白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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本因坊戦第4局感想

2016年06月14日 18時17分16秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
本日は本因坊戦第4局の2日目が行われました。
早速振り返っていきましょう。



注目の封じ手は・・・白1のカケ!
またしても外れでした
なぜこの手を予想から外したかと言うと・・・





黒9までとなり、中の白石を完全に取り込まれてしまうからです。
これは白まずいと判断していました。
しかし実戦もこの進行になり・・・





白1、3の出切りを決行!
1日目私がうまく行きそうにないと言った手ですが、白△に援軍が増えています。
これなら黒を厳しく攻められると言う事ですね。
流石の判断力でした。





黒がシノギを図るのに対し、白1、3と厳しく追及!
白3の手はシノがれると一手パスになりかねず、非常にリスクの高い手です。
また、白はAの所に弱点を抱えているので簡単に黒を取れそうもないという印象があります。
それでも眼取りを決行したのですから、裏には膨大な読みの努力が為されているのでしょう。





黒の対応としては、普通は黒1で白の断点を睨む所です。
白2以下は先手のダメ詰めで・・・





黒1に白2と封鎖すれば攻め合いです。
しかしこれは黒13、15が妙手、6手対5手で黒攻め合い勝ちになります。
では、黒は何故この道を選ばなかったのでしょうか?
実はこの攻め合いの図は膨大な枝分かれの中の1図に過ぎません。
他にも様々な封鎖の仕方があり、それぞれに無数の変化があります。
その中には黒が潰れる図があったのかもしれません。
あるいは・・・





白としてはこのように黒を逃がして打つコースもあります。
白Aのコウには謝らざるを得ませんし、左辺黒の連絡も不完全なので寄り付かれそうです。
攻め合いと長期戦、どちらの道を嫌ったのか定かではありませんが、黒は勝ち目が薄いと判断しました。





実戦は黒、コウでのシノギを選択しました。
この方がチャンスがあると判断したのでしょう。
しかしコウ争いの中、白1が絶好のコウ立てでした。
黒Aと取るとここもコウ、白に無限のコウ立てができてしまいます。
これには黒しびれました。





止むを得ず黒1とコウを解消、白2と解消されて右上黒の眼が無くなりました。
黒3と攻め合いを狙いますが、白4、6が強烈な決め手でした。





白2と封鎖されて黒の眼が無く、外側の白との攻め合いも勝てません。
この後数手で黒投了となりました。

後にして思えば、1日目で白がリードしていたようです。
序盤右上隅で黒がやや利かされた印象で、そのあたりが敗因という事になるでしょうか?
そこまで遡らなければならないと言うのは、井山本因坊の強さの証明でもあります。
リードをしっかり守りつつ、チャンスが来た時に一気に決めてしまいました。
完璧な勝ち方と言えます。
高尾挑戦者としては力を出す前に決められてしまい、不本意だった事でしょう。
しかし本来高尾挑戦者は布石の名手、次回は簡単に負かされる事はないと思います。
1局でも多く見たいので、高尾挑戦者の奮起に期待しています。

第5局は6月29日(水)、30日(木)に福島県福島市の「吉川屋」で行われます。
井山本因坊が一気に決めるか、高尾挑戦者が意地を見せるか!?
お楽しみに!