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【IT】能力の高いプログラマーほど数学力より言語能力が高いという研究結果

2024年09月06日 22時03分15秒 | 科学のはなし

【IT】能力の高いプログラマーほど数学力より言語能力が高いという研究結果

→プログラミングに必要な素質は数学力よりも言語能力という研究結果
→プログラミングの学習は第2外国語の学習と同じ脳の場所を使う

❸・26・2020

プログラミングに馴染みのない人にとって、プログラム言語は非常に厄介に感じるものです。

特にこれまでの通説では「プログラミングは数学力に通じる」とされており、文系出身者にとっては、より一層の苦手意識を感じさせる要素になっていました。

しかし今回、アメリカの研究者らによって行われた研究によって、プログラム言語の学習効率は主として言語能力に依存していることがわかりました。

数学の専門知識や計算能力の介在する余地は想像より遥かに少なかったのです。

小説や詩の文面にキラリと光るセンスを感じ取る能力がある人は、プログラマー適性があるかもしれません。

しかし研究者たちは、どのようにプログラミング適性と言語能力の相関関係をみつけだしたのでしょうか?

研究内容はシアトルにあるワシントン大学のシャンテルS.プラット氏らによってまとめられ、3月2日に学術雑誌「nature」に掲載されました。

Relating Natural Language Aptitude to Individual Differences in Learning Programming Languages
Chantel S. Prat, Tara M. Madhyastha, Malayka J. Mottar

■言語能力とプログラミング学習効率は相関関係にあった

実験に先立って、研究者たちは「プログラミングは第2の言語である」という仮説をたてました。

そしてまず36人のプログラミング初心者を集め、彼らの言語能力、計算能力、推論能力、作業メモリ(短期記憶)などを測定しました。

次に彼らに45分間の「Python」と呼ばれるプログラム言語の講義を10回受けてもらいました。

Pythonは機械学習需要の高まりとともに、現在利用者が増えているプログラム言語です。

プログラミングの講義が終わった後は、各個人に対してどれほどプログラミングが身についているかのテストが行われました。

結果、プログラミング言語の成績と最も強い相関関係があったのは、意外にも言語能力でした。

その影響は圧倒的で、プログラミングの学習速度における個人差の70%以上を決める要因になっていました。

一方、計算能力、推論能力も残りの30%の範囲で、プログラミングの学習効率に関連してはいましたが、俗説とは異なり、言語能力にくらべて少ない相関にありました。

ただプログラムの正確性に関しては、言語能力よりも認識能力(推論、短期記憶)のほうが重要という結果が出ています。


続きはソースで


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数学者も恐れる「ハマると病む難問」 解けたら1億円、企業が懸賞金

2024年09月06日 11時07分53秒 | 科学のはなし
 一見単純そうなのに80年以上も数学者を悩ませている未解決問題「コラッツ予想」の証明に、日本のベンチャー企業が1億2千万円の懸賞金をかけた。数学の問題にかけられた懸賞金としては世界最高レベル。問題は小学生でもわかるほど簡単だが、数学者の間では「はまると病む難問」「宇宙人が仕向けた罠(わな)」などと恐れられる。一体どんなものなのか。


 コラッツ予想は、1、2、3……と無限に続く整数の問題だ。1937年、ドイツの数学者ローター・コラッツ(1910~90)が予想したのは、次のような内容だった。

「どんな整数も必ず1になる」 80年以上未解決

 「どんな正の整数も、偶数なら2で割り、奇数なら3倍して1を足す。この操作を繰り返せば、必ず最後は1になるだろう」

 例えば3で始めてみよう。3は奇数なので、3倍して1を足すと、3×3+1=10。10は偶数なので2で割ると、10÷2=5。この操作を続けると、3→10→5→16→8→4→2→1となり、7回の操作を経て、予想通り1になる。
 11はどうだろう。
11→34→17→52→26→13→40→20→10→5→16→8→4→2→1(操作は14回)となり、やはり1に行き着く。

 単純な四則計算のため、2桁や3桁程度なら、自力で計算できるほど。実際、2011年度の大学入試センター試験の「数学ⅡB」で出題されたこともあり、この時は、6と11は、何回の操作で1になるか、などが問われた。

