(み)生活

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ep第46話【架空の話】49巻以降の話、想像してみた【勝手な話】

2017-10-16 13:40:25 | ガラスの・・・Fiction
ep第45話←                  →ep第47話
********************
「昔一時帰国したときは、"ずいぶんと暗くなって"なんていわれたものです。」
そういって快活に笑う里美は、かつて青春スターと呼ばれたころを彷彿とさせる。

舞台『NATASHA』でマヤの相手役に決まった里美茂は
会見の後改めて舞台共演者達と顔合わせを済ませた後
大都芸能の社長室を訪ねていた。

「スケジュール調整がたいへんだったんじゃないか」
「まあそれは・・・、今朝日本に着いたばかりなので時差ぼけがひどいです」
マヤとの一件があったあと、しばらく海外留学というかたちでアメリカに渡っていた
里美は、一旦日本に戻ってきたものの再び、今度は本格的に渡米した。
その後しばらくはブロードウェイのオーディションを受けるも全く
引っかからない日々が続き、日本では里美茂という名前が遠く薄くなりかけた頃
とある人気舞台のオーディションに合格したことから、一気にその名が
知られるようになった。

今ではブロードウェイのみならず、ハリウッドでも活躍する俳優
SHIGERU SATOMIだ。

「マヤちゃんとまた、一緒に仕事ができるなんて
 僕の方から断る理由なんてありません」
むしろ決定権は大都、いや真澄のほうにあるのでは・・・といった表情の里美。
「・・・・まあ正直、この決定に頭を悩ませたことは事実だ。
 カビの生えたような過去の事を持ち出す輩がいないともかぎらん。」
そんなことにはならないよう、既に裏で手を回してはいるが、
なにより真澄にとっては、マヤの事が気にかかる。
「しかしそれ以上に、今回日本初公演となるブロードウェイミュージカル、
 君の力を借りて必ず成功へ導きたいと思っている。」
「そんなに買って頂いて・・・・恐縮です。」
言葉とは反対に、自信にあふれたその姿は、かつての青春スター時代とは違う
魅力にあふれていた。
「北島とは?」
「さっき少しだけ・・・・。時間が取れなくてそんなに長い話は
 できませんでしたが」
きれいになりましたね、とほほ笑んだ里美にとってマヤの記憶はまだ
高校生だった頃のままで止まっていたのだ。
「でもよかったです。こうして女優北島マヤと再会できて。」
もしあのまま彼女が引退していたら、
あの時僕に何かできることはなかったのかと
ずっと悩んでいただろう。
「何もせず、一人の女の子にたった一人で辛い思いをさせたまま
 僕だけ逃げてしまった・・・そういう思いをずっと引きずっていました。」
だからこそ、アメリカでマヤの復活、そして華々しい活躍のニュースを聞いて
どれほどうれしかったことか。
そして、いつかまた共演することができたなら、そのためにももっと自分を磨き
成長していかねばと鼓舞しながらアメリカで活動してきたのだと語る里美の目は
美しく輝いていた。
「この舞台は、北島のキャリアにとって必ず重要なものとなる。
 そのためにも宜しく頼むよ」
改めて二人が熱い握手を交わしたその時ーーーー

「速水さん!!ナイショにしてたなんてズルい!!!」
すごく驚いたんですから~~~~!という大音量の声とともに
勢いよく社長室のドアが開いた。
後ろから申し訳程度に静止する水城の声がむなしく響く。
「相手役が里美さんだったなんて!!!って・・・・・・。あ!!」
すごい勢いで入ってきたのはもちろんマヤ。
「あ、さ里美さん・・・・。先ほどは・・・」
先ほどまでの勢いはどこへやら、里美茂を目の前に、いったい何を
離したらいいのかしどろもどろになる。
「ハッハッハ!!!マヤちゃん、変わってないな~」
額に手を当てて笑い転げる里美の姿に、マヤの緊張も少しほぐれた。
「あの頃と同じ、元気ではつらつとしていて、周囲を明るくしてくれる」
そう言って里美はにっこりとほほ笑んだ。
"里美さんこそ、あの頃とちっとも変らない、さわやかな優しい笑顔・・・"

**
先ほどから脇を通り過ぎる人が何人となく振り返る。
それもそのはず、里美茂と北島マヤが二人向かい合って
お茶を飲んでいるのだ。

ここは大都芸能内カフェエリア。
セキュリティエリア内にあるため、通常は社員やタレントしか利用できない。
テレビや雑誌の記者に追われることもないため、芸能人同士が
利用することも多い。
オープンスペースなので込み入った話は出来ないが、ちょっとした
雑談や情報交換など、社員にとっても憩いの場だ。

