(み)生活

ネットで調べてもいまいち自分にフィットしないあんなこと、こんなこと
浅く広く掘っていったらいろいろ出てきました

( ´艸`)☆更新履歴☆(´~`ヾ)

(ガラスの・Fiction)49巻以降の話、想像してみた*INDEX (2019.9.23)・・記事はこちら ※ep第50話更新※
(ガラスの・INDEX)文庫版『ガラスの仮面』あらすじ*INDEX (2015.03.04)・・記事はこちら ※文庫版27巻更新※
(美味しん)美味しんぼ全巻一気読み (2014.10.05)・・記事はこちら ※05巻更新※
(孤独の)孤独のグルメマップ (2019.01.18)・・記事はこちら ※2018年大晦日SP更新完了※

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ep第17話【架空の話】49巻以降の話、想像してみた【勝手な話】

2015-06-05 15:17:18 | ガラスの・・・Fiction
ep第16話←                  →ep第18話
********************
シャワーを浴びたマヤは、簡単なフェイスケアを済ませると、柊の脇のベッドサイドに腰掛け、
ミネラルウォーターを一気に飲んだ。
「マヤさん、好きな人の結婚式に出席するって、いったいどんな気持ちなんでしょうね。」
唐突な問いかけに水を吹きこぼしそうになるマヤだったが、
見上げた柊の目は真剣で、きっと明日の撮影の事を考えているのだろう。
「私、怖いんです。」
18歳とは思えない度胸と人を惹きつける抜群の魅力を持っている柊あいだが、
いつもの人懐っこい笑顔は消え、どこかうつむきがちだ。
「去年は、初めてオーディションで勝ち取った朝ドラに出られるってだけで幸せで、
 演じる事に夢中でした。
 朝ドラって拘束時間も長いし、ほぼそれしかやれないから余計なこととかも
 耳にすることなく、演技に集中できてたって感じ。」
一躍国民的女優となり、朝ドラ後初の主演ドラマというプレッシャーは、
18歳の柊に重くのしかかっていたのだ。
「あいちゃん・・・」
「もし、この作品の視聴率次第で、私の女優人生も大きく変わる、
 事務所にそう言われてるんです。」
膝を抱えて不安そうな顔をする柊をみながら、マヤはかつて自身が出演した大河ドラマ
『天の輝き』を思い出していた。
姫川亜弓を抑え最優秀助演女優賞を受賞し、一躍注目を浴びた後の
初テレビドラマ・・・・
たくさんの妬みや僻みを受け、露骨な妨害工作も何度となく受けた。
そして信頼していた人に裏切られ、虹の世界ですべてを失って
女優の道もあきらめかけたあの時・・・・
「私、正直視聴率とかってよく分からないんだけど。」
「え?」
「ほら私、テレビドラマなんてほとんど出たことないし、唯一の作品は途中降板・・・、
 後は舞台ばかりだから、お客さんがどれくらい入っているか、とか、
 見に来ている人は楽しんでくれているかとかは肌で感じられるけど、
 テレビだとそうはいかないもん、難しいよね。」
柊ほどではないが、マヤにもまた視聴率というプレッシャーはかかっていた。
しかし真澄は決してそのことを口に出さないし、いつものように、役になりきって演じるだけだと
作品そのものに集中しようとしている。
「あいちゃんは、演じるの好き?」
「・・・・はい、大好きです!正直言ってマヤさんみたいに天才でもなんでもないから、
 演技力があるか、って言われると自信ないんですけど、
 それでも作品ごとにいろんな人になれるなんて、素敵な仕事だなと思いますっ!」
さっきまでの不安げな様子が少し消え、笑顔が出てきた柊に安心したマヤは、
「あいちゃん、このドラマでは私とあなたは幼なじみの同級生、
 友芽が悩んでいる時は全力で助けるのが、私の役目だから、
 どんなことでもいいから言ってね、そして一緒に解決していこ!」
両手で柊の手を包み込み、ギュッと握りしめると、柊はにっこりと笑顔を見せた。
「はい!ありがとうございます!」
マヤに抱きつきながら柊は、
「マヤさんみたいな、頼れる先輩にいろいろ演技の事教えてもらいながらお仕事できるなんて、
 本当に幸せです。」
柊の言葉に、自分もいつまでも自分の事だけでなく、もっと共演者と協力しながら
芝居を作り上げていくことの重要性を再認識した。

「私、ちょっと思ったんですけど・・・西都領って、大都芸能の速水真澄社長に似ていませんか?」
今度は、盛大に水を吹きこぼした。
「ええ??そうかな。」
「だってだって、西都領って27歳で、親の仕事を引き継いで沖縄のハウスウェディング会社の経営をしている
 若社長ですよね。
 かっこよくて女子社員の人気も高いけど仕事熱心で恋愛関係に興味はない、
 でもそのクールさがさらに女子を惹きつける・・・・なんて、まさに速水社長ですよ!」
マヤが初めて真澄に出会った時、真澄は24歳、当時はまだ社長秘書だったが
既に大都芸能次期社長の器だった。
彼が27歳といえば、ちょうどマヤが大都芸能に所属し、『天の輝き』に出演していた時期、
そう言われれば、人気は高かったようだが、女性に興味はないともっぱらの噂だったっけ・・・・。
「私、昨日記者会見場で速水社長にお会いした時、ピーンと来たんです。
 あ、こんな感じなんだろうなって!」
「でも速水さん、今32歳よ。あいちゃんから見たら・・・」
「14歳の年の差なんて、いまどき珍しくもないですよっ、特に芸能界では!!」
そう言い切る18歳のあいはなんだか頼もしい。
「そ、そうかな・・。」
「そーです。マヤさんは、速水さんとはおつきあい長いんですか?」
「え!?おおおおおおつきあい?」
動揺するマヤだったが、柊の質問が単純に女優と芸能事務所社長としてのものだということに
気付くと慌てて、13歳の頃からの知り合いだと伝えた。
「あ~、だからあんなに親しくされているんですね。」
人のいい柊は疑う事を知らない。
"ごめんね、あいちゃん。本当の事言えなくて・・・"
マヤは、人に隠し事をしなければならない後ろめたさと、
知らない人からみれば自分はやっぱり真澄には不釣り合いなんだなと
落胆する気持ちとが入り混じっていた。
その後も役作りに関して柊からの質問攻めが続き、
マヤはたじろぎながらも一生懸命答えていた。
"あいちゃんが輝けるよう、私もしっかり演じなきゃ・・・・・・・・"

