもっとちゃんとしたヤツ、焼いてもらってます!!」
いーだと真澄に悪態をついてマヤはその塊を
部屋の隅に持って行った。
「少しはうまくなったのか?」
マヤは次に出演する映画のため、陶芸教室に通っている。
「クランクインはいつだったか?」
「来月、9月頭からです」
薪割りなら得意なんだけどな~と言いながら、自分の作ったいびつな塊を見つめる。
「あと半月か・・・・」
私は別に、陶芸の先生役じゃないから下手でもいいんです、と言い訳をしながら
真澄に飲み物を用意する。

来年5月公開予定の映画
『微風(そよかぜ)のかたち』
是永幸秀監督注目の最新作である。
是永監督はおととし、フランス国際映画祭で新人賞を受賞し一躍時の人となった。
風景を切り取った穏やかな人物描写に定評のある新進気鋭の監督だ。
この映画でマヤは、山奥の窯で黙々と作品を作り続ける陶芸家(師匠)の弟子、あかね役を
演じる。
「いくら弟子とはいっても、あまりに手付きが不器用だと差し障りがでるぞ。」
ぎくりと肩をすくめるマヤの背中に、高校時代の美術の成績を思い出した真澄は
思わずクックックと笑いをもらす。

「ドラマの方は順調なようだな」
現在放送中のマヤ出演ドラマ『ひと夏のままで』も、今や空前のブームとなり、
テレビや雑誌で特集が組まれるほどのドラマに成長していた。
柊あい演じる主人公友芽の、どんな時でもあきらめない前向きな演技が好評で、
さらに今放送回ではとうとうマヤ演じる親友郁子の
友芽への秘められた愛情が明らかとなり、
一気に視聴者を引き付けている。
「はい。私は来週でオールアップです。」
視聴率も好調で、当初の予定だった全11話が急きょもう1話追加となり、
最終回は2時間スペシャルとなることも決まっていた。
その撮影に今月末まで参加したのち、すぐに次の映画のクランクインが待っている。
まさに寝る間もない忙しさだ。
「体は大丈夫か?スケジュールがつまってほとんど休みが取れていないだろう。」
いたわりの言葉をかける真澄に、自分は大丈夫だと笑顔で答える。
「こんなにいろんなお芝居をさせてもらえて、私本当に幸せです。」
そう笑顔で言った後、そういえば・・・と真澄に真剣な目を向けた。
「あの約束、どうなりました?」
「え?」
「あの約束です!紅天女!」
今年1月~3月の『紅天女』は、来年もまた上演されることが既に発表されている。
上演権保有者としてマヤは、真澄に対し条件を出していた。
「亜弓さん、承諾してくれました?」
来年の『紅天女』はマヤが演じる。その代わりその翌年は姫川亜弓の『紅天女』を上演すること、
それがマヤが真澄に出した条件だった。
昨年の10月の試演後、すぐに入院した亜弓。
11月に月影千草から正式に紅天女を継承したマヤはその足で亜弓の病室を訪ねた。
そして手術直前の亜弓に、紅天女を演じてほしいとお願いした。
その段階ではまだ手術によって亜弓の視力が回復するという保証はなく、
最悪の事態も予想された。
しかしマヤは全くそんなことを考えてはいなかった。
亜弓の手術は必ず成功する、亜弓の視力は戻る。
マヤはそう確信していた。
「はっきりとした返事はまだもらっていない。」
マヤに断りを入れて煙草に火をつけた真澄は、
「今度、亜弓君の所に行こうか?彼女も君に会いたがっていたよ」
と言った。
「え!亜弓さんもう東京に戻ってきてるんですか?」
マヤが立ち上がって叫んだ。
「ああ。ついこの前まで海外で静養していたようだが一旦帰国しているらしい。
 またすぐに海外に発つようだから、その前にもしよければ一度会ってみてはどうだ?」
4月に別荘から姫川の屋敷に戻ってきた亜弓は、年内いっぱいの休養を
海外で過ごすため、その候補地を転々と探していたらしい。
「会いたいです!でも私も来月からはロケで東京を離れるし・・・・」
スケジュール大丈夫かな?というマヤに、大原くんには話をつけているから大丈夫だろうと
真澄は答えた。
「映画撮影前のどこかのタイミングで1日休みを入れてもらった。」
亜弓とも調整して、大原から追ってスケジュールの連絡をすることを告げると真澄は、
「その日の夜、久しぶりに伊豆でも行かないか?」
と続けた。
来月からは山籠もり、その前に二人で海でも眺めたい・・・・


