(み)生活

ネットで調べてもいまいち自分にフィットしないあんなこと、こんなこと
浅く広く掘っていったらいろいろ出てきました

( ´艸`)☆更新履歴☆(´~`ヾ)

(ガラスの・Fiction)49巻以降の話、想像してみた*INDEX (2019.9.23)・・記事はこちら ※ep第50話更新※
(ガラスの・INDEX)文庫版『ガラスの仮面』あらすじ*INDEX (2015.03.04)・・記事はこちら ※文庫版27巻更新※
(美味しん)美味しんぼ全巻一気読み (2014.10.05)・・記事はこちら ※05巻更新※
(孤独の)孤独のグルメマップ (2019.01.18)・・記事はこちら ※2018年大晦日SP更新完了※

(・Θ・)★せめて一言だけでも毎日更新★ (´∩ω∩`*)

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【あらすじ・感想】雑誌掲載版・『ガラスの仮面』別冊・別冊花とゆめ版【ネタバレばれ】※文庫版26巻の続き

2016-09-26 10:51:01 | ガラスの・・・あらすじ
※※『ガラスの仮面』文庫版読み返してます。あらすじと感想まとめてます。※※
※※内容ネタバレ、感想主観です。※※


仮面年表は こちら
紫のバラ心情移り変わりは こちら
49巻以降の話、想像してみた(FICTION)*INDEX*はこちら

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『ガラスの仮面』別冊・別冊花とゆめ版 ※第14章(途中から)(途中まで)

第14章 めぐりあう魂
※いつか出る(はずの)50巻の一部を先出し公開!!という触れ込み・・・



速水の屋敷を出て、ホテル暮らしを始めた真澄は
先日の伊豆の別荘での自身のとっさの行動にいまだ
動揺していた。
いくらマヤを奪われたくないとはいえ、長年にわたって
仕えてくれている腹心の部下、聖に対して殺意を抱くほど
自分をコントロールできなくなっている自分に戸惑いと
恐怖を感じている。

「幸せになる決心をして下さい」
心から自分を思う聖のその言葉に、真澄はこれまで自分が
こだわってきた事のはかなさと、唯一譲れないマヤへの
思いを確信する。

真澄の居なくなった速水邸では、英介が一人どこか
寂しげに生活していた。
これまでも真澄が屋敷をあけることなどいくらでもあったはずなのに
何故かもう永遠に戻ってこないような気がして
それが英介を不安に、そして空虚にさせる。
どこか元気のない英介に使用人達も心配げだったが
そんな初めての感情に英介自身が戸惑っていた。


その頃鷹宮邸では鷹宮総帥、そして紫織の両親に向かい
改めて婚約破棄の申し出をする真澄の姿があった。
真澄の身勝手な申し出に怒りを抑えきれない鷹宮家
しかし真澄の放つ悲痛なまでのオーラが
彼のゆるぎない決意を何より物語っていた。

自分の心を押し殺してでも、紫織を幸せにしたいと
思っていたこと
しかしそれがどんなに努力をしても不可能であることを悟ったこと
このまま無理に結婚しても更なる悲劇を生むだけだと

真澄の気迫に押された鷹宮は、紫織を元の姿に
戻すことを条件に婚約解消を受け入れることを認めた。

"やさしく聡明だった元の彼女を取り戻すため
 一生をかけてでもその責任を果たすーーーー"

真澄はこの屋敷から遠く離れたサナトリウムで
療養させるため、周囲の静止も振り切り
紫織がいる奥の部屋へ足を踏み込んだ。

その部屋には
うずだかく盛られた紫のバラに囲まれた中
ただひたすらその花をちぎり続ける紫織が居た。



コミックス50巻へは・・・こちらから(刊行未)
*****感想**************************************
世代が違う事もあり、これまで雑誌連載を読んだことは
殆どありませんでした。
噂には聞いていましたが、連載時とコミックスで全く話が変わるという
恐ろしいパラレル性のあるマンガ・・・ということで
既に注釈も付いていましたが本当に50巻に載るか怪しい
別冊☆別冊花とゆめの超短い先出し公開部分を載せておきます。

サウンドノベル的話の分岐をきたして来たらどうしよう・・・。
勝手に書いてる続きの妄想との整合性はもはや考えないようにしています。

個人的感想としては、結末に向けての様々な難題を
真澄さんのオーラ一つで強引にやり過ごそうとしている感じで
それはそれで最終回が近いのなら歓迎です(笑)

いろいろと妄想ルートはありますが、今回の先出しで

とりあえず紫織のために結婚→マヤを忘れられないから無理!
マヤが他の人と結婚→自分が何をやらかすか分からないから無理!

という自分の気持ちははっきりしたみたいで、妥協して
結婚しつつマヤとも・・・という昨今はやりのコースは眼中になさそうです。

私としては、目的と方向性が一致したことが何より安心材料。
紫織回復=婚約解消
これ、重要!!!

あとは紅天女の試演部分がふたりの王女並みにならないことを祈るばかりです。
それ以上に幻の伊豆で交通事故エピソードの復活もないことを祈るばかりです。


【あらすじ・感想】文庫版・『ガラスの仮面』第27巻【ネタバレばれ】

2016-09-26 10:38:14 | ガラスの・・・あらすじ
※※『ガラスの仮面』文庫版読み返してます。あらすじと感想まとめてます。※※
※※内容ネタバレ、感想主観です。※※


仮面年表は こちら
紫のバラ心情移り変わりは こちら
49巻以降の話、想像してみた(FICTION)*INDEX*はこちら

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『ガラスの仮面』文庫版第27巻 ※第14章(途中から)(途中まで)

第14章 めぐりあう魂


これまでのような、動きの激しい、華やかで舞台映えする演技からは一転、
抑え目ながらもより神秘性を増した亜弓の神々しい紅天女の姿に、小野寺、そして赤目は
引きずり込まれる。
一真が、仏像は彫れないと彫刻刀を投げ捨てる場面、
歌子は稽古場の証明を落とし、暗闇に包まれる。
そのまま芝居を続けろという指示に、亜弓は暗闇の中散らばった彫刻刀をすべて拾い集め、
それを一真に差し出した。
稽古が終わって、今までとは違う紅天女を褒める小野寺達に対し歌子は、
亜弓の目がほとんど見えていないことを伝える。

オンディーヌの稽古場に復帰した亜弓だったが、
目の事を知っているのは小野寺と赤目だけである。
決して共演者やスタッフに悟られてはいけない。
勝手知ったるオンディーヌビル、亜弓の目がよく見えていないことなど
周囲は全く気付く様子もない。
しかしカメラマンのピーター・ハミルは、亜弓の表情の微妙な変化に敏感だった。
亜弓をはめるように、目の状態について白状させたハミルは、
なぜ身の危険を顧みず紅天女を目指すのか問うた。
体より大切なものなどないだろう。
しかし亜弓はきっぱりと、紅天女への情熱を語り、
一歩だって引くつもりはない決意を語った。
暗闇でハミルの姿を感覚だけで掴み取り、優しくライターの火を灯した亜弓の顔は
とても美しく、その表情にハミルは吸い込まれるように惹かれていく。
演劇にすべてを捧げる若く美しい女優、姫川亜弓ーーー

稽古を再開しても定期的に休みを取る亜弓の行動を不審に思った記者が、
目の状態について勘付きはじめる。
ある日、亜弓がいつものように稽古を早退して病院に向かおうと
エレベーター前に立ったその時、ハミルが声をかけてきた。
邪魔をしないでとつっけんどんに対応する亜弓に
自分に従った方がいいと小声で忠告する。
エレベーターには「故障中」の張り紙がしてあったのだ。
もしこの前でずっと、動くはずのないエレベーターを待っている姿を目撃されたら、
亜弓の目の事はすぐにばれてしまう。
ハミルの機転でその場を逃れた亜弓は、
病院へ向かう姿をスクープしようと待ち構えていた記者たちの前に、
ハミルと腕を組みながら親しげに現れた。
姫川亜弓、世界的カメラマンピーター・ハミルと熱愛!?
この日は結局病院へは向かわずそのまま帰宅することにした亜弓。
別れ際に言ったハミルの言葉が、耳に残る・・
「ジュテーム、この言葉の日本語を今度教えて下さい・・・」

黒沼組では、怪我を負った桜小路が松葉づえをつきながら稽古に復帰していた。
足をかばいながらの必死の演技、バランスを崩し倒れそうになる桜小路を
思わず抱きかかえて支えるマヤ。
出来る、どんな一真でも私が受ける・・・!

稽古が終われば相変わらず、桜小路とマヤの間にぎこちない雰囲気が漂う。
これまで毎日一緒に昼食をとっていた二人が別々に過ごしている情景は
稽古場でも話題となる。
しかし一人過ごす休憩時間でも、目を閉じればあの日のあの朝焼けの様子が
マヤの脳裏に鮮やかに浮かび上がる。
真澄と過ごした夢のような時間。
待っていてくれるかという真澄の言葉。
マヤの心は幸せでいっぱいになる。

桜小路とマヤのぎこちない様子に、何故桜小路が事故に遭ったのか疑問に思う黒沼。
マヤに訊いてもあいまいな返事しか返ってこない。
北島を迎えに行ったはずなのに・・・なぜ。
なぜ、北島は桜小路を一人で帰らせたのか。
マヤによると、小切手は返したらしい。しかし歯切れが悪い。
黒沼は若手役者に船会社へ電話をかけさせ、事情を探らせた。
紫織は船には乗っていなかった。
マヤは船に乗った。そして小切手は返した。
紫織が船に同乗するような相手と言えば・・・
速水真澄!
黒沼は、桜小路とマヤの後ろに、見えない真澄の影を感じた。

真澄は伊豆の別荘で、マヤの事を思っていた。
何よりも、マヤの事を守る。そして、自分の気持ちに正直になる。
いい形でマヤ、君をここに迎え入れたい・・・

**
「僕との結婚を考え直してくれませんか、紫織さん・・・」
真澄は、結婚式の打合せのため約束していたサロンで、
紫織が指輪を故意にマヤの鞄に忍ばせたこと、そしてウエディングドレスを
汚させるようにしたことを白状させたのち、婚約解消を申し出た。
「どうしてあんなことをしたのです?紫織さん・・・・」
責めるでもなく淡々と語る真澄に、紫織は思わず
「あなたが、こっそりとあの子に紫のバラを送ったりしていたからですわっ!」
と声を荒げると、真澄はにっこりと笑いながら、
「ええ、僕が紫のバラの人です」
と答えた。
「僕はあの子のファンですから・・・」
あくまで女優として、舞台上で輝くマヤを応援していた。
芸能社の社長の立場では、おおっぴらにファンということは出来なかったので、
隠していた、そう語った。
絶対に気付かれてはいけない、マヤとの関係。
マヤを傷つけるようなことは、あってはならない。
真澄はマヤを守りたい一心で、自分の本心を正直に伝えることはなかった。