**
沖縄での1週間のロケも終わり、クルーが東京に戻るのを待っていたかのように
沖縄は梅雨入りを迎えた。
1週間ずっと一緒にいたことで、スタッフやキャストの団結力も増している。
東京撮影からの参加組も、最初は輪に入るのに緊張感があったようだが、
同世代が多いとあってすぐに打ち解け、『天の輝き』の頃とは全然違った
和気あいあいとした雰囲気に、マヤはまるで劇団の仲間と居るような気持ちに
なった。
"まるで本当に大学生になったみたい!!"
マヤは演じる喜びに湧き立っていた。

「楽しそうだな。」
帰宅して部屋で台本を読んでいる所に、真澄がやってきた。
「あ、速水さん、お帰りなさい!今日は早かったんですね。」
「ああ、接待が思いのほか早く終わったんでな。」
スーツのジャケットを脱ぎながら、真澄がそういえばこれが届いたぞ、と
マヤに画像を見せた。

『ひと夏のままで』
大切なものは全部、この夏が教えてくれた・・・

沖縄の海を背景に仲良さそうに笑顔で抱き合うマヤと柊あい
今輝く二人の若手女優のはつらつとした輝きが存分にでた
美しいスチール写真だ。

「すごい!あいちゃんきれい」
ビジュアル画像を見せてもらいながらマヤが無邪気に笑った。
「どうだ?恋心は順調か?」
微笑みながら尋ねる真澄にマヤは、沖縄ですっかり柊と仲良くなったこと、
自分を慕って、頼ってくれる柊がとてもかわいくて仕方がないと話した。
疑いもなくうれしそうに話すマヤを見ながら真澄は、
かつて同様にマヤに親しく接近しながらマヤをおとしいれようと裏で
謀略を計っていた乙部のりえとその事務所の事を考えていた。

乙部のりえーー
田舎から出てきたイモっぽい冴えない女の子の仮面をかぶり
マヤに近づき、巧みに信頼関係を築きながら、陰でマヤの後釜を
虎視眈々と狙っていた女。

真澄の犯した罪、そしてそのことを巧みに利用されマヤの心を
ズタズタにした挙句、マヤの積み上げてきたもの一切を奪い取り、
一躍時の人としてスポットライトを浴びた。
しかし真の実力でそうなったわけではなく、すぐさま
真実を知った姫川亜弓によってその化けの皮をはがされた。
あれから歳月が流れ、一度はどん底にまで落ちたマヤが
紅天女を得、女優として再びこの世界に華麗に戻ってきた一方、
乙部のりえがその後どうなったかは、誰も知らないし興味すら抱かれていない。
もちろんもし万が一にでも女優として復帰しようとするのなら、
真澄も黙ってはいないだろうが。

「・・・・でね、あいちゃんが、西都領は速水さんのイメージなんだって!」
しばし心を外に飛ばしていた真澄の耳に、マヤの言葉が入ってきた。
「え?俺?」
「うん。若くして社長やってて、仕事の鬼で女に興味ないみたいな顔してるところが
 そっくりって」
「・・・・・褒められてないな、それは。」
柊演じる友芽の相手役、西都領を演じるのは、今男性歌手として絶大な人気を誇る
有賀了以、これが本格的な演技初経験というがなかなかどうしてかなりいける。
実年齢は30歳と、真澄より2歳ほど年下だが、27歳の役をやっていても全く違和感ない。
芸能事務所社長としての感覚が、かろうじて理性を繋いでいるとも知らず、
自分の目の前でらんらんと目を輝かせながらマヤは他の男の話をしている。
"つくづく、マヤの相手役でなくてよかったな"
ことマヤに関しては許容範囲が狭くなる。
「俺と有賀了以のどこが似てるって?」
なおもしゃべりつづけるマヤの腕をぐいっとひっぱりよせ、その口をふさいだ。
「・・・え?違いますよ!有賀さんじゃなくて、西都領ですよ!!」
有賀さんはもっとおもしろい人だし、下ネタとかいきなりいってもすっごくおしゃれだし・・・と
更に爆弾を投下する。
「し、下ネタ・・・だと?」
「(しまった・・・・)ち、違います、そんな下品なものじゃなくて、ちょっとした発言が
 おもしろいんですよ。つい笑っちゃう。」
マヤの有賀擁護はもう聞きたくない。
真澄は昔のようにマヤを強引に担ぎ上げると、じたばたするマヤを隣の部屋へと拉致した。
「きゃ~~~~、速水さんや、やめて!!子どもじゃないんだから、自分で歩けます」
「うるさい。全く君は相変わらず芸能界の怖さを分かっていない。
 何でもすぐ信用して。相手がもし悪意を持っていたらどうするんだ。君は自分の立場を
 もっとわきまえろ・・・・ブツブツブツ(以下略)」
もはや事務所社長の言葉とは言えないただの言いがかりのような説教を受け、
挙句の果てには日焼けの確認までしっかりされる羽目になったマヤだった。


