白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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封じ手予想

2016年06月13日 22時00分00秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
本日は対局がありました。
が、内容が悪すぎてあっさり負け。
駄局は後回しで名局を鑑賞するとしましょう。

本日は本因坊戦第4局、1日目が行われました。
1日目で75手進行、2日制の碁としてはかなりのハイペースです。
勝負優先で後半に時間を残しておこうという事かもしれません。
しかし内容の濃さは変わりませんでした。



序盤で流行型が出現、一瞬がっかりしていたのですが流石両者の碁は一味違いました。
白△の肩ツキを無視して黒△の肩を利かしにいきました!
形としてはある手ですが、肩ツキされた瞬間というのは見たことがありません。





白1と受けると、後々黒2と打たれて白5までとなる公算が高いです。
3線に石が5本並んだ形はつらく、これは黒の狙い通りです。





という事で白は上辺を連打、黒も右辺を連打するという気合の振り替わりになりました。
さらに白は右辺上部の石も逃げ出し、乱戦模様です。
ここで黒番、右辺の白6子を攻めたくなりますが・・・





黒1と本手の曲げ!
こういう手はアマの方には大変参考になるでしょう。
まず自分の足元をしっかり固め、それから黒3、5と攻めに入りました。





すぐに白を攻めたくなる方も多いと思います。
勢いは良いのですが・・・





「取ろう取ろうは取られの元」の図です
これは極端な図ですが、石を攻める時は常に反撃に気を付けなければいけません。





手順が進み、白△と絶好点に飛んだ場面です。
ここで黒Aなら平凡で、私ならそう打ってしまいそうです。
上辺で根拠を持とうという守り主体の発想です。





しかし実戦は黒1、3
全く気が付かない手で、流石高尾挑戦者だと思いました。
黒石の補強には違いないのですが、下方の白大石への攻めをも狙っています。
碁盤全体を見た発想です。





手順が進んだ場面です。
白1に対して黒2と、目一杯の形で対抗しています。
白3とハネた形、黒4と押した形どちらも素晴らしいです。
これでいけると言う、両者の自信を感じます。





アアがハザマを空けると大概ひどい目に遭います。
プロもハザマを空ける事はありますが、対策を立てた上での事です。
この場合は黒6までと進み、白は中央が弱くなって悪そうです。





黒△とノゾいた場面です。
「ノゾキにツガぬ馬鹿は無し」などと言いますが・・・





「馬鹿と天才は紙一重」とも言います(笑)
この2人はもちろん後者です。

黒「繋いでください」と前図ノゾキ
白「嫌です」と白1
黒「まあまあそう仰らずに繋いでくださいよ」と黒2
白「嫌だって言ってるでしょ!そんなに切りたいなら好きにしなさい!」と白3
黒「そこまで言われては仕方ない。後悔しますよ?」と黒4以下

盤上の会話を翻訳するとこんな感じになるでしょうか。
意地の張り合いから大喧嘩に発展する事はプロの碁ではよくあります。





さて、封じ手はこの場面です。
白番、中央を補強するとしたらこの4通りぐらいが候補です。
ただ、白は中央の4子を逃げ出しにくい形になっています。
どこかでこの見返りを得なければ地が足りなくなってしまうでしょう。
のんびり打っているのではそのチャンスが得られそうに無く、これらの手は廃案としました。





白4子が取られそうになった代わりに裏側に白石が増えました。
それを生かして白1から切断するというのは素直な発想です。
しかし、この手はプロには非常に打ちにくい・・・
白9までの形を想定して、白△の石が無駄石になっているからです(価値0というわけではありませんが)。
特に左側の石は黒のダメを詰めただけの手で、酷いですね。
これで上辺の黒を酷い目に遭わせる事ができれば形の悪さは関係ないのですが、私にはとても自信がありません。
よってこれも廃案にしました。





という事で私の封じ手予想は白1のコウ仕掛け!
ここは元々黒Aと打たれると白4子が取られる所です。
しかし白1と打って黒Bと謝らせる事ができれば、その手が無くなります。
また白Bとコウに勝てば、黒全体の眼が無くなります。
このコウ争いで局面を打開しようという作戦です。
ただし、白にも大きなリスクのあるコウです。
コウに負け、さらに黒Dと押さえられると上辺が全部死ぬ可能性があります。
しかしコウ立てで白Cから連打するのも凄い所で、これで1局打ってみたい気がします。


幽玄の間有料会員向けの封じ手予想クイズも開催されています。
果たして私の封じ手予想は当たるでしょうか?
第4局を制するのはどちらでしょうか?
2日目の対局の模様も、幽玄の間にて溝上知親九段の解説付きで生中継されます。
お楽しみに!