(み)生活

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ep第22話【架空の話】49巻以降の話、想像してみた【勝手な話】

2015-07-01 20:06:34 | ガラスの・・・Fiction
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まず監督の挨拶、そして出演者たちの紹介が続き、
いよいよ映画『微風(そよかぜ)のかたちに』がクランクインした。
撮影地は山梨の山奥、今日から約20日間をここで合宿のように過ごすことになる。
出演者といっても主人公を含めほぼ3人しか登場しない。
「あかね役を演じます、北島マヤです。宜しくお願い致します。」

『微風(そよかぜ)のかたち』
かつて若くして三ツ星レストランのチーフを務めた実績のある料理人、
牧込雄哉は、ある出来事がきっかけで包丁が持てなくなり、料理人を辞める。
全てを失い、死に場所を求めるようにさまよいこんだ山奥で、
ある一人の老人と出会う。
その人は一人黙々と窯で陶器を制作しており、あかねという
少女が一人、身の回りの世話や
出来上がった作品を町に売りに行く手伝いをしている。
あかねと老人の関係は分からない。なぜならあかねは一言も言葉を発しないのだ。
何となく居ついてしまった山小屋で、
見よう見真似で陶芸に取り組むうちに、雄哉は過去の自分と向き合い、
新しい道へと進む決意を高めていく。
しかし、そうして徐々に打ち解けていった3人の所へ、
雄哉の過去を知る女性が訪ねてきた・・・・


セットが併設された山小屋は、本格的な窯も造営されており、
火も入れられている。
映画の撮影が終わった後はそのまま、映画の情景の通りに
その山小屋で生活をすることもある。
単発の撮影等がある際は、東京に戻る事もあるが、
基本的にはこの地でマヤも生活をし、あかねとして生きる毎日を予定している。

一言もセリフのない少女、あかね
その感情の全てを表情でしか表現できない難しい役
動きや視線だけで、師匠への深い尊敬の念や絶対的信頼感、
新参者である雄哉に対する警戒心から徐々に心を開いていく過程、
自身の過去のトラウマと、親しい人との別れの時
出演シーンでない時間も、本当のあかねのように、
窯の管理をしたり、スタッフに交じって荷物の片づけを手伝ったりしていた。
出演者なんだから、と最初はやめさせようとしていたスタッフも、
マヤが本気であかねとしての気持ちをつかむためにやっていることを察して、
今では黙って見守っている。

「マヤちゃん、お疲れ様。」
「あ・・・お疲れ様です、境さん。」
主人公、雄哉役を演じているのは今年40歳になる俳優、境凪砂(さかい・なぎさ)。
ずっと舞台を中心に活動していて、ここ数年の間にテレビドラマでブレイクしたいわば遅咲きの俳優、
巷では"最後のイケメン独身俳優"と呼ばれている。
「どうだった?この前がんばってた焼き物、出来上がったんだよね。」
そういってにっこり笑いかけてくる境は、確かに40歳には見えない若さがある一方、
これまでの苦労がそうさせるのだろう、物腰が柔らかで、若手のマヤにも丁寧に接してくれる。
「はい、今冷やしているので後で取りに行くんですっ!」
そう答えながらマヤは、今日はこれまでほとんど言葉を発していなかったことに気付く。
「元気だね~マヤちゃん。そうだ、ぼくちょっとこれから少し時間があるから、
 ちょっとその辺散歩でもしにいかない?」
そう言うと境は衣裳のまま山の方へ歩いて行った。

