(み)生活

ネットで調べてもいまいち自分にフィットしないあんなこと、こんなこと
浅く広く掘っていったらいろいろ出てきました

ep第21話【架空の話】49巻以降の話、想像してみた【勝手な話】

2015-06-25 14:28:27 | ガラスの・・・Fiction
ep第20話←                  →ep第22話
********************
「着いたぞ、マヤ」
呼びかけになんの反応もない助手席に真澄が目をやると、
そこにはスース―と寝息を立てるマヤがいた。
"ここしばらく働きづめだったからな"
亜弓の屋敷を後にして伊豆の別荘に向かう高速で、
寝ててもいいんだぞという真澄の言葉にかたくなに
大丈夫ですっ
と起きていたマヤだったが、
いつしか日も沈み、別荘の外観が見えてきたことで
安心したのだろう、一気に疲れがマヤに眠気として襲ってきた。
"本当に加減を知らない子だ、君は"
優しく頭を撫でた後、真澄は助手席側に回り、
ゆっくりとマヤを抱き上げて屋敷へと連れて行った。

「あれ?ここ・・・・いつの間に」
私寝ちゃったんですね、といってマヤがソファから体を起こしたのは、
伊豆について1時間ほど経った頃だった。
「よく眠れたか?マヤ」
声をかける真澄は一足先にシャワーを浴び、部屋着に着替えていた。
「お湯をはっておいたから、ゆっくり入ってくるといい。長時間座りっぱなしで
 疲れただろう」
真澄の言葉に、半分まどろみながらマヤは浴室へと向かっていった。

"マヤは今の関係に満足しているのだろうか"
紆余曲折を経てマヤと恋人関係になって数か月、
自らの責任とはいえ公にできない関係を強いているという思いは
常に真澄の心の奥深く根をはっていた。
個人的にはマヤとの関係を隠すつもりはないが、マヤの女優としての人生を
思うと、結果として周囲に明らかにすることが出来ないのが現実でもある。

『・・・結婚とかしちゃ、だめなのかな・・・』

今日の亜弓とマヤの会話、席を外していた真澄が部屋に戻ろうとした
その耳にふと届いたのは、消えそうなくらい小さなマヤの言葉だった。
"マヤ、君の本当の幸せは一体なんだ?"
演じるために生まれてきた少女、舞台の上で誰よりも輝ける天性の女優
俺は君が幸せになるためだったらどんなことでもする覚悟も自信もある。
しかし君の人生にとって、俺の存在は果たして・・・・。

「あがりました~~!長くなっちゃってごめんなさい!」
風呂上りの上気した顔で、マヤが元気に部屋に入ってきた。
既に眠気も醒め、すっきりした様子だ。
「冷凍庫にアイスがあるから、食べていいぞ」
わ~~~いとキッチンに向かうマヤの様子は、いつもと変わらない。
"俺だけか、どうかしてるのは"
開けた窓から流れ込む晩夏の風は少し秋の色合いを帯びていた。
「ちょっとテラスに出てみないか?」

**
「やっぱりここは空がきれいですね。星がきれい!」
伊豆で一緒に星を見よう・・・その言葉が不安定だったあの頃の自分にとって
どれほどの支えになっていたか、天空の輝きを数えながらマヤは今の幸せに
浸っていた。
そしてそんなマヤの背中をカウチにもたれながら真澄はじっと見ている。

"速水社長はどうお考えですの?北島マヤの結婚について。"

真澄は、亜弓の家を出る間際に、亜弓が自分にこっそり投げかけた質問を
思い返していた。
以前マヤのマネージャー、大原にも同様の質問をされたことがある。
その時は女優としてのマヤの成功を優先させると答えたし、その言葉に偽りはない。
しかしこうして東京から離れ、マヤと二人きりで過ごしていると、
仕事の仮面が少し不安定になってくるのかもしれない。
マヤと演劇が切っても切り離せないものであることは明白だし、
自分も、演技に情熱を燃やすマヤを見ることが何よりも好きだ。
しかし時にその瞳に自分がちゃんと映っているのか不安に思う気持ちがわかないわけではない。
もし許されるのなら、このままずっと二人で、二人だけで・・・

