【ルポ】クレカ不正利用。"補償対象外"と言い張るカード会社から、いかに「全額返金」を勝ち取ったか?(BUSINESS INSIDER JAPAN) - Yahoo!ニュース
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【ルポ】クレカ不正利用。"補償対象外"と言い張るカード会社から、いかに「全額返金」を勝ち取ったか?
5/16(金) 7:00配信
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BUSINESS INSIDER JAPAN
Hananeko_Studio/Shutterstock
クレジットカードを不正利用された筆者の妻は、約8万円の被害額についてカード会社から返金拒否された。憤りを感じた2人は、次の一手として公的機関への相談を決断し、なんとか「全額返金」を勝ち取る。今回頼った、金融庁、警察、日本クレジット協会、国民生活センター、それぞれの役割と使い方を共有する。
クレジットカードの不正利用が横行している。
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日本クレジット協会によると、2024年の被害額は前年比2.6%増の555億円に上り、過去最悪を更新した。ある種カードの不正利用は“日常茶飯事”的になっていると言えるが、一般的には多くのカード会社が、不正利用に関して補償及び返金してくれる。
しかし、XなどSNSで検索すると、不正利用の返金に対応してくれないといった声も散見される。「不正利用されたお金が返金されない」「不正利用で相談してもテンプレ対応で、コールセンターがない」「コールセンターの役所対応、どうすれば」などなど。
恐らく、不正利用の多くは補償・返金対応をしてくれるのだろう。だが、ごく一部では涙を飲んでいる人が一定数いる気配だ。
実は今年の2月、私の妻もクレカ不正利用に関わる、プチトラブルに見舞われた。内容は前述のXの投稿のように、まさに不正利用されたのに返金されなかったのだ。その額、約8万円(絶妙な金額感)。
当初、カード会社のコールセンターからは「不正利用ではない。お支払いください」の一点張り。会社が対応してくれないなら、外から攻めるまで。「絶対に不正利用なのに、おかしい」という気持ちから、出来うる限りの手を尽くした結果、なんとかお金を取り戻すことができた。
ここでは、私たちの経験から得たクレカ不正利用の返金に対する「最終手段」を説明しよう。
「カード不正利用」の経緯
まず、カード不正利用の経緯を端的に説明する。発端は2024年11月20日、妻に届いた大手クレジットカード会社からの1通のメールだった。
内容は「不正利用の可能性あり」との警告で、どうやらAIの不正検知が働いたようだった。該当の取引は、アラブ首長国連邦のドバイで行われており、2万7299円の利用だった。
カード会社から「カードを再発行してください」と薦められ、実際にすぐに再発行を行った。これで一件落着だと考えたが、その時点では、長い闘いの序章になるとは思いもしなかった。
今度は2025年1月10日頃、再発行したカードで突如約5万5000円の利用がされる。再度明細を確認すると、1件目と同じドバイの店舗とカフェで、しかも同じ日程で行われた取引だった。
これはおかしい──妻はすぐにカード会社へ連絡すると、「1件目が保証されているなら、今回も同様の措置となると思います」と伝えられ、あらためて調査のための報告書を送るよう指示された。
カード会社から送られてきた調査用の書類に詳細を記載し、1月末に返送。その後、まったく連絡が来なくなったので、2月13日に催促の電話を入れると、「調査中で時間がかかる」とのこと。
そして2月19日、カード会社の担当者からの電話で、事態はさらに混迷を極める。
「カードは紛失されていましたか?」
「いいえ、財布に入っていました」
「それならご本人の利用とみなされ、補償対象外です」
思わず絶句。なぜ“財布に入っていた”だけで“本人利用”になるのか。さらに「なぜ、最初の1件は対象内なのか?」と聞くと、加えて「最初の1件も対象外になるので、3月に改めて請求します」と言われ、さらに怒りと困惑が交錯した。
中が無理なら、外から攻める
妻は翌日となる2月20日に、カード会社に再調査と説明を求める交渉を2時間半にわたって電話で行った。そこでは「ドバイに渡航していない」「カードは常に手元にあった」「最初の不正利用はカード会社が“不正”と判断し、再発行まで済んでいるのに、なぜ後からの請求が本人利用とされるのか」といった疑問を明確にぶつけたのだ。
加えて、「納得できる説明をしてほしいし、利用者として説明責任を果たしてほしい」と伝えたが、「一度判断したものは覆らない」「担当部署に繋げられない」の一点張りだった。
「であれば、第三者を通じて抗議をしたく、次のステップを教えてほしい」と伝えると「99%覆ることはない。その間に補償期間の60日(多くのカード会社は不正利用を申告した日から60日前までの利用について損害補償してくれる)が切れてどちらにせよ対象外になる」といわれたのだ。
妻は失望を抱え、私とこれまでの経緯を振り返った。
なぜ、カスタマーサクセスを担うコールセンターが本部に上申できないのか。おそらく、コールセンターは他のサービサー(債権回収会社)と同様に、カード会社から外部委託された企業が多い。そのため、彼らが本部に上申するルートもなければ、上申したところで何のメリットもないのかもしれない。
我々は最初から、カード会社の不正利用に関わる部署に連絡はしていた。だが、実際のコミュニケーションも、その連絡を受けたコールセンターと行っていたのが、良くなかったのかもしれない……。今となっては、そう反省してはいる。とはいえ、どちらにせよこの時点では“あとの祭り”だ。
ここで泣き寝入りはしたくない。中が無理なら、外から攻めるしかない。そこで妻は次の一手として公的機関への相談を決断した。
返金してもらえない時の相談先、どれがいい?
