(み)生活

ネットで調べてもいまいち自分にフィットしないあんなこと、こんなこと
浅く広く掘っていったらいろいろ出てきました

( ´艸`)☆更新履歴☆(´~`ヾ)

(ガラスの・Fiction)49巻以降の話、想像してみた*INDEX (2019.9.23)・・記事はこちら ※ep第50話更新※
(ガラスの・INDEX)文庫版『ガラスの仮面』あらすじ*INDEX (2015.03.04)・・記事はこちら ※文庫版27巻更新※
(美味しん)美味しんぼ全巻一気読み (2014.10.05)・・記事はこちら ※05巻更新※
(孤独の)孤独のグルメマップ (2019.01.18)・・記事はこちら ※2018年大晦日SP更新完了※

(・Θ・)★せめて一言だけでも毎日更新★ (´∩ω∩`*)

レディスアパレルセレクトショップ
始めました☆☆
公式HP:-オーレオリン- オンラインショップ

【あらすじ・感想】文庫版・『ガラスの仮面』第09巻【ネタバレばれ】

2015-02-05 22:17:28 | ガラスの・・・あらすじ

※※『ガラスの仮面』文庫版読み返してます。あらすじと感想まとめてます。※※
※※内容ネタバレ、感想主観です。※※


仮面年表は こちら
紫のバラ心情移り変わりは こちら

49巻以降の話、想像してみた(FICTION)*INDEX*はこちら

--------------------------------------------------
『ガラスの仮面』文庫版第09巻 ※第8章(途中から)(途中まで)

第8章 華やかな迷路


誰かが故意に仕込んだガラス片によって、マヤは舌と歯ぐきを切ってしまう。
幸いにも傷は浅く、止血すれば大事には至らない程度で済んだ。
しかしもしガラス片を飲み込んでいたら・・・・。
いったい誰がこんなことを。
しかし今、マヤの周りにいる人間は、誰がやってもおかしくない、
そんな不穏な環境の中にマヤはいるのだ。
負けるもんですかっ!
味方は誰もいない、そんなスタジオに突然一人の少女が現れた。
田舎から出てきたばかりで熊本弁丸出しの素朴なあか抜けない娘、
乙部のりえはそんな少女だった・・・。

『天の輝き』が放映開始されると、マヤの周囲はさらに活気づく。
かくゆうマヤ自身、テレビの中の沙都子が自分であるとは信じられないくらいだ。

活躍を喜ぶ、つきかげの仲間たち、
いつの間にか白百合荘を出たまま、何の連絡もしてくれないことを寂しく思う桜小路、
そして、水城に指摘された11歳も年下の少女への愛に戸惑う真澄、

虹の世界で輝くマヤを、それぞれがそれぞれの場所で思いを巡らせながら見つめる。

日向電機のCM効果もあり、マヤの知名度はぐんぐんと上昇していた。
しかし一方で、撮影中のマヤへの嫌がらせもなくならない。
衣装の首筋に仕込まれた剃刀の刃、ズタズタに切り裂かれたマヤのポスター、
それでもマヤはそんな困難に臆することなく、満面の笑みを浮かべて今日も元気よくスタジオに入る。
どんな邪魔にあっても私は負けない、演技を辞めたくない、そしてそのためにも、
ーーー私の里美さんへの恋心は絶対知られちゃいけない!ーーー

その時、マヤが昇っていたマストがぐらりと揺らぎ、
マヤの体は宙吊りの状態に陥った。
このままでは落下してしまう、あわててクレーンを用意しようとした時、スタジオ内が停電し、暗闇に包まれる。
マヤの周辺で起こる不穏な動きを警戒して視察に来ていた真澄、そしてマヤの様子が気になってスタジオ見学に
訪れていた桜小路も、鍵がかかって開かないスタジオの中でマヤがどうなっているかも分からず焦る。
そして再びライトが点いた時、
マヤは里美茂の胸にしっかりと抱きかかえられていた。
何とか無事に救出されたマヤの手をしっかりと握りしめた里美はしばらくの間その手を放そうとしなかった。

先ほどの事件はやはり何者かによって故意に仕掛けられたものである可能性が高い。
リハ直前までしっかりと固定されていたマストは直前でボルトが一つ引き抜かれており、
停電も意図的に仕組まれたと思われる。
スタッフに心当たりについて話を聞いている真澄と水城、なにしろ動機を持っている者が多すぎる・・・。
内密に済ませる旨を伝えているところを、こっそり盗み聞きしている人影に気付いた真澄が声を上げると、
それは、この前からマヤの周りでにぎやかにしていた田舎娘、乙部のりえだった。