「マヤちゃんってえらいよね。」
セリフないのに毎日発声練習してて・・・という境の言葉に、
「あ、うるさかったですか!!すみません。毎日の習慣なもので、つい」
と赤面する。
「いやいや、君の声がいい目覚ましになってるんだ。これからも頼むよ。」
とにこやかに笑う。
"速水さんとは違う、大人の人って感じ・・・"
真澄よりさらに年上であるにも関わらず、マヤは境に兄のような親近感を覚えた。
「あかねってどう?しゃべれなくて難しいでしょ?」
「はい。でも、私昔、狼少女を演ったことがあって・・・・。
 その時に、言葉は出せないけど感情を表現しなくちゃいけなくて、
 同じ唸り声でも、警戒している時と、さびしい時とで違ったりとか、そういった感情の演技を
 やっていたから、少しは入りやすかったかもしれません・・・。」
「ああ、『忘れられた荒野』ね、ぼくも見に行ったよ。」
「ええ!見てくれたんですか?うれしい!」
「もちろん、関係者の間でも評判だったからね。僕もなんとかつてを使って2回見にいったよ。」
あの、人間が最後には狼化するという話、最高だったね・・・と思い出し笑いをする境
「マヤちゃん、今何歳?」
「あ、えと、21歳です。」
ええ~~~、僕より20歳くらい年下か~~俺も年取ったな・・・と頭をポリポリかく姿は、
実年齢よりずっと若い。
その後、近くの切り株に腰掛けながら、境のこれまで出演した舞台の話や、
マヤの紅天女獲得に至る猛烈な稽古の話で盛り上がり、二人は時間を忘れて
演劇の事を話していた。
"そういえばこれまで、こんな風に役者の先輩と演劇について話をすることってなかったな・・・"
マヤは初めて、先輩と呼べる俳優仲間に出会えた気がして少しうれしくなった。
「あとで見せてよ、マヤちゃんの作品」
じゃあね、と手をあげると、境はまた撮影に戻って行った。
「あ、そうだ・・・」
足をふと止め、境がマヤの方へ戻ってきた。
「マヤちゃん、今日夜、花火しない?」

**
「ぎゃ~~~~~、やだこっち来ないで!!!」
火のついたねずみ花火がきゅるきゅるとマヤの足元に寄っていき、
マヤは必死に逃げる。
その様子をにこやかに見ているのは、主役を演じる境をはじめスタッフ達。
夏に買いすぎた花火だからと、若手スタッフが持ってきた花火で
今夜はちょっとした花火大会が開催されていた。
「マヤちゃんって、ほんと見てるだけで面白いよね。」
忌々しそうに自分を追いかけていたねずみ花火に水鉄砲をかけるマヤの姿を
見ながら、スタッフたちも楽しそうにケータリングを食べくつろいでいた。
「是永さんは?まだ仕事?」
境の言葉に、遅れてくるとおもいまーすというスタッフの声が答える。
「はぁ、はぁ、境さんも花火やってます?」
ねずみ花火との格闘に勝利したマヤが、境の所に花火を差し出した。

「マヤちゃんは、花火大会とか行くの?」
境の言葉に、マヤはそういえば花火大会はほとんど経験がないことに気付いた。
"お祭りっていっても、あの縁日くらいしか・・・・"
「僕の地元でさ、毎年秋に大きな花火大会があるんだ。
 正式には競技会なんだけど、なんせ田舎だからね、わざわざ会場まで行かなくても
 実家で十分よく見える。」
「へえ~すごい!見てみたい!」
じゃあ今年見においでよ、と境は気軽にマヤを誘った。
「行きたい!!あ、じゃあ・・・・事務所に相談してみます。」
つい流れで賛同してしまったものの、よくよく考えれば今年の秋と言えばそろそろ
来春の紅天女の準備が始まる時期である。
「マヤちゃんの事務所って、大都だっけ?そうか~、いろいろ厳しそうだね。」
「厳しいってわけではないんですけど・・・。」
やや歯切れの悪いマヤの様子に、大手の事務所だといろいろ制約があるんだろうと、
舞台中心の中堅事務所に籍を置く境は対して気にも留めず、
「友達とかもよんでさ、みんなでわいわいやれると思うよ」
と、さりげなくマヤの負担を軽くしてくれた。
「舞台はもう、紅天女以外やらないの?」
境の質問に、マヤはそんなことないですと首を振った。
「でもこうやって、新しい世界に足を踏み出せて、あ、映画は昔出たことあるんですけど、
 すごく今楽しいです。」
「いつから女優になろうって思ってたの?」
境の質問に、マヤは改めて自身の事を振り返る。
幼いころからドラマが好きで、映画が好きで、本を読みながらその役になりきることが
楽しくて楽しくて、ただそれだけだった子供時代。
漠然と、女優という職業があることは知っていても、
まさに夢の世界の人たち、まさか自分がその世界の住人になれるなんて
想像もしていなかったあの頃・・・
「・・・・やっぱり、月影先生に出会った時・・・ですね。」
あの時、月影千草について本格的に演劇を学びたいと思った中学時代、
先生の言葉に挑発されるように、自分の口から発された
「女優になる」という決意、
もしあの時、月影先生が自分の心の中からその言葉を引きずり出してくれなければ、
今の私はいなかった・・・・。
「ぼくが演劇を始めたのってさ、大学生になってからだったんだよ。」
遅いだろ?といって笑う境
「大学で、なんとなく目的もなくプラプラしてたらさ、一人すっごい変な奴に
 出会ってさ。 いつもキャンパスの隅っこで8ミリ回してるような、怪しい男。」
ある時、その男にちょっとモデルで立った姿を撮らせてほしいといわれたのがきっかけで
話をするようになったという。
そしていつしか演劇に興味を持った境は、その男が通っているという劇団に入り、
舞台人としての演劇活動をスタートさせた。
「その方、今何されてるんですか?」
「ん?ああ、その方はね・・・・今・・・。」
あそこで線香花火をやってるようだね、と指差した先には、
いつの間にか合流した是永監督が居た。
「・・・この作品、来年のカンヌに出品するらしいんだ。」
ぼくはあいつに、大賞を取らせたい。
この世界へ入るきっかけを作ってくれたあいつに、俺の立場で出来る最高の
手助けをしたいんだ・・・
「世界を狙う作品で、あいつはぼくを選んでくれた。それならばぼくも
 精一杯の演技で、その期待に応えたいと思ってる。」
口調は相変わらず穏やかで柔らかなままだったが、それだけに
マヤにも境の並々ならぬ決意が伝わってくる。
「マヤちゃん宜しくお願いするよ。あいつは君の舞台を見て、この作品を
 映像化することを決めたんだから。」
そういって境は、まっすぐにマヤの目を見た。
「境さん・・・」
是永と境の二十年以上に渡る強いきずなを目の当たりにしたマヤは、
自分も一つ一つの作品を積み上げ、十年後、二十年後も仲間と一緒に
演劇に携わっていける事を願った。