**
「あら、マヤちゃん!お久しぶり。元気そうね。」
久しぶりに大都芸能社長室に姿を見せたマヤに、水城が声をかけた。
「水城さん!お久しぶりです。ほんとに、ここに来るのも久しぶりです。」
来る暇もないほど忙しいのはいいことよ、と水城が笑いながら
マヤのためにオレンジジュースを入れる。
「今日は午後から亜弓さんの所に行くんだったわね。」
「はい。」
まだまだ暑さが厳しい8月下旬、じっとりと体にまとわりつく湿気を
冷たいジュースがひと時忘れさせてくれる。
「速水さんも一緒なんですけど・・・。お仕事忙しい時にすみません。」
一人でもよかったんですけど・・と頭を下げるマヤに、
今日この日をあけるため、昨日まで必死で残業をしながら業務をこなしていた上司の
健気な姿を思い出す。
「大丈夫よ、マヤちゃん。真澄さまも今日はこの後もう予定はないから。」
亜弓さんとの話し合いも大切なお仕事だし、とマヤにケーキを勧めた。
「まだまだ暑いだろうけど、体調管理は気を付けてね。」
先週マヤの部屋を訪ねて来て以降、真澄と会うのも久々だ。
真澄が忙しいということは、必然的に秘書の水城の業務も忙しくなる。
マヤは間接的ながら水城にお世話になっていることをしみじみ思った。
「大原さんにもいつもお世話になってますけど、水城さんにも本当に
 昔からお世話になりっぱなしですね、私。」
そう言ってもう一度頭を下げるマヤに、あの小さかった女の子がこれほどまでに
成長したのか、と少ししんみりする。
「お世話なんてとんでもないわ。マヤちゃんががんばってくれているおかげで、
 大都芸能もどんどん忙しくなっているんだから、感謝したいのはこちらのほうよ。」
「ほんとですか?私、少しは大都芸能のお役に立っていますか?」
4月に正式契約をして以来、いや正確に言えば新春の『紅天女』公演以来、
大都芸能の業績は前年を大きく上回り右肩上がりに上向いている。
ここしばらく仕事以外の懸案事項が多すぎて、なかなか辣腕をふるえなかった上司が
ようやく本来の力を発揮し始めたから、ともいえるが
何より北島マヤが大都にもたらしたものは早くも大きな成果を生んでいる。
「あなたが大都と契約していなかったらと考えると・・・・身震いがするわ。」
冗談めかして言う水城の目は笑っていない。
"いろいろな意味で、終わっていたでしょうね・・・・"
「そうですか、速水さんあんまり仕事の事話してくれないから、なんか迷惑かけているんじゃないかと
 ちょっと心配してました。」
よかった~と言いながらケーキを食べるマヤは、10代の頃とまるで変わらない。
そんなマヤの様子を見ていると、かつて事務所の前で泣きじゃくりながら
真澄の名を呼んでいた時の痛々しい姿が嘘のようだ。
「最近、記者に付け狙われてるようだけど、大丈夫?」
水城のもとには大原からの報告が伝わっていた。
当然真澄もそのことは知っている。
「あ、そうみたいです。私は全然気づかなかったんですけど、ドラマの撮影現場から家の近所とか、
 結構カメラマンがうろうろしているみたいで。」
私のプライベートなんて、撮ってもなにも面白くないと思うんですけどねと言ってマヤは笑った。
実際普段のマヤはあまりに素朴で、すっぴんで買い物をしたり、ジャージを着て
近所をランニングしたりと、かなり自由に動いていた。
あわよくば男との逢瀬を・・・と期待していたカメラマンはきっと拍子抜けだっただろうが、
今のご時世、すっぴん姿だけで強引に記事にしたり、
"人気女優の淋しい一人飯"
などと言った勝手な見出しをつけてそれっぽい写真を掲載する事もあるため、
やはり気は抜けない。
メイクに関しては、普段から舞台用メイクをとればいつもすっぴんのような顔のため、
それほど問題はないが、やはり一人で夜の街をランニングするのは
記者対策でなくても危険が伴うため、今は禁止されている。
「ランニングマシンって、なんだかつまんなくって。やっぱり外の空気吸いながら走りたいです。」
「そうね・・・。でもあの部屋のマシンすごいでしょ。ちょっとしたスポーツジムより整ってるわよ。」
水城の言うあの部屋とは、マヤの住むマンションの最上階にある、大都芸能所有の部屋だ。
いつも真澄はその部屋を経由してマヤの部屋を訪ねている。
もともとは大都芸能のちょっとした倉庫代わりに使用していたのだが、
真澄がそこを少しずつ改良し、フィットネスマシンや、AVルームを設置した。
基本的にマヤ専用の部屋として、映画やドラマの映像を見たり、トレーニングをしたり自由に使えるようになっている。
「私も使ってみたいわね。」
防音だから、発声練習もし放題ですと盛り上がるマヤと水城の笑い声が、
扉の向こう側にも漏れていた。

「ずいぶんと楽しそうだな。」
「真澄さま。会議は終わられましたか。」
すっと秘書の顔に戻った水城の振る舞いに、大人の女性を感じながら
マヤは真澄の方を見た。
「ああ。この後2、3の決裁書類をまとめたら出られると思うから、
 マヤ、もうしばらく待っていてくれるか。」
ゆっくり食べてます、というマヤの前の皿にはほとんどケーキは残されていなかった。


**
「久しぶりね、マヤ。」
「亜弓さん! その髪型・・・・素敵!!」
真澄から話は聞いていたが、これまでのイメージを覆す
ショートボブの亜弓は、むしろ今の季節にピッタリのさわやかな姿で、
日差しから守るための薄目のサングラスがよく似合っていた。
「これでもだいぶ伸びたのよ、髪の毛。」
そういいながらピンっと耳にかかった髪を指ではじく亜弓のしぐさは
とても様になっていて、マヤは思わず眩しそうに眼を細めた。
「見てるわよ、ドラマ。なかなか面白いわね。」
しばらくの間マヤの出演するドラマの話題で盛り上がると、
話は今後の事に及んだ。
「亜弓さん・・・あの・・・・それで・・・」
「・・・・紅天女の事でしょ。」
マヤの目をまっすぐに見つめる亜弓の表情は、最初にこの話をした病室の時とは違い、
落ち着いている。
「はい。私、亜弓さんの紅天女が見たいんです、どうしても。だから」
「でも、月影先生をはじめ、多くの審査員の方々が二組の試演を見て決定したことよ。
 私より、あなたの方が紅天女を演じるにふさわしい女優と決まったのに、
 今更私が演じる意味なんてあるかしら?」
言葉の悲壮感とは裏腹に、紅茶を飲む亜弓の姿はどこまでも落ち着いている。
"亜弓君はもう決めているな"
心の中で真澄はそう思うと、たばこを吸うため、そして二人だけで話をさせるために
庭の方に移って行った。
「意味なんて・・・・。亜弓さんはまだやり残したことがあるって思いませんか?」
「え?」
「私、試演まで本当に悩みながら演じてきました。阿古夜の気持ちが分からない。
 紅天女としての動きが分からない。
 自分の感情に左右されて、演技に集中できない事も・・・。
 それでも梅の里での稽古からずっと、紅天女の事だけを考えてきて、そして演じてきた
 つもりです。それなのに・・・・」

いざ、本公演の舞台に立ったら、毎回答えが違うーーーー

「今日の舞台と昨日の舞台では、同じように演じているつもりでも何かが違う。
 そして演る度に、あそこはもっとこうだったんじゃないかとか、今度はこういう風にとか、
 いろいろ考えが浮かぶんです。」
演じた数だけ答えがある、それならば・・・
「私、亜弓さんの出す答えも知りたい。亜弓さんだったらここをどういう風に表現したんだろうって、
 考えない日はありませんでした。」
紅天女の上演権を保有するということの重大さ、そして何十年ぶりに再演を
果たすことの意味、その重責はマヤの想像以上だ。
しかしマヤは感覚的に継承していた。『紅天女』の遺すこと、そして次世代に継承する事、
さらなる高みに導くこと、それが自らに与えられた使命なのだという事に。
「亜弓さんの紅天女を見ずに、これが最高の『紅天女』だなんて、私とても思えません。」
だからお願い、亜弓さんの紅天女を、私に感じさせてください。

「・・・・・・私、年内いっぱいは海外で暮らそうと思っているの。」
マヤの願いに答えるでもなく、唐突に亜弓はそう言った。
「日本に戻ってきたら、あなたの舞台を見に行くわ。」
もしあなたの舞台を見て絶対にかなわないと思ったら、私は紅天女を演じません。
亜弓はまっすぐに言い切った。
「だからってマヤ、いい加減な演技をするようだったら、私は途中で席を立ちます。
 そしてもう二度と、あなたと会う事はしないわ。」
そういう亜弓の目は、以前梅の里で共同生活を営んでいた頃の心の炎が
見え隠れする。
「あなたの演技に刺激を受けるような、そんな女優になれるよう、
 私も休養期間中精一杯努力するから、だから返事はもう少し待っていてくれないかしら。」
さっきまでの厳しい表情とは一転、にこやかにほほ笑む亜弓の顔はどこまでも晴れやかだ。
「亜弓さん・・・・」
思わず涙ぐんだマヤの手を取り、ギュッと握りしめた亜弓は、
「さ、紅茶がさめちゃったから新しいのを入れるわね。」
とばあやを呼んだ。