のりえは聞いた内容をさっそくマヤに告げ口に向かう。
何者かによって仕掛けられた罠、お願いだから私の演劇への思いをじゃましないでと、
マヤは祈るしかなかった。
しかし、その後もマヤへのいやがらせは続く。

人力車から降りるシーンで、踏み板が抜けやすく細工されていたり、
乱れた髪をくしでとくシーンで、くしに接着剤が仕込まれていたり、
雨に濡れた体を拭くシーンでは、タオルにこしょうが仕掛けられ、くしゃみが止まらなくなる。
最後には頭からバケツの水がかけられ、全身びしょ濡れになってしまった。
ずぶ濡れのマヤを、周囲の人間の笑い声が包み込む。
これではもう、撮影は続行できない。
スタッフが撮影中止を宣言しようとしたその時
「まってください。演らせてください、この恰好のままで」

そしてマヤは、ずぶ濡れの自らの体を最大限に生かし、あたかも大雨の中傘も差さず
使命を果たす為に急ぎ駆けつけた誇りたかき伯爵令嬢、沙都子を完璧に演じきった。

沙都子が妹のようにかわいがっていた女中の娘の死を弔い、
お手玉をしながらよく歌ったわらべ歌を口ずさむシーン。
お手玉の糸が抜かれ、使い物にならなくなると、マヤはそのままそばにあったミカンを手に取り、
それをお手玉のように涙を流して見事に悲しみを演じた。

誰もがあきらめるはずのハードルを軽やかに飛び越え、マヤの演劇への情熱は空を駆ける。
その底知れないパワーと才能に、いやがらせを企てていた者も畏怖の念を禁じ得ない。
こうしてマヤは自らの実力と努力で、敵をひとりまたひとりと納得させていったのだった。

里美に接近するマヤをいぶかしく思う里美茂の親衛隊たちは、
桜小路がマヤに好意を寄せていることに気付き、マヤを誘惑するようお膳立てをする。
久しぶりに二人で会ったマヤと桜小路。
ずっと好きだったと告げる桜小路に、マヤは応えることができなかった。
「さようなら、マヤちゃん」
最後にマヤをぎゅっと抱きしめた後、桜小路はマヤの元を去って行った。

**

放映回を重ねるにしたがって、巷のマヤ人気はどんどん上昇の一途だった。
マヤが来るというイベントには観客が殺到し、テレビ局にはマヤの出番をもっと増やせと
投書が山のように届く。
また沙都子だけでなく、初主演映画『白いジャングル』では、ドジでそそっかしくてでも明るく勇敢な少女未央を
可愛く演じ、さらに魅力を開花させる。
テレビドラマと映画撮影、休みなどないハードスケジュールも、
演じることが生きるすべてのマヤにとって苦ではない。
自分が演技によってさまざまな人生を生きることができる事の喜びのほうが大きかった。
しかしそんな毎日の中で、マネージャーを務める水城は、
最近とみにマヤに付きまとい、なれなれしく接してくる乙部のりえが気になり始めていた。

『白いジャングル』完成披露試写会
相変わらず慣れないパーティーだったが、今やマヤの周囲には自然と多くの人が集まり、
次から次へと称賛と羨望の言葉をかけられる。
そして見事マヤの売り出しに成功した真澄の手腕を改めて思い知らされるのだった。

ぎこちなさしかない張り付いた笑顔で真澄とむりやり挨拶を交わしたマヤだったが、
届けられた紫のバラの花束を胸に抱え、喜びの表情を浮かべる。
その様子を穏やかに見つめていた真澄は、会場に山崎竜子の姿を見つけると彼女近づき、
新たな仕事のオファーを持ち寄って、巧みに山崎のマヤへの攻撃をかわすことに成功した。

全ては順調かと思われた、まさにその時・・・・
会場に里美茂が姿を現した。
里美自身も別の映画撮影があり多忙にもかかわらず、終わるや否や駆けつけたことに興味を抱く記者。
そして里美は大勢の人の前で堂々と宣言した。
「ぼくは彼女が好きです。」
芸能人なら、ファンの事を考え、恋はご法度、そう水城に厳しく指導されていたマヤだったが、
「・・・・好きです」
気持ちを隠すことはできなかった。
そして里美とマヤは堂々と初恋宣言をしたのだった。