「マヤちゃんって、たばこ吸うの?」
唐突に訊かれた質問に、マヤはいいえ?どうしてですか?と返した。
「だってそれ・・・・灰皿でしょ?」
境の視線の先には、先ほど焼きあがったマヤの作品が入った袋があった。
「最初は普通の平皿かな~と思ったんだけど、一つだけ、あこれこれ、
 これだけタバコ置くところがあるからさ、これって灰皿だよね。」
鋭い指摘に顔を真っ赤にしながらしどろもどろになるマヤを見て、
これは聞いちゃいけない質問だったのかとそれ以上の追及はやめた。
「お世話になっている人に、使ってもらえるかな・・・と思って。」
小さな声でマヤが答えたので、もう一つだけ聞いてみようと、境は
その皿に描かれたうにうにとした線のような模様について質問した。
「これって、なんの柄なの?」
ヘビ・・でもないし、模様っていっても短いし・・・・と考える境に、
消え入りそうな声で
「・・・エムです・・・」
と答えた。
「エム?」
「m。アルファベットのエム。」
「ああ、マヤちゃんのイニシャルのエムね。なるほどそう言われれば・・・・エム・・か?」
まじまじと皿の模様を見つめる境に、つくづく自分の名前がマヤで
良かったとほっとした。
「・・・・喜ぶといいね。」
「え?」
「・・・いいや、なんでもない。すごくよくできてると思うよ。
 形はちょっといびつだけど、その分手作りって感じがして温かみがある。」
本当に、あかねが作ったみたいだ・・・・そう言って手に取った皿を境は
じっと見つめていた。


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~~~~解説・言い訳~~~~~~~~
基本的に、その後のマヤの活動を取り留めもなく
想像したい、という趣旨のもと書きなぐっている
Fiction エピローグシリーズなので、
こういった山も何もない淡々とした話がありつつ、
たまに真澄といちゃいちゃしつつ、女優として成長し、
女性として結婚もし、いつしか日本に北島マヤあり
といった地位を確立する所までざっくりとは妄想してます(笑)

同じ芸能人でも、いわゆるアイドルとは違って、
女優さんの場合、一つ一つの作品に向き合う
時間が長いというか、あまり掛け持ちで複数の
仕事をやるのも難しいと思うので、こうして
撮影とか稽古の期間が物語としては長くなり、
実際の放送とか、上演とかいう部分は
ざっくりカットされるという流れになるのは致し方ないのかなと
思います。(ふたりの王女みたいに劇中劇をがっつり
やるっていうんじゃなければ・・)
でもって書いていて改めて、圧倒的にオフの時間がない!
休む=次の露出がないという仕事って
やっぱり日々ストレスを抱えるだろうなと思います。
もっとも、マヤは演じられればそれで幸せ!なタイプなので、
休みがないのは苦にもならないとは思いますが。

ニューキャラばかりどんどん登場させてすみません。
新しい仕事をするごとに、新しい出会いがあるもので。
自分でも交通整理しないとごちゃごちゃになってきました。
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