**
「あのね、亜弓さん・・・」
新しく準備された紅茶の香りを楽しみながら、亜弓がヨーロッパで
買ってきたという高級そうなクッキーをひとしきり楽しんだ後、
マヤが顔をやや赤くしながら言葉を発した。
「紅天女ってさぁ・・・・・、やっぱり・・・・・」
結婚とかしちゃ、だめなのかな、というマヤの声は最後のほうが聞き取れないほど小さかった。
「え?」
「い、いや別に、そんな予定があるとか、そういったわけじゃないの!
 ただ、私も亜弓さんもいつかはその・・・・結婚したり、子どもを産んだり、
 そういう日が来ると思うんだけど・・・・」
マヤの唐突な話に最初は面食らった亜弓だったが、言わんとすることの意味は
伝わってきた。
「確かに月影先生は、生涯独身を貫いて紅天女に人生を捧げているわね・・」
「ええ・・。それに阿古夜って、純粋に一真に恋する乙女でしょ。
 それを演じる女優に、その・・・」
マヤの顔は真っ赤で、それ以上は言葉を続けられないようだった。
そんな様子にふふふと笑いが漏れる亜弓が、
「子供がいちゃ、おかしいって?」
こくりとうなずくマヤはおよそそんな会話をしているとは思えないほど
初々しい。
「私なら・・・・もし私が紅天女を演じるのなら・・・・」
亜弓は口元に浮かべた微笑みをそのままに、ただ言葉だけはくっきりと
射るような力強さで語った。
「観客に、そんなことを気にさせるような演技はしないわ。
 たとえ子どもがいようと、おばあちゃんになろうと、
 舞台の上では絶世の美女であり女神として存在するわ。」
亜弓のその言葉に勇気づけられるように、マヤの肩のから力がすっと抜けた。
「ねえマヤ、今こうやって二人で紅茶を飲みながらおしゃべりをしている姿は、
 すでに紅天女とは全く正反対の世界だわ。」
正反対の世界を生きられる、舞台の上でなら全く別の人生を体験することができる、
それこそが女優という仕事
「観客が、私たちの舞台をみて、その世界を信じることができたなら、
 現実世界の私たちがどんな姿でも、かまわないのではなくって?」
知らず知らずの間に私たちと言っている亜弓の言葉の変化にマヤは気付かなかった。
「そう、そうよね。・・・・さすが亜弓さんだわ。」
亜弓らしい自信に満ちた言葉に、やはり亜弓は紅天女をやるにふさわしい女優に
違いないとマヤは確信を深めていた。
「でも、これでちょっと理由が分かったわ。」
「え?」
「あなたが私に紅天女を演れという本当の理由。」
「え?それはさっきも言った通り・・・」
「そうよね、一人でずっと紅天女を演っていたら、いつまでたっても結婚できないものね。」
「!?」
そそそそそんな意味では・・・・・と顔を真っ赤にして飛び上がるマヤの姿に
くすっと笑いながら、
「ましてや子供を産むとなれば最低一年間は休業が必要、その間紅天女を
 休まなければならないもの。」
「亜弓さんっ!!」
「そうね・・・・でもそうよね。もし、二人で紅天女を守っていければ・・・・」
お互いの人生も、もっと生きやすくなるのかもしれない・・・・。
「私は正直、演劇のためだったら自分の私生活なんてどうなってもいいと思っていたわ。」
「亜弓さん・・・」
「でもね、去年梅の里で月影先生に風火水土のエチュードを教えていただいた時に、
 人として、自然と共に生きるとはなんなのかをずっと考えていた・・・」
この地球上に生きる一生命として、生かされているこの世界において、
子どもを生み育て、次の世代に継承していくこと、それが何よりの宿命なのではないか。
「命を育て、命を尊び、そして命を全うすること、それこそが紅天女の世界なのかもしれない・・・」
独り言のようにそう語った亜弓の横顔は美しく、そしてその言葉はマヤの心に
深く刻み込まれていった。

ep第19話←                  →ep第21話
~~~~解説・言い訳~~~~~~~~
懐かしメンバ―登場編になりました。
最近オリジナルメンバーが活躍してくれていたので、
それはそれで盛り上がっていたのですが、
ちょっと『ガラスの仮面』を読み返したもので、
いろいろ動かしたくなりました。

真澄さんのシーンが少ないので、
次の話でたっぷり書きたい!
伊豆!伊豆!伊豆!夏の伊豆!!
~~~~~~~~~~~~~~~~

ep第19話【架空の話】49巻以降の話、想像してみた【勝手な話】

2015-06-09 18:36:22 | ガラスの・・・Fiction
ep第18話←                  →ep第20話
********************
7月、マヤは東京から少し離れたひなびた高校にいた。
既に夏休みに入った学校は、部活動にいそしむ生徒たちの
掛け声が響き渡るだけで、校舎内はひっそりとしている。

今月頭からスタートした連続ドラマ『ひと夏のままで』
テレビ離れが激しい時代と言われ、爆発的なヒットは
難しい情勢だが、マヤが出演するこのドラマは、
昨年の朝ドラでブレイクした若手女優、柊あいと
往年の伝説的舞台『紅天女』を数十年ぶりに復活させた
天才女優北島マヤの共演という話題性から、
初回視聴率18%という、なかなかの好スタートを切った。
若き女優の瑞々しい同世代の演技と、舞台となっている
沖縄の美しい景色が人気を呼び、
回を重ねるごとに視聴率は上昇、更に沖縄旅行客も前年比アップと、
スポンサーにとっても嬉しい"ひと夏"現象が起きつつある。
まだドラマは前半部分だが、夏休みに入って見逃した視聴者の
ための一気見再放送も高視聴率を叩き出すなど、
今クールのベストヒットドラマも狙える状況、おのずと撮影現場にも
活気がみなぎっていた。
既に大部分の出演シーンを撮り終えているマヤは、
今日は「ひと夏」チームから離れ、映画のロケ現場に入っていた。
「マヤちゃん、準備は出来てる?」
東日本も梅雨があけ、夏の暑さがじっとりと校舎に溜っている。
この映画で、新人美術教師の役を演じるマヤは、
長袖の割烹着エプロンを着ているため、熱がこもる。
更に教師らしくみせるためのメガネのせいですぐに鼻に
汗をかいてしまい、さっきから隣でマネージャーの大原が
あおいでくれているのだ。
「今日が初めての現場だから、ちょっと緊張するね」
この映画の主役は、今勢いのあるアイドルグループ。
現役高校生でもある彼女達の挫折と成長のストーリー、
マヤはその高校に新任でやってきた美術教師という役どころだ。
「それにしても、元演劇界の天才女優なんて、マヤちゃんに
ぴったりの役ね」
そういって笑う大原に、マヤは天才なんて・・・と顔を赤らめた。
学生演劇界でその名をしらしめた天才女優が、自分の実力に
限界を感じ、地元に戻って美術教師としての人生を選ぶ。
しかし赴任した高校の演劇部の生徒達とのふれあいを通じて、
再び自分の中に冷めない演劇への情熱を再確認する・・・。
「ピッタリかどうかはわからないけど、山崎先生の気持ちは、
ちょっと分かるかも・・・」
マヤは自分が演じる山崎先生と、昔の自分とを重ね合わせた。
かつて芸能界で失脚し、演劇から身を引くことを決意した、
高校2年生の冬。
無理やり連れてこられた速水邸を抜け出して、保育園で住込みで働いていた穏やかな日々。
しかし再び舞台の空気を吸った私は、自分の中に消せない演劇への情熱を思い知らされた。