その様子を見ていた真澄は思わずシャンパングラスを握りつぶしてしまう。
マヤの売り出しへの懸念や、今後の対策など考える余裕はなく、真澄はただ、
自分が嫉妬をしていることにショックを隠せずにいるのだった。

里美は早速マヤを海へドライブデートに連れて行く。
多忙な二人の束の間の休息。波打ち際で戯れる二人の距離は急速に近づく。
『天の輝き』の撮影中も仲良く会話をする二人、
さわやかカップルとおおむね好意的に受け取られた熱愛ニュースではあったが、
このままでは里美のファンや高校生であるマヤに対して
PTAからの反感が高まってしまい、マイナスになる。
更にますますなれなれしく付きまとう乙部のりえといい、
水城の頭を悩ませる問題は尽きない。

『白いジャングル』劇場公開
大入り超満員で大ヒットとなり、マヤの知名度は今までのそれとはくらべものにもならない。
水城はこれがスターというものだと言う、しかし今までの自分と何が違うのだろう、
私はただお芝居が好きで、演技がしたい。
そしていつか『紅天女』を演じることができたら・・・!

そんなマヤを、里美茂の親衛隊が襲撃する。
手荒く殴られ蹴られ、大事な顔に傷をつけられそうになるまさにその窮地を救ったのは・・・
速水真澄だった。

真澄はあっという間に親衛隊を打ち負かすと、二度とマヤに手を出さないようにきつく釘を刺し、
汚れたマヤの顔を濡らした自らのハンカチでぬぐった。
そこへ慌てて駆けつけた里美にマヤを託すと、真澄は腹立ち気にその場を後にした。
「今後きみのせいでこの子がかすり傷でも負うようなことがあれば、おれはきみを許さんぞ!」

**

マヤの活躍がうれしくも、まったく連絡も寄越してこず、ましてや突然の里美との交際宣言など、
別世界に向かっているような寂しさを感じていた劇団つきかげのメンバー。
マヤに送った手紙は水城の手によって破り捨てられ、マヤの手元には届いていないのだが、
そんな事を知る由もないかつての仲間たちは
「マヤは変わってしまった、自分たちの知っているあの子ではない」と
マヤとの心の距離がどんどん離れていく。

スターの道と引き換えに失っていく大切な思い出や仲間たち、
寂しさが募ると思い出されるのは母の面影。
マヤはただひたすら母に会いたいと願うのだった。

その頃真澄は、ひた隠しにしてきたマヤの母を、今秋大都劇場で上演される舞台『シャングリラ』の
初日に大々的に発表する段取りを組んでいた。
”行方不明の母発見! 盲目の身で療養中”
”『シャングリラ』初日舞台で涙の母娘対面!”
マヤのそして舞台にとってもこれ以上の宣伝効果はないだろう。
ただひと目、母に会いたいと願うマヤの心を利用して・・・・
仕事に情けは無用、真澄は自らの心に湧き上がらるためらいの感情に蓋をした。

病院に軟禁状態でテレビも雑誌の情報も何も与えられない状況に
マヤの母、春は疑惑の念を抱き始めていた。
部屋には鍵をかけられ、外に出られないように監視されているような。
そしてとうとう、院長が大都芸能の人間と話している会話を耳にしてしまう。
マヤが、いまや一躍時の人となり、女優としてドラマに映画にと大活躍している事をーーー。

マヤに会いたい一心で、春は大嵐の中病院を抜け出した。
何としても東京へ、そしてマヤに会いにいくために。
しかし目も見えない状態で一人手探り足探りで長野から東京に向かうのはあまりに無謀な事だった。
途中親切なトラック運転手に助けてもらい、車に乗せてもらうが、
長い間雨にうたれていたせいでどんどん体調は悪化していく。
見かねた運転手が春を病院へ連れて行こうとするが、また療養所に連れ戻されることを懸念し、
春はそのままトラックを後にまた歩いて東京へ向かっていく。
車にぶつかり大けがを負いながらなんとかたどり着いたのはとある映画館。
『白いジャングル』で久しぶりに聞くマヤの声を感じながら、
春は永遠の眠りについた。
まるでマヤの演技を見ていたかのように、穏やかな微笑みを浮かべたまま・・・・。

