(み)生活

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浅く広く掘っていったらいろいろ出てきました

ep第50話【架空の話】49巻以降の話、想像してみた【勝手な話】

2019-09-23 00:50:33 | ガラスの・・・Fiction
ep第50話【架空の話】49巻以降の話、想像してみた【勝手な話】


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「カット!・・・・・OK!!」
監督のその言葉に張りつめていた空気が
一気に安堵の色に変わった。
映画『スヴァンスタイン荘の住人』の撮影も
中盤を過ぎ、スケジュールはほぼ予定通りに
進行していた。
今日の撮影は天候に合わせて、
NGが出せないほぼ一発撮りの重要シーン
だったため、出演者・スタッフ共に
いつもに加えた緊張感があったが
何とか無事、時間内に撮影を終えることができた。

「明日は一日オフになります。
 それから来週のスケジュールは
 スヴァンスタイン荘"伯爵家軸"の撮影に
 なりますので、ここで一旦北島マヤさん
 出演シーン終了になります。」
来週は青木麗がメインの撮影がまとめて
行われるため、
マヤはしばしの休みとなる。
とはいっても、その翌週にはいよいよ
この作品の肝となるトリックシーンの
撮影が始まるため、マヤにとっては
大切な準備期間にもなっているのだが。

「本当に大丈夫かい?一人で列車の旅なんて」
「多分・・・。いざとなったら携帯もあるし」
「その携帯をどっかに落っことさないかが
 心配なんだけど」
「大丈夫!麗はほんとにいつまでも私を
 子供扱いするんだから」
この準備期間を利用して、マヤはイギリス郊外に
短い旅に出かける予定を立てていた。
そこは今回の作品とは直接関わりないものの
原作者の出身地であり、その情景が
作品の世界観にも反映されているといわれている。
「まあ、すぐに速水さんも来るんだろう?」
原作者がかつて住んでいた家は
現在ミュージアムとして開放されており
ファンの聖地として有名だが、
そのすぐ近くにある小さな別荘は
かつてその家族が住んでいたという家であり、
現在はプライベートステイで
滞在できるよう改装された施設となっている。
その一棟を真澄の手配によりこれから一週間
貸切で利用するのだ。
「うん。明後日の早朝ロンドンに着くって
 言ってたから、別荘に来るのはその夜になるのかな」

****

「Oh~~! Welcome!!!!」
管理人のまさに熱烈な歓迎を受けながら、マヤは
麗から習ったわずかばかりの英語を駆使して
ようやく部屋のベッドに寝転がった。
「ほとんどなに言っているか
 分からなかったけど・・・・・」
たまに出てくる「マスミ」の言葉に、
恐らく真澄の古くからの
知り合いであることは察したものの、
何故時折涙を浮かべながらマヤの肩を抱く程
感動しているのかは
ついに最後まで理解できなった。

異国の地でのたった一人の列車旅、
ただ揺られているだけの時間でも
だいぶ消耗していたとみえ、
安心感とともに思い出されるのは
もうしばらく会っていない最愛の人のことだった。
「もう数時間もすれば、会えるのに・・・不思議ね」
思い起こせば舞台『NATASHA』の頃から、マヤはほとんど
真澄とゆっくり過ごしていなかった。
マヤ自身は気づいていないが、『NATASHA』が
かつての恋人里美茂との久々共演ということで、
スキャンダル狙いのメディアにスクープを張られていたため
真澄は意識的にマヤと仕事以外の距離を置いていた。
それがどれほどのストレスで、どれほどの影響が
主に水城に与えられたかはさておき
当の本人はがっつりと役に集中していた。
そして舞台がハネるや、すぐにこの映画撮影のため渡英、
図らずもすれ違いの日々をもう数ヶ月は送っていることになる。
「よくよく思えば、速水さんにとって私、いったい何ができているんだろう・・・」
イギリスでの生活を麗と共に過ごしている中で、
マヤはどれほど麗が自立した女性として生きているかを感じ
同時に自分がどれほど周囲の人に甘えっぱなしの毎日を送っていたのかに
気づかされた。