「圧倒的な演技力・・・ってどうすればいいんですかね?」
今日は主役のアイドル達と初顔合わせ、しかも今日の撮影でマヤは、
その子たちの前で、普段の物静かな美術教師の顔から、
全く存在感の異なる、圧倒的な演技力を見せつけることで、
どこか本気でなかった演劇部員達の闘志に火をつける、という
重要なシーンに臨む。
自分が人に影響を与えるような演技力なんて見せられるのかと悩むマヤに、
「いつも通りにしてれば大丈夫よ」
と快活に笑い、背中をぽんっと叩いた。
最近は少し自信がついてきたのかと思っていたが、
素のマヤは相変わらず、自分に演技の才能があるという
自覚はあまりないようだ。
"この素直さが、なんだかほっとけないのよね。"
大原のゲキを受け、マヤは撮影セットに向かっていった。

**
「せっかくだから、ちょっと部屋でお話ししない?」
今日の撮影を無事終えたマヤは、
大原と夕食をとった後宿泊先のホテルに戻ってきた。
明日もロケ地の高校で撮影のあと、市内のホールでの撮影で、
マヤは一旦東京に戻る予定になっている。
「忙しくて、なかなかゆっくり話す機会もなかったし。」
マヤのマネージャーとなって4ヶ月、マヤの女優としての才能に
間近で接するとともに、どんな役にも真摯に向かい合うその姿勢、
反対に私生活でのどこか抜けたところのある子供っぽさも
全てがこれまで担当してきたどのタレントとも違っていた。
マヤは人を疑うことを知らない。
これまでたった4ヶ月にも関わらず、一体どれほどの
人間が、甘い蜜を狙って近づいてきただろう。
あわよくばスクープを狙って巧みに罠を仕掛けようとする
3流マスコミに付け狙われたこともあった。
それらを大原は徹底的にガードし、マヤを演技に集中させてきた。
もっともそんなことができるのも、怪しい人物の情報が事前に随時
会社から連絡されていたからだともいえるが。
"まだ想像つかないのよね、このマヤちゃんが速水社長と・・・なんて"
今日は特別、と大原に許してもらったデザートを食べているマヤに、
今日こそしっかりと話を聞き出そうじゃないの!と気合をいれる大原だった。