ep第16話←                  →ep第18話
~~~~解説・言い訳~~~~~~~~
2、3話に1話ほど、マヤと真澄のいちゃいちゃ話を織り込みながら、
妄想話は広がります(笑)
引き続き劇中劇シリーズです。
今回のドラマに関係する皆様の私の中でのイメージですが、
柊あい→バレバレかと思いますが、能年玲奈ちゃんと有村架純ちゃんを足して
2で割ったイメージです
有賀了以→年がばれそうですが、「一つ屋根の下」の頃の福山雅治を
なんとなく想定しています

それからマネージャーの大原さんの名字は、金田一耕助の
映画を見ていて、大原麗子さんから拝借いたしました・・・。

役名と俳優の名前とがいっぱい出てきて、頭がこんがらがっちゃうと
思いますが、ご勘弁。

『ひと夏のままで』 TXテレビ7~9月期ドラマ
役名ーキャスト名
◇永織友芽(ながおり・ゆめ)・・・柊あい(ひいらぎ・あい)
◇戸田郁子(とだ・いくこ)・・・北島マヤ
◆西都領(さいと・りょう)・・・有賀了以(ありが・りょうい)
◇伊波薫(いなみ・かおり)(役者不明)※領の婚約者
◆風間頼(かざま・らい)(役者不明) ※友芽・郁子の幼なじみ(中2の時事故で死去)
◆田部健斗(たなべ・けんと)(役者不明)
◇槌屋美玲(つちや・みれい)(役者不明)
~~~~~~~~~~~~~~~~

ep第16話【架空の話】49巻以降の話、想像してみた【勝手な話】

2015-06-03 16:24:33 | ガラスの・・・Fiction
ep第15話←                  →ep第17話
********************
4月下旬、マヤは7月スタートののTXテレビ夏ドラマ制作発表記者会見に出席していた。

ヒロインを演じるのは、昨年末に人気朝ドラで一躍国民的女優となった柊あい、
その相手役は、これがドラマ初出演となる人気男性歌手の有賀了以という
注目のキャスティング。
更に紅天女女優北島マヤが、5年ぶりのテレビドラマ復帰という
話題性もあり、多くの報道陣が集まった。

『ひと夏のままで』
マヤは柊あい演じる主役の幼なじみの大学生を演じる。
夏らしいさわやかな恋と友情ストーリーということで、
髪をポニーテールに、白いシャツとさわやかな青いスカートで登壇したマヤは、
しきりに光るカメラのフラッシュにとまどいながらも笑顔を見せていた。
"この緊張感・・・・やっぱり慣れない・・・"
ここしばらくは紅天女にかかりきりで、いつもこういった会見では
中心に位置することが多かったマヤだったが、
本作品では助演、記者の質問も民放ドラマ初主演の柊あいに集中していた。

「北島さんっ!」
記者会見が終わり、控室に戻る廊下で、マヤは柊に声をかけられた。
「ドラマ、宜しくお願いします!」
柊は、マヤより3歳年下の18歳だが背が高くスレンダーな体型に
美しく整ったザ・美少女といった姿に、人懐っこい笑顔が輝く、
亜弓とはまた違った魅力のある女優だ。
「こ、こちらこそ。私しばらく舞台ばっかりだったので、ドラマ撮影は久々で・・・。
 むしろ迷惑かけてしまうと思いますが宜しくお願いします。」
二人並ぶとどう見てもマヤの方が年下に見えてしまう。
「マヤちゃんお疲れ様!あ、柊さんこんにちは。これから北島を宜しくお願いします。」
二人が話している所へ、マヤのマネージャーの大原が真澄と共に現れた。
「あ、大原さんに速水さん」
「お疲れ様。ロケは明日からだったな。準備はできてるのか?」
「全然。これからです・・・・何をもっていったらいいのやら。」
『ひと夏のままで』は沖縄を舞台にしたドラマ、
もうすぐ梅雨入りするその前に、これから1週間沖縄にロケに出発する。
そこで沖縄の景色が必要なシーンと、スチールの撮影を行う、かなりスケジュールのきつい
弾丸ロケとなりそうだ。
「頼むから真っ黒に日焼けして帰ってくるのだけは勘弁してくれ。」
小麦色の紅天女なんて話にならない、と笑う真澄に、分かってます!と答えるも
「君は分かっていてもついうっかり砂浜で日焼け止めも塗らずに寝てしまいそうだからな」
と真澄にからかわれ、ふくれっ面をするマヤをみて、思わず隣の柊がふきだした。
「ぷっ、北島さんって、ほんと表情豊かで面白いですね。」
「え、そ、そんなことないです!!そんなこと!!」
「マヤ、褒められてないぞ。柊くんは君が女優らしくないと言っているんだ。」
「え?」
違います!!と慌てて否定する柊に冗談だよ、と笑いながら
「じゃ、俺は次の仕事があるからここで。マヤ、気を付けて沖縄に行っておいで。」
と言い残し、真澄はその場を後にした。
「も~、ほんとにいっつもイヤミばっかり!!」
いーーだ、と舌を出すマヤに、大原が、
「マヤちゃん、あんまり変な顔しないの。ああみえても社長、わざわざ時間作って
 今日の記者発表に同席したんだから。」
と笑いながら軽くたしなめる。
「別に速水さんが来なくても・・・」
「そういう訳にはいかないでしょう。あなたにとってとても大事なテレビドラマ復帰作なんですから。」
そういうと大原は、控室で着替えるよう促した。
「・・・・さっきの、大都芸能の速水社長ですよね。」
「え?うん、そうだけど・・・」
「もっと怖い人だって聞いてたから、ちょっとびっくり。あんなに笑顔が素敵な方なんですね。」
「えがおが、すてき・・・」
マヤには皮肉な顔にしか思えなかったが、柊には違って映っていたらしい。
「北島さんって、すごいですね。大都芸能の社長さんと、あんなに堂々と話ができるなんて。」
柊の尊敬のまなざしをまともに受け、なんと答えればいいのか分からないマヤだった。

