白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
ブログ移転しました→https://note.com/shiraishi_igo

封じ手予想

2018年06月30日 20時16分22秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
本日は本因坊戦第5局(毎日新聞)の1日目が行われました。
ここまで本因坊文裕が3勝を挙げており、七番勝負もいよいよ佳境に入っています。
山下挑戦者、踏ん張れるでしょうか?



1図(実戦)
山下挑戦者の黒番です。
じっくりした碁と思いきや、白△のツケ!
いかにも本因坊らしい仕掛けです。





2図(実戦)
黒△まで、乱戦模様になりました。
ところで、この状況には既視感を覚えます。





3図(参考図)
昭和の時代からある型です。
手順や配置が違いますが、出来上がり図は少し似ていますね。
隅の黒がやや眼を作りにくい形をしていて、白がそれを主張している点は実戦も同様です。





4図(打ち掛け局面)
白△と押さえたところで打ち掛けとなりました。
次に黒Aから攻め合いに向かうか、Bと打って隅を守るかの分岐点ですが・・・。





5図(封じ手予想)
封じ手予想は黒△にします。
この後は白A、黒B、白C、黒Dと進むでしょう。

右下に打つ以外の選択肢が無く、封じ手予想としては難易度が低い方でしょう。
そして、この進行になる可能性は高いとみています。

ただ、実は黒△以下を保留して、単に黒Dと打つ手も考えられます。
そちらも結果は全く同じになるでしょう。
ではどちらを選ぶべきかと言えば・・・美的感覚の問題ではないでしょうか?
第4局の封じ手予想から始まったマニアックな話が、またぶり返しましたね(笑)。

第4局の時は私の中ではっきりとした答えがありましたが、今回は微妙です。
自分なら黒△と打ちますが、黒Dを選んでも不自然ではないと感じます。
理由の説明は長くなるので、やめておきますが・・・。

個人的には黒が打ちやすい形勢に見えますが、実際はどうでしょうか?
いずれにしても、明日は難しい戦いになるでしょう。
明日もぜひご覧ください!
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囲碁研究講座

2018年06月29日 23時58分22秒 | 仕事・指導碁・講座
皆様こんばんは。
昨日は時間の余裕が無く、更新をお休みしました。
さて、本日は宣伝です。
最近宣伝ばかりのような気もしますが・・・(笑)。

今月から、囲碁研究誌上での連載が始まりました。
題して、「助ける石と捨てる石の見分け方」(全4回)です!



多くのアマの皆様は、大事な石とそうでない石を判断することが苦手です。
取れる石は全て取りに行く方、助けられる石は全て助ける方・・・。
逆に、石を捨てることを覚えたものの、大事な石まで捨ててしまう方・・・。
どちらにしても、石の価値の判断を間違うと、大きなポイントを失ってしまいます。

では、何故間違えてしまうかと言えば、やはり明確な判断基準が無いということが考えられます。
皆様の対局を拝見すると、「なんとなく」で判断している方が多いように思います。
そこで、本講座では皆様に正しい判断基準をお伝えすることを重視しました。
囲碁はテクニックも大事ですが、まずは正しい考え方ができていなければ始まりません。
本講座が皆様の上達のお役に立てば幸いです。

ちなみに、本講座のライターは同門、同い年の永代和盛が担当しています。
長い付き合いなので、色々と遠慮なく注文させて貰っています(笑)。
私の指導法がそのまま詰まった講座になっているでしょう。
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出版記念イベントについて&著書紹介

2018年06月27日 23時59分59秒 | 著書
皆様こんばんは。
先月、この本を出版しました。



「やさしく語る」シリーズの第3弾です。
また、これに関して、近々イベントを行うことになりました。



会場は横浜の宇宙棋院です。
こちらでは3年半ほど前から級位者教室の講師を務めています。
始めて行ったのが中学生の頃ですから、かれこれ20年ほどのお付き合いですね。

トークショーというタイトルですが、50分に渡ってひたすら話す能力はありません(笑)。
そこで、本の内容に関連した講座がメインになる予定です。
無料ですから、ぜひお気軽にご参加ください。


さて、本日はここでも本の内容について語ってみたいと思います。
暇ができたらやろうと思っていたら、いつの間にか時間が過ぎていました・・・。
多くの皆様にご購入頂きたいので、しっかりと宣伝します!
前回とかぶる部分もありますが、時間が経っているので改めてということで。