「あの日、船であの部屋を見たとき、あなたとは結婚できないと思いました」
そう語る真澄だったが、
「バカなことをしてみたくなった・・・」
と語る真澄の心のうちに、マヤへの愛情があるのは間違いようもない。
「僕ではあなたを幸せにできない・・・、僕もまた・・・・」
「どんなに泣いても・・・無理なのですね。」
涙でぐちゃぐちゃになった顔をハンカチで拭きながら、紫織は最後の質問を投げかけた。
「あの部屋は、使われましたの?あの子と・・・あの夜・・・」
「・・・・いいえ。鍵をなくしてしまいましたから。」
その言葉を聞くと紫織は、化粧直しをすると席を立ち、化粧室へ向かった。
「私も、幸せになれないのはイヤですわ・・・」

化粧室の鏡に映る哀れな自分の姿に、紫織は絶望した。
真澄とマヤの関係を疑い、引き裂こうとした自分。
しかし皮肉にも自分の策略によって二人は出会い、一夜を共にした。
何もなかったという真澄の言葉が本当だとしても、
うわべだけでも優しくしてくれた真澄すら、もういない。
真澄はあの子を選んだ。真澄が離れていく。
初めて愛した男性・・・
紫織は生きる意味を失い、コンパクトの鏡を割ると、その破片で自らの左手首を切ったーーーー

長すぎる紫織の中座に不穏な物を感じた真澄は、
女子トイレに倒れる紫織を発見する。
手首からは鮮血が流れ出ていた。


**
試演が開催されるシアターXという名の旧汐門水駅再開発現場で、
紅天女上演実行委員会による記者会見が行われた。
演出家及び紅天女・一真役の俳優もそれぞれ同席している。

シアターX この会場を選んだのは月影千草本人である。
最低限の安全のため、崩れかかっている屋根や壁、路上の危険物だけを撤去、
基本的には廃墟のままでの上演となる。
大道具や舞台セットは一切なし、照明もシンプルに必要最低限の明かりにとどめられる。
持込が許可されるのは小道具や芝居に必要な道具のみ、
衣裳は自由

会場は線路の跡や崩れかけた駅のホームなど、あちらこちらに
ブロック片が転がる工業的な場所。
自然に囲まれた紅天女の里、梅の谷とは全く趣が異なる。
「ごっこ遊びみたいで、楽しみです」
無邪気に笑うマヤの言葉に、亜弓は脅威を覚えた。
こんなところで、目もよく見えないまま、演技が出来るだろうか、紅天女を演れるだろうか。
亜弓が改めて振り返り会場を見たその時、そこにはないはずの一面の梅の姿がはっきりと見えた。
見えづらい分、感覚で・・・・見えるのか・・・。
目に不安を抱える亜弓は、足場の悪い会場で何とか気づかれないようにと
マヤとの握手を拒絶し、二人のピリピリとした対戦ムードは
雑誌にも大きく掲載された。
試演前の舞台稽古は
来週金曜日:黒沼グループ・金曜日:小野寺グループ
各チーム1回しか許されない。

相手はあのマヤ・・・・。
不安を抱える亜弓は、人気もなくなった会場にこっそり立ち入ると、
会場の大きさや置いてあるものなどを一つ一つ体に叩き込んだ。
心配でついてきたハミルは、その悲壮感すら漂わせた亜弓の動きを
じっと見守る。
つまづいて転んだ亜弓を助け起こそうとして亜弓に拒否される。
「舞台の上ではたとえ何が起こっても全部自分で対応しなければならない。
 助けないで下さい。」
空気の中に湿気を感じた亜弓は、間もなく雨が降ることを察知し、
その場を後にすることにした。
少しずつ、紅天女の感覚をつかみかける亜弓、
わたしが動けば火も動く
わたしが思えば水も動く
わたしが思えば・・・・水に神宿る・・!!

**
真澄から破談を申し渡され絶望した紫織が自殺未遂・・・・
鷹宮邸では、ひたすら頭を下げる真澄と、それに対峙する鷹宮会長の姿、
そして駆けつけた速水英介の姿もあった。
かわいい孫娘、初めて好きになった男性に裏切られ、ショックを受けたその姿
あれを見てもまだ、婚約を破棄するというのか・・・!!
「真澄さまは、わたくしがお嫌い・・・・わたくしは紫のバラが大嫌い・・・・」
布団の上の紫織は心神喪失状態で、ただひたすら紫のバラをむしっている。
その姿はもはやこれまで知る紫織のものではなかった。

数日経っても依然紫織は真澄の問いかけに答えることもなく、
ただ紫のバラをちぎっては捨て、捨ててはちぎりを繰り返していた。
孫娘の頼みだからと、紫織の布団の周りにはありったけの紫のバラが集められた。
寝室にうずだかく積み上げられた紫のバラは、紫織のマヤに対する恨みの思い。
その情景に、真澄の背筋は凍った。
紫織をここまで追い詰めてしまった罪悪感。
マヤに敵意が向けられることへの危機感。
真澄は紫織の回復を最優先に仕事をセーブし、暇を見つけては鷹宮邸を訪ねる。
しかし紫織の状態は一向に回復の兆しを見せない。
そして紫のバラを片づけようとした使用人の腕を剪定ばさみで傷つけてしまう。
「紫のバラ、この子は悪い子なの。始末しなくちゃ。」

そんな時マヤと亜弓、二人の紅天女の記事が掲載された雑誌が発売された。
その記事を屋敷で見つけた紫織は、雑誌からマヤの写真のページを破り取ると
ベッドの上に積み上げた紫のバラにそれを乗せ、バラもろとも火をつけた。
鷹宮邸から上がる火
慌てて駆け付けた真澄はその凄惨な光景を目にする。
「お葬式をしてあげたの・・・」
そういう紫織、残された燃えカスから、紫織が燃やそうとしたのが
マヤの記事であることに気づき、いよいよマヤの身に危険が迫ることを恐れる真澄。
そんな哀れな孫娘の姿に、鷹宮会長は膝を付き、真澄に婚約破棄を再考してくれるよう
頭を下げた。
鷹通の全てを差し出してもいい、頼むから紫織を助けてやってくれ・・・。
その事を聞いた英介は、高笑いで喜ぶ。
まさかあの鷹宮が、全てを大都に差し出すとは、真澄もやってくれるわ・・・・。
それでも自分を待ってくれているマヤのためになんとしても婚約を破棄する意思を曲げずにいた。
何とかして紫織を立ち直らせたい・・・。
真澄は鷹宮邸に泊まり込みで紫織の経過を見守る。
しかしーーーー
寝室が焼け、座敷で休んでいた紫織は夜中に目を覚ますと、そばの紫のバラを胸に、
庭の池に身を投げた。
紫織が床から姿を消したことに気付いた真澄は、
池に浮かぶ紫織を助け出すと、鷹宮会長の紫織と結婚してやってくれとの言葉に
「・・・・はい」
と答えるしかなかった。
“すまない・・・・マヤ・・・!!!”

**
「速水社長、いよいよ結婚だって!」
「鷹通の取締役にも就任するそうよ。」
稽古場でそんな噂を耳にしたマヤは、動揺を隠せなかった。
嘘だ・・・・待っていてくれって、言ってくれた・・・速水さんが、まさか。
稽古場を飛び出したマヤは、大都芸能に向かう。
ビルから出てきた真澄の前に現れたマヤ、
震えるような目で何かを語ろうとするマヤに真澄は冷たく、
「この前はいい暇つぶしになったよ・・・」
と告げ、その場を去るように警告したあと、車に乗り込んで去って行った。
「どうして・・・速水さん・・・・待ってろって、船の上で言ってくれたのに・・・」
座り込んで泣きじゃくりながらそう漏らすマヤを慰めながら、
水城は真澄が急に態度をかえ、婚約を破棄しようとした理由を悟った。
涙が止まらないマヤを何とか稽古場まで送り戻した水城は、
真澄に質問をした。
マヤも真澄と同じ気持ちだったこと
船上で二人は思いを確かめ合ったこと
マヤのために、婚約を破棄しようとしたこと
それにより紫織が心神喪失状態に陥ったこと
紫織の怒りの矛先がマヤに向く事を恐れ、マヤを守るため、結婚を承諾したこと
水城の仮説を、否定することなくただ、
「昔の自分に戻るだけだ・・・」
と突き放した真澄の目は、これまで見たことがない、ただの冷たさと厳しさの塊だった。
結婚式は身内のみ、披露宴は当面延期と招待客には通知される
紫織は体調不良ということで世間から隔離され、鷹宮邸で療養を続ける
真澄は結婚後当面、鷹宮邸に住まうこととなった。

水城に連れられ稽古場に戻ったマヤ、しかし集中することが出来ず泣き続けている。
その様子を見ていた桜小路は、マヤが真澄の結婚のニュースに深く傷ついている事を悟り、
真澄を直接問いただす。
松葉づえをつきながら真澄を訪ねた桜小路は、
自分の気持ちを知りながら、マヤをもてあそんで許せないと罵った。
船着場でのマヤとの抱擁を見られていたことを知った真澄だったが、
桜小路に
「安心しろ、マヤは君のものだ・・・・」
と言い放って背中を向けた。

マヤは聖を呼び出し、紫のバラの人に会いたいと泣きながら訴えた。
真澄の本当の気持ちを知りたい、紫のバラの人、あなたに逢いたい・・・
マヤの切実な訴えに、聖も何とかしてあげたいと思う、しかし・・・。

全ての心のよりどころを失ってボロボロのマヤは、演劇協会理事長のもとに身を寄せている
千草のもとを訪ね、魂の片割れについて尋ねる。
自分が魂の片割れと思っていた人から投げつけられた冷たい言葉。
本当に魂の片割れは存在するのか。
マヤが本気でその人の事を愛している事を知った千草は優しく教えた。
その相手が本当にマヤの魂の片割れならば、あなたがつらい時はきっとその人も同じくらいつらいはず。
あなたが苦しんでいる時はあなたと同じように苦しんでいるはず。
あなたに冷たくするのは、あなたに冷たくしなければならない事情がある。
たとえうわべでどんなことがあっても、魂の片割れならば相手を信じて待つ事・・・・
千草の言葉にマヤは勇気づけられる。

信じよう、速水さん、あなたを
阿古夜が一真を信じていたように・・・!

