「天道虫(てんとうむし)の会」

私たちは、今井信子さんのライフワークでもある「ゆらぎの里」での音楽活動に賛同して、「天道虫の会」を立ち上げました。

第14回ゆらぎの里ヴィオラマスタークラスを振り返って(その3)

2018-03-28 10:26:30 | 日記

諸角さんの投稿最終回です。

2018年1月14日、小樽市民センター・マリンホールで開催されたプレファイナルコンサートを終えて、例年通りレッスンの行われたペンション・シャドウ・クラッセにて、皆さん緊張感から解放されて、思いっきり食べて飲んで、わいわいがやがやと例年になく楽しいFarewell Partyとなりました。そのクライマックスで今井信子さんが挨拶で述べた言葉の一部を紹介します。

  「ある事が始まり、いつか終りが来ます、終わりがきますが、自分は楽観的だから悲しく思うことはありません。次の何かが始まるからです。皆さんここでやったことや育まれた友情を持ち帰って同じことをするでしょう。いつか、どこかで再びお会いするでしょう。私から行くかもしれません。ここにいる皆さんは失敗を恐れることなく前進しました。私の好きな言葉はNo Risk, No Gloryです。」

 (今井さんは英語で挨拶されました。私の和訳に不備があればご容赦ください。) 

ヴィオラマスタークラスは2019年1月の第15回をもって終了します。そのことを意識され、今まで実行して達成された様々なことを振り返り、若い受講生が失敗を恐れず前進して欲しいという気持を述べたのでしょう。

  確かにゆらぎの里ヴィオラマスタークラスの過去の企画を振り返ると本当に失敗を恐れず挑戦的で、結果として驚く程に拡大的発展をしています。 

 (1) アンサンブルのレッスン及び演奏会(ゲスト演奏家は下記の通りです) 

 2011年吉田佳代(クラリネット)、難波雅楽紫奈(筝)

 2012年から2018年まで奥泉貴圭(チェロ)、

 2013年島田真千子、永井久美子、北野紫帆(ヴァイオリン)

 2014年三浦一馬(バンドネオン)、後藤和子、井上静香(ヴァイオリン)

 2015年大槻晃士(ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラ)2018年まで

 ティムウエイ・ラム(ヴィオラ・ダ・ガンバ)、

 島田真千子、井上静香、北野紫帆(ヴァイオリン)

 2016年斎藤正樹(コントラバス)

 2017年ポール・賢司・ウィアンコ(チェロ)、吉見伊代(チェンバロ)

 2018年サリー・チズム、ハンナ・リー(ヴィオラ)、

 後藤和子(ヴァイオリン)、神原玲奈(ヴァイオリン・ヴィオラ) 

 (2) シューベルト歌曲集「冬の旅」全曲演奏会 

 2012年1月6日 於:朝里クラッセホテル・ナパイア

今井信子(ヴィオラ)、草冬香(ピアノ)

FMおたるチーフアナウンサー村岡啓介(朗読) 

 (3) 小早川麻美子編曲作品で演奏会が質的・量的に充実

 2013年からスメタナ:交響詩「わが祖国」からモルダウ(ヴィオラ四重奏版)やマスカーニ:歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」から間奏曲(ヴィオラ四重奏版)等編曲。その後モーツァルトのヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲K364(弦楽四重奏曲版)、バッハ:ブランデンブルク協奏曲第3番 ヴィオラ合奏版、ヴィヴァルディ:協奏曲集「四季」(ヴィオラ合奏版)、アストル・ピアソラのブエノスアイレスの四季やヨハン・ストラウス2世の「皇帝円舞曲」作品437の編曲等を手掛けました。2018年はニューイヤーコンサートでプロコフィエフ:ロメオとジュリエットより(小早川麻美子編曲)が演奏されました。 

 (4) 大槻晃士バッハ塾 2015年~2018年 毎年2回開催 

バッハ、バロック音楽を根本からとことん学ぶ革命的企画 

 (5) バルトーク:44の二重奏曲全曲演奏 バルトーク音楽の真髄に迫る 小樽市民センターマリンホールにて2018年1月8日ニューイヤーコンサート及び1月14日プレファイナルコンサートにて披露されました。 

 今井信子さんの好きな言葉「「ノー・リスク ノー・リターン」に戻ります。

 2007年に春秋社から出版された(2013年増補版出版)「今井信子 憧れ ヴィオラとともに」は今井信子さんの全てが見えるようで、納得してしまうことが多いです。とりわけ終章・ノー・リスク・ノー・グローリーは何度も読み返してしまいます。なぜなら、ビジネスマンだった私にとって、ビジネスの基本は「ノー・リスク ノー・リターン」で、「失敗を恐れていては成功はない。高い目標を決めたら達成するまでとことんやる。達成出来たら次のもっと高い目標を設定して進む」と心得ているからです。 