**
「うわーーーあ!広い空、青い海!沖縄だー!!」
記者発表翌日のフライトで沖縄へやってきたマヤは
目の前の絶景に目を見張った。
「うふふ、マヤさん、そんな格好じゃ速水社長のおっしゃる通り
小麦色になっちゃいますよ!」
後ろからそう声をかけた柊は、指先まで隠れたUVカットグローブに、
つばの広い帽子、更に付き人が日傘を差している。
「うわー、柊さん、女優さんって感じで、素敵。」
「マヤさん!だから柊さんはやめて下さいって。
年も芸歴も先輩なんですから、あいって呼んでください!」
その笑顔と同じくらい人懐っこい柊とマヤは、すっかり仲良くなっていた。

今回のロケに参加しているのは、主役の柊あいとマヤ、そして
柊の相手役である有賀了以、そして恋のライバルとなる女優もいる。


『ひと夏のままで』
大学3年生の永織友芽(柊あい)は、幼なじみで同じ大学に通う
友人戸田郁子(北島マヤ)とともに夏休みを利用して
沖縄にリゾートバイトにやってきた。
来年の今頃は就活で忙しく、きっとこれが学生時代最後の夏。
将来の夢など特にないけれど、もしかしたらこの夏、何かを
見つけられるかも、
そんな淡い期待を胸に沖縄にやってきた友芽と郁子は、
バイト先であるリゾートウェディングの会社で運命の出会いをする。
それは、かつて友芽、郁子と共に幼少時代を共に過ごし、
中学2年生の時に事故でなくなった幼なじみ、風間頼の面影を
強く残す男性、西都領(有賀了以)。
急速に接近する友芽と領、しかし領には婚約者がいて・・・。
そして郁子もまた、友芽にずっと言えずにいる秘密を抱えていた。


「マヤさん、セリフはもう頭に入ってるんですか?」
今日はポスター用のスチール撮影、そして明日は撮影初日だというのに
いきなりクライマックスである、領と婚約者の結婚式のシーンを撮影する。
「ええ、まあ一応。そんなに多くないけど」
「さすが、噂には聞いてましたけど、天才女優なんですね」
ちょうど雲がきれたタイミングで、柊がカメラマンに呼ばれ、
羽織っていたカーディガンを脱ぐと、華奢な体にぴったりの
白いワンピースをなびかせ、波打ち際に向かっていった。
「あいちゃん、きれい・・・」

マヤ演じる郁子は、子供の頃からずっと友芽と一緒に過ごしてきた。
友芽がいじめられていれば体を張って助け、友芽が進学校に進むと
いえば必死になって勉強し、同じ学校へ入学した。
郁子の初恋が亡き幼なじみ風間頼だということも知っていたし、
2人の仲を応援してもいた。
郁子になら何でも話せる、そう友芽に言われることが何よりも幸せ
だった、しかしひとつだけ、郁子はずっと隠していることがある。
一生伝えることのない思い、
友芽を友人以上に愛しているということを。

「むずかしいな・・・・」
柊の撮影を眺めながら、マヤはつぶやいた。
パラソルの下で台本を読むマヤに、マネージャーの大原が
ジュースを持ってきてくれた。
「まだ気持ちつかめない?」
「うーん、友芽を好きな気持ちは分かるんです。
 私も麗大好きだし、綺麗だなーってあこがれる気持ちも。
 でも、なんていうんだろう、いわゆる恋愛感情を持ってるんですよね、郁子は。
 その友情と愛情の違いみたいな所が。」
自分の恋愛感情もままならないのに、と思いながら、ジュースに口をつける。
「舞台と違ってドラマは撮る順番もバラバラだし、明日はいきなり
 クライマックスだし、こうして沖縄までロケにくることもなかなか
 できないから失敗できないしな~。」
「ん・・・、いわゆる公にできない恋心か。
 そう考えればマヤちゃんも想像しやすいんじゃない?」
人と人であることに変わりはない、
なのに同性であるというだけで一生その思いを伝えることの
できない切なさ、関係を壊したくなくて口にすることの出来ない恋心。
「相手が男だろうと女だろうと、関係ないんじゃない?恋が切ないのは」
そう言って大原はひっそりとウィンクをした。
"そうか・・・、誰にも言えない辛い恋をしてるんだ、郁子は"
マヤは遠くで笑い声をあげる柊の姿に、恋しい人の面影を
重ね合わせた。
あの頃の気持ち、思い出すのは辛いけど・・・。

**
「あとで、マヤさんの部屋に言ってもいいですか?」
スチール撮影終了後、クルーに加え合流した西都領役の
有賀了以も交え、先ほどまでドラマ成功決起会という名の宴会が
宿泊ホテルのレストランで行われていた。
男性陣は2次会へと繰り出していったが、マヤたちは明日の
撮影のため部屋に戻ることにしていた。
「え、いいですよ」
じゃ、シャワー浴びたら行きますねー、と言って元気に自室に入っていった柊の後姿を見つめていたマヤだったが、
「あ、いけない!速水さんに連絡するんだった!」
と急いで自分も部屋に入っていった。