伊豆の別荘で、マヤの伝言を聖から伝えられた真澄だったが、
会うつもりはないと冷たくつっぱねる。
紫のバラは、ビリビリに破られた写真と共に届けられて以降、マヤの手元には贈られていない。
このままもう、バラを贈ることはない。そうすれば、あの写真が真実になる・・・。
完全に心を封印し、マヤを拒絶することでギリギリのバランスを取っていた真澄、しかし
「それでは私がマヤ様を頂きます。」
聖の言葉に真澄の顔がひきつる。
「マヤがお前を愛するはずがない・・・」
「いいえ、簡単です。私が紫のバラの人だと言えば・・・」
失礼します、と部屋を去ろうと後ろを向いた聖に、
「やめろ・・・!!」
と真澄はとっさにペーパーナイフを投げつけた。
「頼む・・・・聖・・・・それだけはやめてくれ・・・」
でないと俺は、お前を殺すかもしれん・・・!
マヤが誰かの物になる、その想像が現実になりそうになった時、
封印した思いをそのままにできるほど真澄の心は鉄壁ではなかった。
「マヤ様が誰かの物になると思っただけで、部下である私にまで手をあげるほどなのに、
 そんな気持ちを抱えたまま、あなたは一体何をなさろうとしているのですか?」
腹心の部下、聖の後押しで、真澄は決意を固めた。

**
「今まで世話になったな。ありがとう」
速水の屋敷をでる真澄の言葉はまるでもう二度とここへは戻ってこないような雰囲気を感じさせた。
紫織が回復するまで、滞った業務を処理するため、
そう言って真澄は速水邸を離れ、しばらくホテル住まいをすることを英介に告げた。
「速水」という名でやってきた25年間
最後まで仕事というつながりしかなかった英介との父子関係ーーー
真澄は初めて、自分に正直になることを決意した。
自分の心に素直に、速水の家を出ることになろうとも。

試演一週間前、
各グループ1日だけ許された会場での舞台稽古。
黒沼チームは貴重なその機会を大胆にも、ごっこ遊びに費やした。
みんながそれぞれ思い描く紅天女の舞台をイメージして、自由に動き回る。
マヤも必死で紅天女への最後の調整を行っていた。
そこへ記者を装って現れた聖。

「お会いになるそうです。あの方が、あなたに・・・」


コミックス50巻へは・・・こちらから(刊行未)
別冊・別冊花とゆめへは・・・こちらから

*****感想**************************************
2016年9月に、コミックス48・49巻をまとめて文庫版27巻が
発売されましたので、
これまでコミックス版として掲載していたあらすじを
こちらにまとめました。改筆はしていません。
これにより、世に出ているガラスの仮面の全ては
文庫版で出版されたことになります。

・・・もう後はないのですよ。
続きはよ。続きはよ。続きはよ~~~~





【あらすじ・感想】文庫版・『ガラスの仮面』第26巻【ネタバレばれ】

2015-03-02 12:00:26 | ガラスの・・・あらすじ
※※『ガラスの仮面』文庫版読み返してます。あらすじと感想まとめてます。※※
※※内容ネタバレ、感想主観です。※※


仮面年表は こちら
紫のバラ心情移り変わりは こちら
49巻以降の話、想像してみた(FICTION)*INDEX*はこちら

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『ガラスの仮面』文庫版第26巻 ※第13章(途中から)第14章(途中まで)

第13章 ふたりの阿古夜

オンディーヌでの稽古を中断し、今後しばらくは自分が稽古をつける事を小野寺に承諾させた歌子は
亜弓に、目が見えない状態での演技を徹底的に叩き込む。
みえないのであれば、別の方法で感覚を得るまで。
歌子の実の娘に対するとは思えない、いや実の娘だからこそ出来るスパルタ指導がスタートした。
物が落ちる時に起きる風圧、一瞬かおる匂い、火の熱さ、音の響く距離感・・・
亜弓はこれまで目に頼ってきた感覚を、体の全ての感覚を研ぎ澄ますことで補おうとしていた。
そして奇しくも、それにより亜弓は紅天女の感覚を引き寄せることになる・・・

紫織は稽古終わりのマヤを呼び出した。
喫茶店で話をする二人。
真澄の婚約者との話など、気まずさ以外ないマヤだったが、
紫織もまた、ことさら自分が真澄の婚約者であることを誇示し、
未来の妻として、大都芸能社長夫人としての立場からマヤに接してくる。
そんな紫織に戸惑いを感じるマヤ。
真澄がマヤに厳しく接するのも、紅天女への思いから、
真澄を憎むようなことはしないでほしい、本当は優しい人なのだから・・・
そういう紫織の言葉に、
「わかっています・・・」
と答えたマヤ。
真澄が本当は優しい人だということ、いつだって
自分のためを思って行動してくれていたこと、
マヤは紫織よりもずっとそのことを分かっている。
しかしマヤのその返答は、紫織の猜疑心をさらに駆り立てる。
マヤは本当は真澄の事を、愛しているのではないか。
そして真澄もマヤの事を・・・・
紫織は二人の関係をなんとしても引き裂こうと画策する。
立ちくらみを装って鞄を落とすと、拾い上げようとしたマヤのバッグに
こっそりと自分の左手の薬指に光る婚約指輪を忍ばせる。
気付かないマヤはそのまま帰宅した。

外出から戻るや否や紫織が泣き崩れていると聞き、鷹宮邸を訪ねる真澄。
そこで紫織が婚約指輪をなくしたと聞かされる。
気にすることはない、また買えばいいと慰める真澄に、
せっかくもらった大切な指輪なのに・・・といいつつ、
もしかしたらあの時、とマヤの事を口にする。
今日マヤに会った時、とても物欲しそうにこの指輪を見ていたと。
暗にマヤが盗んだのではないかと匂わせる紫織に、
あの子がそんなことをするはずはないと取り合わない真澄。
その強い口調にたじろぐ紫織だったが、更なる罠を仕掛けていた。

鞄の中から紫織の指輪を発見したマヤは、すぐに返そうと紫織に連絡を取る。
そして紫織がいるという場所へ指輪を持って向かう。
そこはウエディングサロン、紫織はドレスの試着をしていた。
その美しい花嫁姿に、言葉を失うマヤ。
「お似合いです・・」
そう言うのが精いっぱいだった。
真澄と紫織の結婚にショックを受けている様子のマヤを見て、
秘かにほくそ笑む紫織だったが、更にマヤを追い詰めるため、
マヤに、わざとブルーベリージュースを自分のドレスにかけさせる。
その直後、衣装合わせに立ち会うため訪れた真澄が入室し、
ショックを受けた様子の紫織をかばうように抱きかかえる。
その様子に呆然とするマヤが落とした鞄からは、紫織の指輪が転がり落ちる。
「君が・・・こんなことを・・・」
信じられないといった真澄だったが、激高のままにマヤを怒鳴りつける
「俺が憎いのなら俺に嫌がらせをしろ。紫織さんは関係ないだろ!!」
真澄に信じてもらえなかったマヤは、深く傷つき、その場を後にする。

傷心のマヤのもとに届いた荷物
紫のバラが添えらえた箱の中には、かつてマヤから紫のバラの人へと贈られたマヤの写真が
ズタズタに切り裂かれた状態で入っていた。さらに高校の卒業証書も一緒に・・・。
「あなたに失望しました」
メッセージカードにはそう書かれていた。

真澄に、信じてもらえず軽蔑された。
唯一の絆だった紫のバラのつながりも途切れた。
マヤの心はボロボロだった。

紫織にまつわるここ数日の事件。
水城はマヤがそのような事をする子だとはとても思えなかった。
真澄はそうは思わないのだろうか。
水城はいつか鷹宮邸で目撃した光景を思い出す。
「紫のバラは嫌い・・・」
そう言いながら部屋に飾られた紫のバラを切り落としている紫織の姿を・・・

いつものように忙しい社長に急な仕事が入ったため、
代理で紫織を美術館へとアテンドする水城。
途中鷹宮の車に紫織のポーチを取りに戻った水城は、
車の中に落ちていた、紙片を見つける。
それは、破られたマヤの写真のようだった。

**
真澄もまた、マヤがあのような事をするとはとても思えずにいた。
あの時は激高してあんなことを言ってしまったが・・・。
それほどまでにあの子に嫌われているのか・・・。
紫織との約束を水城に任せ、深夜まで社長室で仕事に従事する真澄を、
紫織が訪ねてきた。
度重なるデートのキャンセルに少し文句を言いながらも、
自分に対して優しくいたわるように接してくれる真澄の対応、
そのまるで商談相手に接するようなよそよそしさを感じながらも、
今度の週末は絶対に紫織との時間を取る、そう約束してくれた真澄に、
紫織は機嫌を少し直す。
二人で大都芸能を出る直前、化粧室に忘れ物をしてきたことに気付いた紫織は、
取ってくるからと再び上階へと上がって行った。
一人駐車場へ向かった真澄は、
そこに立っているマヤの姿に気づく。
「なんでこんなところにいるんだ。まだ何か文句があるのか。」
そう言う真澄にマヤは、
疑われているかもしれないが、自分は絶対にあんなことはしていないと
強く主張する。
マヤは真澄に誤解されたままなのはたまらなかった。
そして、本当に真澄が、紫のバラの縁を断ち切ろうとしているのかを
確かめるため、ずっと大都芸能の前で真澄が出てくるのを待っていたのだ。
その時・・・
ガラの悪い数人の男たちが二人に怪しく声をかけてきた。
彼らは、以前真澄が引き抜き工作を行って主力タレントを奪われた
北斗プロの息のかかった者たち。
以前から真澄に恨みを持ち、脅迫状を送りつけていた。
とうとう実力行使に出てきた・・・。
真澄は、マヤだけでもなんとか逃がそうとするが、暴漢につかまってしまう。
とっさに暴漢に殴り掛かると、真澄はマヤをかばうように抱きかかえ、
必死にマヤの身を守った。
「この子にだけは手をだすなっ!!何かあったらただじゃおかんぞ!!」
そう言いながらひたすら暴行を受け続ける真澄。
真澄の胸の中で守られながら、何もできないマヤは、
頭から血を流しながらもそれでもマヤの安否を気遣い続ける真澄の様子を見て、
決してこの人が、あんな絶縁状を送ってくるような事をするはずがないと確信する。
エレベーターから降りてきて、真澄とマヤの様子を目撃した紫織は激しく動揺し、貧血で倒れこんだ。
大声を上げて助けを呼ぶマヤ、騒ぎに気付いて駆け付けた警備員に
マヤのために事が大きくならないよう、警察は呼ぶなとくぎを刺した真澄は、
そのまま倒れこみ意識を失った。