久しぶりの再会が、物言わぬ冷たい姿となるとは、マヤは予想すらしていなかった。
ただ、目の前の事が嘘であったらいい。
横たわる母に家を飛び出してからの自分の事をずっと語り続けるマヤ、
片時も離れたくないとしがみつくマヤに、強引に沙都子の感情を呼び起こし、何とか
撮影に復帰させる水城だったが、
母の遺影を抱え、雨にうたれ続けるマヤにかける言葉もなかった。
そして葬儀が終わった後も遺骨を抱えたまま食事も摂らず、ずっと母の事を思って座り込むマヤは、
里美と話すことも拒絶し、ただからっぽのままになっていた。

遺骨を抱えてただ母の事を思うマヤの姿を見た真澄は、
自らの犯した罪の大きさに、生まれて初めて罪悪感というものを覚えた。
そしてこれまで築いてきた自分自身の鉄壁の心が大きく崩れていくのを感じていた。

舞台『シャングリラ』初日まであと一週間ーーーーー

第10巻へは・・・こちらから
*****感想**************************************
つらいよー、つらいよー、まとめるのつらいよー。
確かにすごく重要なエピソード満載なんですよ。

マヤ、里美茂と初恋宣言!
真澄、マヤの母を死に追いやったことを一生の十字架とする
マヤ、真澄は自分の母を殺した生涯の敵!になる

後々まで、というか今もってずっと引きずる問題ではありますが、
やっぱつらいのよ~、読み返すのは。

それでもなんとか一生懸命読み返して得られたのは、
真澄が一応この時まではいつもの冷血漢的に仕事に取り組んでいたのだということが分かったくらい
ですかね。

つらいつらい言いすぎましたが、次はいよいよみんな大好き、今こそ認めようの巻なので、
頑張って更新します☆

【あらすじ・感想】文庫版・『ガラスの仮面』第08巻【ネタバレばれ】

2015-02-05 02:29:16 | ガラスの・・・あらすじ
※※『ガラスの仮面』文庫版読み返してます。あらすじと感想まとめてます。※※
※※内容ネタバレ、感想主観です。※※


仮面年表は こちら
紫のバラ心情移り変わりは こちら

49巻以降の話、想像してみた(FICTION)*INDEX*はこちら

--------------------------------------------------
『ガラスの仮面』文庫版第08巻 ※第7章(途中から)第8章(途中まで)

第7章 炎のエチュード

『奇跡の人』は演劇界の話題を独占していた。
特にマヤの演じるヘレン・ケラーは、先の見えない展開と、
姫川歌子演じるサリバンとのコンビネーションが、毎回新たなストーリーを紡ぎだし、
見るたびに異なる思いを抱かせると評判になり、リピーターが続出していた。
その点が、常に安定した集客ながら、観客の感想もほぼ同じという
亜弓のヘレンとの最大の違いであった。

回を重ねるごとに増えるファンや取材の申し込みに、戸惑うマヤ。
舞台を降りるとただの女の子、取り立てた魅力は放たない。
いつだって、彼女が一番輝く場所は舞台の上なのだから。
終演後、劇場を訪問していた真澄とうっかり目が合ってしまったマヤは、
前回同様、大声であきれるほどに馬鹿丁寧な挨拶をし、真澄を笑わせる。
ひきつった顔で必死に取り繕う様子のマヤに、
いつになったら君はそんな顔つきで自分を見るのをやめてくれるんだ?
と少し憂いを帯びた目をしながら言い去って行った。
「まるでムカデかケムシかゴキブリでも見たって顔つきをする・・・」
「ふんだ、ゴキブリのほうがまだ可愛げがありますよ!大都芸能の冷血漢、人でなし、鬼!」

マヤと真澄のやりとりを聞いた麗は、速水真澄の真意を冷静に分析する。
本当に潰れてほしければ、挨拶や礼儀は大切なんてアドバイス、する必要はない。
そのまま放っておけば、勝手に恥をかいて自滅するのだから。
きっと速水はマヤの事を思って言ったのだろうと。
しかしマヤはおよそそんなことは信じることができないのだった。

ある日の公演終了後、カーテンコールでマヤに観客席から一輪の紫のバラが投げ込まれた。
紫のバラの人が来ている!
終演後衣装もそのままに慌ててロビーに飛び出たマヤだったが
それらしい姿はどこにも見えない。
反対にマヤに気付いた観客たちが周囲に集まってきて、ちょっとした騒ぎになってしまった。
ロビーに飾られていた柱にぶつかり、マヤに向かって倒れ掛かってきた。
とっさにその柱を支え、マヤの身を守ったのは、ほかならぬ真澄だった。
自分を憎んでいるはずのこの人がどうして・・・。
しかし真澄はまるで自分の真意を隠すかのように冷たくマヤに言い放った。
「うちの大事な商品に傷がついたらたまらんからな、千秋楽までまだある」