 この問題を解決するためには、以下の二つを示せばいいことがわかっている。

①操作をした時に、○→△→◇→☆→○のように最初の数に戻ってしまう循環パターンがないこと(ただし、1→4→2→1を除く)

②操作をした時に、数がどんどん大きくなってしまう発散をしないこと

 だが、この先の手がかりを得るのが難しい。解法として様々なアプローチが考えられた。数が増えるごとに操作の回数がどう変化していくのかを統計的に調べていく方法や、正の整数ではなく負の整数や複素数で試して、その性質を調べる方法などが検討された。

 米エール大名誉教授の故・角谷静夫さんら数々の数学者が挑戦したものの、この予想がすべての正の整数で成り立つのか、または反証が存在するのか分かっていない。コンピューターを使った計算で、21桁までの整数で予想が成り立つことが分かっている程度だ。かけ算や割り算といった数学の最も基本的な概念でさえ、まだよく理解できていないことを物語っている。

懸賞かけたのはウェブサービス会社。社長も難問に挑戦続ける
 そんな中、証明に最も近づいたと言われているのが、数々の難問を解決してきた米カリフォルニア大ロサンゼルス校のテレンス・タオ教授(46)だ。24歳の若さで教授となり、「数学のノーベル賞」と言われるフィールズ賞を受賞した「天才」として知られる。

 2019年に投稿した論文(https://arxiv.org/abs/1909.03562)は、偏微分方程式を駆使して「コラッツ予想はほぼ正しい」と示した。

 「ほぼ正しい」とはどういうことだろう?

 論文が示しているのは「ほぼすべての数が、最終的に1に非常に近づく」ということ。すべての自然数について示したわけではないし、かならず1になるとも示せなかった。テレンスさんはメールでの取材にこう答えた。

 「登山に例えれば、私は山の大部分にロープを張り、登りやすくした。だが、頂上に達するには、まだ通れない非常に危険な場所が1カ所ある。解決へ前進はしたが、100%の証明には遠く及ばない」

 研究チームの数人がいまも解決に取り組んでいるという。
 そんな超難問に7月に懸賞金…

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謎の決闘で世を去った「早熟な天才」…ガロアが成し遂げた「数の世界を覆した」衝撃的な快挙

2024年09月05日 15時05分39秒 | 科学のはなし




謎の決闘で世を去った「早熟な天才」…ガロアが成し遂げた「数の世界を覆した」衝撃的な快挙

8/27(火) 6:50配信2024




「僕にはもう時間がない」19歳で決闘で死んだ天才数学者ガロア (4/4) - ナゾロジー (kusuguru.co.jp) 


壮絶な死因
彼の死因は決闘だ。


決闘と言われても今の時代あまりピンとこないと思う。しかしガロアは実際に、一人の女性を巡って銃の決闘をすることになってしまい、その勝負に敗れて死んでしまう。


この決闘については陰謀であったという説がある。ガロアは父の影響で政治的な活動に傾倒しており、これを快く思わない者たちによって理不尽な決闘を申し込まれる状況に追い込まれたのではないかというのだ。


真実がどうであったにせよ、この決闘相手は銃の名手で、ガロアは決闘の前から自分が勝負に敗れて死ぬことになると自覚していた。


そこで彼は「僕にはもう時間がない」というカッコイイ走り書きと共に、決闘前夜に徹夜で現在ガロア理論と呼ばれている革新的な数学のアイデアを手紙に書きまとめて親友シュヴァリエへ託した。それはかなり断片的で読み取ることも困難な走り書きや殴り書きも多かったと言われる。


画像
友人に残したというガロアの手紙




ガロアはそれを書き残した後、決闘に向かいそこで19年という非常に短い人生の幕を下ろした。


残された親友は、彼の数学のアイデアをなんとか手紙から読み解き、それを論文にまとめて発表した。この親友の成した仕事もかなり大したものだ。評価されることの少なかったガロアだが、しかしきちんとした理解者も存在していたのだ。