私が演じる姿を見ているのが、この上のなく幸せだ

確かに真澄はそういって、事実マヤに演劇に集中できる環境を
公私ともに手配してくれる。
大原をはじめとするマネージャーやスタッフも、マヤの演技の事を第一に
動いてくれる。
そんな中でいつの間にか自分が演技"しか"できない人間になっているのではないか、
マヤはふとそんなことを思い始めた。

「私がやることといったら役作りばかりで、本当の北島マヤはどこにいるの?」
そしてそんな自分のままで、速水さんは幸せなの?
そんなことを思いながらマヤはいつの間にかベッドの上で
うつらうつらと眠りに落ちていった。

****
ガチャガチャガチャドンッ!!!

突然の大きな物音でマヤは跳ね起きた。
「な、なに??」
玄関で聞こえてきたその大きな物音に
得も言われぬ恐怖を感じながら、そっと部屋を出て玄関のほうへ
向かった。
「・・・・・・・!?は、はやみさん!???」
そこには横に置いたスーツケースにもたれこむように倒れた
真澄の姿があった。
「速水さん!?どうしたの??大丈夫??」
「・・・・マヤ・・・・か。 す・・まない。少し体調を崩し・・・て」
大したことはないという言葉と裏腹に額に脂汗を浮かべる真澄。
何度もうわごとのように「マヤ」とつぶやきながらゆっくりと意識を失っていった。

「・・・ここは。」
「あ、まだ体おこしちゃだめ!!」
次に目を覚ました時、真澄の体はだいぶ楽になっていた。
「・・・時間は・・・」
「えと、朝9時です。よく眠れましたか?」
手にしたトレイからオートミールを脇のテーブルにうつしながら
マヤはにっこりと笑った。
「・・・すまない。せっかくの休みを」
「とんでもない!昨日は本当にびっくりしましたけど、
 すぐにエイカーさんを読んだら
 お医者さんを手配して下さって・・・・」
ただの過労と睡眠不足が原因だと分かった時はほっとしました・・・と
トレイを胸にギュッと抱えながら微笑む顔は、明らかに寝ずの看病をしてくれていた
跡が見て取れた。
「・・・・ありがとう。」
そっとマヤの腕を取り、傍へと引き寄せる真澄に体を預ける形となったマヤは
耳まで赤くさせながら
「あ、こ、このオートミール、エイカーさんに教えてもらいながら
 私が作ったんですよ!!」
と照れ隠ししている。
「・・・・食べさせて」
「・・・・え?」
まだ疲れが残っているのだろうか、普段の真澄から出るはずのない言葉に
一瞬わが耳を疑ったマヤだったが、そのややうるんだ瞳に真澄が常に抱えるプレッシャーを少し
おろしているのだと感じ、たどたどしくもひとさじずつ、オートミールを真澄の口に運んだ。
「どう・・ですか?」
「おいしいよ。」
先ほどからの真澄の直接過ぎる熱い視線がマヤの顔をどんどん赤くする。



「食べさせて」
なんであんな言葉を発したのだろうと、今でも不思議に思う。
確かに無理がたたって不覚にも意識を飛ばしてしまったが
それでも普段の真澄であればそのような甘えた言葉など口にするはずもなく、
まさに魔が差したとしか言えない。
恐らく一晩中真澄のことを心配して傍についていてくれたのだろう、
元気そうなそぶりをしていても疲れは溜まっていたはず、
こうして自らの膝の上でぐっすりと眠る姿に逆に安心感を覚えた。
「あの姿は・・・反則だろう」
髪を後ろで一つ結びにして、エイカーさんに借りたのだろう
大きすぎるエプロンを体に巻きつけながらトレイをもって満面の笑みを
浮かべるマヤの姿に、得も言われぬ愛おしさを感じ、
つい気がゆるんでしまったとしか言いようがない。

