【細胞生物学】卵子の元になる「卵母細胞」が何十年もほぼ老化しない理由が明らかに
2022/07/25(月) 21:16:13
卵子の元になる「卵母細胞」が何十年もほぼ老化しない理由が明らかに
人間の体を構成する細胞は、DNAを設計図として分裂して新しい細胞が生み出されます。
細胞の寿命は通常数週間から数カ月、長いものでも数年となっており、寿命を迎えると分裂しなくなり、機能も停止します。
しかし、女性の卵子の元となる卵母細胞は何十年も卵巣の中で保存され、定期的に卵子を生み出します。
なぜ卵母細胞が何十年も長生きをするのかについて、スペインの研究機関・Centre for Genomic Regulationが論文を発表しました。
Oocytes maintain ROS-free mitochondrial metabolism by suppressing complex I | Nature
https://doi.org/10.1038/s41586-022-04979-5
卵母細胞は、胎児の時点で600万~700万個ほど作られ、出生時までに100万~200万個程度まで減少します。そして、思春期を迎える頃には30万個ほどまで減少し、新しく作られることはありません。体内にある卵母細胞の一部は、2回の分裂を経て23本の染色体を持つ卵子に成熟し、月一回の月経周期に排出されます。そのため、30万個もある卵母細胞のうち、卵子に成熟するのはわずか数百個ほどです。
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卵母細胞は出生後に新しく作られることがないため、個数が限られています。そのため、研究するためには女性の卵巣から貴重な卵母細胞を取り出さなければならず、研究が困難です。
ミトコンドリア 電子顕微鏡写真
Centre for Genomic Regulationの研究チームは、卵巣摘出手術を受けた19歳から34歳の女性の卵巣と、マウスとカエルの卵巣を使用して研究を行いました。その結果、卵母細胞のミトコンドリアが他の動物細胞のものとは異なる代謝経路を持つことが明らかになりました。
ミトコンドリアは、酵素を使って糖からエネルギーを取り出す代謝を行う細胞内小器官で、代謝の最後に電子伝達系という反応系を働かせます。研究チームによると、ミトコンドリアの電子伝達系の第一段階をつかさどる「複合体I」と呼ばれるタンパク質と酵素のセットが、卵母細胞ではほとんど不活性であるか存在しないことがわかったとのこと。
実はこの複合体Iの副産物として活性酸素が生成されるのですが、この活性酸素が細胞に損傷を与えると考えられています。研究チームは、卵母細胞で複合体Iでの代謝が行われないことが、卵母細胞が損傷を受けずに数十年も生き延びることにつながっている可能性を示唆しています。
研究チームによると、人間の卵母細胞以外に複合体Iが不活性あるいは存在しないことで長生きしていることが知られる細胞は、寄生植物であるヤドリギの細胞のみだそうです。
Centre for Genomic Regulationの研究員で論文の上級筆者であるElvan Böke氏は「ミトコンドリア複合体Iの阻害剤は、これまでがん治療に提案されてきました。この阻害剤が将来の研究で有望であるとされれば、卵母細胞を温存しながらがん細胞を標的にできる可能性もあります」と述べています。
また、「女性の不妊症の4例に1例は説明がつかず、私たちは女性の生殖についてまだ多くのことを理解できていません。私たちは、卵母細胞が何十年も健康を維持するための戦略を発見し、なぜ高齢になると卵母細胞の戦略が失敗するのかを突き止めたいと考えています」とコメントしました。
(以下略、続きはソースでご確認ください)
Gigazine 2022年07月25日 08時00分