やっぱりいい人でなんかあるはずがない!マヤの中に真澄への憎しみが再燃し、
その様子を悟って真澄は静かに安堵の気持ちを抱く。
それ以上に、辛く苦しい気持ちがあることに気付かないようにするが如く・・・。

**

『奇跡の人』は大熱狂のうちに、亜弓の回、そしてマヤの回と千秋楽を迎えた。
その打ち上げの間隙を縫うかのように、マヤをスカウトしようとする芸能社の人間の
言葉巧みな誘い文句を受けていると、おもむろに現れた真澄がその話をさえぎるようにマヤを連れ去り、
強引に車に乗せた。
せっかくの主役級オファーを妨害されて怒り心頭のマヤに対し、
三流の芸能社とつきあっていると自分自身も三流に見られるぞと冷静に語る真澄。
そして、マヤが現在アカデミー芸術祭演劇部門の最優秀助演女優賞候補であることを伝えた。
毎年、アカデミー芸術祭で賞をとった俳優は、春からの大河ドラマの出演が約束されており、
それはとりもなおさずスターへの道に他ならない。
そんなマヤの現在の立場を知るからこそ、マヤの為にと真澄は動いたのだ。

同じく助演女優賞にノミネートされていた亜弓の心は晴れなかった。
公演の間、日を追うごとにマヤの演技が話題となってたことも知っていたが、
何より亜弓は、一度も歌子から頬にキスをされることなどなかったことに傷ついていた。
なぜ、歌子は私ではなくマヤに、そしてなぜ、私ではなくマヤが最有力候補に・・・・

新日帝ホテル 孔雀の間で開催されるアカデミー芸術祭、
演劇部門
音楽部門
舞踊部門
大衆芸能部門
映画部門
ラジオ部門
テレビ部門
レコード部門
能楽部門
まさに芸能界の華やかさの集結ともいえるその授賞式が今まさに始まろうとしていた。
特に演劇部門は受賞者がそのままMBAテレビの大河ドラマ出演につながるだけに注目の的である。

明らかに場違いな自分の姿、それなのにそんな自分が助演女優賞の最有力候補、
会場に現れた瞬間ぱっとスポットライトが当たったように光り輝く姫川亜弓でなく、こんな自分が、まさか。
きっとこれは夢だ、目が覚めれば消える夢の世界だ。
そう思いながらじっと座るマヤの耳に、発表の声が届く。

助演女優賞:北島マヤ


舞台上には受賞した華やかなスターたちに紛れてマヤの姿もあった。
姫川歌子はアニー・サリバン役で主演女優賞を獲得、
姫川亜弓初めての敗北か、と記者たちが囁くなか、颯爽と舞台上の母、そしてマヤに
お祝いの言葉をかける亜弓、その顔にこれまでのような悲壮感はみじんもない。

亜弓はマヤの授賞理由が「新鮮なヘレン」であったことに納得がいったのだ。
自分のヘレンは「完璧」だった。

舞台上にマヤと亜弓が並んでいたちょうどその時、
いつの間にか会場に来ていた月影千草が突如登壇し、
公に「紅天女」の候補としてマヤをそして亜弓の名を宣言した。
今まで裏工作を重ねながら、何としても自分のものにしようと画策してきた真澄をはじめ
大都芸能だったが、こうして大勢の目撃者のいる前で堂々と宣言されてしまっては手も足も出ない。
作戦勝ちを皮肉にほめる真澄に対し、改めて千草は上演権を手放すことはないと通告する。

アカデミー芸術祭 助演女優賞、そして幻の舞台「紅天女」の候補女優・・・・
マヤに思いもよらない肩書きが一挙にかかり、そしてそれが徐々にマヤの女優人生を変えていくことになるーーー