その後、シュヴァリエはガロアの論文を発表するが、難解過ぎるその理論はすぐには理解してもらえなかったという。しかし、現代ガロア理論は広く世界へ知れ渡り、ガロアは偉大な数学者の一人として、歴史にその名を列記される存在になっている。


たとえ思うように評価が得られずとも、死が目前に迫ろうとも、自らのアイデアをきちんと世に書き残したガロア。







現代ビジネス
photo by gettyimages


ナポレオン・ボナパルトがノートルダム大聖堂で自ら戴冠して皇位に着いたのが1804年のこと。しかし、1812年のロシア遠征に始まるナポレオンの没落は、結果的に王政の復古をもたらしました。しかし、それも束の間、1830年の7月革命による立憲君主制を経て、やがて共和制を求める動きが民衆のあいだから生まれてきます。19世紀前半のフランスは、じつに「激動の時代」そのものでした。


そのような激動のフランスに生まれ、激動のなかに散った革命的な数学の天才が、エヴァリスト・ガロア(1811~1832)です。若干17歳、数学に出会って3年の若者が提出した論文が、「革命」と呼ばれ、時代を超えて、いまなお、大きな影響をおよぼしています。


いったい彼は、何をして、何をのこしたのでしょうか? 早熟の天才といわれる彼の思考を、平易に解き明かす『はじめてのガロア』に見てみましょう。


※この記事は、『はじめてのガロア 数学が苦手でもわかる天才の発想』の内容を再構成・再編集してお届けします。


音楽、チェス、数学
ガロアの年譜と彼の生きた時代


この3つは、昔から年若き天才が活躍しうる分野だといわれてきた。これらは、みずみずしく柔軟な頭脳と若々しい情熱が、長年の修業によって培ってきた年輪に打ち勝つことができるジャンルなのだ。


数学の分野で、このような年少の天才をひとり挙げるとすれば、誰もがガロアを選ぶだろう。ガロアは1832年5月30日、いまとなっては真相を明らかにするのは不可能と思われる謎の決闘で、腹部に銃傷を負って倒れているところを通りかかった農夫によって発見され、病院に運び込まれたが、翌31日、この世を去った。まだ20歳の若さだった。


ガロアがフランス・アカデミーに提出した『第一論文』と呼ばれている論文『累乗根(るいじょうこん)で方程式が解けることの条件について』と、決闘の前日にしたためた「数学的遺書」は、そのまま歴史の闇に消滅してしまう危機におちいったが、ガロアの無二の親友シュヴァリエの必死の努力のおかげで、散逸だけは免れた。


しかし、ガロアの業績が認められるまでには、それから約半世紀の時間の経過が必要となる。


ガロアの時代のイシュー
代数方程式は、ある数xについて、「足す」「引く」「掛ける」「割る」(もちろん0で割る場合を除く:以下同様)をほどこしてつくられた等式だ。「足す」と「引く」、「掛ける」と「割る」は、それぞれ逆の計算になっている。「掛ける」には、同じものを次々に掛けていく「累乗」という計算もある。その逆は「累乗根を求める」という計算だ。


かつて多くの数学者は、代数方程式をつくるときの計算と逆の計算を用いれば、その方程式を解くことができるはずだと確信していた。「足す」「引く」「掛ける」「割る」は当然として、焦点として浮かび上がったのは「累乗根を求める」計算だ。


実際、2次方程式の解の公式は、古代から知られていた。3次方程式と4次方程式の解の公式は16世紀に発見された。しかし、その後300年にわたっておびただしい数学者が5次方程式の解の公式を求めて奮闘したが、ことごとく刀折れ矢尽きる結果となった。


ガロアの時代、「累乗根を用いて代数方程式を解く」問題は、数学界全体が注目するイシューの一つとなっていたのである。


数学研究の方法を変えた論文
ニールス・アーベル。彼もまた若くしてこの世を去っている photo by gettyimages


そして19世紀はじめ、イタリアの数学者パオロ・ルフィニ(1795~1822)と、ノルウェーの数学者ニールス・アーベル(1802~1829)によってこの問題は意外な結末を迎える。5次以上の一般の代数方程式に、累乗根を用いた解の公式は存在しないことが証明されてしまったのだ。「ルフィニ=アーベルの定理」である。ただしこの証明は特殊かつ技巧的なもので、その本質をえぐりだすことはできなかった。