<本作のテーマ>
本作のテーマは、タイトルにあるように「大局観」です。
大局観とは、「現在の碁盤全体の状況を確認したり、将来の展望を思い描き、そのうえで正しい打ち方を考える力」です。
そして、題材は全て「置き碁で白を持った時の考え方・打ち方」です。

囲碁の本の中で、置き碁の打ち方をテーマにしたものはそれなりにありますが、白番での打ち方となると非常に少ないです。
また、それらも多くは打ち碁集のような形式であり、考え方に重点を置いた本となると、ほとんど出ていないと言っても良いのではないでしょうか。
ですから、置き碁で白を持った時の打ち方が分からず、困っている方は少なくありません。
苦手というだけならまだしも、嫌いという方もいらっしゃるようですが、それは非常に勿体ないことです。
なにしろ、囲碁ファンの棋力は幅広く、自分と近い棋力の方はその中のごく一部です。
そのごく一部の方との対局しか楽しめないとしたら、交流の幅が非常に狭まってしまいますね。

<置き碁を楽しく打つために>
多くの方が置き碁で白を持った時に陥りがちな展開は、大別すると以下の2つです。
「急いでハンデを縮めようとするあまり、無理を重ねてしまう→相手がポカをすれば上手くいくこともあるが、そうでなければボロボロに」
「無理せずしっかり打とうとするあまり、差が全く縮まらない→何もできずに負けるか、あるいは結局無理な勝負手(騙し)を連発してしまう」
どちらにしても、楽しめそうな展開ではありませんね。

ですが、正しい考え方・打ち方ができると、置き碁で白を持っても楽しく打てます。
そのために色々なことを学んで頂く必要がありますが、それらは全て大局観に通じます。
つまり、本書のコンセプトは「置き碁の白番を楽しく打ちながら、大局観も身に付けましょう!」ということになります。
身に付いた大局観は、当然ながら互先の対局や、自分が石を置いた時にも役に立ちます。
棋力そのものの向上にもつながるでしょう。

<本書の構成>
本書の構成は、大まかに言えば今までと同じです。
考え方をいくつかに分類し、1つ1つ学んで頂けるようになっています。
ただ、最終章は今までのようなテスト形式ではなくなりました。
これは、私の置き碁の白番での打ち碁集であり、ある意味では互先以上に工夫した打ち方が多くなっているためです。
テスト形式にすると難しすぎますから、普通の自戦解説形式になりました。
もちろん、皆様が挑戦して頂く分には自由です。
私が何を考えて打っているのか、想像しながら並べて頂くのも面白いでしょう。

ちなみに、特に最終章でその傾向が強いですが、しばしば高度な手が出てきます。
「ちょっとこの手は真似できないな」と感じることもあるでしょう。
その場合、無理に真似をする必要はありません。
大事なのは私の手そのものを真似することではなく、考え方を身に付けて頂くことだからです。
私が何を考えて打っているのかをご理解頂ければ十分です。


「やさしく語る」シリーズでは、棋力の向上はもちろんとして、碁を楽しく打てるようになって頂くことも目指しています。
その意識の強さで言えば、本作は今までで一番です。
皆様が今まで以上に碁を楽しむためのお役に立てれば幸いです。
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書評・第16回 ヨセの強化書・基礎編

2018年06月26日 23時39分37秒 | 書評

皆様こんばんは。
本日はお金にならない問題を作ってくれた寺山怜五段のために、彼の本をご紹介したいと思います(笑)。



寺山五段と言えば、NHK杯でお馴染みですね。
第63期には準優勝という大活躍でした。
現役バリバリの棋士が作った問題集です。
囲碁の本はベテラン棋士が出すイメージが強かったですが、最近は結構若い棋士も挑戦していますね。
時代が変わってきた感じがします。

さて、本書はヨセの問題集ですが、1つ1つのヨセの目数を問うものではありません。
9路盤の中で最善のヨセを打ち、碁に勝ってくださいという問題になっています。
これも一種のパズルと言えるでしょう。
「囲碁パズルを楽しみながら、結果的にヨセも上手くなる」
本書にはそんな姿勢で取り組むと良いのではないでしょうか。
元々ヨセという分野は、パズル的な要素が強いのです。