社長室に運ばれた真澄をマヤは介抱する。
自らのハンカチを濡らし、真澄の血をふき取りながら、
真澄へのあふれる思いを今更ながら痛感する。
こうやってこの人はずっと、私の事を守ってくれていた・・・・。
涙を流しながら必死に真澄の事を思う。
そして、阿古夜のセリフを口にしながら、眠り続ける真澄に思いのたけを告白する。
「捨てて下され、名前も過去も」
「阿古夜だけのものになってくだされ」
そして、マヤは真澄の唇に、自らの唇をそっと重ねた。

翌朝、
社長室で目覚めた真澄のそばには紫織が立っていた。
ずっと介抱してくれたのか、との問いにうなずく紫織。
マヤを気にする真澄に、あの子は怖くなってさっさと逃げて帰ったと告げた。
それでも真澄は、マヤが無事であることに安堵をする。
しかし真澄の頭の中には、紅天女の言葉、そしてマヤを思わせる暖かな感触が
そこはかとなく残っていた。
あれはすべて、夢か・・・。

あの夜、貧血で倒れていた紫織は意識を回復するとすぐに社長室に行き、
そこで真澄を介抱するマヤを発見、怒りにまかせてマヤを追い出していた。
しかし紫織は気づいていた。
うなされながら真澄がうわごとのようにマヤの名を呼んでいたことを。
紫織はさらなる画策を企てる。

前日、無残に送り付けられた紫のバラを受け取って深く落ち込んでいたマヤだったが、
翌朝はまるでそんなことなかったかのように元気に稽古場に現れた。
紫のバラの人は、きっとあんなことしない。
そう言い切るマヤに、黒沼もきっとそうだろうとうなずく。
再び真澄を信じ、自分は紅天女に向かって努力するだけーーー
やる気を取り戻し再スタートを切ろうとした矢先、紫織の謀略がマヤに襲い掛かる。

黒沼、そしてマヤを訪ねてきたのは紫織の側付、滝川。
滝川は、度重なるマヤの紫織及び真澄に対する無礼を非難し、
今後一切二人に近づくなと警告しに来た。その監督責任は黒沼にもあるとも。
事実無根の言いがかりに反論しようとするマヤを押しとどめた黒沼に、
滝川は一通の封筒を差し出す。
もし今後、こちらの言うとおり邪魔をしないでいてくれれば、これからの
演劇活動に鷹宮として支援をすることを約束する。
これはそのうちの一部だと。
封筒の中には、1000万円の小切手が入っていた。
お金で買収しようとするいけ好かない態度に怒りをあらわにする黒沼。
こんなもの受け取っては、自分がやりましたと認めるよなものだとマヤを急き立て、
返してこいと命令する。
電話で紫織が向かっているという場所を聞き出した黒沼は、
マヤにその情報と小切手を持たせ、急ぎその場所へ向かわせた。

先週のデートキャンセルのお詫びにと、今度の土曜日は携帯を持たずに
来てほしいと、紫織に言われるまま鷹宮の用意した車に乗り込む真澄。
社を出る直前、掃除の担当者から、社長室に落ちていたというハンカチを受け取る。
血の付いたそのハンカチ、紫織の物にしては子供っぽいが・・・。
真澄はとりあえずそのハンカチを胸ポケットにしまうと、運転手に連れて行かれるまま、
紫織のもとへと向かう。
着いた所は船着き場。渡された乗船券、それは
アストリア号 ワンナイトクルーズ・・・・
支配人に案内されるまま上船した真澄は、紫織が手配したという
ロイヤルスイートルームに入る。
そこで目にしたものは、
豪華な天蓋付きのキングサイズダブルベッド、
その瞬間真澄はきびすを返し、元来た道を戻って行った。
「降りる」
真澄の様子に慌てた支配人が必死に押しとどめようとしている時、
向こうの方で何やら騒ぎが起こっていることに気付く。
「離して下さいっ、この船に乗っている人に用があるだけなんです
 渡したらすぐに降りますから・・・・!!」
船員に取り押さえられている人は、
「マヤ・・・!!」
「・・・・?は、速水さん!?」

船着き場に向かう紫織は、決心をしていた。
真澄の心を繋ぎとめるためならば、私は後悔しない。
真澄のためならば、なんでもできる。
“おじいさま、はしたないとは思わないで下さい・・・”
しかし紫織を乗せた車は高速道路で事故渋滞に巻き込まれ、
前にも後ろにも進めなくなる。
無情にも過ぎていゆく時間・・・
もう、出港の時間が過ぎてしまう。
皮肉にも二人の時間を邪魔しないよう、真澄に携帯電話を置いてくるようお願いしたのは
紫織自身であった。
“こんなことになるなんてっ!!”

紫織に小切手を返しに船に乗り込んだマヤ、
紫織に言われるがまま、船に乗り込んだ真澄、
しかしそこに紫織はおらず、二人を乗せたアストリア号は静かにワンナイトクルーズの旅に出た。

第14章 めぐりあう魂

レストランで食事をとるスーツ姿の真澄と普段着のマヤの姿はとても不釣り合いで、浮いていた。
噂になっていると心配するマヤに、せいぜい姪と叔父にしか見えないと軽口を飛ばす真澄。
マヤが紫織に用があって船に乗ったことを察した真澄は、その理由を問う。
見抜かれたマヤはやはり真澄に隠し事は無理だと、素直に小切手の件を話す。
紫織は何を考えているのか・・・・
真澄の中で初めて紫織に対する不信感が芽生えた。
「私、あの人に、あなたの大切なあの人にあんなこと、絶対してませんから!!」
そういうマヤに疑って悪かったと詫びた真澄は、受け取った小切手を目の前で破った。
「これは俺から紫織さんに返しておく」

食事が終わり、船内のブティックでマヤにドレス一式をプレゼントする真澄。
綺麗にドレスアップされたマヤの姿は、これまで見たこともないほど美しく、大人の女性だった。
「チビちゃんがよく化けたな」
軽口で自分の動揺をごまかそうとする真澄だったが、
「わたしもうチビちゃんじゃありません、大人です。結婚だってできるんですっ」
と叫ぶマヤに、そうだったなと心ここにない返事をする。
そしてマヤを船内で開催されるレビューショーやパーティーに連れて行く。
経験したことのないような華やかなステージにマヤはすっかり魅了される。
そんなマヤを真澄はダンスに誘うが、経験がないからとマヤは拒絶する。
「前にも踊ったことあるじゃないか?」
「あの時は授賞式で、速水さんが・・・」
「あの時のように、俺に任せてついてくればいい・・・」
そう言ってマヤの手を取ると、優しくエスコートした。
真澄に促されるままステップを踏むマヤ。
次第に動きにも慣れ、華やかに舞い踊るマヤと真澄に、いつの間にかダンスホールの人たちも
注目し、ダンスが終わった時には盛大な拍手を受けた。
真澄と過ごす、つかの間の幸せな日々。
マヤはこの時をかみしめた。

パーティーも終わり、部屋に戻る真澄の顔はさえない。
促されるまま通された部屋は、ロイヤルスイート。
真澄は、他に部屋が取れなかったからとマヤをこの部屋に残し、
自分はロビーで休むとその場を後にした。
部屋に残されたマヤ。
目の前のダブルベッドを見た瞬間、マヤは本来ここで一夜を過ごすはずだった
真澄と紫織の事を思い出す。
“そうだった、ここで本当は真澄は紫織と過ごすはずだったんだ・・・”
悲しい現実に、先ほどまでの幸せな日々は幻だったかのように、
マヤは涙と共に真澄にプレゼントされたドレスを脱ぐ。

マヤの事を思いながら、デッキで夜風を浴びながらグラスを傾ける真澄。
そこへ、泣きながら普段着に着替えたマヤが現れた。
そして、これお返しします、と買ってもらったドレスを真澄に渡す。
「あの部屋、速水さんが紫織さんと過ごすために手配した部屋ですよね。
 私あんなところで寝られません。」
体だけは丈夫だからと、鍵を返しロビーに行こうとするマヤ、
真澄は思わず声をかけた。
「待ってくれ!」
そして自分もあの部屋を使うつもりはない、と鍵を海に投げ捨てる。
「俺も知らなかったんだ。今日は紫織さんに言われて何も知らされずに船に乗って・・・。
 降りるつもりだった・・・・・・。」
船上で、君の姿を見るまでは・・・
そう言った真澄の顔をマヤは驚いた顔で見つめる。

お互いに帰るべき部屋を失ってしまった・・・と笑いあう真澄とマヤ。
夜は冷えるからと真澄のコートをかけてもらいながら、二人で星空を鑑賞する。
いつか、プラネタリウムで見た空。
梅の里で見た、空。
そして、今・・・・
頭上には、満天の星空が広がっている。
二人は飽きることなくずっと、星について語り明かした。
当たり前みたいに、なんでもない会話が出来る・・・・。
今はただ、それだけで十分幸せだった。

**
翌朝、
ロビーのソファーでそれぞれ過ごした二人。
目覚めたマヤがデッキに出ると、そこには薔薇色に輝く朝焼けがきらきらと輝いていた。
“速水さんにも、見せたい・・・”
マヤは寝ている真澄を起こすと、腕をひっぱって真澄をデッキまで連れ出した。
寝ぼけ眼の真澄も、目の前できらめく夜明けの美しさにしばし言葉もなく立ちすくむ。
「よかった間に合って・・・。この景色、速水さんにも見てもらいたかった・・・・」
そう言ってほほ笑むマヤに、ふと真澄は暴漢に襲われた日の事を思い出す。
胸ポケットには、血の付いたハンカチが、もしや・・・・。
「君のハンカチを俺の血で汚してしまって悪かったな・・・・」
そう言って真澄が差し出したハンカチを受け取ると、マヤはあの夜の事を思い出し
顔を真っ赤に染めた。
紅天女の言葉にのせて伝えた、真澄への愛の告白。
顔を真っ赤にしたマヤの姿を見て、あの夜の感覚は夢ではないのではないかと
思った真澄は、マヤにお願いをする。
「阿古夜のセリフやここで演ってくれないか。」
真澄がもしかしたらあの日の事に気づいているのではないかと緊張するマヤだったが、
真剣な真澄のまなざしに、自分のありったけの気持ちを込めて伝えようと決意する。
そして、おもむろに靴を脱ぐと、マヤは手すりに寄りかかる真澄の側に立った。
「お前さまが好きじゃ」

