遺伝屋ブログ

酒とカメラとアウトドアの好きな大学研究者です。遺伝学で飯食ってます(最近ちょっと生化学教えてます)。

平等に分配するのは難しい

2014-05-09 23:45:18 | BIONEWS
熱は下がったし、腹も下さなくなりましたが、胃はまだいたい。
特にデスクワークで、論文読み始めるとギリギリと痛みが走る。そんなに勉強嫌なのか? 俺の身体・・・正直すぎだろっ!

胃痛に耐えかねて早めに帰宅したので、ベランダで撮ったフリージアとチューリップの写真をまとめました。『いでんや』からどうぞ。

高齢妊娠による染色体異常、一因はたんぱく質(読売新聞) - goo ニュース
藤田衛生大の研究です。地方の私立大としては研究のレベルかなり高いです。報道された研究はかなり基礎研究に近いものです。
減数分裂過程で起こる染色体異常を調べるために卵子のコヒーシンに注目して解析しました。コヒーシンというタンパク質は、染色体同士をつなぎとめ、染色体数を正常に保つ役割があります。最近、メジャーな雑誌でコヒーシンの減数分裂での機能に関する研究が立て続けにだされています。直近でもEMBO JOURNALに連発っすよ。3月にはGenes & Developmentに東大の分生研も関連研究だしてます。そういった流れに乗って論文だすのって大事なんす。
さて、研究結果ですが、19~49歳の女性8人から提供された卵細胞で、コヒーシン(cohesin)の量を調べたところ、20歳代よりも40歳代で減少していたそうです。記事ではダウン症や不妊、流産の頻度が加齢とともに増える要因の一つが分かったとしています。そもそも体細胞分裂と違って、リスキーな分裂なんです。なんせ減数分裂では、相同組み替えをバンバンやりながら染色体数を半分に分配しなきゃいけないんですから。通常でも卵子の減数分裂の10%くらいは染色体の分配を失敗しているとEssential Cell Biologyという『教科書』でも記述されています。
染色体を複製すると分配する前に細胞は複製してできた2本の姉妹染色体を束ねて赤道面(metaphase plate)に並びます。そいで動源体(kinetochore)に微小管(microtuble)がくっついてひっぱって染色体を両極へ分けるわけです。この過程で姉妹染色体を束ねるのがコヒーシン。"cohesion(粘着)"という言葉から来ています。このコヒーシン機能が減衰してると染色体はきちんと束ねられず非常に不安定になることは想像に難くありません。
3月のMolecular Cell誌でRBの欠損したがん細胞でコヒーシンが正常に機能せず、それががん細胞で起こる染色体異常の原因ではないかという研究が出てました。この場合、コヒーシンの量ではなくアセチル化というタンパク質レベルでの修飾が損なわれるんで、減数分裂での話しとはメカニズムが違う感じです。でも、まあ、コヒーシン大事かもという最近の流れですね。おさえておきませう。

5月5日の子供の日に、子ども人口の話しを書きましたが、いろいろと深刻な統計データが上がってるらしいっす。
896自治体「消滅危機」に新藤総務相が「ショッキング」まず出生率改善を(産経新聞) - goo ニュース
8日に日本創成会議が、2040年に全国の半数に当たる896市区町村が「消滅」の危機に直面するとの試算を発表しました。何を今さら感満載のデータです。どちらかというと、『撤退戦』の作戦を立てるべき段階でありまして、出生率の改善でどうにかなるとか・・・そもそも改善できると思ってるのがおかしい。

川北町が増加率全国一 2040年の若い女性人口 民間試算(北國新聞)
5日のエントリーであげた子ども人口と同様の結果ですが・・・石川県内の市町では、川北町を除く18市町で若年女性人口が減少すると試算されました。川北町だけが15・8%増で、増加率は全国市区町村で最大でした。子ども人口でも増加しています。若い女性の人口と子ども人口がリンクしているのは、ま、当然ですな。川北町が全国1位の増加率となった背景には、水道料金や保育料、医療費を低く抑えるなど子育て環境の充実に力を注いだことで、金沢などから若年夫婦の転入が続き定着しているんだそうな。
昔、地元企業で就職を探していた女子学生さんが研究室にいて、3つほど内定とったんですが、川北町にある会社を選びました。生活コストがめちゃくちゃ安いんですと言って。若い学生さんですが、子どもの医療費がただだとか嬉々として教えてくれたのを覚えています。やることやれば、地方の町でもそれなりに成果をあげられるのです。
ひとつ前の記事で総務相の新藤氏が「過疎地で新しい取り組みがあれば、転居してくる人が出てくる。自治体を形成できる活力が維持できるかは、まだ努力の余地がある」と指摘したそうです。しかし、それは現在いる人口の取り合いっこに過ぎず、「国全体を預かる総務大臣の考えとしてはどうなの?」と思います。でも、川北町の成果から何をやるべきかはみえてくるんじゃないかな。もちろん、限られた予算とインフラの中で政策を考えなければならず、みんな平等に幸せって分けにはいかないことを覚悟しないといけません。

本日のお酒:なし
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