これは寺山五段が話していたことで、本書にも書いてありますが、アマチュアの方は本当にヨセが苦手だと思います。
もちろん、読みや計算などもプロとはレベルが違うのですが、一番大きな差があるのがヨセでしょう。
そもそも、大半のアマチュアの方は、ヨセの基本をほとんど理解できていないのですから・・・。
高段者の中にも、ヨセを勘だけで打っている方は少なくありません。

実際、私に3子や4子で指導碁を受ける方の多くも、ヨセになると次々と損をしていきます。
(それは1/3目損だけど仕方ないかな)
(うーん、1目損な方選んじゃったか~)
(3目損はもったいないな~)
などなど、損がどんどん積み上がっていくのがよく分かります。。
そして、途中から数えるのを止めるのですが・・・(笑)。

逆に考えると、ヨセがほんの少し上手くなるだけでも毎局数目という差が生じますし、人によってはそれが何十目にもなるでしょう。
ヨセの能力が裏切ることは無く、ヨセの上手い人はどんなに碁の調子が悪くても、ヨセだけは毎回得をします。
棋士の中でも、タイトルを沢山獲得してきた人は例外なくヨセが得意です。
もちろん、本人の中で一番の得意とは限りませんが・・・。

ということで、強くなりたい方には、ヨセの勉強は非常に効果的です。
そして、本書はヨセの目数計算ができなくても大丈夫です。
また、碁盤に並べて解きたいという方もいらっしゃるでしょうが、9路は安く買えますし、なんなら19路盤を紙で区切っても良いのです。
お好きな方法で取り組んで頂くと良いでしょう。

<注意点>
ここで紹介したのは、ヨセの強化書・基礎編です。
似たデザインの応用編もありますが、両者にはかなり難易度の差があります。
よほど腕に自信のある方以外は、まずは基礎編から購入することをおすすめします。

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問題解答

2018年06月25日 23時20分03秒 | 日本棋院情報会員のススメ
皆様こんばんは。
本日は昨日の問題の解答を発表します。
寺山五段に答えを聞いていないので、これは私の解釈です。
大丈夫だとは思いますが、万が一間違っていたらご指摘ください(笑)。



1図(正解1)
初手、白1の放り込み!
正解の第一歩であり、本問の「題意」でもあります。
この手のために作られた問題なのです。

こういう形は、気分的には白Aの方に打ちたくなるのですが、この場合は白1に限ります。



2図(正解2)
黒1と取らせ、それから白2(Aの所)とコウを仕掛けます。
黒3の時、白4という大きなコウ立てができていますね。
黒は受けるか、コウを解消するかの2択ですが・・・。





3図(変化図)
黒1と受けるのは、白2と取られてコウ立てに困ります。
黒3、5の連打では小さく、大差で白勝ちとなります。





4図(正解3)
そこで、2図の後は黒1とコウを解消する一手です。
白2の連打に対しては黒3のつなぎが必要で、そして白4のコウ取り・・・。
このコウ争いが、白が勝つための第2の関門です。
そして、これを突破できるかどうかは、実はスタート地点で決まっていたのです。

本図は黒から1つもコウ立てが無いので、白4に対しては黒はパスをするぐらいしかありません。
そこで白Aとつなげば、見事白1目勝ちとなりました。
これが本問の結論です。





5図(変化図)
前図白4の後、黒1と切る手はコウ立てになりません。
白△の位置が絶妙です。

1図の時点で、白△ではなく2線に放り込んでも途中までは同じになります。
ですが・・・。





6図(変化図)
その場合、黒1のコウ立てができてしまいます。
黒3と取られると今度は白のコウ立てが無く、白Aとつなぐしかありません。
黒Bとつながれると、結果は黒1目勝ちとなってしまいました。

いかがですか?
放り込む位置の違いが最後の明暗を分ける、面白い問題だと思います。
ただ、この知識が実戦で役立つ可能性は極めて低いですね(笑)。
囲碁の手筋というより、一種のパズルかもしれません。

ところで、パズルと言えば、張栩九段の「よんろのご」、一力遼八段の「終盤アナライズ」(9路盤問題)もパズル的な要素が強いですね。
そして、両者共に問題作成へのこだわりが凄いと聞きます。
寺山五段から話を聞いた限りでは、両者はさらにレベルの高い囲碁マニアのようです(笑)。
勝負を抜きにしても、囲碁には深い世界があるのです。
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