その声はあの夜、真澄が夢うつつで聞いた声そのものだった・・・
「!?」

マヤは、真澄への愛情をセリフ一つ一つにのせて語る。
真澄を見つめる視線はどこまでも愛おしく、真澄以外は誰も映っていない。
マヤの本心が信じられない思いでいる真澄だったが、
真澄のジャケットをふんわりと抱きかかえ、頬を寄せながら
「お前さまに抱かれている時はどんなにか幸せ・・・」
そう言って恍惚の表情を見せるマヤに、もう冷徹の仮面をかぶり続けることなど
出来なかった。
そしてーーー
「すててくだされ 名前も過去も 阿古夜だけのものになってくだされ・・・」
そういって優しく真澄の頬に手のひらを当てるマヤの表情は、
魂の片割れに対する真実の愛情表現だった。
“もう、だめだーーー”
これ以上、自分の気持ちに嘘をつくことなどできない・・・・
真澄はマヤをきつく抱きしめた。

“速水さんーーー!!”

朝焼けを背に、デッキで抱き合う二人。
他の乗客がデッキにやってきて、思わず離れようとするマヤを、
真澄は離そうとしない。
「もうすこし、このままで。」
「う、噂になります。速水さん。」
「俺と噂になるのは、いやか?」
そう言う真澄の声は真剣で、マヤは覚悟を決めた。
「いいえ、速水さん。」
そういうとマヤは真澄の背に回した手をギュッと握りしめた。
その姿を見ていた乗客は、あてられたようにそそくさとデッキを後にした。

「いつからだ?いつから俺をいやじゃなくなった?」
「最初は・・・でも、あなたの優しさに気付いてから・・・・」
たどたどしく答えるマヤをゆっくりと放した真澄は、
マヤがもうチビちゃんとは呼ぶなと言っていたことを思い出し、
これからは違う呼び方にになってもいいか?と尋ねた。
「マヤ・・・」
その言葉に顔を赤らめるマヤだったが、続けて真澄に
おれの事を冷血仕事虫やゲジゲジ、イヤミ虫と呼ぶものもやめろと説教され
思わず吹き出してしまう。
二人で屈託なく笑いあう、長らく忘れていた感覚だった。

伊豆沖を航海するアストリア号。
この近くに別荘を持っているという話を真澄がする。
自分以外は限られた人間しか来たことがない。自分の隠れ家。
そこにいると、自分自身を取り戻せるような気がする・・・
そう語る真澄は、今まで見てきた顔ではない、素のままの真澄だった。
砂浜を裸足で歩くとキュッキュッと鳴って、
岩場ではカニがブクブクと泡を吹いている
そして夜になるとテラスからは満天の星空が見える。
私も見てみたい・・・そういうマヤを真澄は
「来るか・・・?今度。」
と照れたように誘った。
伊豆の別荘、星空、その日はきっと帰れない・・・・・
「はい、速水さん。私も一人で行きます。」
速水さんがいやでないなら・・・と照れたように、でもはっきりとマヤは答えた。

もうすぐ帰港ーー
君といる時は自分を取り戻せるようだ、そういってくつろいだ様子の真澄を見ていると、
思わずマヤは側に身を寄せた。
夢のようなひと時が、もうすぐ終わる。
真澄は優しくマヤの肩を抱き寄せた。
名残を惜しむかのように、マヤと真澄は黙って身を寄せ合い、
ようやく手に入れた幸せをかみしめ、そして船を下りてからの現実を思った。

港では、真澄の帰港をまんじりとした思いで待ちわびる紫織が、
そして、船に乗ったまま出港してしまったことを聞いて、マヤを迎えにいこうと
バイクを走らせる桜小路が向かっていた。

**
船着場に着いた真澄とマヤ。
ゆっくりと人波に流されながら出口へと向かう。
“夢のようなひとときも、終わる・・・”
その時、真澄はマヤの肩をしっかりと抱き、言った。
「これから、俺を信じて待っていてくれるか?」
しばらくは会えないかもしれない・・・だが、
「いつか、いい形で君を伊豆に迎え入れたいと思っている。」
はっきりとそう言った真澄に、マヤは待っていますと答えた。
真澄がマヤと二人で出てきた姿を見て驚愕する紫織。
なぜ、ここに、北島マヤが、真澄と一緒に・・・!
紫織の姿を見つけても動揺することなく真澄は、マヤと偶然船で会ったこと、
マヤは紫織にこれを返しに来ただけだ、とポケットから小切手を取り出した。
「破ったのは、僕ですが・・・」
そして真澄はマヤを送っていくと告げ、紫織の前を素通りした。
“気づかれている、自分がマヤにしたことを・・・”
そして船上で二人っきりで過ごした・・・
紫織の目の前は真っ暗になり、そのまま倒れこんだ。

倒れこんだ紫織をさすがにほっておけない真澄は送ってやれないことをマヤに詫びると、
タクシー乗り場に連れて行った。
タクシーに乗り込む直前、
「桜小路くん!?」
バイクでマヤを迎えにきた桜小路は、マヤが真澄といることに驚いた様子だったが、
いつになく深刻な表情の真澄は
「マヤを頼む・・・」
と桜小路にマヤを送っていくことを頼んで、自身は紫織の運ばれた医務室へと去って行った。
マヤと真澄の間に流れるいつも違う雰囲気を感じながらも、
マヤを連れて行こうとする桜小路だったが、それを拒否したマヤは、
走って真澄の後を追っていった。

「待ってください、速水さん!!私まだ大事な事言ってない・・・!!」
廊下でマヤの声に振り向いた真澄の胸に、マヤは飛び込んだ。
「私、まだ子供で、大人の世界の事なんて分からなくて・・・・だけど私、早く大人になります。」
早く大人になって、速水さんを助けられる人になりたい
「だから・・・、私の事待ってて・・・!」
全身でぶつけてくる健気なマヤの思いに、真澄も思いのたけを込めてきつくマヤを抱きしめ応える。
「もちろんだとも・・・!君こそ俺を待っていてくれ・・・!」
紫織の休んでいる医務室へと続く廊下で、真澄とマヤは
これまで伝えられなかった思いを全て吐き出すように、互いを抱きしめあった。

“・・・!?どうして、どうして速水さんとマヤちゃんが・・・!?”
マヤの後を追ってきた桜小路は、その様子を目撃してしまう。
放心状態でバイクに戻る桜小路。
“昨日、二人に何があったんだ。船の上で・・・いったい何が・・・”
信号を見落とした桜小路のバイクは、トラックに激突した。

**
桜小路の交通事故の一報を稽古場で聞いたマヤは、仲間たちと病院へ駆けつけた。
全治2ヶ月ーーー
あと1ヶ月に迫った試演には間に合いそうもない。
病院のベッドの上で目を覚ました桜小路は、なぜここにいるのか、
記憶をたどる。
そして目の前でみた、マヤと真澄の熱い抱擁を思い出す。
その時の残像を思い出し、そばに駆け寄るマヤに冷たい対応しかできない。
せっかくここまで築き上げてきたのに・・・こんな風にあきらめるなんて・・・
一真として、必死にもがき作り上げてきたものを、桜小路はあきらめたくなかった。
病院を抜け出し、松葉づえをつきながら、桜小路が稽古場にやってきた。
試演の行われる10月10日まで、完治は出来ないが今より少しはましになっているはず。
であれば、その状態で舞台に立て、黒沼は桜小路にそう告げた。
マヤに対してのわだかまりはまだ解けないが、それ以上に
一真役への強い意欲が桜小路の中に生まれていた。
なんとしても、自分の一真を演じる。
マヤは、露骨に自分を避けている桜小路の態度に疑問を感じつつも、
戻ってきてくれたことに安堵の気持ちでいた。
舞台の上での相手役、私の一真・・・。

その頃真澄も、伊豆の別荘であの船での出来事を改めて思い出していた。
今でも体に、マヤを抱きしめたあの感触がよみがえる。
今頃になって、愛しくて愛しくてしかたない。
真澄の体内では血が熱く燃えたぎっているような感覚すらある。
ここにあの子を、招く日が来るとは・・・。
しかし真澄にはまずやらねばならないことがある。

聖の報告で知った、マヤのもとに届けられたという身に覚えのない紫のバラと
びりびりに破られたマヤの写真、そして送り返された卒業証書ーーー
それでもマヤは「紫のバラの人を信じています」と健気に言ったという。
やはり、ここ伊豆の別荘から無くなっていた。
ここに来れる人物は限られている・・・。

そして、水城に渡されたマヤの写真の切れ端。
鷹宮の車で発見したという。
紫織の指輪紛失事件と、ドレス事件・・・
真澄の中で一つ一つのピースがつながっていく。

「結婚式を中止する場合の損失と、鷹通との提携解除のシミュレーションを」
真澄からそう指示された水城の顔は凍りつく。
既に間近に迫った真澄と紫織の結婚式は、招待客1000名超の大がかりな披露宴、
料理やウエディングケーキ、引出物や挙式後の新婚旅行に至るまで、
最高級の物を準備し進められてきた。
ましてや鷹通との提携解除という事になればその損失は・・・
水城は、鉄壁だった真澄の心の鎧を壊したものは何なのかと思いを巡らせる。

**
母、歌子と二人っきりでほとんど見えない目を補う演技の稽古を続ける亜弓。
目が見えないと相手に分かられてはいけない。
歌子が手配した特別な稽古場は、誰の入室も認められていない。
相手との距離感をしっかりと把握して、視点を合わせなければいけない。
風や匂いやその他自分を取り巻くすべての物から情報を察知し、合わせていく。
過酷な稽古を乗り越え、歌子は小野寺と、相手役である赤目慶を稽古場に
招き入れ、亜弓の紅天女を見せる・・・