 最後に、著書の中から今井信子さんの言葉を引用させていただいて締めとします。

 「ノー・リスク・ノー・グローリー」、つまり「リスクのない栄光はない」という言葉が好きだ。今しかできないことがたくさんある。階段を一つ上がって高いところに進もうと思ったら、覚悟を決めて進んで行くしかない。躊躇していてはもったいない。できた、できないよりも、その気持ちの方が大事だと思う・・・これなら大丈夫だという保証があって実行するのではない。やると決めたらやる。それだけだ。夢があれば生きていける。人がまだ踏んだことのない雪道を行きたい。・・・音楽は尊いものだ。私たち音楽家に一番大切なのは、音楽の偉大さを知り、音楽に奉仕すること。音楽に憧れを持ち続けること。全ては憧れから生まれる。

 

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第14回ゆらぎの里ヴィオラマスタークラスを振り返って(その2)

2018-03-17 10:19:57 | 日記

諸角さんの投稿その2です。

 

昨年12月ヴィオラマスタークラス実行委員会事務局代表の高野るみさんから今年のヴィオラマスタークラスのスケジュール表をメールで頂戴して、ある緊張感を覚えました。最初に高野るみさんからレッスン等を除く特別プログラムや演奏会の日程をまとめた簡潔な1枚ものの全日程表に、1月5日バルトーク勉強会(1)、1月12日バルトーク勉強会(2)とありました。その後レッスン等を含めた詳細なスケジュール表が送られてきで、1月5日Bartok1、Bartok2、1月7日Bartok3、Bartok4、1月10日Bartok5、Bartok6という修正された予定が入っておりました。今井信子さんは、2018年小樽ヴィオラマスタークラスにおいて、バルトーク:44の二重奏曲に対する挑戦をとことんやる積りだなと思いました。何が行わるのかはっきりと頭に描けなったのですが、取りあえず全てをビデオで録画することを決めました。

 

 

 

バルトークというと彼のヴィオラ協奏曲は、ヴィオラ奏者にとって必須というか最も大切な作品の一つです。小樽ヴィオラマスタークラスのレッスンでこの作品に挑戦する受講生は多いです。受講生が先ず最初に弾いた後直ぐに講師の今井信子さんが投げかける質問は、「バルトークがこの作品を書いた時の心境をご存知ですか? 病院で死ぬ間際に、人生よさよなら、お金もなく、子供も傍にいない、いつも故郷ハンガリーに帰りたいそういう気持ちでした。」だから、彼の故郷の民族音楽を理解することは非常に大事なのです。バルトークのヴィオラ協奏曲は、2012第2回東京国際ヴィオラコンクールで本選の課題曲でした。

 

 

 

 2017年9月19日大阪フェニックスホールで開催された「今井信子presents ザ・イマイ・ヴィオラ・クァルテット ~ヴィオラ・フェスタ~」及び同じプログラムで2017年9月24日紀尾井ホールで開催された「今井信子・夢」シリーズ第5回ヴィオラ・クァルテットにおいて、中国ヴィオラ界のリーダー的存在のニアン・リウ、第1回東京国際ヴィオラコンクール第3位及び聴衆賞受賞者のファイト・ヘルテンシュタイン、第2回東京国際ヴィオラコンクール優勝者のウェンティン・カンと全曲ではありませんがバルトークの44の二重奏曲が披露されました。同年7月28日フェニックスホールPrime Interviewで、今井信子さんは下記のように述べています。

 

 

 

 「この曲は本来、教育を目的に、2本のヴァイオリンのために書かれています。様々な場面でハンガリーの農民が歌う、土着の旋律を基に、ほぼファースト・ポジションで弾けるほど、テクニックは平易。でも、音楽上は、バルトークの真髄と言って良いほど、素晴らしい曲です。実は昨年5月、この曲を集中的に勉強しようと、ウェンティンと2人で、ブダペストへフィールドワークに出かけました。バルトークと私たちの“間にいる”ような存在の地元のヴァイオリニスト、ミハーリ・シポスさんに会い、バルトーク本人が録った農民の歌の録音を聴き、勉強しました。そして、マドリッドに戻り、この6月まで数回に分けて、全44曲にわたって、成果を披露したんです。それがとても刺激的で、今回もぜひ、皆で手分けして弾きたいと…。バルトークによる録音や私たちの話を、

 

 聴衆の皆さんに聴いていただいた上で、演奏したいと考えています。」

 

