白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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2月の情報会員解説

2018年02月10日 23時11分24秒 | 日本棋院情報会員のススメ
皆様こんばんは。
本日は永代塾囲碁サロンにて解説会と指導碁を行いました。
お越し頂いた方々、ありがとうございました。

さて、本日は毎月恒例、日本棋院情報会員のPRを行います。
なお、過去の記事はこちらです。↓
第1回 第2回 第3回 第4回 第5回 第6回 第7回 第8回 第9回 第10回
第11回 第12回 第13回 第14回 第15回 第16回 第17回 第18回 第19回 第20回
第21回

棋譜再生ソフトの使い方は第4回で詳しく解説しています。

今月は
2017年11月2日 第43期棋聖戦ファーストトーナメント 杉内雅男九段小山栄美六段
2017年9月14日 第43期碁聖戦予選A 蘇耀国九段依田紀基九段
の2局を解説しました。
今回は杉内-小山戦の解説の一部をご紹介しましょう。
杉内九段の最後の対局です。

ちなみに、先月の予告では誤って3月分の予定を書いていました。
失礼いたしました。



1図(テーマ図)
Kiin Editor」キャプチャー画面です。
まだ碁が始まったばかりですが・・・。





2図(実戦進行)
ここから6手進む間にも、様々な駆け引きが行われています。
それらをコメントや参考図を使って解説しているので、ご紹介しましょう。





3図(実戦)
黒1「白に下辺を打たれたので、代わりに上辺を広げます。」
黒3「現代流です。
昔は全く打たれなかった手の筈ですが、杉内九段はパソコンも駆使して最新情報を取り入れていました。」


黒3の意味や変化の一例は3図使って解説しています。





4図(参考図1)
実戦の大ゲイマで、辺に開いた場合の図です。

「カカッた石から黒1と開くなどが自然な打ち方です。
ただ、白2と右辺を割られた後、白A~Cの打ち込みが残り、上辺のまとめ方が難しいという課題がありました。」






5図(参考図2)
「そこで黒1と隅を打つ発想が生まれました。
白2と入ってきた時に攻めやすいですし・・・。」


黒1の長所を示した図です。
もしこう進めば黒が良いですね。





6図(参考図3)
「白1と打ち込まれても、必ずしも困らないという研究があります。
本図黒2は堂々と迎え撃つ手ですが、他にも黒A、白B、黒Cで隅に根拠を求めたり、手抜きで他の大場に向かう打ち方もあります。」


反面、白1の挟みを狙われるという短所があります。
ただ、これで黒が困ってしまうというほどの厳しさではありません。
長所と短所を天秤にかけて、実戦の手を選んでいるわけです。





7図(実戦)
実戦に戻ります。

白1「足元にカカりました。
AとBを見合いにした捌きの手です。」


実戦は黒Aと隅を打ちましたが、外側から打ってきたらどうなるでしょうか?
それを次の参考図で示しています。





8図(参考図)
「黒1と外側にくれば、三々に入って簡単に治まることができます。」

黒の勢力は大きいですが、プロは周囲の石との関係がいま一つで、黒が甘いと判断します。
よってこの図は選びませんでした。





9図(実戦)
実戦に戻ります。

黒1「黒が三々入りを拒否してくれば・・・。」
白2「右辺に開くことができます。
白は急激に攻められることを避けました。
捌きを考える時に、見合いを意識することは大切です。」


ここでは参考図を4つ使って解説しているので、ご紹介しましょう。





10図(参考図1)
白が正面からカカッた場合の図です。
これが良くないことは5図で示した通りです。

「先述したように、白1には黒2、4といった攻め方が想定されます。
実戦に比べると白が窮屈ですね。」






11図(参考図2)
カカリではなくツケる手は有力で、それを示した図です。

「白1のツケもよく打たれる手で、これもA方面とB方面を見合いにしています。
発想としては実戦と似ています。」


この手からの変化は、2図使って示しています。





12図(参考図3)
11図の変化その1です。

「黒1と隅を守れば、白は右辺に展開できますし・・・。」





13図(参考図4)
11図の変化その2です。

「黒1と辺を止めれば、隅で生きることができます。」

どちらでも白は困らないので、これも有力ということですね。


本局は後に大激戦へと発展しました。
実力者の小山六段に対して、杉内九段の一歩も引かない戦いぶりは流石でした。
結果は残念でしたが、素晴らしい対局を残してくれたと思います。

また、もう1局の蘇-依田戦も双方が捨て石作戦を用いるなど、非常に派手で面白い1局でした。
そちらも是非ご覧頂きたいですね。

なお、3月は
2017年12月21日 第66期王座戦予選A 小林光一九段山城宏九段
2017年12月7日 第43期新人王戦予選 芝野龍之介初段稲葉貴宇三段
の2局を解説する予定です。
ご興味をお持ちになった方は、ぜひ日本棋院情報会員にご入会ください!
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