真澄に文句を言うアテが外れたマヤだったが、せっかくだからと
里美にお茶に誘われた。
といってもかつて初恋宣言を行った二人、過去は過去と
どんなに本人たちが思っていても、もし外で写真誌にでも撮られたら
誤解は免れない。
そんな二人にはうってつけの場所だ。

「そんなに意外かな~、僕とマヤちゃんが一緒にいるのって」
そう言ってポリポリと頭をかく里美のしぐさは、昔と変わらない。
"なんだか、タイムスリップでもしたみたい"
マヤの心は、いやがおうにも過去へ飛ぶ。
「アメリカでも、マヤちゃんの活躍は耳にしていたよ」
随分と遅くなったけど、紅天女おめでとう
そう言って里美はにっこりと笑った。
「ありがとうございます!」
「あんなことがあって、底を見るようなつらい経験をよく乗り越えて
 ここまで大きくなったんだね・・」
まるで自分語りのようにつぶやいた里美は、思わず自分が発した
不用意な言葉に、慌ててマヤの方を見た。
「ゴメン、マヤちゃん・・・・。つらい記憶を思い出させるようなこと・・・」
「ううん。大丈夫です。だって全て真実、本当に起こったことなんだから」
全てを受け入れ、乗り越えていく。
そう決めたマヤの心は強かった。
「母さんのこと、今も思い出すと胸がきゅーっと締め付けられるような
 気持ちになるけれど、だけどそれでも・・・・それでも私には
 演技しかないってわかったから。それに・・・」
私以上に悔やみ、思ってくれる人もいる・・・・
言えない続きを飲み込みながら、マヤは濡れて輝くひとみをまっすぐ里美に向けた。
"本当に大きく、強くなったんだな・・・"
まだ子どもだったマヤが、一気に大人になったようで、里美は少し
寂しい気がした。
その後は先日放送されたマヤ主演のドラマの話や、
里美が体験したアメリカでのとんでもないエピソードなど
他愛もないことで盛り上がり、数年間の空白などまるでなかったように
二人の仲は急速に昔の様子を取り戻していった。
「じゃあ、マヤちゃん。次は稽古場で。」
「ハイ!里美さん、宜しくお願いします!」
手を振り返りながら颯爽とカフェを後にする里美からは
いつかも感じた優しい香りがした。

**
「随分と打ち解けあって・・・。早くも初恋の再燃かと湧き立っていますわ」
社員ですらそうだ、もしこれが一般人だったらと思うと
口では気にならないといいながらも灰皿に吸い殻が積もる。
「まあ、当の本人は全く気にしていないみたいで、早くも舞台の事で
 頭がいっぱい・・・といった感じでしたけど。」
慰めるつもりなのか、イヤミのつもりなのか、水城の報告はいちいち癇に障る。
「共演者同士が仲がいいのは結構なことだ」
言葉とは裏腹にタバコを灰皿に押し付けるしぐさは荒い。
「マヤは?」
「そのまま帰りました。それにしても、ずいぶんと立派になりましたわね、里美茂」
「ああそうだな。」
マヤと共演したころは、青春スターという肩書そのままに、
どこか未完成な若さが魅力だったが、本場アメリカブロードウェイそしてハリウッドで
磨かれた彼は、強さと自信を身に付けていた。
女優として実績を積んできたマヤが、実力を兼ね備えたかつての恋の相手と
再会する、それは一体どんな結果を生むのか・・・。
「あ、そうそうマヤちゃんから伝言を預かっていますわ。
 先ほど伝えそびれた文句を言いたいので
 今日はなるべく早く帰ってきてほしい・・・と」
相変わらずの能面だったが、その言葉に真澄は少し溜飲を下げた。