「社長には連絡した?」
部屋でくつろぎながらなんとはなしに台本を手にしていたマヤに
大原が聞いた。
「速水さん、今海外出張中だから・・・メールはしましたけど多分今は
 お仕事中だと思います。」
「そうか・・、今フランスに行ってるんだっけ。」
大原の耳にもその案件のことは入っていた。
大きな仕事が決まりそうで、急きょ社長自ら出向いているらしい。
「あの仕事が決まれば、大都にとっても・・・・大変なことになるかもね。」
「あ、大原さん知ってるんですか?速水さんの仕事の事」
私、会社の事とか全然分かんないから、速水さんなにも教えてくれないんですよねーと
頬をぷくっと膨らませるマヤに、ちょうどいいタイミングだと話しかけた。
「ねえ、マヤちゃん。ちょっと女同士の会話しない?」
「え?」
「いつもはマネージャーとして、マヤちゃんとはいろいろ話してるけど、
 今だけ、女友達みたいにいろいろぶっちゃけトークしたいんだ~」
そう言っていたずらっ子のように笑う大原はとてもきれいで、
マヤは安心感を覚える。
「大原さんって、恋人いるんですか?」
「え?」
「だから・・・・ガールズトークするって言ったから・・・」
まさかマヤの方から先制パンチが来るとは思わなかった。
「マネージャーのお仕事って大変ですよね。最近はほんとにずっといつも
 私の側に居てくれて・・・・。だから大原さん、恋人とちゃんと会えてるのかなって。」
ただの興味本位というよりは、大原の私生活を心配しての発言だったと気づき、
マヤにきゅんと親心を感じる大原だったが、残念ながら現在大原にそういう相手はいない。
「マヤちゃん・・・・心配には及ばないわ・・・」
「水城さんも、いっつも遅くまでお仕事されてるし、あ、大原さんって水城さんと同級生なんですよね」
「同級生っていうか、大都に入ったのは同じ年ね。彼女はしばらく速水会長の秘書を
 していたから、大都芸能へは私が先に入っていたけど。」
もうオフということで、これは社長にはナイショで!と缶ビールを飲みながら話す大原は、
いつもの飾り気のない話し方に加えて、どこか姉御肌的な雰囲気も感じさせる。
「水城には直接聞きなさいって言われたのよ。」
「え?」
「な・れ・そ・め!マヤちゃんと社長の。」
途端顔を真っ赤にするマヤの反応を楽しみながら、大原はどんどん切り込む。
「いつから好きなの?速水社長の事。あんな仕事の鬼のどこが好きなの?」
「え・・・と、最初は嫌な奴って思ってて、あ~違うな、
 初めて会ったのは『椿姫』の観劇の時で、その時は優しい人だな~って思ったんです。
 でもすぐにつきかげをつぶそうとしてるって分かって、それで仕事のためなら血も涙もないヤツだって
 思ってたんだけど・・・・」
照れながらも一生懸命話すマヤの様子を見ていると、こっちのほうが恥ずかしくなる。
「社長はいつからマヤちゃんの事好きだったのかしら?」
「え?さあ・・・・、好き・・・なんですかね・・・・私の事・・・・」
傍から見ていればマヤの事しか目に入っていないような真澄の態度も、
当の本人からすればそうは映っていないのかもしれない。
「そりゃ好きでしょ。あんなにいつもマヤちゃんのことばっかり気にかけている人、他にいないわよ。」
「だったらいいな」
ごちそうさま・・・思わずそう言いたくなるような幸せな笑顔を浮かべてマヤはうなづいた。
「マヤちゃんは将来どうしたいの?社長との事も含めて。」
以前真澄にも尋ねた質問を、今度はマヤに投げかける。
「え?」
「詳しくは聞いてないけど、マヤちゃんと社長って付き合い始めたばかりなのよね。
 将来がどうのこうのって時期でもないとは思うけど、それでも結婚とか・・・・考えない?」
「ううう~~~~~ん」
思いのほか深く熟考に入ってしまったマヤの様子を、缶ビールを再びくいっと一口飲み、見つめる。
「正直・・・・・今はまだ。付き合ってるっていうんですかね、そもそも。
 私は正直、演技をしたい。いろんな役を演りたい、いろんな舞台に立ちたい。
 そして、その姿を速水さんに認めてもらいたい、それが今の一番の気持ちです。」
速水さんは、私がまずい演技をしたら、きっと席を立ってしまうから、だから絶対何度でも
見たくなるような舞台を演りたいんです!と力強く宣言する。
それは確かに、真澄自身も一番望んでいることだった。
"ほんと、同じ事考えてるんだね、この人たちは"
今までどこか信じがたかったマヤと真澄の関係が、にわかに現実的に思えてきた。
「いつまでも、紫のバラを贈りたいって思ってもらいたいから。」
そうかそうか、紫のバラか・・・・とそこで大原の思考が止まる。
「え?それってどういう意味?」
「え?」
聞いてないんですか??というマヤの声が遠くで聞こえる気がした。
「速水さんなんです。紫のバラの人」
紫のバラ・・・・それはマヤの初舞台からずっと応援してくれていたマヤのあしながおじさん。
「それって・・・、そうなの・・・」
「はい。ずっと匿名で応援してくれているおじさんだと思ってたんだけど、
 まさか速水さんだったなんて、知った時はショックでした。」
という言葉とは裏腹に大きな声で笑うマヤ。
「今でも思い出します。"早く元気なベスになってください あなたのファンより"」
私その時の舞台で40度の熱を出した状態で演技していたんです、
病気の演技がうまく出来なくて雨に打たれて・・・と、なにげに強烈な
エピソードを挟みながら、マヤの目が遠くを臨む。
「その頃から・・・社長は・・・」
「私、本当にうれしかった。演じるという事が出来るだけでも幸せだったのに、
 その舞台でファンになってくれる人がいたなんて・・・」
その当時、紅天女を貪欲に狙っていた速水真澄からすれば、
敵対する相手のファンであるなど、口が裂けても言えないだろう。そうなれば
匿名で応援してきたこともうなずける。
「それだけ、あなたの演技がすばらしかったということね。私も見てみたかったわ。」
「はい。速水さんは、演劇に関して妥協をすることはしない人だと思うから、
 私これからもがんばって舞台に立って、お仕事して、速水さんに認めてもらえるように、
 紫のバラの人に喜んでもらえるように頑張りたい!」
マヤの心の中では速水真澄と紫のバラの人が絶妙なバランスで共存しているようだ。
「マヤちゃん、もし速水社長が紫のバラの人だって知らなかったら・・・」
「・・・・好きになったと思います。」
急に現実世界に戻ってきたかのように固い意志の通った目を大原に向けた。
「私にとって紫のバラの人は、とても大切な昔からのファン。でも速水さんは、
 私の魂の片割れです。」
恥ずかしくなるようなフレーズのはずなのに、なぜかすっと心に入ってくる。
「速水さんが紫のバラの人だってわかって初めて、私速水さんの本当の心が
 見えた気がするんです。あんなにイヤミばっかりいって、私達の邪魔ばっかりしているようで、
 本当は全て、私のためを思っての事だった。
 自ら憎まれ役を買ってでて、そして私の道を切り開いてくれていたって・・・。」
信じられないくらい心の広い人です。
「私まだまだ子どもだし、会社の事とか何もわからなくて、きっといっぱい迷惑かけると思うんです。
 だけど私約束したから。」
早く大人になるってーーーー
「とりあえず今は、ドラマや映画そして舞台と、出来る仕事はできるだけやろうって、
 やらせてもらえることは何でもやります。だって私には、大原さんがいますから!」
きっと全ての活動は紅天女に活かされる、そうですよね、と笑うマヤに、
この小さな体で紅天女を継承し、守る覚悟を見た大原は
"あなたはじゅうぶん大人よ、マヤちゃん"
とマヤの頭を優しくなでた。
「任せておいて、マヤちゃん。あなたの女優人生は、私がしっかりサポートしますから。」
そして女としての人生はきっと、速水社長がしっかり見守ってくれるからーーー。

**
「おかえりなさいませ、真澄さま」
フランス出張から戻った真澄を、水城は空港で出迎えた。
「ありがとう。日本は変わりなかったか。」
「はい、2、3懸案事項が残っていますが概ね。詳しくは車の中で資料を。」
そういうと水城は、出迎えの社用車に真澄を案内した。
「いかがでした?首尾の方は。」
「うむ。」
フライトの疲れからか言葉数は少なく、表情からは良いも悪いも読み取れない。
「大原君に電話をつないでくれないか。」
唐突に真澄がそう告げた。
はい、というやいなや水城が大原の携帯に連絡をする。
「もしもし、大原君か。速水だ。・・・・ああ、ありがとう。お陰様で無事に戻ってきたよ。
 早速本題で悪いんだが、マヤの映画の件、あれはどうなった。もう進んでいるのかな。
 ・・・・・うん。そうか。 分かった、どうもありがとう。引き続き宜しく頼む。」
淡々と用件だけを確認すると、真澄は携帯を切り、水城に戻した。
「フランスでの契約は、まとまりそうだよ。」
渡された決裁事項の書類に目を通しながら、真澄は水城に短くそう告げた。
「そうですか・・・。それが大都にとってメリットになると判断されたんですね。」
「まあそうだ。それもこれも、作品次第、俳優次第だが・・・」
俺はやれると踏んだ、そう言って初めて笑顔らしきものを顔に浮かべた。
「今から楽しみですわね。その勝負。」
「ん?」
「時期からいって、バッティングしますわよね。」
その水城の言葉に、やはり油断のならない秘書だ、と真澄は大きく息を吸い込んだ。
「まあそうだな。しかしそれはともかくとして・・・」
今は早く、マヤに会いたい。
その言葉を真澄はかろうじていつもの鉄仮面の下に隠しこんだ。
「水城君の淹れたコーヒーが、早く飲みたいよ。」