その数年後、ガロアがまったく斬新な方法で、この問題を解決した。この方法によってガロアは、方程式論を超えて、数の世界の構造そのものを明らかにするという快挙を成し遂げた。ガロア以後、数学研究の方法ががらりと変わっていくのである。さらに驚くことは、この論文を書いたとき、ガロアは弱冠17歳だったという点だ。




この話を聞けば、数学は苦手だ、と思っている方も、若き天才が何をやったのかについて興味を持つことと思う。





数学が苦手でも「わかるガロア」を届けたい
趣味は数学だという人は、残念ながら少数派だ。そこで、多数派を占めていると思われる、数学オンチを自認する方々に語りかけるガロアの数学というような本も可能なのではないか、と思い書きはじめたのが、このたび上梓した『はじめてのガロア 数学が苦手でもわかる天才の発想』だ。


そのため、筋金入りの数学嫌いである編集者(いまだに、どうしてそういう人が、科学新書の老舗ブルーバックスの編集者をやっているのか不思議に思っている。ブルーバックス編集部は、科学大好き数学オタクばかり集まっていると思っていたが、どうやらそうではないらしい)に、本人が理解できるまで徹底的に検証してもらうことにした。


だから、自分は数学が苦手だと思っている方でも、安心して本書を手にとることができるはずだ。しかし、それでもなお、この書を手にするのに逡巡している読者がいるかもしれない。そこで、本書で紹介した興味深いトピックのいくつかを、折に触れてこのブルーバックス・ウェブサイトの場を借りて紹介していこうと思う。


では、一緒にガロアの夢の世界へ出発するとしよう。


はじめてのガロア 数学が苦手でもわかる天才の発想


わずか20歳で世を去った青年の業績が、なぜ「革命」といわれるのか。彼は人類に何を遺したのか。数学嫌いにも理解できるその真髄!







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人類は50%の確率でAIにより滅亡!? 人類がしてきたことを辿る MIT教授が危険性を示唆

2024年08月18日 15時06分23秒 | 科学のはなし
人類は50%の確率でAIにより滅亡!? 人類がしてきたことを辿る MIT教授が危険性を示唆


2023/06/10(土) 22:03:37


人類がAIによって絶滅に追いやられる可能性が50%もあるという考え方が、このほど示された。米マサチューセッツ工科大学のマックス・テグマーク教授は、地球上で最も知能の高い生物である人類が「下等」の生物を絶滅させてきたことを引き合いに出し、AIが人間より賢くなった時に、人類は同じ運命を辿ると予想している。

 さらに、人類は自分たちの終わりの時期を、その知性の低さゆえ事前に推し量ることが不可能だという。母国スウェーデンのテレビ局SVTの取材にテグマーク教授はこう話す。

 「生物の半分がすでに我々人類によって絶滅しています。我々の方が賢かったため、彼らは絶滅を抑えることができなかった」

「今何を警告しているのかというと、我々人類が自分たちの社会のコントロールを自分よりも賢い機械に任せてしまうことで、我々は同じ運命を辿る可能性があるということです」

(BANG Media International/よろず~ニュース)


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「なぜ時間は過去→未来にしか進まない?」を“量子もつれ”で説明か 

2024年07月12日 22時05分50秒 | 科学のはなし



「なぜ時間は過去→未来にしか進まない?」を“量子もつれ”で説明か 未解決問題「時間の矢」に切り込む 




2024/06/05(水) 21:25:

ITmedia NEWS

 英サリー大学と米カリフォルニア大学サンディエゴ校に所属する研究者らが発表した論文「The Decoherent Arrow of Time and the Entanglement Past Hypothesis」は、時間が過去から未来へ一方向にしか流れない理由を探究した研究報告である。

 普段感じている時間は、過去から未来へと一方向にしか流れていかない。このような時間が一方向に進む概念を「時間の矢」と呼び、物理学の未解決問題の一つとしている。この時間の矢を説明する新しい考え方を提案したのがこの研究である。