文庫版27巻へは・・・こちらから
*****感想**************************************
やっとこ来ました、めぐりあう魂編。
どんなに周りに邪魔されたって、魂の半身はめぐりあっちゃうものなのですよ。
マヤの事信じずに怒った真澄さんには腹立ちますが、それはまあ、鬱積した思いが
暴走したと汲んで、許してあげて下さい。
デッキでも鉄仮面かぶりっぱなしでスルーするかとヒヤヒヤしましたが、ようやく
自分の心に素直になってくれて・・・・うれしい。
でも、傍からみれば単にマヤが紅天女のセリフを情感たっぷりに語っただけなんですが、
よくあれでマヤの恋心に気付いたな、朴念仁真澄・・・と思えなくもなく。
とりあえずあの時は、マヤが自分の事嫌いじゃない程度の認識だったのかな。
で、船降りた後、改めてのマヤの告白で確信したのかな。
にしては、マヤもいったい何が言いたいのかいまいちよくわからない告白をしてますよね。
大人になるまで待ってて・・・って、どういう意味ですか?
奇跡的に通じてるけど「もちろんだともっ!!」

この後ハッピーラブラブ展開になるかと思いきや、どどどど~~~~~んと奈落の底に
落ちちゃうことはさておき、
これでひとまず文庫版は終わりです。続きはとりあえずコミックス版に移行しますね。

※2016.09追記:文庫版27巻発売されました~~~


【あらすじ・感想】文庫版・『ガラスの仮面』第25巻【ネタバレばれ】

2015-03-02 11:17:04 | ガラスの・・・あらすじ
※※『ガラスの仮面』文庫版読み返してます。あらすじと感想まとめてます。※※
※※内容ネタバレ、感想主観です。※※


仮面年表は こちら
紫のバラ心情移り変わりは こちら

49巻以降の話、想像してみた(FICTION)*INDEX*はこちら

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『ガラスの仮面』文庫版第25巻 ※第13章(途中から)(途中まで)

第13章 ふたりの阿古夜


演劇協会理事長と共にKIDスタジオに現れた千草を前に、紅天女を演じるマヤ。
その演技は、これまで稽古で見せていたのとは全く異なる、
神がかり的な紅天女だった。
終了後も、紅天女が抜け切れないマヤに、千草は水さしを用意すると、
「どうぞ阿古夜」
とその手に持たせたコップに水を注いだ。
「・・・いただきます・・・!」
うやうやしく受け取るマヤ
その姿は、一杯の水に畏敬の念を表す、神々しさに満ち溢れていた。
「予想以上だったわ」
マヤの演技の評価を聞かれた千草はそう答えた。

その後、オンディーヌ新スタジオに亜弓の様子を見学に来た千草は、
マヤ同様、亜弓にも紅天女を演じさせる。
評判通りの美しく気高い亜弓の紅天女、見惚れる人々。
稽古終了後、千草は亜弓に水を差しだした。
「どうぞ、阿古夜」
「あ、ありがとうございます。月影先生」
そう言うと亜弓は、一気にその水を飲みほした。
千草からのアドバイスは特にない。
千草が先にマヤの稽古を見ていた事を聞き、源造にその時の様子を問いただす亜弓。
千草はマヤに対してもなんのアドバイスもしていない。
しかし、千草が差し出した水を大切そうに跪いて受け取り、深く頭を下げ、
なにかとても大切なものを頂いているようだったときき、
亜弓は不安でたまらなくなる。

マヤへの不安感を払しょくする為にも、ますます稽古に力が入る亜弓。
しかしそんな亜弓を追いかけていたカメラマン、ハミルは
「人形」の写真は撮らないと亜弓の姿を撮影することはなかった。
ある日の稽古で、不安定な照明器具が倒れ、ある役者が下敷きになりそうになる。
それをかばった亜弓が照明器具を受け、後頭部に強い衝撃を受ける。
「・・・つっ!!!」
一瞬目の前が光って気を失いそうになるが、
しばらくするとおさまり、特に問題はなさそうに見える。
亜弓はそのまま稽古を続けた。
しかし・・・・
その後、亜弓は時折視界をが大きく揺らぐ感じを感じたり、
一瞬目の前が真っ暗になる事もあった。
そしてついに・・・
亜弓はロッカールームで倒れてしまう。
次に気づいた時、亜弓は病院のベッドの上にいた。
目には何重にも巻きつけられた包帯。
後頭部に受けた衝撃により、脳内に血塊がたまり、視神経を圧迫しているという。
早急な手術が必要、さもなければ
失明もーーーー
しかし亜弓にとって、手術を受けるという選択肢はなかった。
このまま、行く。
紅天女の試演まで・・・・

**
「人は、会ったこともない人を愛せるものなのか・・・・?」
あの日、紫のバラを手にあふれる恋心を見せたマヤの姿が忘れられない真澄は、
水城にそう尋ねた。

東京に出てきた千草と面談した真澄は、改めて千草から
自分がマヤの母親を死に追いやった事実を指摘され心に痛みを感じる。
今まで秘かに送り続けた紫のバラは、伝えられない真澄自身の
マヤへの思いの象徴・・・・
全てをあきらめ、闇の中で生きることを決めた真澄。
マヤが自分ではない自分を愛している、しかし母親を死に追いやった自分を許すことはない。
どうしようもない切なさと絶望感を感じていた。

**
紅天女の話題といえば亜弓の事ばかり取り上げられる周囲に動揺しながらも、
マヤは必死に集中しようとしていた。
私の魂の片割れは舞台の上、相手役の桜小路・・・。
マヤとの稽古が続く中、マヤへの思いがどんどん高まる桜小路、
しかし休憩時間に魂の片割れの話がでたとき、マヤは苦しげに、
そんな人に出会ったらきっと今までの自分がどんなに孤独だったか気づくと思うと話した。
その言葉に、桜小路は聞き覚えがあった。


街で偶然桜小路と会った真澄は、吹っ切れたようにマヤへの恋心を話す桜小路を
うらやましく思う。
マヤちゃんに振られるのはなれてます、
でもいつか振り向いてくれるのを、待っている。
まっすぐな目で、マヤの事を好きだと語る桜小路。
そしていつか真澄と会った時に話したことを口にする。
「もし魂の片割れと出会ったら、自分がどれほど孤独だったか気づくに違いないって・・・
 速水さんと同じことを、マヤちゃんも言っていました・・・」
マヤも自分と同じことを・・・。

都会で見上げる夜空に、星はほとんどかすんで見えない。
あの日、マヤと二人で見た星空・・・。
空の星を見て、きれいだと無邪気に喜んでいたあの子の笑顔。
全然違う立場なのに、一緒にいる時はなぜか心が落ち着いて、同じ気持ちでいてくれるような、
そんな気にさせてくれる少女・・・。
現実世界で隣にたたずむ美しい人は、ほとんど見えない空の星よりも、
地上に輝くきらびやかで美しい都会のネオンの方が似合う女性・・・。

自分とっても会社にとっても申し分ない相手、
しかし真澄はその気持ちにはやく答えたいと思っていながら心が重く動けずにいた。
魂の片割れ・・・紅天女の恋・・・
真澄は千草を訪ね、そのことを教えてもらおうとした。
しかし千草が現在身を寄せている演劇協会会長邸を訪ねたとき、真澄はマヤに遭遇する。
マヤもまた、魂の片割れについて千草を教えを乞おうと訪ねてきたのだ。
街で偶然再会した車椅子のおじさん、彼が千草の居所を教えてくれた、
しかしまさかここで真澄に会うとは。
マヤは動揺する、しかしそこでマヤは真澄の政略結婚という現実を目の当たりにし、
真澄の優しさは自分が紅天女の候補だからであると心を頑なにする。
「あなたにはくれを渡さないっ絶対に!」
マヤは罵声を上げて真澄と千草の前から走り去った。
その言葉に重く深く心をえぐりとられた真澄は、結局千草に本当の事を話す事ができなかった。

**
紅天女のリアリティーを追求する黒沼組は、街へ出て稽古をする。
ファミレスで、歩道橋で、公園で。
現代社会の日常風景の中で、南北朝時代のセリフを口にする。
今までどこか非現実的だった会話が、一気に今の時代によみがえる。
昔も今も、生きている人は同じだ。
更にその感覚を育てるため、黒沼はマヤ達を新宿新都心の高層ビル街に連れて行く。
都庁展望室から見る富士山、そして一望できる東京。
この世界に何万もの人々それぞれのドラマがある。
生命がそこにある。
自然界のすべてに神の法があり、その法によってこの世のすべてが生かされている
マヤは急速に紅天女のセリフの意味が体に浸透していくのを感じた。
都会のオアシスのような不思議な空間。
オブジェ、水のカーテンを通してきらめく日の光
梅の里での大自然とは違うが、これも風火水土・・・・。
紅天女の世界観・・・!そして
神と仏の恋物語・・・

**
マヤと紫のバラ、そして真澄との関係に不安を抱く紫織。
父子2代に渡って追い求めてきた幻の舞台「紅天女」
その実現のために、女優として興味を持っているだけ・・・そう思う一方、
真澄の時折見せる冷酷な表情や、ことマヤに関して投げつけれる
辛辣な言葉などがかえって紫織の不安をかき立てる。
ある日紫織は、麗達からマヤと紫のバラの送り主の関係を聞く。
マヤが中学生、初舞台の時からの熱心なファンであること、
いつも紫のバラを贈り励ましてくれてきたこと、
時には学費や、劇場の改修まで支援してくれたこと、
マヤの女優としての心の支えであり、高校卒業時にマヤが
自身の卒業証書と学園生活をまとめたアルバムをその人に贈ったこと・・・
紫織はいつか真澄の別荘で見つけたアルバムの事を思い出し蒼白になる。
そしてついに見つけてしまう。
真澄の別荘で、マヤの高校卒業証書を。
真澄さま、あなたはずっとあの少女を、陰で支えてこられたのですね・・・・
誰にも真実を知られることなく、表だってはあんなにひどい態度で接してきた
北島マヤ、そこに真澄のマヤへの深い愛情を察知した紫織は、
絶対に真澄を奪われたくないと、嫉妬の炎を燃やす。

離れなければならない、忘れなければならないと思いつつ、
側に行きたい、一目でいいから見たいという気持ちを押さえられず、
真澄は仕事途中に一人、マヤ達が稽古をしていたという新宿新都心の広場に立ってマヤを思う。