「随分と遅かったな。」
真澄の携帯は数コールですぐに本人につながった。
「ごめんなさい。撮影の後みんなで食事会をやってて。」
「天気はどうだったか?雨は大丈夫だったか?」
「全然平気でした。一瞬パラパラって雨が降ったけど、すぐに晴れて。」
マヤは夢中で、沖縄の青い空や広い海の美しさ、そして柊あいと仲良くなっていることなどを
真澄に報告した。
「でもやっぱり・・・、海は伊豆が一番好き・・・かな?」
今度は速水さんと一緒に来たい!と無邪気に笑うマヤの声を聞くだけで、
真澄は今すぐにでも飛行機に飛び乗りたい衝動を抑えながら、
「役の方はどうだ?」
と尋ねた。
「それが・・・、なかなか大変なんですけど大原さんにもアドバイスをもらって。
 私の役、女同士の恋愛って考えるとすごく難しいんだけど、結局は
 誰にも気づかれちゃいけない恋愛をしているだけなんだって。
 誰よりも長く、ずっとそばにいて、何かあったら一番の支えになって、
 なのにすごく好きな事、その人に言えないなんて・・・・・この気持ち速水さん分かります?」
・・・・心当たりがありすぎて分かるどころではない。
「なんて切ない恋愛してるんだろうって。ねえ速水さん、やっぱり郁子はどうしてこんなに
 気持ちを隠そうとするんでしょうかね。」
・・・・鈍感なマヤはさらに残酷な刃を真澄に向ける。
「う・・・・。それは・・・・、あれだ。きっと」
嫌われたくないからーーー
今の関係を続けていれば、とりあえずずっとそばで見守り続けることは出来る
自分が、自分の心にしっかりと封をしさえすればーーーー
「言えなかったさ」
「え?」
君が輝く姿が見られれば、たとえこの思いが報われなくてもそれでいい
あの時は確かにそう思っていた。
あの日、マヤの気持ちに気づくまでは。
そしてもしマヤが、あの時自分に向かい合ってくれなければ・・・
「ありがとう」
「え?」
唐突な真澄の言葉の意味が分からない様子のマヤに
なんでもない、とごまかしながら真澄は続けて
「ところで日焼けはしてないか?」
と尋ねた。
「うん、大丈夫だと思う。大原さんがずっと気にしていてくれたから。」
「出発前の姿はしっかりと覚えているからな。君がどこをどれくらい日焼けしたかは、
 隠しても無駄だぞ。」
戻ってきたらチェックしてやる、という真澄の言葉に真っ赤になりながら、
「も~、速水さん何言ってるの!」
と抗議する。
「今夜はもう遅い。明日も早いんだろ。しっかり休んで撮影に備えなさい。」
名残惜しいがいつまでたっても切れない携帯電話を握り、真澄は優しく声をかけた。
たった一週間、今朝まで一緒にいたのにもうさびしいなんて。
「・・・早く会いたいな。」
会いたいという気持ちを素直にそのまま言葉にできる幸せをかみしめながら、
真澄はゆっくりと電話を切った。


「あれ、マヤさんまだシャワー浴びてなかったんですか?」
真澄の電話を切ると同時に部屋のベルがなり、マヤは携帯を握ったまま
柊を迎え入れた。
「あ、うんちょっと。電話してて。」
「あ~、もしかして・・・・恋人ですか??相手は!!」
「!?ち、違うわよ~~~~~こ、恋人だなんて!!!」
真っ赤になりながら否定するマヤを怪しみながら、柊は手にしていた
基礎化粧品セットをもって、奥のミニソファに腰掛けた。
「でも、戻ってきてから今までずっと電話してたんですよね・・・・・」
「あわわわわ、だ、だから電話だけじゃなくていろいろと・・・・・ちょ、ちょっと私、シャワー浴びてくるから。
 自由にしててね!!」
柊の追及から逃れるかのように、マヤは慌ててシャワールームへと駆け出す。
「ふ~~~~ん」
柊は、ベッドの上に残された、マヤの携帯電話をじっと見つめていた。
「じゃ一体・・・・誰と・・・・」

ep第15話←                  →ep第17話
~~~~解説・言い訳~~~~~~~~
柊あいちゃん・・・、某マンガ家さんの名前にくりそつだな・・・。
オリジナルキャラの名づけは適当です。
今後レギュラーキャラになるのかも不明です。
新しい人が出てきてくれると、自由に書けるのでとても楽です。
劇中劇のプロット考えるのも楽しかったりして。
ぐふふ、こりゃ連載が滞るのも無理ないや。
韓流って感じのベタな恋愛ドラマって感じですね、ザ・青春♪

オリジナル登場人物と劇中劇役名とがごちゃごちゃになって
分かりにくいと思うので、
しばらくここにキャスト一覧を載せておきます。
役者名が未記載の役はまだストーリー中に名前が出てきていない人物です。

『ひと夏のままで』 TXテレビ7~9月期ドラマ
役名ーキャスト名
◇永織友芽(ながおり・ゆめ)・・・柊あい(ひいらぎ・あい)
◇戸田郁子(とだ・いくこ)・・・北島マヤ
◆西都領(さいと・りょう)・・・有賀了以(ありが・りょうい)
◇伊波薫(いなみ・かおり)(役者不明)※領の婚約者
◆風間頼(かざま・らい)(役者不明) ※友芽・郁子の幼なじみ(中2の時事故で死去)
◆田部健斗(たなべ・けんと)(役者不明)
◇槌屋美玲(つちや・みれい)(役者不明)
~~~~~~~~~~~~~~~~