 この論文では、宇宙が始まったときには「量子もつれ」は少なかったと主張(宇宙の初期状態が非常に低いもつれエントロピーを持つ状態であったという仮定)しており、これを「量子もつれの過去仮説」(Entanglement Past Hypothesis、EPH)と呼んでいる。

 「量子もつれ」とは、2つ以上の量子がどんなに遠く離れていても互いに強く関連し合う量子特有の現象をいう。この状態にある量子は、一方の状態が決定されるともう一方の状態も即座に決定される特性を持つ。量子もつれは外部からの干渉があると壊れてしまい、この現象を「量子デコヒーレンス」と呼ぶ。量子コンピュータを実用化する上でも、このデコヒーレンスは大きな障害となる。

 論文では、宇宙が進化するにつれて、量子もつれが増えていき、それと同時にデコヒーレンスも増えていったと説明。量子デコヒーレンスは後戻りできない変化(不可逆的なプロセス)なので、時間が前にしか進まない理由の鍵になると指摘している(デコヒーレンス的時間の矢)。

 これは「熱力学的時間の矢」と類似している。宇宙の初期状態が非常に低い熱力学的エントロピーを持っており、時間が進むにつれてエントロピーが増加する現象によって時間の一方向性を説明するというものである。



2024/06/05(水) 21:25:58.




「時間」とはなにか?→「量子もつれ」によって作られた“副産物”かも イタリアの研究者らが提唱


「時間」とはなにか?→「量子もつれ」によって作られた“副産物”かも イタリアの研究者らが提唱

 イタリアのフィレンツェ大学などに所属する研究者らが発表した論文「Magnetic clock for a harmonic oscillator」は、時間が量子もつれから生じるという理論モデルを提唱した研究報告である。研究チームの計算結果は、時間が物理的現実の基本的な要素ではなく、量子もつれの結果として生成されたものである可能性を示唆している。





「時間」とはなにか? イタリアの研究チームが仮説を提唱
(関連記事:「なぜ時間は過去→未来にしか進まない?」を“量子もつれ”で説明か 未解決問題「時間の矢」に切り込む)


 一般相対性理論では、時間は宇宙の構造に組み込まれており、この物理的現実は時空に設定されている。この理論では、重力の存在によって時間がゆがんだり遅れたりする。一方、量子理論では、時間は可変でないものとされ、他の物体の特性のようには変化しない。その経過を記録するには、物体の外部にある時計を参照する必要がある。


 今回研究チームは、ある物体が時間とともに変化するのを見るのは、その物体が“時計と量子もつれ状態だからではないか”と考えた。「変化する物体」と「時計」が量子もつれになっており、この量子もつれによって「時間」が生まれるという理論モデルである。量子もつれとは、2つの物体がどれだけ離れていても密接に結びついており、一方を乱すとその瞬間もう一方も影響を受けるという現象だ。


 研究チームは、量子もつれした状態を数学的にモデル化するために「時計」役に小さな磁石のシステムを、「変化する物体」役にバネのように振動するシステム(量子オシレーター)を準備した。なお、磁石のシステム(時計)と量子オシレーター(変化する物体)は、量子もつれの状態に設定した。


 この設定下で、シュレーディンガー方程式を用いて系の時間発展を記述。その結果、通常の時間変数の代わりに、磁石のスピンを数え上げる変数が現れることが分かった。磁石のスピン状態が変化するたびに、量子オシレーターの状態も変化する。この変化は、観測者にとって「時間の経過」として認識される。


 このモデルでは、時間とは実際には磁石のスピン状態の変化にすぎない。外部の観察者から見ると、全体のシステムは静的で変化のないものとして見えるが、内部の観察者には変化が時間として感じられる。


 研究チームのこの実験結果は、時間は量子もつれの結果として現れるものであり、もつれがなければ時間も存在しないことを示す。もし私たちが時間の経過を知覚するならば、物理的世界に量子もつれが織り込まれていると考えられる。逆に、量子もつれのない宇宙では、全てが静的で変化がないように見えるのかもしれない。



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