「夜風が冷たくなってきた。寒くないか?マヤ」
自分の心の中の妄想を振り払うかのように、無理やり現実世界に頭を切り替えようとするように
そろそろ部屋に入るか、と声をかける真澄に対し、
マヤは黒髪をゆるくなびかせながらゆっくりと振り返り、
「う~~~~んと」
と言うや否や真澄の膝の間にもぐりこみ、そばのブランケットに真澄と一緒に
くるまった。
「!?」
「もう少し。星を見ていたいです・・・・・一緒に・・・・」
マヤを背中から抱きしめる格好になった真澄からはマヤの顔は見えないが、
その真っ赤になっている耳同様、赤く染まっているのだろうと思うと愛おしさが高まり、
思わずギュッと抱きしめた。
「・・・・すごく分かります。」
唐突なマヤの言葉になにがだ?と尋ねると、
「速水さんの言ってたこと。」
とマヤがつぶやいた。
「俺が言ってたこと?」
「ええ。ここに来ると、本当の自分が取り戻せる気がする。」
本当に、ここに来ると、自分の気持ちに素直になれる気がする
「私、今はドラマの事とか、映画の事とか、とにかく演技の事で頭いっぱいで、
 速水さんの仕事の事とか全然分かってないし、何もできないけど、
 それでも速水さんが私の事を一番に思ってくれていること、私分かってます。」
突然のマヤの言葉に、まるで先ほどまでの自分の不安を見透かされていたような
驚きを感じた。
「でもやっぱり、普段の生活ではどこか緊張しちゃって、気付かないうちに速水さんとの間に
 距離を置いてしまっているのかもしれない。」
そんなつもりはないんですけどね!と首だけ振り返って真澄の顔を覗き込んだ。
「自分は大都芸能に所属している女優だし、速水さんは社長さんだし、
 周りの人に知られちゃいけないって気を使ってると、いったいどこで気を抜いたらいいか
 よく分からなくなってきちゃって・・・・」
でも、こうして伊豆に来ると、ただの北島マヤと速水真澄として一緒に居られる
それがうれしいんだとにっこりと話すマヤの声を聞いていると、これまでの漠然とした
不安感がまさにそれだったのだと真澄は気づかされた。
「俺の方こそーーー」
君に優しい言葉の一つもかけてあげられず、仕事の鬼の冷徹社長として
接しなければならない日常生活、もっと会いたいと思っても
なかなか互いのスケジュールを合わせることも難しい毎日。
21歳という一番恋をしたい年頃に、我慢を強いている自分を改めて悔やむ。
「悪いって思わないで下さいね。」
私全然気にしてませんから、とマヤは言った。
「速水さんがやることは全部私のためを思ってのことだって、ちゃんと分かってますから。
 そりゃ会えなくてさびしいって思う時もあるけど、こうしてわざわざ時間を作って
 伊豆にも連れて来てくれるし、仕事も私の事を考えて選んでくれてる。
 普段のこんな私も、演じている私も、両方ともしっかり見ていてくれる人は
 速水さんしかいません!それに・・・」
こうしている時は、どんなにか幸せーーー
消え入るようなか細い声で、自分の体に回された真澄の腕をさらに強く
自分にまきつけるようにしながら
マヤはいつかの阿古夜のようにそっと発した。
「・・・マヤ、君は俺の事が好きか?」

**
"なんだか速水さん、疲れているみたい"
お風呂から上がったマヤは、お酒を飲む真澄の様子がどこか沈みがちな事に気が付いた。
"ずっと働きづめで、今日なんて長時間運転して、そりゃ疲れてるにきまっているわよね"
それなのに自分はすっかり車で寝てしまい、お風呂まで沸かしてもらって、でも・・・
真澄が用意してくれたアイスを食べながら、真澄の表情が疲れによるものだけではないような
気がしていた。
「テラスに出ないか?」
真澄に誘われるまま外にでたマヤは、頭上に広がる星空を見上げながら、
かつて梅の里で見た星、船上で見た星、そして互いの思いを確認しあった日の星空を
順に思い返していた。
"思うだけではだめ。ちゃんと伝えないと"
自分の後ろにいる真澄が、今一体なにを考えているかは分からない、
その原因が自分かどうかも分からない、だけど私はそんな気持ちも全てまとめて
速水さんのために出来ることをやってあげたいーーーー
速水さんのため?違う、自分のため。
「寒くないか?」
部屋へ戻ろうと言いかけた真澄の言葉に、マヤの視点がピタリと止まる。
"もう少し・・・・このままで・・・・"
そう思った次の瞬間、マヤの体はするりと真澄のカウチに滑り込んでいた。
もう少しこうして、速水さんのあったかさを感じていたいから・・・
真澄の温かな胸に抱かれていると、ふとマヤの頭の中に阿古夜のセリフが浮かんできた
こうしている時は、どんなにか幸せーーー
今、間違いなく私は幸せだ・・・・

