白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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やさしく語る 布石の原則PR

2017年09月05日 23時58分46秒 | 著書
皆様こんばんは。
本日の三星火災杯は、井山九段残念でしたね。
ですが、2勝勝ち抜けのシステムなので、明日、明後日と勝てば16強戦に進むことができます。
本日勝った山下九段小松九段と共に応援しましょう!

さて、本日は新刊「やさしく語る 布石の原則」
PRを行います。
以前は全体像をご紹介しましたが、今回は具体的な内容をご紹介しましょう。

一般に、布石は難しいと言われます。
プロの世界でも、記録に残っている400年ほど前から現在にかけて、布石の考え方は常に移り変わって来ました。
また、同じ時代でも大きな個人差があります。
結局はどう打っても1局の碁であり、そんな自由なところは囲碁の大きな魅力です。

しかし、自由と言っても、本当にどこに打っても変わらない訳ではありません。
広い碁盤には数多くの好点がある一方、悪手になる点もまた多いのです。
そのためには、好手と悪手を見分けるための基準が必要になります。
その基準、つまり布石で重視すべきことは何でしょうか?



1図(7路盤)
最近は入門は7路盤で行うことが主流になっています。
7路盤では、まずしっかりと石同士をつなげることが重要になります。
一例として図のようにお互い自分の石をつなげていけば、自然と陣地らしきものができて行きますね。
自然とこういった打ち方ができるようになれば、7路盤では合格点が得られるでしょう。





2図(9路盤)
では、9路盤ではどうでしょうか?
1間飛びの黒、一歩ずつの白では、目に見えて陣地の大きさが違いますね。
盤の大きさに関わらず、石同士がつながることは大事ですが、一歩ずつでは非効率なのです。
9路盤で打つようになったら、つながり方のレベルを上げる必要があります。





3図(13路盤)
13路盤になると、一気に碁盤が広がります。
打ち方の幅も大きく広がり、隅・辺・中央という区分もはっきりして来ます。
自由度も広がりますが、石がつながることの重要性は同じです。
例えばこの図のように、ひたすら1間飛びやケイマを打っているだけでも立派に布石が打てます。
もちろん、途中で相手の陣地に入って行ったり、逆に入って来られれば難しくなることもありますが、そこからは中盤戦なので別の問題となります。





4図(19路)
さて、今度は19路になりました。
布石が本当に難しいのはここからです。
試しに白8までお互いに隅を確保してみましたが、それぞれの距離は大きく開いており、間の空間をこれからどう開拓したものか悩ましいですね。
正解は沢山ありますが、失敗もまた沢山あります。
例えば黒Aの開きは締まりからの距離が近すぎて良くないですし、黒Bは白に近付き過ぎて悪手となります。
では、どこまで開くことができるのでしょうか?
その答えは、勢力圏という概念を元に導き出すことができます。

石の周囲には勢力圏が存在します。
本図で言えば、それぞれの締まりの周囲に勢力圏が生じています(※赤印は具体的な範囲を示したものではありません)。
勢力圏とは、簡単に言えば相手が近寄り難い、入り難い地域です。
この勢力圏という概念が本書の肝となります。

前作「やさしく語る 碁の本質」では、碁の本質は石の強弱にあることを説明しました。
自分の弱い石を守ったり、相手の弱い石を攻めることでポイントを挙げることができます。
この考え方を布石に応用すると、自分に弱い石ができず、相手だけに弱い石ができれば理想的な布石ということになります。
それを目指すためには、勢力圏を意識して打つことが近道なのです。
本図は「布石の原則」の中には出て来ませんが、読者なら悪い手を打つことは無くなるでしょう。





5図
これは本書に出て来る図です。
この布石、どちらが良いと思いますか?
この答えを即答できない、もしくは間違えてしまう方にはぜひ本書をご覧頂きたいですね。
私の経験上、有段者でも分かっていないことがあります。


さて、少々漠然とした話になってしまったかもしれませんが、本書は布石を簡単に考えられるようになるための本です。
勢力圏と石の強弱を基準にすれば、悩まなくても石が良い所に行くようになるのです。
読者の皆様が楽しく布石を打てるようになると信じています。