白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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コウ

2017年09月02日 23時59分59秒 | 仕事・指導碁・講座
皆様こんばんは。
本日はコウについてのお話です。

コウは囲碁の面白い現象の1つです。
同一局面の反復が永遠に続いてしまう可能性は、ゲームの欠陥になってもおかしくなさそうです。
ですが、コウ立てをしないとコウを取り返せないルールを加えることにより、その問題はほぼ解消しました。
むしろ、コウ争いという要素が加わり、ゲームとしての深みが数段増しています。

そんなコウですが、アマの皆さんには苦手・嫌いな方が多いようです。
時にはコウに負けて酷い目に遭うようなこともありますが、それがトラウマになるのでしょうか。
絶対にコウの形を作りたくない、という方も少なからずいらっしゃいます。
確かにコウ争いは難しいこともありますが、怖がり過ぎると上達にブレーキがかかってしまいます。



1図(テーマ図)
5子局です。
白△と、×にあった黒石を抜いたところです。
上辺の黒が心配ですが、守り方は黒AとB、どちらが適切でしょうか?





2図(失敗)
実戦は黒1とつながりました。
こう打ってしまう方が多いのですが、形が緩んでいます。
こういった手はかえって危険になるものです。
白2、4と進出され、白Aを見られて黒△一団が心配になりました。
また、逃げ出した中央の黒もまだまだ安心できません。





3図(正解)
ここは緩まず黒1と当てるのが石の形であり、正解です。
白2とつないでくれれば、黒3のカケツギで全体がつながります。
黒Aの切りから白△を取りに行く手まで残り、全図とは比べ物にならないほど良い図です。

しかし、こう打てない方も多いのです。
その理由は・・・。





4図(正解2)
黒1に対してつながず、白2と切ってコウを仕掛けてくる手を怖がってしまうのですね。
しかし、ここで非常に役に立つ格言があります。
それは「初コウにコウ立て無し」というものです。

初コウとは序盤にできるコウのことを指しています。
序盤では大きなコウ立てはなかなかできないので、コウは先に取った方が相当有利になりますよ、という格言です。
序盤のコウは仕掛けられた側が先に取ることが多く、怖がる必要は無いのです。

コウ立てというのは、ただ2手連打すれば良いというものではありません。
多くの場合、普通に大場を打つより数段高い価値を求められます。

例えば、黒3のコウ取りに白4をコウ立てにしてみましょう。
黒は迷わず5と解消して問題ありません。
白×を抜いた黒は非常に強くなり、そこにへばりついた白2、白△の存在価値はほぼ0になってしまいました。
結果的に白は3手パスをしたようなものです。

一方、右辺では黒△がなかなか酷い形になっていますが、黒7と押さえていれば生き死にの問題にはなりません。
お互いの悪手の数が明らかに違い、黒が大きく得をした振り替わりです。
黒△で中央を止める手も残っています。


こういったことが理屈で分かっていても、実戦だと怖くなってしまうかもしれません。
克服するには、とにかくコウに慣れるしかありません。
小ヨセの小さなコウでも良いので、コウ争いを頑張る習慣を付けると良いでしょう。