その姿を、紫織は陰で見つめていた。
自分との約束は、仕事を理由にキャンセルするのに、
こうして仕事の合間を縫ってでも北島マヤの居た場所に立寄ろうとする・・・
真澄にとっての北島マヤの存在がもはや単なる一女優、紅天女候補としての
ものではないことを、紫織は確信していた。
“どんなことをしても 北島マヤを真澄様の心から追い出して見せますわ”

**
映画のロケ地から急きょ帰宅した亜弓の母、歌子は、手術を受けるよう説得する。
しかし亜弓は頑として首を縦にはふらなかった。
このまま試演を受けたとして、目が見えない状態で演技が出来ると思うのか。
そう問う歌子に、やってみなければわからないとあくまで挑戦する意思を曲げない。
根負けした歌子は、それならば私自身が稽古をつけると決意し、
母子の壮絶な稽古が始まった。


第26巻へは・・・こちらから
*****感想**************************************
二人の阿古夜編も前章に引き続きつらいつらーい章なので、まとめがやや浅く
なってしまいました・・・。直視できないよ、真澄はん。
紫織もとうとう覚醒してしまいましたし、次巻はほんとにジェットコースター展開です。


【あらすじ・感想】文庫版・『ガラスの仮面』第24巻【ネタバレばれ】

2015-02-23 23:19:36 | ガラスの・・・あらすじ
※※『ガラスの仮面』文庫版読み返してます。あらすじと感想まとめてます。※※
※※内容ネタバレ、感想主観です。※※


仮面年表は こちら
紫のバラ心情移り変わりは こちら

49巻以降の話、想像してみた(FICTION)*INDEX*はこちら

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『ガラスの仮面』文庫版第24巻 ※第13章(途中から)(途中まで)

第13章 ふたりの阿古夜


真澄と紫織の婚約披露宴で、仲睦まじそうな二人の様子を目の当たりにしたマヤは、
自分の想いを告げることなく、真澄にいつものようなけんか口調でその場を後にすることしか
出来なかった。
「ご婚約おめでとうございます」
「私の事、チビちゃんって呼のやめてください」
「どうかお幸せに・・・!!」
もう少しでバカなことするところだった。
あの人にはあんなに素敵な人がいるのに・・・。
真澄の魂の片割れは、あの人・・・
自分にとっての魂の片割れでは真澄ではなかった・・・。
マヤの心は空洞になり、抜け殻のような状態で、
紅天女試演に向けての稽古に向かうこととなる。

全日本演劇協会「紅天女」実行委員会による記者会見で、
試演についての詳細が発表された。

小野寺グループ
演出:小野寺一

黒沼グループ
演出:黒沼龍三

役者もそれぞれ2チームに分かれ、演出家をはじめとするすべての出演者を
試演によって選出する。
上演順は、抽選により、黒沼チーム→小野寺チームと決まった。
審査に関しては、月影千草をはじめ実行員会審査員のほかに
一般審査員も参加する。
試演日は10月10日
会場はシアターX
本公演は来年1月2日から約1ヶ月
本公演の劇場は、試演審査終了後会場で発表される

シアターX・・・そこは、劇場ではない。
再開発予定の旧汐門水駅跡地である。

いよいよ各チームに分かれて、本格的な稽古がスタートする。

**
黒沼チーム

失恋をひきずるマヤは、読み合わせに全く心が入っていない。
セリフはすでに入っているが、阿古夜のセリフを語るたびに
頭に真澄との思い出が去来し、集中できない。
「名前が過去がなにになりましょう おまえさまがここにこうして生きている」
「それだけでわたくしは幸せになれるのです」
「あなたの声をきくだけで心が浮き立つのです」
「そしてあなたにふれているときはどんなにか幸せでしょう」
「いとしい方・・・」
「捨ててくだされ名前も過去も 阿古夜だけのものになってくだされ」
「でなければいつかおまえさまはわたしをおいていってしまう」
「阿古夜のことを忘れてしまう」
とうとうマヤは大粒の涙を流し、読み合わせは中断された。
気持ちを入れ替え立稽古に集中しようとする。
しかしそれでもやはりマヤは真澄の事ばかり思い出してしまい、
とうとう一真役の桜小路を突き飛ばしてしまう。
気が入っていないマヤに黒沼は激怒し、謹慎を言い渡された。

翌日、謹慎になったと家で落ち込んでいるマヤを桜小路が迎えに来た。
自分も謹慎にしてもらったと言いながらマヤをバイクの後ろにのせ、
遊園地に向かう。
二人でジェットコースターやバイキングなどアトラクションを楽しむ二人。
桜小路が自分を励ますために連れてきてくれたことに感謝するマヤ、
少しずつだが明るさを取り戻していった。
私の事を心配して、優しく接してくれる。
二人で乗った観覧車からは富士山が間近に見え、さらにそこにかかる虹がとても美しく、
マヤは歓声を上げる。
その姿に、少しでも元気になったようで安心したといった桜小路のほほえみを見ていると、
自分が大事な相手役になんて迷惑をかけているのだろうと
マヤは桜小路の胸で涙を流す。
河口湖の近くの土産物屋でイルカが水晶を抱えているペンダントに引かれるマヤ。
桜小路がプレゼントだと買ってくれた。
そしてそのペンダントがペアになっていることを知ると、
二人でそれぞれペンダントをつけた。
河口湖の近くにある桜小路の従姉、葉子のアトリエを訪ねた二人。
せっかくだからと葉子の誘いで夕食をごちそうになる。
三人で料理に取り掛かり、庭に来る小鳥に餌をあげ、
出来上がった食事を囲んで楽しい時を過ごした。
ついつい飲みすぎたマヤは、そのまま眠りに落ちてしまう。
夜中に目が覚めたマヤ、テラスにでると眠れない桜小路が携帯電話を見ていた。
桜小路のお陰で元気が出たとお礼を言うマヤは、
つけていたイルカのペンダントを外し、桜小路に返そうとする。
桜小路には恋人、舞がいる。
しかし桜小路は、自分がペンダントを外すから、マヤにはつけていてほしいと
再びマヤの首にペンダントをつける。
僕は、舞台の上で君の一真になる。
君の魂の片割れになる、だから君も僕の魂の片割れになってほしい、
阿古夜になってほしいと告げる。
舞台の上では・・・・。
マヤは、自分の不安定さが桜小路に迷惑をかけてしまっていたことを改めて感じ、
相手役としてしっかり阿古夜を演じようと心に誓う。
私は今まで、自分の魂の片割れを求めていた。
私が求めるべきなのは、舞台の上の魂の片割れ・・・

翌日、桜小路のバイクで稽古場に戻った。
吹っ切れた様子のマヤに気付いた黒沼は、怒声を響かせながらも二人を稽古に再び迎えた。

黒沼はマヤを始め役者達に、信じていないものを信じさせるのは無理だ。
そこで大切なのは、自分で作りだすこと、自分で作り出したものならば
信じられると説く。
想像力と創造力それに加えて・・・表現力
紅天女として、どう歩く、どう動く、どう話す
精霊の女神、紅天女をどう表現する・・・・

**
謹慎明けに二人で稽古場に戻ってきたマヤと桜小路
さらにマヤの首に光るイルカのペンダント
謹慎後から急速に呼吸が合ってきた二人に、稽古場のみんなは
二人の関係をあやしみ冷やかす。
秘かに様子を探っていた聖もその情報を入手し、
真澄に二人の遊園地デートの写真や、噂の数々を報告する。
しかし真澄は暗い表情でその報告を受けるだけで、特に対策を指示することなく、
紫織との約束に向かった。

桜小路は、あるグラビア撮影を行っていたスタジオで偶然真澄と遭遇する。
ぶつかった拍子に落とした桜小路の携帯電話を拾う真澄。
待ち受け画面は、桜小路とマヤがペアペンダントをつけて笑う2ショット写真だった。
“ふたつあったのか”
聖からの報告書でみた、マヤの写真
首にかかっていたイルカのペンダントは、桜小路とお揃いだったのか。
桜小路と少しの時間喫茶店で話をする真澄。
マヤとつきあっているのかという真澄の問いを否定する桜小路。
マヤにペアペンダントは出来ないと返された事。
せめてと自分は外してマヤにだけつけてもらっている事。
せめて舞台上では恋人役を演じたいと。
もし、魂の片割れと出会えたらどんな気持ちになるのだろうという桜小路の言葉に、
「もし奇跡的にそんな人に出会えたら、ひとはそれまで自分がどれほど孤独だったか
 初めて気づくに違いない・・・」
そういって真澄は去って行った。
「そしてもし、結ばれることができなければ、そのときはきっと・・・」

マヤとは舞台上の上の恋人、魂の片割れ・・・・
桜小路はマヤを観劇に誘う。
『レッドミラージュ』
そのあと、桜小路おすすめの運河沿いの地中海レストランで食事をする二人。
いつもと違う豪華な雰囲気に、まるでデートのような時を過ごす。
その様子を、偶然紫織と同じレストランに来ていた真澄が目撃する。
そしてマヤに、紫のバラを1輪届ける。
“この場所のどこかに、速水さんがいる!”
紫のバラを手に、あちこち探しまわるマヤ、しかし真澄を見つけることは出来ず、
マヤは停泊していたクルーザーのロープに足を絡め、そのまま動き出した船に引っ張られるように運河に落ちてしまう。

舞からの電話を受けて、席を外していた桜小路、そして
騒ぎを聞きつけた真澄が、おぼれるマヤに気付く。
慌てて助けようとする真澄だったが、先に飛び込んだ桜小路によって
マヤはなんとか救出された。
マヤを運び上げる桜小路の首には、あのイルカのペンダントがきらめいていた。
外したといっていた、あのペンダントを・・・。
真澄は何もできないまま、その場に立ちすくんだ。

あの日、二人で遊園地でデートしたあの日から、
桜小路はどんどんマヤへの思いを加速させていた。
舞には悪いと思いながらも、ふくらむマヤへの気持ちは抑えられない。
秘かにマヤと写った写真を携帯電話に収める桜小路。
稽古場のロッカールームで、こっそりとその写真にキスをした。
そんな様子を潜入していた聖はとらえる。
そして、桜小路の携帯電話からそれらの写真データをコピーすると、
真澄に報告した。

必死に抑えてきたマヤへの思い。
それでもどうにもならない自分の高ぶる感情をこらえきれず、
真澄は表に出せないいらだちをぶつけるように、社長室で机上からその写真を投げ捨てた。
床には砕け散っていたコーヒーカップの破片が飛び散っていた。