授与式後のパーティーでも、相変わらずマヤは隅でもじもじすることしかできず、
満足に自分を売り込むこともできずにいた。
華やかなパーティーの中心にいるのは、大都芸能の速水真澄だった。
今年も大都芸能の躍進はとどまるところを知らず、12部門独占と圧巻の結果、
その若社長としての手腕はもちろんのこと、
ハンサムで普通にしていても女性の注目を浴びる真澄だが、
事結婚に関しては冷酷さが際立つ。
愛だの恋だのはヒマなくてはできない、そんな暇があるなら仕事をしているほうがおもしろい
あからさまな女優のアプローチをけんもほろろにいなす真澄を、ライバル社の人間は歯がゆい思いで
見ていた。
あの冷血漢で仕事の鬼の弱点はいったいなんなのか・・・。

そんな注目の的は果たして、壁際にポツンと佇むマヤにダンスを申し込んだ。

あの速水真澄がダンス相手に選んだのが、まさかあんな地味な少女だとは。
いやでもマヤと真澄に視線が集中する。
たどたどしいマヤを巧みにリードしながら、真澄は自分を覚えてもらえるように、
どうすれば目立つのかを考えろとマヤにアドバイスする。
この世界は、才能だけでは生きていけない、
それがスターへの道なのだと。

しばらくはおとなしく真澄の言葉を聞いていたマヤだったが、真澄の
「金の卵を孵る前にこわしたくない」という発言に激高した勢いで隣の人の足につまづいてしまう。
とっさにしがみついた真澄の胸、その感触はなにかに似ている、
そう、あの夏長野の別荘で触れたあの・・・。
マヤがなにかに気づきかけていることを察した真澄はさっとマヤを突き放すと、慌ててその場を後にした。
真澄とのダンスは充分に効果を発揮し、マヤはたくさんの著名人に顔を売ることができた。
その様子を静かに見ていた水城は、真澄の心の中の変化を冷静に分析していた。


助演女優賞獲得、そして大河ドラマ出演決定、
マヤの前途を祝してつきかげと一角獣の仲間たちが集まってくれた。
普通なら活躍をねたむ者も出ておかしくないはずのこの世界、
しかし不思議とマヤの周りには心からマヤの門出を祝い、応援する者しかいなかった。

桜小路に電話で受賞の事、そして大河ドラマ出演の事を伝えるマヤ、
しかし桜小路の反応はつれなく、どこか距離を感じる声にマヤはその理由がわからなかった。

その頃長野の福井病院では、
結核と栄養失調の後遺症でほとんど目が見えなくなったマヤの母、春が
いつかの切り抜きをボロボロになるまで握りしめながら
何処で何をしているとも知れないわが子の事を思っていたーーー

MBAテレビ局、
大河ドラマの記者会見が行われる。
初めて足を踏み入れる華やかな世界。
激しくたかれるフラッシュに、これまで経験したことのないスタジオセットやカメラの数、
どこか普通の人とは違う業界人同士のやりとり。
右も左もわからないまま、ただマヤは目の前の道を進み、その扉の向こうに足を踏み出した。

月影千草は深く沈んだ顔を見せていた。
あの子はスターになるかもしれない、でも大失敗するかもしれない。
女優としてダメになるか、大きく飛躍するか、
紅天女を生み出すため、千草はマヤにそれを賭けていたーーー。


第8章 華やかな迷路

MBAテレビ局大河ドラマ『天の輝き』
激動の明治時代、文明開化の嵐の中で
天の輝きだけを仰ぎみて生きる情熱的な一人の男を中心に
明治という時代を生きるさまざまな群像を描く

森平四郎を中心に、その恋の相手役となるおりん、
おりんの敵役である田沼虎次郎とその息子田沼満そして、その妹沙都子ーーー

マヤはその伯爵令嬢 田沼沙都子を演じる

テレビドラマは初めての経験、華やかな記者会見から衣装合わせ、スポンサー企業との顔合わせなど
息つく暇もないことに振り回されながらも、マヤはただ
演じられることの喜びに浸っていた。
平凡ななんのとりえもない自分が、なんにだってなれる、無限の可能性がある。

しかしそんな喜びは徐々に急激な現実世界の変化との狭間で揺らぎ始める。
一躍時の人となり、学校でも注目を浴びるようになる。
白百合荘には近所の人が連日押し寄せ、ひと目マヤの姿を見ようと話をしようと集まってくる。
セリフ覚えも、おんぼろアパートでは近所迷惑になってろくに本読みもできない。
それでも必死に自分の中に沙都子を見出そうと必死で取り組むが、
その姿勢が反対にドラマスタッフに生意気ととられてしまう。
日舞などの経験も殆どなく、殺陣の身のこなしや振る舞いがどうしてもぎこちない。
マヤの目の前には難題が山積みとなっていった。
それでも必死でほうきで長刀の特訓をやっているところへ、思いもかけない人物が訪ねてきた。
大都芸能、社長秘書水城
そして彼女の口からマヤにとって衝撃的な事実が伝えられた。
月影千草が、マヤを大都芸能に入れたいと申し出てきたとーーー