ep第15話【架空の話】49巻以降の話、想像してみた【勝手な話】

2015-06-01 00:28:21 | ガラスの・・・Fiction
【架空の話】49巻以降の話、想像してみた ep第15話 【勝手な話】

ep第14話←                  →ep第16話
********************
「明日もお仕事ですかー?」
大原が使っていたグラスを片付けながら、マヤが声をかけた。
「ああ。今日はパーティーから直帰したからな。その分仕事がたまっている。」
ネクタイを緩めながらゆっくり缶ビールを口にする真澄を見ながら、
マヤはさっき目をまん丸にして驚いていた大原のことを思い出していた。
「言ってなかったんですね、大原さんに。
 この部屋速水さんくることあるって。」
「そのようだな」
そう答えながら、真澄はあえてそのことを伝えていなかった水城の真意を探っていた。
「明日問いつめるか・・・」
「え、今なんて?」
「いや、なんでもない。それよりマヤ、次の仕事の話は聞いたか?」
「あ、そうだ!」
マヤは手元に残った作品の資料に目をやった。
大原が持ってきた仕事は、今年の7月クールのドラマと、来年公開予定の映画が2本あった。
「どうだ、やれそうか?」
まだ脚本も、さらにはタイトルも決まっていない段階だが、
大原が言っていた通り、マヤの役は主人公の友人という、あまり出番が多い役ではないが
設定が難しく、確かにかなりの演技力が必要とされそうだ。
「テレビドラマって、こんなにギリギリまで出来上がらないものなんですね。」
簡単なプロットと人物相関図を片手にちょっと不安げな顔をするマヤを見て、
「大河ドラマのように、何ヶ月も前から企画を練る作品もあれば、
 放送前に全作品撮り終えているものもある。
 しかし大半は放送と撮影がほぼ同時進行のものが多いし、
 視聴者の反響に応じてストーリーも出演場面も増えたり減ったりする。
 舞台とはまた違った意味での面白さがあるぞ、テレビドラマには。」
そう語りながら真澄は、かつてスキャンダルによって途中降板を余儀なくされた、
『天の輝き』の事を思い出した。
"あの時は本当に、すまないことをしたな・・・"
とっさに真澄はマヤの手を取り、ソファーに座る自分の胸の中にマヤを閉じ込めた。
何もいわず、ただじっとマヤを抱きしめる真澄のその温もりに、
自分を思いやる真澄の優しさを感じ、マヤも安心感を覚える。
「今日の君は、本当にきれいだった。」
「本当?ちょっと大人っぽいドレスで、うまく着こなせるか心配だったんですけど。」
マヤの髪を優しく梳きながら、真澄はキラキラ輝くマヤの目を見つめ、
「完全に、チビちゃんからは卒業したな」
と言い、マヤを赤面させた。
真澄の手は髪からすうっとマヤの手に流れ、小指に光る指輪の所で止まった。
「この指輪との相性も抜群だった。」
とそっとその手にキスをした。
「速水さん、今もホテル住まいしてるんですか?」
「ん?ああ、そうだな。」
紫織との完全訣別を決意し速水の屋敷を出てから半年、義父英介との確執も少しずつ解消、
鷹通との提携解消に伴う対策も少しずつ解決している段階だが、
未だ真澄は大都芸能近くのホテル暮しを続けている。
「ここに住んでもいいんだが・・・」
ぼそりとつぶやく真澄に、顔をさらに真っ赤にしながら
「そ、それは無理ですっ!!」
と断るマヤを意地悪な顔で見つめながら、
「冗談だよ」
と頭をぽんぽんと叩いた。
「君は今、とても大切な時期だからな」
今、万が一にも自分との関係が世間に知られたら、マヤのイメージダウンは免れない。
本当は今すぐに(いつかの青春スターのように)公然と交際宣言でもしたい所だが、
マヤがようやく戻ってきたこの虹の世界でもう一度、真から輝けるためになら、
真澄はどんな我慢だってする覚悟ができていた。
それでも今まで想いを伝えられずもがいていたあの頃よりはずっと幸せな我慢だ。
自分を強く抱きしめる真澄の熱を背中から感じながら、
真澄は初めて真澄がこの部屋にやってきた時の事を思い出していた。


先週、今日のパーティーの衣装合わせをして帰宅したマヤは、
その後もしばらくつきかげ+一角獣のメンバーとの宴会に参加して盛り上がっていたが、
皆帰っていた夜、片付けをしている時に玄関でガチャリという音がした。
「?」
そっと玄関を覗くと程なく、真澄が姿を表した。
「あ・・・・おかえりなさい。」
思わずそう声をかけたマヤに、一瞬びっくりした様子の真澄だったが、
「あ、た、ただいま」
とこたえた。

「引っ越しおめでとう」
真澄が買ってきてくれたケーキをほおばりながら、マヤは今日の引っ越しの事、
みんな大盛り上がりで楽しかったことなど、今日の出来事を矢継ぎ早に報告し、真澄を多いに笑わせた。
「水城さんから聞いてたけど、ほんとに速水さんが来るなんて」
先ほど玄関で遭遇したあと、この建物の隠し階段について説明を受けたマヤは目を見開きながら
「忍者屋敷みたい!」
と驚いていた。
「マヤもよく知っているとおり、俺は仕事で夜遅くなることが多い。
 マヤはマヤで、仕事が始まれば帰宅する時間も不規則になるだろう。
 なかなか一緒にいる時間もとれないと思うが、できれば少しだけでも
 2人でゆっくりする時を過ごせればと思っている」
不在の時にくるかもしれないが構わないか、という真澄の問いに、
「もちろん!」と笑顔で答えた。
「私の方こそ、演劇に集中しちゃうと何もお構いできなくなっちゃうと思いますけど、
 それでもよければ・・・・」
これまでもどかしくもすれ違い続けた2人にとって、ほんの数時間の
ささやかな交流も日常への活力につながる。
「本当は正々堂々と一緒に住みたい気持ちもあるが・・・」
その言葉に、マヤは思わず顔を真っ赤にしながら、
「いきなりそれは、だ、ダメですよ!!」
と声をあげた。
マヤにとっては自分が、そして真澄が深い心の傷を負わせた紫織の事が気にかかっていた。
精神的には大分回復し、マヤの紅天女公演も見にきてくれるなど、
徐々にかつての穏やかさを取り戻しつつある様子だったが、
それでももし万が一にでもマヤと真澄のことを知れば、
もしかしたらまた心にダメージを負ってしまうかもしれない。
以前、紫織と真澄が連れ立っている姿を目撃した時の、
心がきゅっと締め付けられるようなあの思い、
あの辛さをもし紫織が受けたらまた・・・、マヤはそれを気にしていた。
「あ、あの、速水さんにあまり会えないのはさびしいですけど、
 でも私にはやるべきこともあるし、きっとがんばれます。
 それに体は離れていても心はつながっているでしょ。
 私、そのことを信じられるから、ちょっとくらい会えなくても、我慢できます。」
マヤのいじらしい姿に思わずその華奢な体をぎゅっと抱きしめていた。