「ごきげんようマスミ、お加減はいかが? あら?小さな奥様は
 ぐっすりとお休みのようね・・・」
オートミールの器を下げに来たついでに様子をうかがいに来たエイカー夫人は
休んでいたはずの真澄の膝を枕にぐっすりと寝入るマヤの姿に
その柔和な顔をほころばせた。
「すまなかった。昨日はずいぶんと心配をかけたようで」
「なんのなんの。この子に比べたら私の心配なんてたいしたことないわ」
そういって昨夜どれほどマヤが慌てふためきながら
たどたどしい英語を必死に織り交ぜながらひたすら真澄のことを
助けようとしていたかを軽妙に説明した。
「会った瞬間わかったわ。あなたが変わったのがこの子のお陰だって」
優しくブランケットをマヤにかけながら、エイカー夫人はにっこりと
微笑んだ。
「あなたがこんなに感情を表に出せるようになるなんて、
 あの頃は想像もできなかったもの」
「・・・そんなものか」
ええ、とうなずきながら、エイカー夫人はかつて真澄と
出会った頃のことを思い出していた。
「あの時のあなたは微笑みを浮かべていながら
 1ミリも笑っていない、そんな顔をしていたわ」
まるで自分以外はみんな敵、そう思っているみたいにね、と
片目をつぶりながら語る。
確かに、あの頃の自分は感情というものを失くすことで
生命をつないでいたといってもいい。

誰も信じない
誰も愛さない

そう決めて、ただひたすら義父への復讐の念だけを
育てていたあの頃
周囲に心を許すことなど決してなかった。

「本当に生意気で失礼な、恩知らずのガキだったと思いますよ。」
誰も近づけようとしないオーラを放つ真澄に
好き好んで近づく者などなく、気付けば真澄はこの異国の地で
たった一人でいることがほとんどだった。
「そんな私に、唯一声をかけ続けてくれたのがエイカー夫人、あなたでしたね」
イギリス留学時代、郊外へのホームステイで訪れたこの小さな田舎町、
誰とも話さず一人で本を読み続ける真澄に
秘密の場所があると声をかけてくれたのが、エイカー夫人だった。
「あの場所は・・・」
「今もあるわよ。といっても最近はめっぽう手入れをしていないから
 入口を見つけるのは大変かもしれないけど。」
「もしよければ・・・・」
「ランチボックスを用意するから、その子が起きたら出かけなさい」
真澄の意図などお見通し、と言わんばかりににっこりをエイカー夫人は微笑んだ。
「連れて行きたかったんでしょ、マスミ、自分の秘密の場所に、その子を」

****
「さっきから全く進んでいないようだが?」
「・・・・そうですか?」
マヤにオールを託して数分、二人が乗ったボートはただ
湖面の揺らぎに合わせて方位磁針のように向きを変えるだけで
どこかに向かう気配は一切感じられなかった。

昼過ぎにようやく目を覚ましたマヤを連れて
真澄はエイカー荘近くの湖でボートに乗り、
対岸の森に向かっていた。
最初は真澄が漕いでいたのだが、マヤが自分もやってみたいと
いうので渡した所、このような状況に至る。
必死な形相のマヤと対極に、まったく進まないボートに
揺られながら、なんだかとても安らぎを感じ、あえて助け船を
出すことなくそのままにしていたのだが、さすがにこのままでは日が暮れる。
結局真澄が遅れを取り戻すかのように優雅に漕ぎ手を請け負い
あっという間に対岸に到着した。
「ボートは速水さん得意でしたのもんね。」
言い訳をするかのように話すマヤのちょっとすねた顔がかわいらしく
思わず頭をポンポンっと叩く。
「チビちゃんは負けず嫌いだな」
「あ、あ~~~~」
それ言うの禁止だったでしょ~~~と追いかけてくるマヤの声を
背中に聞きながら、真澄は久しぶりに自分が腹の底から笑い声をあげていることに気づく。
「そういえば、昔はよくこうやって、君と憎まれ口をたたき合ったものだ」
冷血漢の仕事の鬼がマヤといる時はなぜか大きな笑い声を出すと
あの頃周囲がみな目を白黒させたものだ。
「いつの間にか、ずいぶんと守りに入ってしまったものだ。」
マヤとの交際をスタートさせて以降、表だってこうやって二人で会話をすることは
あっただろうか。
あくまで事務所社長と女優、その範疇を越えないように気をつかい、
距離を守ってきた。
「ここは秘密の場所、俺たち以外は誰もいないんだ・・」
ふいに足を止めた真澄の背中に、追いかけてきたマヤが止まりきれずにぶつかる
「わっ!!速水さん、急に止まらないで!」
ぶつかってきたマヤの手をぎゅっと握ると
「マヤ、ここでは俺はもう気を使わんぞ」
そういってひょいっとマヤを横抱きにして駆けだすと
「は、速水さん!!!!」
真澄の腕の中で表情をくるくる変えるマヤのおでこにキスをした。