ep第18話←                  →ep第20話
~~~~解説・言い訳~~~~~~~~
今回マヤが参加している映画の元ネタは、
ももクロ主演映画『幕が上がる』です。
主演のアイドルグループはもちろんももクロ。
若干年齢設定が異なりますが、
ストーリーに関してはほぼ『幕が上がる』のままです。
マヤ演じる山崎先生に当たる、吉岡先生役を
女優の黒木華さんが演じていて、黒木華さんが
マヤのイメージとすごく重なる部分を感じるので、
絶対マヤならやれる!と思って無理やりねじ込みました(笑)
一瞬で見ているものを引き込む演技力なんて、
マヤでしょ~~~~!
黒木華さんは、ほぼ同時期公開の『幕が上がる』そして
『ソロモンの偽証』にも出演されていて、
こうして重なる事もあるんだな、ということを参考にしながら、
マヤももう1本映画に出ます。
その映画の話が、次から始まるのかな?
~~~~~~~~~~~~~~~~


ep第18話【架空の話】49巻以降の話、想像してみた【勝手な話】

2015-06-07 15:41:37 | ガラスの・・・Fiction
ep第17話←                  →ep第19話
********************
一体どれくらいぶりの自宅だろう。
ずっと主不在だったとは思えないほど、
戻ってきた自宅は以前のままで、開け放たれた窓から流れ込む風が、
飾られている花の香りを運んでくる。
3ヶ月の入院、そしてその後別荘での静養期間を合わせて約6ヶ月、
季節は秋から冬を一気に過ぎ、春の息吹に包まれてきた。

目が見えづらくなってからを含めると更に長い時間この景色とは
離れていた気がする。
「この香りはクィーンメリーね、ばあや」
部屋にティーセットを運び込んだ気配で、亜弓は振り返った。
「やっぱり、ばあやのいれる紅茶が一番ね」
カップに口をつけ、一口飲むと亜弓は微笑んだ。
亜弓の笑顔が愛おしく、ばあやの目がうるむ。
その目線が、自分の髪に向かっているのに気づいた亜弓は
「今年の夏は、暑くなりそうだからちょうど良かったわ」
と耳が隠れるかどうかの自身の髪をつまんだ。
「お嬢さま・・・」

**
10月の紅天女試演後、すぐに亜弓は入院した。
視神経を圧迫していた血腫を取り除く手術のため、幼い頃から伸ばしてきた
髪をばっさり落とした。
"手術が成功したとしても、視力が元どおりになるかは分からない"
包帯が外れるまでの1ヶ月は、毎日が暗闇の中で不安との戦いだった。
たとえ視力を失うことになっても、紅天女を諦めたくない
紅天女を得られるのなら、たとえ視力を失っても構わない、そう思っていたが
視力を失ったことで得た五感を研ぎ澄ませた演技は、
亜弓の心の中に確実に女優としての大きな経験を残し、
できることなら再び、舞台に立ちたいと思うようになっていた。
「紅天女・・・・」

手術を受ける直前、病室にマヤがやってきた。
全日本演劇協会により、マヤが紅天女の後継者として発表された直後、
亜弓は所属する劇団オンディーヌを通じて1年間の休業を発表した。
文字通り手術のための休業だったが、巷が自分をマヤに敗れた女優という
憐みの目で見ていること、それから逃れるための休業ではないかと
訝しがっているいることも承知していてる。
「紅天女、おめでとう。マヤ」
10月下旬の紅天女発表後、電話越しながらマヤを祝福した亜弓。
もちろん心に悔しさはないかといえば嘘になるが、
あの極限状態でやりきった自分自身の演技魂を、今は心から誇りに思い、
さらに北島マヤが自分よりさらに上の演技を見せたことは、その試演を
見た時からすでにはっきりと悟っていた。
もし目がまた見えるようになったら、今度はこんな風に阿古夜を、
こんな表現で紅天女を演じたい、そんなことを夢に思うこともあったが、
しかしそれ以上にマヤの演じたあの舞台の印象が、亜弓の心の中に燦々と
輝いていた。
「亜弓さんに、紅天女を演じてほしい」
だからマヤが病室で突然そんな言葉を口にした時、亜弓は強い嫌悪感を抱いた。
"あなたにとって紅天女は、そんな価値なの?"
せっかく手にした紅天女を、いとも簡単に他の女優に渡せるほど軽く扱っている、
亜弓にはマヤの事はそんな風に見えたのだ。
しかしマヤのまっすぐな眼差しと強い目は
徐々に亜弓の頑なな心をほぐしていった。
「私はこれからの女優人生をかけて、紅天女を守っていきたい。
 そして紅天女を進化させていきたい。」
そのためには亜弓の力が必要だ、マヤはそういった。
自分がどれほど悩み、答えを見つけたとしても、
客観的にそれを見ることは永久にできない。
自分と同じように、あるいはそれ以上の情熱で
共に紅天女に正面から向き合った人でなければ、理解することができない世界、
それを唯一共有できる人は、月影先生を除いては亜弓以外にいない。
だから協力して欲しいのだと。
「私は紅天女の後継者として、守り、受け継いでいかないといけないと
 思っています。それは私一人では難しい。
 亜弓さん、私、あなたの完璧な紅天女が見たいんです。」
試演の時、亜弓は目がほとんど見えず、しかしそれだからこそ
無我の境地を開拓し、その世界で生きることができたと思っている。
それで選ばれなかったのなら仕方がない、そう思っていた。
しかしマヤは、だからこそなおさら、復活した亜弓の演技がみたいという。
その言葉には、これまでのような自信のない、自分を卑下するような
色はなく、自分が紅天女を演るのだという覚悟にみなぎっていた。
それと同時に、亜弓に対する期待の気持ちもはっきりと見え、
思わず亜弓はそのまっすぐな目から視線をそらした。
「あなた、今私にどれほど残酷なことを言っているか分かってて?」
そう言った亜弓にマヤははっきりと分かっていると答えた。
そして亜弓なら、自分の知る女優姫川亜弓なら、きっとそんな
屈辱なんて軽やかに飛び越えて、演技でその答えを出してくれるはずだと笑った。

"もし自分がもう一度、紅天女を演れるのなら・・・"

結局その場で答えを出すことは出来なかった。
そしてその夜、亜弓はその豊かな長髪を落としたのだ。
包帯を巻きつけた状態での暗闇の1ヶ月、
亜弓の心を引き上げてくれていたのは、紅天女だった。
"もしも、この目が治っていたら・・・その時は、もしかしたら・・・"