 (注1):ウェンティン・カンさんは第2回東京国際ヴィオラコンクールの優勝者でマドリッドのソフィア王妃高等音楽院で今井信子さんのアシスタントを務めています。

 

 (注2):伊東信宏(大阪音楽大学教授・音楽学)が「今井信子・夢」シリーズ第5回ヴィオラ・クァルテットのプログラム・ノート「バルトーク:44の二重奏曲より」でバルトークの本作品作曲の経緯を解説しております。伊東教授はバルトーク44の二重奏曲の成立に関する論文を発表されております。

 

 

 

 1月5日、7日及び10日の夜7時45分から約2時間、バルトーク:44の二重奏曲の勉強兼練習が行われました。若い受講生等演奏者は録音された農民の歌う民族音楽を聴いて、全員の合奏と二重奏、時には動きながら相手を替えて二重奏、三重奏、四重奏、及び六重奏の演奏とあわただしい練習風景をひたすら夢中に録画しました。最初はどうなるのかなと思いながら録画しておりましが、前半は今井信子さんとこの作品を演奏したことのあるファイト・ヘルテンシュタインさん(第1回東京国際ヴィオラコンクール第3位及び聴衆賞受賞者)、後半は今井信子さんと一緒にブタペストへフィールドワークに出かけ今井信子さんとこの作品を実際に演奏したウェンティン・カンさん(第2回東京国際ヴィオラコンクール優勝者)の指導を受けて、また小樽ヴィオラマスタークラスの元受講生で現在音楽教育の道を歩んでいる神原玲奈さんのリーダー的な存在もあり、さすが優秀な受講生ですね、最後は素晴らしいアンサンブルとなりました。この挑戦を通して、若い受講生は皆バルトークの作品の真髄を体得したのではないでしょうか。そして音楽を自分の音で演奏するとはどういうことなのか学んだのではないかと思います。

 

 

 

 1月8日小樽市民センター・マリンホールで開催されたニューイヤーコンサートでバルトーク:44の二重奏曲 BB 104 (sz.98) vol1(22曲)、及び1月14日同ホールで開催されたプレファイナルコンサートでバルトーク:44の二重奏曲 BB 104 (sz.98) vol.2(23曲)が披露されました。

 

 (注:)「トランシルヴァニアの踊り」は、ニューイヤーコンサートの最初とプレファイナルコンサートの最後に演奏されました。

 

 

 

バルトーク:44の二重奏曲は、両コンサートにおいて最後に演奏されました。演奏終了後、会場から本当に温かく感動的な拍手がわき上がりました。

 

 

 

 最後に、昨年小樽及び東京で開催された「フォーシーズンズコンサート」のプログラム・ノートを寄稿した河相美帆さんが、今回もプログラム・ノートで作品の解説をされています。その中で「バルトーク《44の二重奏曲》全曲演奏によせて」を読むと、彼女の卓越した洞察力と文学的表現力に感動します。添付資料で彼女の解説をご一読いただきたいと思います。河相美帆さんは2013年から15年までゆらぎの里ヴィオラマスタークラスに受講生として参加しました。現在はフランクフルト音楽大学修士課程に在籍しております。

 

 

 

ついでながら、上野学園石橋メモリアルホールにて開催されるVIOLA SPACE 2018:第4回東京国際ヴィオラコンクールの5月31日ガラ・コンサートⅠ「子供の情景」で演奏される最初の作品が「バルトーク:44の二重奏曲より」です。アントワン・タメスティ、ファイト・ヘルテンシュタイン、原ハーゼルシュタイナー麻理子によって演奏されます。ファイト・ヘルテンシュタインさんと原ハーゼルシュタイナー麻理子さんはゆらぎの里ヴィオラマウタークラスの受講生でした。

 

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第14回ゆらぎの里ヴィオラマスタークラスを振り返って

2018-03-08 09:01:54 | 日記

毎回、小樽ゆらぎの里に参加して、写真やビデオ記録、レッスン中のタイムキーパー等お手伝いされている諸角憲治さんが他のサイトに投稿されたものを諸角さんのお許ししがでましたので、三回に渡って転載させて戴きます。

昨年いつ頃だったか、今井信子さんから、「2018年のヴィオラマスタークラスは、受講生は今までより多い最多の16名で、米国の友人や第2回東京国際ヴィオラコンクール優勝者のウェンティン・カン等が初めて参加して大変賑やかヴィオラマスタークラスになりそうよ。」とは伺っておりましたが、昨年12月28日、ヴィオラマスタークラス実行委員会事務局代表の高野るみさんから、「最終的に今回参加のマスタークラス関係者は50名になるようです。」とのメールが届いて、そのメールを読んでいるうちに第14回ゆらぎの里ヴィオラマスタークラス(Otaru Viola Master Class 2018)は、何かが起こるかもしれないという緊張感が体の中を走りました。 