「ここ、ですか・・・」
二人がたどり着いたのは、湖畔から少し入った森の中に広がる
ちょっとした広場のような空間、その中央にそびえる大きな木
「そう、この上にあるんだ」
ちょっと待っててとマヤを降ろすと、真澄は軽快にその木に昇り、
ほどなく上の枝から縄梯子を降ろした。
「上ってこれるか、マヤ」
梯子使ってマヤがたどり着いた先は、なかなかの広さの
ツリーハウスだった。
「確かにエイカー夫人の言うとおり、ずいぶんと誰も訪れていないようだ」
「ここが、速水さんの秘密の場所?」
「そう、そしてここが」
『スヴァンスタイン荘の住人』が生まれた場所だーーーー




ep第49話←        →ep第51話
~~~~解説・言い訳~~~~~~~~
お久しぶりです。
本当にお久しぶりです。

たまに頂くコメントに、お返事もできないくらい
放置状態でしたが、ようやく永い眠りから覚め再始動。
少しずつですが、進めていきたい。2020はもうすぐそこ!!

~~~~~


9 コメント

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Unknown (Mi)
2019-09-24 20:16:23
速水さんが倒れて看病してくれたマヤちゃんをきっかけに結婚の話は出ないのかなと期待してしまいました。是非続きも楽しみに待っています。
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同意です! ()
2019-09-24 21:05:54
Miさん
私も書きながらあれこれ
このまま結婚すんじゃね?と思いました(笑)
続きこれからなんですけど、ツリーハウスが
第二の社務所となったりして。。。
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Unknown (やまゆ)
2019-09-25 10:27:30
続きを待っていました!ありがとうございます!
これからも気長に頑張ってくださいね!毎回楽しみにしています!速水さんのイチャイチャ五割増しに期待!
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お待たせしました ()
2019-09-25 12:31:03
やまゆさん、続きも書きますね!
もしよければまた見に来てください~~
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Unknown (Sera)
2019-10-01 13:14:33
待ってました〜!(涙)更新ありがとうございます!わたしもイチャイチャ五割増しを楽しみにしています♩
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Seraさん ()
2019-10-01 22:36:46
秋の夜長は筆が進む、と信じて
続きでイチャイチャしたいです〜
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Unknown (あなたのファンより)
2020-09-05 01:45:30
思い出したようにガラかめを手に取り、まだ49巻までしか出てないという事実にうちひしがれながらたどり着いたこのサイト……。とてもお話が好きで、執筆様の描くキャラクターがイメージ通りでとても好きで、思わずコメントをしてしまいました。なが
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Unknown ()
2020-10-12 23:22:18
ところでいい加減(笑)ガラスの仮面の続き出たのかな?と検索していてたどり着きました。控え目に言って最高!ニヤけっ放しで通読しましたよ。たまに声出して笑いもしました。もう一周してこうかな。ぜひ続きを読ませてください!!!創造性と妄想力の爆発を待ってます!

+私も大人になってから矯正したので、矯正関係の記事も懐かしく拝読しました。保定期間順調でしょうか。どうぞご自愛くださいね。あなたのファンより
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Unknown (ベリー)
2021-08-09 16:44:31
最近、ガラスの仮面にまたハマり出して、色々検索してこちらに辿り着きました。理想的な形でお話が進んでいて、読んでいて幸せな気持ちになりました。ぜひ続き書いてください。
宜しくお願いします‼︎
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