手術を経て、見た目の印象がすっかり変わってしまった亜弓は、
マスコミから逃れるように、別荘で生活していた。
紅天女の試演直後は、なんとか亜弓の近況を押さえようとマスコミが
関係各所に出没していたようだが、それも年が明け、マヤの『紅天女』舞台が
始まるとともに興味は一気にそちらへ流れた。
手術は無事成功し、視力は徐々に回復を見せていたが、
以前のようにはっきりとクリアに見えているわけではない。
しばらくの間光を入れない生活を続けていた亜弓は、徐々に光に慣れるため
濃いサングラスと、部屋の中も遮光カーテンで光を制御していた。
限られた情報源、しかしきづけば亜弓は紅天女を追っていた。
"見てみたい・・・・マヤの舞台を・・・"
さすがに今のこの姿で観劇に行くのは迷惑がかかると気持ちを抑えたが、
その時亜弓は、マヤがあの日、病室で言った言葉を思い出した。
"私、亜弓さんの演じる紅天女を見たい。私に紅天女を見させてください"
もしかしたらマヤは本当に心からそう思って言ったのかもしれない。
誰よりも演劇への情熱を燃やす小さな少女、
舞台でも映画でもドラマでも、演技の事ならどんな小さな作品にだって
没頭する、天性の女優。
あのマヤがもし、私の紅天女を望むなら・・・
私の紅天女を、マヤが見たら・・・
「やあ、アユミ、今日の調子はどうだい?」
姫川の別荘に現れたのは、カメラマンのハミルだった。
ハミルは試演直後からずっとつきっきりで病院に立ち会ってくれた。
紅天女の決定が下った時も、視力を失うかもしれない恐怖と戦いながら
手術に向かっていた時も、
術後の暗闇の中でも、
ハミルは常に亜弓のそばで手を握り、励まし、時に笑わせてくれた。
いつしか亜弓は、ハミルの発する声の響きで、心の中が分かるくらいに
敏感になっていたのだ。
「今日は機嫌がいいのね、ハミルさん。」
「ここは空気もいいし、何より静かだ。こんな所ならワタシもずっと住んでいたい!」
「あらそんなこと言って・・・。知ってますのよ。ハミルさん、
 もうすぐ撮影でフランスにお戻りになるのでしょう?」
ハミルはそうなんです、と言いながら亜弓の手を取り、
「だからひとつ、アユミにお願いがあります」
と亜弓を庭に連れ出した。
「今日は陽射しもそれほど強くない。ここでアユミを撮らせてほしい」
ハミルの目は真剣で、いつもの冗談めかした言い方は影をひそめていた。
「私を?どうして。それに今私、こんな髪だし・・・」
「だからです、アユミ。私はあなたの今の姿を収めたい。
 そしてこれからどんどん美しくなっていくあなたを、ずっと撮りつづけたい。」
できることなら、あなたのそばで・・・・そういって優しく亜弓の手の甲にキスをする
ハミルを、驚きながら見ていた亜弓だったが、
「ハミルさん・・・・・。ごめんなさい。あなたの気持ちはとてもうれしいんだけど」
と言った。
「・・・やはり敵わないのですか?」
「え?」
「クレナイテンニョ、いや北島マヤといったほうがいいのかな?」
アユミ、君はずっと彼女に夢中だ・・・・といって微笑んだ。
「そんなに好きなのに、どうして距離を置こうとするの?」
「え?」
「ワタシ知っています。あなたが紅天女の事を考えないようにしていること。
 でもそれは嘘をついている。もっと自分の心に素直になるべきだ。」
好きなら好きと、言えばいい。
演りたいなら演りたいと、言えばいい。
「ワタシはずっとキミを見続ける。そして、君の心が決まったら、
 その時は必ず、アナタの写真を撮らせてください」
ーーーその姿は、クレナイテンニョですか?---

ハミルが帰った後の別荘で、亜弓はその言葉を思い出していた。
もし私が紅天女を演ることができたら、
その姿を、ハミルならどう撮ってくれるのだろうかーーー

そしてちょうど『紅天女』の舞台がはねる頃、
亜弓は懐かしの我が家に戻ってきた。

**
「お嬢様、速水様がいらっしゃいました」
自宅でくつろいでいる所に、大都芸能の速水真澄が訪ねてきた。
「遅くなったが、退院おめでとう。」
そういうと速水は白とブルーのきれいな花束を亜弓に渡した。
「ありがとうございます。速水社長。こちらこそずいぶんとご無沙汰してしまって。」
非礼を詫びる亜弓に、気にすることはないと速水は笑顔を見せた。
「視力はだいぶ回復したと聞いて安心したよ。」
「ええ、お陰様で。その節はずいぶんとわがままばかり言ってご迷惑をおかけしました。」
「いや、何より姫川監督や歌子さんが嬉しいだろうからね。
 君が元気になってくれるのを誰よりも待っているだろう。」
昨年末、一年間の休養を発表している亜弓は、年内はゆっくりとするつもりでいた。
これまで演劇に明け暮れていた日々を少し忘れ、海外にも行きたいと思っている。
しかしそんないろんな経験も、結局は自分の演劇に還元されるのだろうと思うあたり、
やはり自分は女優の道をあきらめる事が出来ないのだなと亜弓は気付いていた。
「仕事はどう考えている?」
劇団オンディーヌを経営する大都芸能の社長が直々に訪ねてきたのだ、
恐らくその話になるだろうということは亜弓も覚悟していた。
「わがまま言って、休養期間を設けてもらいました。もちろん復帰したら
 一生懸命お仕事させていただくつもりです。」
もし、オファーがあるならですけど、と言ってにこやかに紅茶を口に含む亜弓は、
言葉とは裏腹に自信に満ち溢れていた。
「君のその様子をみて安心したよ。」
速水はそういうと失礼、と断りを入れて煙草に火をつけた。
「紅天女は大成功のようですわね。おめでとうございます。」
速水がなかなか切り出さないのは、きっと自分に気を使っているのだろうと、
亜弓の方から話題をふった。
「ああ、おかげさまで復活公演は無事に千秋楽を迎えたよ」
「私も、ぜひ舞台を見たかったのですが・・・・」
そして亜弓は、先日のパーティーで来春の第2回公演が決定したことを祝った。
「来春の公演も決定したそうで、おめでとうございます。」
「ああ、そのことなんだがね。」
そういうと速水は、吸っていた煙草を灰皿に押しつけ、これが本題だと
言わんばかりに亜弓の目をじっと見据えた。
「ひとつ、条件を出されているんだ」
紅天女様にね、そういって速水は少し笑った。
「条件?」
「ああ。来春の上演を承諾する代わりに、その翌年の公演は休ませてほしいとね。」
「え?マヤが?そんなことを?」
上演権を持つマヤが承諾しなければ、紅天女を上演することは出来ない。
「そう。そしてさらに条件を付けてきた。」