信じられないマヤに、水城は千草直筆のサインの入った契約書を見せると、
千草に見捨てられたと泣き叫ぶマヤを新たに用意したマンションに連れて行く。
マンションについても泣き通しのマヤ、しかし翌日水城に連れられて高校とスタジオ、そして
日舞の稽古と分刻みのスケジュールを渡され心の整理をつける暇もない。
そうこうするうちにMBAスタジオにはセットも組み立てられ、
本格的な撮影がスタートする。
自分自身に用意された沙都子の衣装に身を包み、スタジオ内に再現された明治時代の
風景に溶け込んだその瞬間、
これまでのどこか自信がなくておどおどした様子の少女は姿を消し、
文明開化の中、好奇心旺盛な一人の伯爵令嬢が堂々と未来を見据えて立っていた。

**

立稽古が始まり、少しずつテレビドラマの現場にも慣れてきたマヤ。
しかしながらまだ、ストーリーをコマ切れに撮影するそのスタイルになじめず、
先に撮ったシーンの心情を引きずってしまう。
それでも何とか必死に稽古に取り組むマヤだったが、どうしても納得のできないことが一つあった。

なぜ、千草は自分を大都芸能に預けたのか、あの宿敵速水真澄の元に!

あの日、千草は自ら大都芸能に赴き、真澄にマヤを託した。
今まで何度口説いても決して頭を縦に振らなかったマヤを、よもや師匠自ら差し出してくるとは、
真澄は嬉々とした表情を隠すこともなく、千草の要望を受け、
そして代わりに千草は真澄の義父、速水英介が個人的に出資しているアクターズスタジオの講師を
務めることとなった。

にわかには信じられないその話だったが、千草自身の口からその事実が告げられると、
マヤはあふれる涙を止めることもせず、真澄に差し出された契約書にサインをした。
「君はスターになるんだ」
自信ありげにそう告げる真澄、その時マヤに一輪の紫のバラが届けられた。
そうだ、自分がスターになれたらきっと、紫のバラの人は喜んでくれる。テレビを見てくれる・・・。
バラを握りしめ微笑みを浮かべるマヤを見つめる真澄の顔は、なぜか冴えない。

「なんのまねだ」
社長室に戻った真澄は、水城に尋ねた。
「きみが贈ったんだろう?」
「それがわかるのは、当の紫のバラの人本人しかいませんわね」

水城は紫のバラの人の正体に気付いていた。同時に真澄が名前も名乗らず紫のバラを贈る真意にも・・・
「あの子を愛してらっしゃるのね」

思いがけない水城の言葉に激しく動揺する真澄。
11歳も年下の少女を、冷血漢の自分が愛するなどあり得ない、しかし
真澄自身も自覚のないその思いを愛だと言い切る水城の頬を、真澄は思わずはたいてしまう。
とっさに出た、コントロールできない自分の行動。
それは真澄自身にとっても初めての感情だった。

**

稽古を通じてマヤは確実に沙都子になっていった。
まだカメラの前での表情づくりや、やっと乗ってきた所でかかるカットの声など、
戸惑うことは多いが、早く慣れるしかない・・・
そう思っている時、スタジオに初めて見る顔があった。
青春ドラマで人気の里美茂だ。
初めてにもかかわらずその持前の明るさと人懐っこい笑顔、いつの間にか心の中に
滑り込んでくるような親近感に、マヤは好印象を抱いていた。

ある日、マヤは沙都子の扮装で記者会見に呼ばれた。
そこに現れたのは、ボロボロの衣装に身を包んだ亜弓。
亜弓は春から帝都テレビで始まる新ドラマ『虹の記憶』に出演するのだ。
ある事件の為に一切の記憶を失くしてしまう少女、聖子役。
未来の紅天女を競う二人の若き女優が、春のドラマで一足先に争う・・・
視聴者の期待をあおる、大都芸能の巧みな戦術だった。