桜小路から一向に連絡の来ない舞は、不安な気持ちを抑えきれず、
とうとう稽古場に押し掛ける。
そこで、桜小路の携帯電話に収められたマヤの写真を見つけ嫉妬の炎が燃え上がる。
マヤが、写真でみたイルカのペアペンダントをつけているのを見つけると、
それを引きちぎり、桜小路を奪うなと暴れる。
舞を傷つけてしまったことに気づいたマヤは、桜小路にそのペンダントを返そうとするが、
桜小路はそのペンダントを持っていてほしいとマヤに告げ、
自分の首元に光る、ペアペンダントを見せた。
桜小路は舞に別れを告げ、マヤの事を待つと決心した。
マヤの心の中に、誰か別の人がいることを知ったうえで。
いつかその人の事が忘れられたら、その時またそのペンダントをつけてほしい。
それまでマヤにそのイルカを持っていてほしいと語った。

桜小路がマヤに告白したことは、すぐに稽古場の仲間たちも知る事となり、
ほどなく真澄の元にも報告される。
相変わらず、能面のように受け流す真澄だったが、内心は穏やかでない。
桜小路の優しさで、少しずつ真澄の事を忘れようと努力するマヤ。
紫のバラの人としてだけでもいい、真澄に応援されるような女優になりたい。
私のファンでいてくれることだけは、きっと真実だと信じたいから。
いつものようにバイクで桜小路に送られ、自宅へと戻るマヤ。
夜空に光る流れ星を見ながら、自分に言い聞かせるようにマヤは
「わたしの願いはもうかなわないってわかったから・・・」
と言った。
同じころ、デート帰りに紫織を自宅まで送る真澄。
夜空の流れ星を見つけ、願い事をしないのかという紫織の問いに、
「どうせかないませんから」
と冷たく答えた。

**
亜弓は、紅天女としての表現力を磨くため、独自の稽古を取り入れていた。
トランポリンや跳び箱、吊り輪や鉄棒など、まるで器械体操の練習場のような稽古場。
亜弓の動きはどんどん研ぎ澄まされ、美しく輝くその動きは、
指一本一本、羽衣に至るまで優雅に舞い踊る紅天女そのものだった。
観ている者を魅了する亜弓の素晴らしい動き。
小野寺の画策により、亜弓の特集記事やドキュメンタリーが放送されると、
一般人もその美しさを話題にし、紅天女のイメージは一気に亜弓が持っていく。
一般審査員も加わる今回の試演において、その効果は計り知れない。
誰もがもう、紅天女は姫川亜弓で決まりだと思っている。
テレビでみた亜弓の美しい紅天女に、自信を喪失するマヤ。
マヤのそんな様子を想像できる真澄は、紫織とのデート中もそのことが気になって
ぼーっとしてしまう。
気を紛らせるように紫織とダンスと踊るが、紫織は真澄がこうして
心ここにあらずになるときはいつも紅天女の事を考えていることに気づいていた。
紫織が姫川亜弓の事をほめ、マヤの事を話題すると
マヤの事を冷たく突き放す発言をする真澄の、さらに凍りついたような表情に
息を飲む。
そして、そんな顔をしている真澄の心中を思いやる。
ほんとうはきっと、お優しい方・・・。
しかし、デートの帰りに立ち寄った花屋で、紫織が何気なく選んだ紫のバラを
「それだけはダメだ!!」
と強く拒絶する真澄の顔に、いいようのない不安を覚えた。

亜弓に大きく水をあけられたような格好となったマヤだったが、
それでも必死で自分の中の紅天女を見つけ出そうと必死に取り組む。
梅の里で受けた、風化水土のレッスン。
自分の中に、紅天女はあるという千草の言葉。
黒沼に志願して、近くの公園で一人稽古をする日々。
阿古夜として水を汲む、阿古夜として、薬草を摘む。
阿古夜として、木と語る・・・
阿古夜にとっての土とは、火とは・・・。
降り出した雨にうたれながら、阿古夜にとっての水を思うマヤ、
その時、自分と同じように雨に濡れながらこちらに向かってくる人影に気付く。
それは、真澄だった。

真澄は前日、黒沼をおでん屋台に呼び出してマヤの様子を聞いていた。
一連の亜弓の記事・報道で、マヤがどのような状況になっているか気になったのだ。
亜弓に関する一件が真澄の差し金でないことに安心した黒沼は、
マヤが勝つためには本物の紅天女を感じさせることができるかどうかにかかっていると語った。
本物の紅天女・・・それができるのは北島マヤだけだ。

「マヤ、俺に紅天女を信じさせてくれ」
公園からマヤをむりやり近くの歩道橋の上に連れて行った真澄は、そう言った。
ビルに囲まれ、車の往来がひっきりなしに続くこの都会で、人は紅天女を信じられるのか。
「紅天女のリアリティを感じさせてくれ」
「この現実の世界に紅天女がいると、それができるのは・・・」
マヤ、君だけだ。
しかし真澄の最後の言葉は、傘を持って後を追ってきていた桜小路によって遮られ、
発せられることなく、真澄の心の中にとどまった。
“私が、紅天女を信じなければ・・・・”
真澄の言葉に、マヤの中で変化が起きる。
演れるかもしれない、あたしの紅天女

今までどこか別の世界のように感じていた、紅天女の世界。
阿古夜がいつくしみ、大切にしてきた風化水土。
でもちゃんと、現代社会の中に阿古夜の世界がある。
水・・・蛇口の水も水の神からの頂もの
火・・・闇を照らし、暖め、生活を紡ぎ出す大切なもの
土・・・すべての食物は土が育てた生命
他の生命をいただいて、生きる
着物も、家も、すべて生命の頂きもの
人はみな、自然から生命をいただいて生きている。
全ての命の輝きに、感謝を・・・・
マヤの演技はがらりと変わった。

公園で一人、子供のように泥まみれになりながら稽古を積むマヤの様子は
亜弓と比較され、お粗末な候補とネガティブな記事が週刊誌に掲載される。
しかし千草は、優位なのはマヤのほうだと言い切る。
いまのままでは、亜弓はマヤに勝てない・・・。
「そろそろ時がきたようね」
千草は梅の里で決意を決めた。

**
紫織は、大都芸能社長室で真澄の帰りを待っていた。
何気なく見たゴミ箱の中に、乱雑に捨てられた週刊誌を発見する。
そこには、お粗末なライバルと書かれたマヤの中傷記事が載っていた。
さらに、半開きのデスク引き出しにマヤと桜小路が仲良く写る写真の数々を
見つける。
以前別荘で見つけた、マヤの舞台写真アルバム。
真澄がなぜ、紅天女の片方の候補者の事をこれほど気にしているのか・・・
漠然とした不安を抑えきれず、紫織はマヤ達の居る稽古場へ向かった。
そしてそこでマヤが紫のバラの花束を受け取り、涙する姿を目撃する。
黒沼から、マヤにとっての紫のバラの話を聞いた紫織は、
以前自分が紫のバラを手にした際、恐ろしい表情で拒否した真澄の顔を
思いだし、さらに不安が募る。

「あたしと会ってください」
聖から紫のバラを受け取ったマヤは、そう伝言を残した。
明日の午後、朝日公園の歩道橋まで来てくださいーーー
そこは以前、真澄がマヤに紅天女のリアリティーを感じさせてほしいと語った、
あの歩道橋・・・
絶対に会うことはない、正体を知られてはいけない
おれとマヤの唯一の絆を失いたくない・・・
マヤは紫のバラを抱え、昼からずっと歩道橋で真澄の来るのを待っていた。
真澄はマヤの願いを黙殺するように、仕事に集中していたが、
午後3時を過ぎ、マヤの事が気になり移動途中に歩道橋の近くを通るよう指示する。
会うつもりもないのに、なぜかそこへ向かおうとしている。

歩道橋の上では、マヤが記者を名乗るあやしい男たちに絡まれていた。
以前、マヤの中傷記事を週刊誌に乗せた記者、彼らの裏には暴力団が関係していた。
マヤが手にしていた紫のバラのメッセージカードを無理やり奪おうとする男たち。
必死に抵抗するマヤ、奪われた花束を取り返そうと男にとびかかると、
男の手から花束が離れ、歩道橋の下へと落ちて行った。
下を走る車にはねられ、無残に散らばる紫のバラ。
それでも必死に取り戻そうと、走る車列に飛び込もうとするマヤ。
ほとんどの花はひかれ散ってしまったが、唯一助かった一輪のバラを両手に、
マヤは震える体で、その花びらにキスをした。
その表情は、恋をする阿古夜の顔そのものだった。
マヤは紫のバラに恋をしているーーーー
現場に駆け付けた黒沼、桜小路、そして真澄は、その姿に衝撃を受けた。
“マヤが、紫のバラの送り主に恋をしている・・・そんな、バカな・・・!”

来ないと分かっていた、だけど、来てくれるんじゃないかと思っていた。
真澄への思いを断ち切るように、紫のバラの人への思いだけで、マヤは
紅天女の稽古に没頭する。

そんなマヤの稽古場に、月影千草が現れたーーー


第25巻へは・・・こちらから
*****感想**************************************
前章「紅天女」が非常にまとめづらくて、筆が乗らなかったので、
実は先にこちらを書きました。
といっても失恋マヤと現実逃避真澄が婚約ウキウキ紫織と相まって・・非常につらいのですけど。

マヤの事すっぱりあきらめた風な割に、桜小路とのデート現場目撃して
大人気もなく(どこで手配したのか)紫のバラ送っちゃったり・・・
聖さんの七変化が見られたり、(花屋だけでなく、運送屋さんにまで・・・)

でも、まとめていて思ったのは、
真澄は、マヤとの現世での融合をあきらめて、せめて紫のバラを通じて
マヤとのつながりと保ちたいと思い、
マヤは、真澄と紫織の関係に身を引く失恋をしつつも、せめて紫のバラの人としての
真澄の気持ちはつなぎとめておきたいと、役者として必死で努力する。
だけどどちらとも、素の自分に戻った時にお互いを思う気持ちを止められず、
一人もがき苦しむ・・・
と、まあさすが魂の片割れらしく、同じ時に同じ事を思い悩んでいるもんだな~と
なんだか納得しました。
更に更に、マヤの事を忘れようとことさら紫織さんと親密になろうとするところや、
真澄を忘れるために桜小路の優しさに甘えるマヤとか、やってることが・・・・。
すれ違っているようで、ちっともすれ違っていない二人。
早く魂めぐりあって~~~!!