"速水さん、きっと淋しさを忘れたい時、こうやってくるんだ。
これが速水さんの甘え方なんだ"
初めて真澄がこの部屋に来た時にぎゅっと抱きしめられたことを
思い出しながら、マヤは背中から回された真澄の手を優しく撫でた。
「速水さんが言っていたとおり、大原さんって仕事が出来るって感じの素敵な女の方ですね」
水城さんにそっくり!というマヤの声に、真澄はあの長い黒髪にサングラスの向こうの冷ややかな目線を思い出し、
一瞬肩をすくめた。

**
「ちょっと、あんな大事なこと、ちゃんと教えておいてよ!!」
芸能界に平日も週末もないのは常だが、
所属芸能人やマネージャーのいるフロア以外はさすがに閑散としている、土曜日の大都芸能社。
昼前には出社するであろう上司のため、決裁すべき書類の整理をしていた水城の元を、
マヤのマネージャーとなった大原が訪ねていた。
「ああ、マヤちゃんのこと?」
涼しげな顔に少し笑いをたたえた水城の顔を恨めしそうに睨みつけながら、
買ってきたパンをほおばる。
「聞いたの?」
「と、いうよりお会いしましたよ。マヤちゃんの部屋で打ち合わせしてたら突然・・・」
「ああ・・・、来た?」
「もうびっくりよ。しかもただいま~なんていいながら」
「え?」
もう一緒に暮らしているのかとさすがの水城も驚いたようだったがそうではなく、
最初に部屋にきた時の流れで、何となく訪ねた時はそう言うようになったのだという話をきくと、
「ほんと・・・積年の思いだものね」
とため息をもらした。
「一体いつからなの?ていうかあなた、全部知ってるんでしょ」
白状しなさいよーという大原に笑いながら
「まあ、それはやっぱり当事者においおい聞いてもらった方が、
 部外者の私が話すとただの噂話でしょ。」
とはぐらかした。
それでも今後の仕事に差し障りがあるといけないので、
2人の交際はまだ始まったばかり、ちょうど紅天女の公演直前の辺りからだということや、
紫織との婚約解消からまだ間がないため、このことはまだ社内でも知る者はいないこと、
これからもトップシークレットとして、マスコミや業界内に知られることのないよう
万全の注意をはかってもらうと共に、
できる限りふたりの時間を調整してもらいたいとのことを水城は伝えた。
「上司の機嫌は私にとって死活問題なのよ」
「ふーん、ということは、どっちかというと社長の方がマヤちゃんにベタ惚れって感じなの?」
アイスコーヒーを飲みながら、大原は今までの真澄の社長としての仕事ぶりを思い出していた。
業務上そんなに多くはないが、比較的大都でも大掛かりなプロジェクトに関わることの多かった大原は、
これまで何度か会議等で真澄と同席する機会があった。
巷で言われる通り、冷血漢の仕事の鬼、情勢を見極める判断力と行動力はピカイチで、
厳しい言い回しもその先に明確なビジョンが分かるだけに、
大原のようなさばけた人間からすればむしろ仕事がしやすい上司といった印象だ。
そして何より女っ気がない・・・、そういうイメージだったのだが。
「女優やモデル相手に、あんなにそっけない男もいないと思ってたけど、意外だわ」
独り言のように声を漏らす大原に思わず笑いながら、
「別にそういう趣味ってわけじゃないわよ」
と際どい発言をする水城。
もらった資料によると、マヤの初舞台は13歳、中学2年生で、のちに跡を引き継ぐこととなる
紅天女の月影千草のもとで女優としての活動をスタートさせた。
真澄とはその直前、まだマヤが12歳の頃からの知り合いというから、もうかれこれ8年になる。
「例のあの事件に関しては?」
大原が尋ねたのはむろん、以前マヤが大都に所属していた高校時代のことだ。
「速水社長が、マヤちゃんのお母さんを隔離していたんでしょ。
 それがもとで、マヤちゃんは・・・」
「ええ、あの件は真澄さまも未だに心に深い自責の念を抱いているわ、口には出さないけれど」
水城はあの頃のまだ若かった速水の甘い判断と、その頃はまだ自覚のなかったマヤへの思い、
それに対する戸惑いが生んだ悲劇を簡単に説明した。
「誰よりも、マヤの演劇に対する情熱を知っているのが真澄さま、あの方よ。」
その情熱の炎を自らの手で消してしまった、その後誰も見向きもしなくなったマヤをただ一人、
女優として再起させるために奮闘していたその痛々しいまでの姿を水城は思い出す。
「あの頃、マヤが再び女優への道を歩むため、大都を離れることになったあの日から、
 ずっと大人になるのを待ちつづける決意をしていたんだわ、真澄さまは。」
多くを語らない水城ではあったが、その瞳に本来険しい顔をすべき所属女優の恋愛を応援する
感情を汲み取った大原は、これまでのマヤと真澄の間の試練を見る思いがした。
「いずれにしても、マヤちゃんは決して恋愛にうつつをぬかして仕事ができなくなるタイプじゃないから安心して、
 しっかりサポートしてあげてね。」
自分の気持ちに振り回されて、役の仮面がかぶれなくなることはあるけどね、とメガネをキラリとさせた。