 確かに、ヴィオラマスタークラス関係者の数は50名を超えました。受講生16名、今井信子さんのアシスタント&ゲスト13名、(当初14名でしたが、今回プロコフィエフの「ロメオとジュリエット」を編曲されたヴィオラ奏者小早川麻美子さんが風邪をこじらせて参加できなくなったのが本当に残念)、アシスタントの先生(大槻晃士、ファイト・ヘルテンシュタイン、大島亮、山本由美子、ウェンティン・カン)のレッスンを受ける聴講生12名(今井信子さん、高野るみさんの企画・運営をサポートする鹿島淑子さん、堀寿一さん、佐野友美さんやアシスタントの先生からレッスンを受けるために参加したヴィオラ奏者)、及び音楽家の健康・演奏の改善と療法に役立つアレクサンダーテクニークの指導教師で若い受講生にレッスン中あるいはレッスン終了後、自然に自由に演奏できる息の長い演奏家になるためのアドバイスをする小野ひとみ先生やベルマン兼ビデオカメラマンの私等含めてその他の聴講生5名に今井信子さん、高野るみさんを加えて48名、さらに毎年コンサート等に参加するヴィオラマスタークラスの仲間、須藤正實ご夫妻及び池浩太郎氏を加えて51名になりました。

  私が2011年秋頃、当時最先端のSDカードビデオカメラを購入して、およそ3ヶ月間で何とか最低限操作できるように準備してベルマンとビデオカメラマンのボランティア活動を本格的にスタートさせた2012年(第8回)以降の受講生数の推移は下記の通りです。 

 2012年(第 8回) 12名 (日本9名、台湾2名、韓国1名)

 2013年(第 9回) 11名 (日本8名、台湾2名、韓国1名)

 2014年(第10回) 11名 (日本8名、台湾2名、中国1名)

 2015年(第11回) 12名 (日本8名、中国、ドイツ、香港、台湾各々1名)

 2016年(第12回) 13名 (日本6名、中国2名、韓国2名、台湾2名、豪州1名)

 2017年(第13回) 13名 (日本7名、台湾3名、韓国2名、中国1名)

 2018年(第14回) 16名 (日本8名、韓国4名、台湾2名、中国1名

シンガポール1名)

 合 計   88名 (日本54名、台湾14名、韓国10名、中国6名、

         豪州、ドイツ、香港、シンガポール各々1名)

 

 2016年(第12回)、海外からの受講生が日本の受講生を初めて上回りました。それ以降、韓国、台湾、中国等アジア勢の全体に占める割合から見えることは、今井信子さんによるとアジアの若手演奏家が台頭してきているとのことです。ここ数年アジアの受講生の多くが、米国や欧州の音楽学院あるいは音楽大学で学んでいます。以前から海外留学を希望する日本の受講生はおりましたが、2018年(第14回)の日本の受講生8名の内3名が既に欧米の音楽院あるいは音楽大学で学んでいます。

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「天道虫(てんとうむし)の会」のご案内

「天道虫(てんとうむし)の会」のご案内   ―小樽ゆらぎの里での今井信子さんの音楽活動を応援する会の発足― 2014年6月23日   私たちが敬愛する今井信子さんが小樽「ゆらぎの里」朝里川温泉で始めたヴィオラマスターコースは、今年の正月で10周年を迎えました。此の間多くの教え子がここから育ち、年々今井先生に憧れ慕う俊秀のアーティストも多くこの地を訪れるようになり、先生を囲み、手伝い、研鑽し、コラボレートする世界にも類のない活動の拠点として高まっています。 この度、私たちは、今井信子さんのライフワークの一つでもある「ゆらぎの里」での音楽活動に賛同して、それぞれの立場でできる支援を行うとともに、それぞれのネットワークを通してこの活動を知ってもらい、多くのクラシックファンに珠玉のコンサートに触れていただくお手伝いをしようと、「天道虫の会」を立ち上げました。 皆さまには、「天道虫の会」の活動にご理解いただき、それぞれにできるご支援・ご協力いただければ幸いです。この会へ参加いただける方は発起人までご連絡ください。会員には、会のシンボルとなる竹製てんとう虫のバッチをお渡しします。 発起人メンバー 高野るみ、諸角憲治、砂岡茂明、樋口義洋、青木真也、須藤正實 <天道虫の会の由来>  天道虫は、太陽=天道(今井信子さん)に向かって飛ぶ習性があるという由来から名付けました <ホームページ> http://blog.goo.ne.jp/igainet  会の活動、小樽での音楽活動、今井さんの演奏活動など適宜掲載します。