白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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碁聖戦感想

2016年06月25日 23時59分59秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
本日、第41期碁聖戦挑戦手合五番勝負の第1局が行われました。
早速振り返ってみましょう。



白12手目まで、非常にありふれた布石です。
ここで黒A、白B、黒Cといった進行ならば平凡な布石が続きます。
しかし流石井山碁聖、皆さんの期待を裏切りません。
ここで斬新な打ち方を見せてくれました。





黒1!
上辺の黒3子はプロの感覚からすると異様な構えです。
しかし実は左下の定石と関係があり、打たれてみるとなるほどと思いました。
ただし高級な考え方になるので、説明は省略・・・
既存の常識に囚われない柔軟な発想、とだけ申し上げておきます。
白Aと左下黒を攻めに来るのが心配ですが、構わず黒Bと大場に展開する予定でしょう。
左下黒は攻めさせてサバこうという作戦です。





右上でも見慣れない形が出来ましたが、白Aと打った所に注目してみましょう。
「ツケにはハネよ」で、黒Aが普通ですが・・・





このような変化が想定されます。
定石のような形ですが、黒2子が宙に浮いて白が主導権を握りそうです。
そこで黒は・・・





右上の競り合い重視で、黒1と打ちました。
手を抜かれた白としては勢い白2と連打、黒も3と連打してお互いに主張を通しました。
右下白も好形ですが、左上黒も立派です。
双方気合の入った分かれでした。





そして白1と迫った場面です。
黒2が井山碁聖らしい目一杯の手です。
黒石は弱いので、この手では少し遠慮してAと打つのが普通の感覚です。
黒2に対して白Bならそこで黒A、それは黒良い形なので・・・





村川挑戦者、白1のノゾキから白5と切断!
鋭い反撃で、井山碁聖参ったかと思われました。





しかし黒も11までと冷静に対処しました。
下辺を捨石にして左上一帯の黒模様で勝負する作戦です。
鮮やかな分かれでした。
この後白Aと黒模様に突入、激しい戦いが始まりました。





白△と打たれた場面です。
押さえると切られていけませんし・・・





緩めるのもいけません。
やはり左下黒が取られてしまいます。
黒、参ったでしょうか?





ところが黒1がうまい返し技でした。
白AとB2つの傷を作って、どちらを守るのか聞いています。





白1と下を守れば黒4までとなります。
攻め合いで左下黒を取る事が出来ますが、上辺の黒模様が完成してしまいます。
これは黒が良いでしょう。





そこで白は上を繋ぎ、黒は2、4と脱出する事が出来ました。
一歩間違えると潰れる所ですが、見事な読みでした。
すると今度は白が凌ぐ番、白Aと切って難解な読み合いは続きます。





その戦いの結果、白1と脱出に成功しました。
それと同時に周囲の黒が弱くなっており、白優勢でしょう。
ここで黒は自身の安全を確保しようとするのが普通の発想ですが・・・




中央は黒1、5で間に合わせて、下辺の動き出し!
井山碁聖渾身の勝負手と見ました。
これが井山碁聖の怖い所ですね。
白8と分断されて苦しそうですが・・・





黒AやBの弱点を狙いに、黒7と中央の白に絡んで行きました。
超難解な戦いです。





戦いは黒23子対白22子の大攻め合いに発展!
ぎりぎりの読み合いでしたが、勝負を制したのは黒の井山碁聖でした。
村川八段にも十分チャンスがあったのではないかと思います。


結果的に大石が取られる事になりましたが、内容は僅差です。
むしろ途中までは村川八段が押していた碁だったと思います。
最近一段と力強くなった村川八段、井山碁聖に対しても一歩も退かない戦いぶりでした。
2局目以降も激しい戦いになる予感がします。
第2局は7月18日(祝・月)に石川県金沢市の「北國新聞会館」で行われます。
お楽しみに!