岩手県は、昨年7月下旬まで日本で唯一、新型コロナ感染者がゼロだったことで世間の注目を集めた。しかし7月29日に初の感染者を出し、11月からクラスターが発生。1月4日現在で感染者は394人(全国41位)。死者は24人となり、死亡率は6・1%で全国で最も高い。ちなみに東京の死亡率は1%。コロナ対応で優等生と言われた岩手県に何が起きているのか。 ***
岩手県が感染者ゼロだった頃、達増拓也知事は「実直で粘り強い県民性も影響している」と分析していた。自治体から「外出を控えて」「首都圏に行くな」と指示されると、それをしっかり守る県民性があったというのだ。とはいえ、7月29日に初の感染者を出し、その後徐々に増えた。
昨年の12月23日時点で、岩手の死者は20人で死亡率は5・8%。次に高いのは富山と石川でいずれも5・1%だった。全国でこの3県だけが5%を超えていた。それが1月4日になると、石川は4・6%、富山は4・4%と低下しているのに、岩手だけが6%を突破してしまったのだ。
東北の他の県を見ると、青森は1・6%(感染者516人)、宮城は0・7%(同2263人)、秋田は0・7%(同149人)、山形は2・2%(同402人)、福島は2・2%(同1008人)と、いずれも低い。岩手だけが突出している。
なぜか。 「高齢者が多く入院する病院などでクラスターが発生しました。やはり高齢者が感染すると死亡率も高くなってしまいます」
と説明するのは、岩手県保健福祉部医療政策室の担当者。
「医療施設では、まだクラスターが続いています。死者24人の内訳は、23人が65歳以上で、いずれも基礎疾患を持っていました」
ちなみに、394人の感染者のうち、60歳以上は36%だという。
医療関係者20人で会食
岩手では11月以降、俄かに感染者が増え始めた。
先の医療政策室の担当者によると、 「11月7日、医療関係者約20人が、盛岡市大通の飲食店で会食をしたところ、クラスターが発生しました。私的な会食だったと聞いています。あくまで自己責任で行ったのでしょうが……」
約20人のうち、感染したのは県外の医師1人を含む7人だった。感染者の中には盛岡赤十字病院の40代の男性医師がいて、自身が診察した患者や元患者6人に感染させたという。
さらに、同じ日に医療関係者が会食した店で県の職員3人も会食、3人とも感染したという。
医療関係者や県の職員が会食で感染してしまったのは、7月以降も感染者がほとんどなかったため、気が緩んでしまったせいなのか。
感染対策と治療の経験不足
12月にはさらに感染が広がる。
「12月10日には、盛岡市の病院の入院患者1人と雫石町の高齢者医療施設の職員21人が感染しています」(同)
その2日後の12日は、 「43人の感染者が確認されています。43人のうち41人は先の高齢者医療施設です」(同)
41人の内訳は、患者が38人、その家族が2人、出入り業者が1人だった。 その後も連日のように感染者が確認され、死者数も増えたという。
ちなみに、これまで6万人以上の感染者が出ている東京では、昨年5月末時点での死亡率は5・8%と高水準だった。ところが、日を追うごとに死亡率は低下し、現在都市部の中では最低水準になっている。
「岩手については感染者の少ないこともあり、治療の経験不足はあるかと思います。地方では、集中治療室(ICU)や専門医が少ないという指摘もありますが、岩手での重症患者は4人(1月4日現在)に過ぎません。そのため、医療機関は逼迫した状況ではありません。ただ、感染拡大はまだまだ続くと思われますので、今後は老人医療施設を中心に感染対策を強化していくつもりです」(同) 週刊新潮WEB取材班
https://news.yahoo.co.jp/articles/4afc9afa9f208bb2c99101f158f840b160edbfcc