私たちが、外から攻めるのに選んだ相談先は以下の「4つ」だ。
1. 金融庁:金融サービス利用者相談室
不正利用や業者対応に疑問がある場合に相談可能。だが、実際には記録受付が主な役割となっている。個別案件の返金交渉などには関与せず、他機関の動きと並行して「公的な相談履歴」として残しておく意味合いが強い。
2. 警察:サイバー事案に関する相談窓口
民事不介入の原則から、返金などの解決には直接関与しない。だが、被害届を出すことで「事件」としての記録を残すことができる。そうすれば、今後の法的対応や他機関への相談の後押しとなる。
3. 日本クレジット協会:クレジットに関する相談窓口
カード関連の業界団体であり、苦情・相談受付を行う。混雑していて電話が繋がりにくいことが多いが、業界全体への働きかけを行ってくれる可能性もある。ただし、個別対応は限定的だ。
4. 国民生活センター:相談・紛争解決/情報受付
消費者トラブル全般に対応。状況を理解した上で、企業への交渉も代行してくれる実効力のある機関だ。自治体の消費生活センターと連携して動くことが多く、今回のようなトラブルでは頼りになる存在。
まず、最初に連絡したのが金融庁の「金融サービス利用者相談室」だ。ここでは、金融サービスに関する一般的な質問・相談などを受け付けている。金融サービス利用者相談室に電話とメールをすると3日後に電話がかかってきて、「我々ではなく経済産業省の『消費者相談室
』に電話を」と告げられ、そのまま連絡。
経済産業省の担当者からは「かなりおかしい」と味方にはなってくれたものの、基本的に民事不介入なので「記録にとどめることになる」と告げられる。これは、警察も同様だった。
次が、日本クレジット協会と国民生活センターだ。日本クレジット協会は電話をするものの大変混雑しており、一度も繋がることはなかった。
そんな中、唯一救いの手を差し伸べてくれたのが国民生活センターだった。最初は、電話口で気だるそうに「相談しかできないですよ、それでも話しますか?」と塩対応だったが、事情を伝えると「おかしいので、すぐに経緯報告書を出そう」と、前のめりになって対応してくれた。
その後、担当者の方と一緒に修正を加えながら経緯報告書と異議申し立て書を作成し、国民生活センターからカード会社に問い合わせてくれた。ただ、返金されるかどうかは不明のようだった。
突然の返金、その裏にある論理
2月28日、カード会社から突然の電話が鳴る。コールセンターではなく、アフターサポートの担当者だった。第一声で、謝罪とともに「全額返金します」と告げられた。
返金される安堵感はあったものの、なぜ頑なに拒否されたのかを説明してほしい。そのように伝えると、「2024年10月にタイへ渡航した際に、情報が抜き取られた可能性があるため」と説明された。
しかし、妻はタイでの滞在中では該当のカードは一度も使っていない。だが、正直に異を唱えるよりも、この“言い訳”に乗ることで解決が早まるのなら──そう判断し、「わかりました」と答えた。どこか釈然としないまま、事態は収束へと向かった。
さらに、後日カード会社の説明で判明したのは、当初AIの不正検知によってカード会社から連絡が来た際には「紛失」と認識されていた点だ。だが、その後オペレーターが我々と電話をした時に「カードを紛失していない」=「本人がカードを保有している」ことが判明した。そのため、「紛失が誤情報であるならば本人利用に違いない」と決めつけていたことが分かったのだ。正直なところ、かなり短絡的な判断としか言いようがない。
今回の事件から得た教訓
今回のプチトラブルで、私と妻が得た教訓は以下だ。
口頭ではなく、必ずメールで問い合わせ、記録を残すことオペレーターの回答はあくまで第一段階であること必要に応じて「不正利用デスクに繋いでほしい」と強く伝えること国民生活センターは最も効果的な介入機関であること
ちなみに、このプチトラブルが収束したのち、再度手違いによって8万円が請求された。もはや笑うしかないのだが、あらためて問い合わせると先ほどのアフターサポートの担当者から深く謝罪された。そのため、使用してないカードの明細を時折確認することも重要なTipsかもしれない。
クレジットカード不正利用は突如として訪れる。そして、本人が使った記憶がないのにもかかわらず「本人利用」と見なされたとき、個人ができる抵抗は限られている。
だが、声を上げ、証拠を残し、適切な場所へ訴えることで道は開ける。この記事によって、私と妻のようなケースを今後ひとつでも減らせると嬉しい。