「ん?なんだこの匂いは・・・」
家に帰るやいなや、部屋中に漂うスパイシーな香りに
真澄は首をかしげた。
「・・・・あ、速水さん、お帰りなさい!ちょうどできた所ですよ!」
そう言って大きな鍋をぐるぐるとかき混ぜるマヤは、いつもと変わらぬ明るさだ。
「それは・・・」
「カレーです。ナターシャってインドで生活したこともあるんですよね。
 今日里美さんと話してたら途中からどうしてもカレーが食べたくて食べたくて・・・」
しかもちょっと本格的なやつですよ~といいながら食卓の準備をするマヤ。
その姿に、数年ぶりに初恋の人と再会したときめきは一切ない。
「・・・どうだったかい?里美茂と久々に話をして」
スーツを脱いだ真澄が再びダイニングに戻ってきた頃には
テーブルの上はマヤ渾身のカレーが準備されていた。
「変わらずさわやかで、素敵でした」
屈託なくマヤはそういって笑った。
「アメリカでの話が特に面白くて・・・。何度も吹き出しそうになっちゃった・・」
時間がなかったのでナンは買ってきたのだ、といいながら
エプロンを外したマヤと向い合せで座る。
「今日早く帰ってきて欲しい・・・というのはこれか?」
「はい!里美さんも加わって、いよいよ本格的に舞台稽古が始まったら
 私も家に帰ってくる時間が遅くなると思うし、せっかくカレーを作るなら
 絶対速水さんと一緒に食べたいって思って」
そう言ってカレーをパクパクと口にするマヤを見ていると
昼間の感情が嘘のように凪いでくる。
「・・・なつかしいな。」
ぽつりと真澄がつぶやいた。
「昔こうして母親と向かい合って食べてたな」
「私もです!なんかカレーって家族って感じがしますよね」
マヤのその言葉に、自分がうっかり発してしまった不用意な発言に気付き
あわてて謝ろうとしたが、
「・・・・マヤ?どうした?」
目の前のマヤの顔がみるみる赤くなっていき、思わずたずねた。
「い、いえ・・・。私ったら・・・。家族みたいだなんてまるで・・・」
真っ赤な頬に両手をあてながら、一人冷や汗と言い訳をつなげるマヤ
「・・・今を、そしてこれから先をずっと二人で見ていくのは楽しみだな」
そういうと真澄はゆっくりとマヤに手を伸ばし、熱くなった頬をやさしく包み込んだ。
"過去を悔やむ気持ちは変わらないが・・・・それ以上に未来を幸せにしてやりたい"

「・・・・速水さん、カレーがついちゃう・・・」
「かまわんさ」

**
「おはようございま~~~~す?」
稽古場に入ったマヤは、いつもと違う空気感に気付いた。
「あ、おはようマヤちゃん。今日からいよいよフルキャストね」
すれ違うスタッフも心なしか浮足立っている。
気付くと稽古場の一角に人が集まって何やら楽しそうだ。

「・・・で、いつのまにか荷物全部持ってかれちゃったんだ!」
「うそ!!さすがアメリカ!」
「それでその後どうしたと思う?」

人だかりの中心には里美茂、天性の魅力で早くもスタッフ・キャストの
心をつかんでいるようだ。
彼の話すエピソードはとても軽妙で、自然とみんなを笑顔にする。
「・・・・それから・・・あ、マヤちゃん!おはよう!」
人の輪の中心から大きく伸ばした手を振るしぐさにつられて
皆の目がマヤに集まった。
その瞬間、皆の好奇心の火種がすこしくすぶったように
ピリッとした緊張感が走る。
「あ、オハヨウゴザイマス」
「さっきからみんな、俺の話聞いて腹抱えてわらってんの
 ひどいよね、こっちはほんとに死ぬかと思ったのに・・」
わざとらしく怒ってみせる里美の姿に、一瞬の沈黙はすぐにかき消された。
「あ、愛都ちゃん」
意外な事に、人と群れることを好まないはずの子役、松多愛都が
里美のすぐ隣に座っていた。
「あ、北島さん。おはようございます」
普段は冷静で感情の見えない愛都にしてはめずらしく笑顔の姿は
12歳の年相応に幼くみえる。
「里美さんの話はとても勉強になります」
「そうかい?失敗談しか話してない気がするけど」
誤解しないでね、アメリカはとってもいい国だよ!!と熱弁する姿も好青年だ。
何気ない話し方にみえて、マヤに向けられがちな好奇の目線を
巧みに自分に寄せ、マヤを守っている。
「愛都ちゃんはマヤちゃんの子供時代を演じるんだろう?」
がんばってね、そう言ってほほえむ里美に対し、愛都もはにかむようにうなずいた。
「北島さんの名前に泥を塗らないように、一生懸命がんばります。」
そう言ってちらりとマヤの方をみた愛都の目は、言葉と違った
自信と、負けん気が垣間見えた。

いよいよ稽古がスタート。それぞれが持ち場に向かうため輪がゆっくりと
散らばっていく中、すっとマヤの横に来た里美はポンとマヤの肩をたたくと
「彼女には気を付けてね。」
と去り際にささやいた。
「え?」
「松多愛都・・・。彼女は舞台を荒すかもしれないよ」

"舞台あらし・・・"

それは、まだ演劇が、舞台が皆で作り上げるものだということを知らず
ただがむしゃらに演じることだけに必死だった幼い自分につけられた言葉・・・

マヤは先ほど愛都が見せた、一瞬のまなざしを思い出す。
それは、女優として対等に向かってくるライバルの目だった。



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~~~~解説・言い訳~~~~~~~~
『NATASHA』は6月上演舞台です~~ぎゃ=====過ぎちょん。
随分と間をあけてしまいましたが、時間があるタイミングで
どんどん進めていこう。

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