「君は俺の事が好きか?」
「・・・・はい。」
真澄の手をギュッと握ると、マヤは後ろを振り返り、真澄の目を見つめると改めて
「好きです、速水さん。」
と告げた。
「・・・・本当か?マヤ」
マヤの頬をなでながら、どこか切迫した表情で真澄が再び問う。
「はい、速水さん。私あなたの事が好きです。」
まっすぐ返すマヤの言葉にためらいはない。
「俺は・・・・俺は君を幸せにできているか?」
何度答えても真澄の瞳の陰りは消えるどころか、更に思いつめたように語気が強くなる
「俺は・・・・君に本当にすまないことをしてきた。どんなことをしても償えないようなことも・・・。
 そんな俺でも、君は好きだと言ってくれるのか?
 そんな俺が、君と一緒にいることは、君にとってしあわ・・・・」
真澄の抱える心の闇を溶かすように、マヤは真澄の言葉を唇で封じた。
「・・・・・・・」
「・・・・・・・幸せです、私。こうして速水さんが心を開いて、
 その本心に触れることができる今がとても幸せ。」
しばしの沈黙ののち、再び目を合わせたマヤの瞳は黒く濡れ光っていた。
真澄の不安は、自分に対しての負い目だったのだ、それが分かったマヤは
優しく包み込むように真澄の首に両腕を回した。
「速水さんは、どうですか?幸せですか?」
私と一緒にいて、幸せに感じてくれますか?今の私のように・・・
「・・・・信じられないんだ」
マヤの胸に顔をうずめるように強く抱きしめた真澄は、吐き出すように言葉を発した。
「俺なんかが、幸せになることを望んでいいのか。
 これまでいろいろな人を傷つけてきた。
 もちろん仕事として、必要な事もあっただろう。しかし、紫織さんや
 君に関しては、全くもって自分の責任で取り戻せない不幸に突き落としてしまった。
 全て俺のせいだ。
 それなのに今こうして、君を胸に抱き、君に好きだと言ってもらえる、
 そんな資格、俺にあるのか。・・・」
この幸せは、現実なのか・・・・・
「よく分からないんですけど・・」
マヤの拍子抜けするような声に、真澄は顔を上げた。
「速水さんが幸せじゃないと、私も幸せじゃないから、
 だから速水さんには幸せになってもらわないと困ります」
そう言ってぷっとほっぺたを膨らませたマヤの顔に、思わず真澄はふきだした。
「・・・そうか、俺の幸せは君の幸せか。」
「そうです!私は今、速水さんと一緒に居られてとっても幸せだから、
 速水さんもそうだといいなーって・・・・、そう思ってるんですけど・・・。」
そこまで言ってマヤは、自分はなんと恥ずかしいことをさっきから大きな声で
言っているのだろうという事に気が回り、一気に照れが顔に湧き上がってきた。
「・・・・・愛しているよ、マヤ」
悩むことなどなかったのだ、ただその都度、思う事をそのまま口に出して伝えれば良かったんだ。
「俺は君を幸せにしたい。なぜなら・・・」
君の幸せは俺の幸せなのだからーーー

重ね合わせた大小の指は、時に言葉より饒舌に気持ちを伝えあう。

**
"本当に元気だな・・・"
これが若さか、とは言いたくないが、という気持ちで真澄は波と戯れるマヤの姿を
少し離れた場所から眺めていた。
今朝は少し遅めの起床となった二人は、陽が高くなる前に海に出たいという
マヤの希望を叶えるため、浜辺へと出ていた。
ひとしきり砂の鳴る音やカニと遊んだりして過ごしたマヤは、
来週からは山籠もりだからと、波打ち際まで出て遊んでいる。
絶え間なく打ち寄せる波と追いかけっこをするようにはしゃぐマヤを見ながら、
真澄はこれからの事を考えていた。
"マヤ、君を縛り付けるようなことはしたくない・・・だが・・・"
一つの仕事の成功は、次の仕事へとつながる。
これから先、きっとマヤには更にたくさんのオファーが舞い込んでくることだろう。
芸能事務所の社長として、北島マヤをどう売っていくかは常に最重要懸案事項であることに
違いないが、同時に恋人としての自身のエゴも隠しようもなく存在する。
今までは憎まれ役に徹していればそれでよかった。
君の反抗心をたきつければ、それで君は必ず結果を残してきた。
意図的に君を挑発することは、同時に自分の気持ちを隠すための隠れ蓑でもあった。
しかし今は・・・・
「・・・・っうわっ!! な、なにするんだ、マヤ!!!!」
突然真澄の視界が歪み、一瞬息ができなくなった。
「・・・・うぎゃはははは!!だって速水さん、せっかく海に出ているのに
 なんだかつまんなそうなんだもんっ」
カニを獲りたいからと持ち出したバケツで、マヤが思いっきり真澄に水を浴びせたのだ。
「速水さん、水も滴るいい男です!」
全身ずぶ濡れの真澄に対し、けらけら笑いながら喜ぶマヤ。
「・・・俺を誰だと思っているんだ?」
ぴったりと顔に張り付いた髪の毛で、真澄の表情はうかがい知れない。
「ええ・・・っと・・・・」
「言ってくれていいんだぞ。封印したあだ名でもなんでも。」
「・・・・冷血漢の仕事の鬼・・・ゲジゲジで血も涙もないヤツ・・・・」
「分かってるじゃないか」
次の瞬間、逃げようとするマヤを一足早く捕まえると、強引に抱え込み、
そのまま海へとダイブした。