「おはよう。」
真澄が出勤してきた。
「おはようございます」
「ああ大原くん、昨日は失礼したな。今日は仕事は?」
「午後からマヤちゃんのCMの打ち合わせを広告代理店の方と行います」
まだ企画の段階なので、マヤは立ち会わない。
「そうか。」
「では、私はこれで・・・」
秘書室をでようとする大原に、真澄は
「大原くん、ちょっと時間いいかな。社長室で少し話がしたい。
 水城くん、すまないがコーヒーを頼む」
というと、颯爽と自室に入っていった。
思わず水城の方を振り返った大原に、
「きっとこれから、こんな機会日常茶飯事になるわよ。」
とはっぱをかけた。

**
「マヤの新しいドラマに関してなんだが。」
水城の淹れたコーヒーを飲みながら、手にした資料に目を通したまま、
真澄は大原に声をかけた。
「どうだ、マヤはうまくはまりそうか?」
「はい。北島マヤの大都所属が発表されて以降、いろいろな仕事のオファーが
 届きましたが、大抵は紅天女のイメージを引きずったものでした。
 その中で、このドラマは等身大の学生の役ながら、
 心の葛藤を表現する難役です。
 主役ではありませんので最初の露出は少な目ですが、その分、
 ドラマをいい意味で引き立てるスパイスとしてのマヤの演技力は
 きっとすぐに視聴者にも伝わると思っています。」
「うむ。で、映画の方は?」
「1本は来年の3月公開の映画。それほど出番は多くありませんが、ストーリーの
 鍵を握る重要な役どころです。
 抜群の演技力を誇る元女優役ですので、短い出番でその凄みを表現できる
 若手女優としてマヤに指名が入りました。
 もう1本は来年5月公開予定の映画で、おととし国際映画祭で監督賞を受賞した
 監督の作品ということで、注目されています。
 こちらも派手な作品ではありませんが、私としてはこの映画が、
 マヤの国際的知名度を上げる作品になると確信しています。」
「ふむ・・・。」
多くは語らない真澄だったが、大原の要点をまとめた無駄のない報告に、
満足しているようだ。
「あの・・・私からひとつ聞いてもよろしいでしょうか。」
「・・ん?なんだね。」
「プライベートに関することなので、どこまで踏み込んでいいのか分からないのですが・・・。」
「ああ、俺とマヤのとのことか?」
「はい。」
正直大原は、北島マヤという新進気鋭の若手女優のこれからの売り込み戦略に、
これまで以上のやりがいを感じていた。
北島マヤなら、今後長きにわたって日本の芸能界で重要な位置を占め、
なくてはならない大きな存在に成長できる、その可能性をひしひしと感じているのだ。
だからこそ、マヤのそして所属事務所社長であり恋人でもある速水真澄の
考えをしっかり聞いておきたかったのだ。
「何を?」
「お二人のこれまでの事は、正直よく存じ上げませんが、私としてはそれは
 それほど重要ではありません。
 お聞きしたいのは今後どのようなおつきあいをされるつもりなのか、そしてその・・・」
男女の付き合いの先には結婚といういわゆる"ゴール"が存在するが・・・
「おれは、演じているマヤが好きだ」
手にした資料に向けた目線を外すことなく、真澄はそういった。
「マヤが女優としてこれからどんどん大きくなることをサポートしたい。
 そのためにもこれからも大都芸能社長としての職務を果たすことに邁進する覚悟だ。」
「はい。」
「君が感じている通り、芸能事務所の社長として、北島マヤのポテンシャルには
 計り知れないものを感じている。そして・・・」
通常なら結婚という、女性にとってこの上もない喜びを感じるであろう
人生のターニングポイントを犠牲としなければならない職業であることも・・・。
「だからこそ俺は、女優としてのマヤをしっかりサポートすることで、
 彼女の人生への責任を果たしたいと思っている。」
その言葉の向こうに大原は、真澄自身が本当はいますぐにでもマヤと一緒になりたいという
思いを抱え、それを深い愛情で封印し仕事に生きることを決意している事を感じ取った。
「社長・・・・」
「もっともマヤはまだ21歳。俺だって11歳も年上とはいえまだ32、男としてはまだまだだからな。」
そういって初めて顔を上げ、笑いながらコーヒーを飲む真澄の顔はとても美しく、
大原は初めて真澄の本当の姿を垣間見た気がした。
「社長、お任せください。マヤちゃんのことはしっかり私がサポートします。」
気づけば大原自身も、マヤと真澄を応援するファンのような気持ちになっていた。
「ありがとう。そういってくれると心強いよ。」
真澄はそういって手を差し出し、二人はしっかりと握手を交わした。


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~~~~解説・言い訳~~~~~~~~
私のイメージとしては、マヤは実は恋愛に淡白で、
結婚願望なんかはあまりないんじゃないかなと思っています。
あんなに速水さんのこと・・・好き!!!とかいいながら、
真澄と紫織さんの婚約を肯定してたりとか、ちょっと動きが不思議なんですよね。
私の妄想ストーリーでは無事マヤと真澄は交際を始めましたが、
とりあえずそんな感じののマヤちゃんは、恋愛感情さえしっかり
安定されれば、女優業に没頭するタイプかなと、
こりゃしばらく真澄さんの方が待つ身になりそうな予感を感じます。
マヤと真澄のいちゃいちゃも書きたいですが、
マヤの女優サクセスストーリーも書きたい!そして忘れていません、
亜弓さんのこともね☆☆
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