北島マヤ『天の輝き』VS姫川亜弓『虹の記憶』

日本中の注目を浴びる、亜弓と比べられる・・・
無意識に肩に力が入り演技が固くなるマヤを、里美茂は優しくフォローする。
自分をさりげなく励ましてくれる里見の優しさに、マヤの心は温かくなるのを感じた。
しかしそれとは反対に、マヤに、里美のファンの視線は冷たく突き刺さる。

気付けば視線が里見を追ってしまう。
自分の食べかけのエクレアを「あの子のならいいや」とパクリとくわえた里美に
心がずきんとしてたまらない。
里美に腕をつかまれるシーンで、沙都子の仮面がはがれ、顔を真っ赤にしてしまう。
里美の笑顔を見るだけで、胸のどきどきが止まらない。

マヤは里美に恋をしていた。

一方、帝都テレビでは、亜弓が完璧な演技力で撮影をこなしていた。
記憶を失くした少女、自分を車ではねた青年、洋二を
恋人がいると知りながら愛してしまう。
しかし自信に満ち溢れていた亜弓の耳に、共演者の声が聞こえてくる。
「姫川亜弓の目、あれ、恋してないぜ」

意識しないようにと思っても、里美の声が、笑顔が頭から離れない、目を離せない。
恋をして、演技ができないマヤ。
それでも何とか必死に、里美にあきれられないような演技をしようと自分の心に蓋をして
必死に沙都子に集中しようともがいていた。

どんなに完璧に愛を表現しているように見せても、
恋をしている目ができない亜弓。
しかし亜弓は端役の俳優を巧みに誘い、その俳優が自分に向けてくる
恋する熱いまなざしを利用して、その表現を体得していった。

大都芸能では、北島マヤの売り出し戦略が話し合われていた。
大河ドラマのスタートに先駆けてマスコミを利用した売り込み、
スポンサー企業とのタイアップCMと同時に
ドラマの出演シーンを増やしていくことで人気を高める。
さらに放送開始に合わせた全国でのイベント参加や、夏休み公開映画の主演、
大作舞台劇への出演など、向こう一年間のスケジュールが詰め込まれるなか、
真澄はもう一つ大きな仕掛けをもくろんでいた。

北島マヤ、行方不明の母親との再会・・・・
裏で密かにマヤの母、春を見つけ出した真澄は、ほとんど失明状態であることを知ると
春を軟禁状態にするよう病院に金を握らせ、マヤの情報が入らないように規制をかけさせた。
全ては劇的な再会を演出するために・・・マヤをスターにするために・・・。
しかしこの事実を知ったら、恐らくあの子は俺の事を殺したいほど憎むだろう、
そう思うと冷血漢なはずの真澄の胸はなぜか痛む。

そこへ水城から、正式にマヤのマネージャーに任命してほしいと直訴の連絡が入る。
「マヤは恋をしています。共演者の里美茂に・・・・」

真澄の瞳は白く固まる・・・・

マヤの売り出し戦術が進むにつれ、周囲の妬みの感情はどんどん表に現れてくる。
マヤに映画の主役を奪われた、巴万里
マヤに出演シーンを削られた、吉川
マヤに長年務めていた日向電機のCMを取られた大女優山崎竜子
そして、マヤが恋する里美茂のファン

それぞれの思惑が醜く渦を巻くスタジオ、
そんな中、マヤの撮影シーンがスタートした。
沙都子がパイを口にした瞬間ーーー

仕込まれていたガラスの破片がマヤの口内を傷つけた。

第09巻へは・・・こちらから

*****感想**************************************
前回、あらすじ短くなるかもなんて言ってて嘘嘘!!
やっぱり劇中劇やってないと内容が多くて長くなりました。
しかも心情炸裂の芸能界編!
真澄の心も、マヤの心も、激動だらけで大変です。
真澄さん、ヘレン・ケラーのウォーターばりに、自分の感情がマヤへの愛だと
指摘され動揺中。(こ、これが愛・・・!!この気持ちが、愛するということ!?)

一方マヤはマヤで、しっかりはっきり初恋しちゃっています。
桜小路君に対してはあんなに、この気持ちなんだろ~~、わかんないけどまいっか~~~みたいな
適当な感じだったのに・・・。


高校生女優、マヤの栄光と挫折の第8章はいろいろ辛すぎて、
これまであんまり真剣に読んでなかったのですが、
改めてじっくり読むと、すごく重要なシーンやセリフが満載でした。

次巻はもっと・・・・つらいよね。