今年のヴィオラマスタークラスで、今井信子さんはバッハ等のバロック時代の作品が当時どのように演奏されていたかにこだわり、それを学ぶ場を設けました。決めたらトコトン徹底してやり切る今井さんのパワーには驚かされます。シューベルトの歌曲にこだわり、歌曲集「冬の旅」やセレナード等を演奏会のプログラムに入れたこともありました。2013年、詩の朗読とともに演奏された「冬の旅」は、小樽だけでなく、ザ・フェニックスホール(大阪)や武生国際音樂祭でも披露され、聴衆の心を揺さぶりました。ヴィオラは人間の声に近い音を出す楽器ですから、声楽家に代わってヴィオラがピアノと歌曲を演奏するのも聴衆の心に馴染むとつくづく思いました。
今井信子さんは、今年もアンサンブルのレッスンに力を入れておられます。ここ数年、チェロの奥泉貴圭さん、ヴァイオリンの島田真千子さん、井上静香さん及び北野紫帆さんが参加しています。ヴィオラ独自の作品が少ない中、ヴィオラマスタークラスのニュー・イヤーコンサート等で大変重要な役割を担っているのは,作曲家の小早川麻美子さんです。
彼女はヴィオラの受講生としてもヴィオラマスタークラスに参加しておりますが、今井さんの依頼でヴィオラが演奏できるように編曲をなさり、ヴィオラの演奏作品の幅を大きく拡げております。今年の演奏会では、ヴィヴァルディ:協奏曲集四季から「春」(ヴィオラ合奏曲版)、メンデルスゾーン:弦楽四重奏第4番第1楽章(ヴィオラとピアノ)が披露され、また2014年に初めて演奏されたモーツァルトのヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲K364(弦楽四重奏曲版)、J.S.バッハ:ブランデンブルグ協奏曲第3番第1楽章BWV1048(ヴィオラ合奏版)もプログラムに入りました。これらの作品の演奏は、演奏会場の聴衆の物凄い拍手喝采を浴びるほどに感動的でした。2013年のヴィオラマスタークラスFarewell Partyで、小早川麻美子さんが、「編曲に集中すると目がつぶれそうになります」とふとつぶやいた言葉に私は非常に感激したことを思いだします。
小早川麻美子さんが編曲された主な作品は下記の通りです。
2013年
・モシュコフスキ:2つのヴィオラとピアノのための組曲(原曲ヴァイオリン)
・スメタナ:交響詩「わが祖国」からモルダウ(ヴィオラ四重奏版)
・マスカーニ:歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」から間奏曲(ヴィオラ四重奏版)
・メンデルスゾーン:弦楽八重奏曲(2つのヴィオラとピアノ)、
2014年
・モーツァルト:ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲K364(弦楽四重奏曲版)
・ショスタコーヴィチ:2つのヴァイオリン(ヴィオラ)のための小品
・ヴィヴァルディ:協奏曲集四季から「冬」(ヴィオラ合奏版)
・J.S.バッハ:ブランデンブルグ協奏曲第3番第1楽章BWV1048(ヴィオラ合奏版)
・クライスラー:愛の喜び(2つのヴィオラとピアノ)
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