「・・・ははははは」
「ん?何がおかしいんだ?」
笑ってるんじゃありません、と言いながら息も絶え絶えにマヤは
速水さん・・・無茶しすぎ、と続けた。
「最初にやったのは君だぞ。お陰でこんなに濡れて、砂まみれだ。」
逃げるマヤを海に投げ込んだ真澄は、返す刀でマヤに引きずり込まれ、
結局二人して服を着たまま海の中で格闘を繰り広げることになった。
「大人気ないです、速水さん。」
「そうだな。少しはしゃぎすぎた。」
ここまでくればどうせ一緒だと、びしょ濡れの服のまま砂浜に寝転んだ真澄とマヤは
ふと目を見合わせると、互いのあまりにひどい恰好にどちらからともなく
笑い出した。
「とてもあの大都芸能の社長には見えませんね。」
「そっちこそ。絶世の天女様はどこにいった。」
「目の前にいますよ」
「・・・・見えんな」
再び笑い出したマヤを胸に抱くと、上半身を起こしながら
「昨日君は、正直に何でも言ってほしいと言っていたな」
と声をかけた。
「・・はい。速水さんが何を考えているか、ちゃんと知りたい。」
「それならば君も、正直に答えてくれるか?」
「もちろん!ていうか私はいつだって正直です。」
「そうか?その割には紫のバラの人の正体を知っていることは
 ずっと隠していたようだが・・・」
「それは!! だって・・・」
私が気づいたって知ったら、もう送ってくれなくなると思ったから・・・それに
「分かってるよ。君の気持ちは。」
それに紫のバラに関しては、自分の方がずっと隠してきたことだ。
「すまない、マヤ」
唐突な謝罪に、マヤはびっくりして真澄の顔を凝視する。
「俺は今まで女優を商品としてしか見ていなかった。
 商品として、どうやって売れば利益がでるか、
 旬の内にどれだけ稼げるか、そういう目でしか見てきたことがない。」
しかしだからこそ、的確にこの業界で実績を上げてきたのも事実である。
「君に関しても、そういう目で見てしまう事があるかもしれない。」
女優・北島マヤーーー紅天女女優としての肩書がありながら、
そのどんな役でもたちどころに憑依してしまう天性の才能・・・
「俺は君が13歳の頃からずっとそばで見守ってきた。だからこそ、
 君にとっての演劇がかけがえのない情熱の源であることを知っている。」
この小さな体に宿る演劇への燃えるような思いが、俺をひきつけてやまないんだ、
しかし・・・・
「もしこれから先、君が演劇か俺かどちらかを選ばなければならなくなったら、
 君はどっちを選ぶ・・?」
「え?」
思いもよらない質問に、マヤは口ごもる
「・・・・・いや、すまない。変なことを聞いた。忘れてくれ。」
そういって無理やり笑ってやり過ごそうとする真澄の噛み殺したような苦悩が
口の端に残っていることに気づいたマヤは、
「らしくないですね、速水さん。」
と鋭く射抜いた。
「言ってくれないんですか、いつもみたいに高飛車に。」
俺は欲しいと思ったものは全て手に入れるーーー
「女優の私も、普段の私も、欲しいなら両方とも手に入れるのが速水真澄でしょ?」
その顔は完全に大人の女性のものだった。
その迷いのない目に、真澄は自分が北島マヤをあなどっていたことに気づかされる。
"君はいつからそんな顔ができるようになったんだ"
「・・・・ふ、そうだな。そうだったな。欲しければ両方手に入れる。
 それが俺のやり方だ。」
じゃあ改めて言わせてもらう、と真澄はマヤを強く抱きしめた。
「俺から逃げられると思うなよ。女優としてのお前も、素の北島マヤとしても、
 お前は一生俺のものだ。」
二度と手離しはしないからな・・・覚悟しろ。


ep第20話←                  →ep第22話
~~~~解説・言い訳~~~~~~~~
いちゃいちゃラブラブするのかと思いきや、
もんもんしてしまいました、真澄さん。。
(ほんとはもっともんもんしていたのですが、
さすがにイラついたので削除しました)
それにしてもこの速水さん、いわゆる
「ワタシと仕事とどっちが大事なの!?」
って事言っちゃってますよね。女々しすぎたので
後半俺様です。
私の書き方として、目の前に映像があって、
それを文章で表現している所があるので、
自分では分かっているんだけど書いてない描写が
多々あると思います。すみません。
こういう時、絵が描けるといいのになと思います。

次の話からはまたしばらくフィクションメンバーに
よるオリジナルストーリーが続くでしょう。
~~~~~~~~~~~~~~~~


コメントを投稿