再来年は亜弓主演で紅天女を上演してほしい・・・・

「もしこの条件を飲まない場合は、来春の公演も出ないといってきかなくてね・・・」
だから俺が責任を持って亜弓君を口説き落とすと約束して、何とか承諾してもらったんだよと
笑う顔は、困ったという言葉とは裏腹に自信に満ち溢れていた。
「マヤが・・・私に・・・・」
「あの子は本気だよ。」
速水の顔が引き締まる。
「マヤは本気で、君の紅天女を見たいと思っている。」
「でも、私・・・それに月影先生は・・・」
「先生は、マヤの思うとおりにしなさいと言ってくれたそうだ。」
返事をためらう亜弓に、真澄は返事は急いでないからと告げた。
「なんなら一度、マヤと会って話をしてはどうだ?
 紅天女のことはさておき、マヤも君に会いたがっているよ。」
今月末からはドラマの撮影に入るから、時間も限られてくるが、という言葉に、
マヤが大都と契約したことを思い出した。
「・・・・分かりました。」
とりあえず紅天女の回答は保留にすると告げ、亜弓はばあやに
紅茶のおかわりをお願いした。
「その髪型も似合っているな」
以前もそれくらい短くしたことがあったな、という質問に亜弓は
子どもの頃演じた『王子とこじき』の事を思い出した。
「あの頃は本当に生意気でしたわね。」
そういって微笑む亜弓はすっかり大人の女性だ。
「亜弓くん、君はあの頃から立派な女優だったよ。」
そういって遠い目を見せる速水は、きっと当時の事そしてマヤの事を
思い出しているのだろう。
「速水社長、その後はいかがですの?」
「ん?なにが?」
「下世話な話で申し訳ないですが、速水社長婚約を解消なさったとか・・・
 それはやはり・・・」
ああ、そのことか、と真澄は苦笑いを浮かべながらも
「君にはお見通しだったんだな。」
「ええ・・・。確かにあの舞台で、私何もかも悟ったような気がします。
 でもこうしてなんとか視力も回復したんですから、ぜひとも今度は直接
 この目で見せていただきたいものですわ。」
今度ぜひ、マヤと二人で遊びに来てください、と微笑む亜弓に
その時は何を言われるかわかったもんじゃないと冷や汗を感じる真澄だった。

「マヤは4月末から沖縄ロケで不在、その後5月からは撮影で時間を取られるだろうが、
 ある程度進めば、次の映画の撮影は比較的スケジュール調整もきくと思う。
 その時一度、席を設けるよ。マヤとぜひ、ゆっくり話でもしてやってくれ。」
最後にそう言い残して、速水は姫川邸を後にした。

"舞台にドラマ、そして映画・・・・あの子は着実に進んでいる"
年内は休養、特にこの髪がもう少し伸びるまでは、と考えていた亜弓だったが、
永遠のライバルの活躍に改めて刺激を受け、
自分も早く、表舞台に復帰したいという意欲に火がつけられた気がした。
"初めて私の前を歩く北島マヤ、必ず追いついてみせる・・・・"

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~~~~解説・言い訳~~~~~~~~
なぜか急に、亜弓さんサイドの話が書きたくなりました。
ブームとバッシングは紙一重の芸能界で、
紅天女に敗れた亜弓さんは、今いろいろ大変かもしれません。
マヤは確かに天才かもしれませんが、
大半の一般人にはぶっとんだ天才性はなかなか
理解しにくいこともあり、
やっぱり亜弓さんのような華やかな女優さんは
見ている方もウキウキします。
だから絶対、華麗に復帰してほしい!
紅天女を引き受けるかどうかは分かりませんが、
引き続きガラスの仮面は、マヤと亜弓さんの
女優人生を追ってまいります!!(笑)
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2015年AKB総選挙答え合わせ☆神7的中☆

2015-06-07 14:10:14 | 雑談

今年も行われたAKB総選挙。
そういえば去年の総選挙当日に結婚式挙げたな~という感慨もなく、
去年に引き続き、予想を立てました。
今年は選抜予想に加え、UNDER GIRLS16名予想(こちらは順不同)も行いましたが、
いや~やっぱ下位予想は難しいです。
そんな中、なんとか神7は全当・パーフェクトできたのがせめてもの救い。


2015年AKB総選挙 答え合わせ

<16人選抜>
   【予想】 → 【結果】
01位 指原莉乃  
02位 柏木由紀  
03位 渡辺麻友  
04位 高橋みなみ 
05位 松井珠理奈 
06位 山本彩   
07位 宮脇咲良  
08位 島崎遥香  → 09位
09位 柴田阿弥  → 15位
10位 兒玉遥   → 17位
11位 宮澤佐江  → 08位
12位 横山由依  → 10位
13位 北原里英  → 11位
14位 渡辺美優紀 → 12位
15位 谷真理佳  → 23位
16位 松村香織  → 13位

神7は順位も含めてパーフェクト達成!
選抜16名のうち、14名は順不同で予想通りでしたが、
兒玉遥と谷真理佳はUNDER GIRLSでした。
2人が外れた分、順番が繰り上がっていった感じなのと、
柴田阿弥が予想外に下の順位、島崎遥香と宮澤佐江が上下逆だったです。

今回の予想のポイントとしては、
1:指原が絶対1位(根拠はないが絶対の自信あり)
2:速報値の昨年からのUP率
3:北原里英・柏木由紀のNGTご祝儀UP
4:須田亜香里の選抜落ち
5:谷真理佳・高橋朱里・高柳明音のうちだれが選抜入りするか
6:選挙はSKEが強い
7:兒玉遥は推しメンなので入ってほしい(←弟の意見)
でした。
やっぱり主観が入るといかんですな(笑)


<UNDER GIRLS(17位~32位)>
【予想】 → 【結果】
(順不同)
高柳明音   → 14位(選抜)
高橋朱里25位
須田亜香里18位
森保まどか  → 43位(NEXT GIRLS)
二村春香   → 38位(NEXT GIRLS)
加藤玲奈28位
朝長美桜21位
古畑奈和24位
武藤十夢   → 16位(選抜)
岡田奈々29位
木崎ゆりあ22位
田島芽瑠32位
木本花音   → 48位(NEXT GIRLS)
大島涼花   → 圏外
矢倉楓子   → 40位(NEXT GIRLS)
茂木忍    → 57位(FUTURE GIRLS)

こっちはさらに難しく、16人中8名の当たりでした。
速報値の上昇率から谷真理佳を選抜に押しましたが、
高柳明音の方でした。
武藤十夢の選抜と、大島涼花の圏外は予測不能だったかな。
茂木忍はこれまた推しメンだから入れたいという弟の主観です。


まあでも当たらずとも遠からずな分析で、
5時間もかけて立てたなりのことはあるかなと思いました(笑)