遺伝屋ブログ

酒とカメラとアウトドアの好きな大学研究者です。遺伝学で飯食ってます(最近ちょっと生化学教えてます)。

宇宙線虫の寿命と架橋されたDNAの修復の話し(関連してません w)

2012-07-06 21:04:13 | BIONEWS
昨日は経済の話しをだらだら書きましたが、昨夜、欧州、英国、中国が利下げに踏み切りましたね。今夜は米国の雇用統計が出るはず。来週書けば良かったなぁ。まあ、どこも苦労しているってことです。

宇宙では老化遅くなる?…線虫の実験で判明(読売新聞) - goo ニュース
2004年4月に打ち上げられた露ソユーズ宇宙船で、体長1ミリの線虫数百匹を国際宇宙ステーションに運び、地上帰還まで計11日間宇宙に置いた。その結果、宇宙にいた線虫は、地上の線虫に比べて、神経や内分泌にかかわる遺伝子の機能が低下、加齢に伴って蓄積するたんぱく質の量も減っていた。
原著論文のPDFをNatureのサイトからDLしたんで、さらさらっと読んだんだけど、神経系とかは専門外なので正直あんまし興味が・・・ない。関連していた7つの遺伝子がコードしていたのは、アセチルコリン受容体、アセチルコリントランスポーター、コリンアセチル化酵素、ロドプシン様受容体、グルタミン酸塩ゲートコリンチャンネル、シェイカー族カリウムチャンネル、インシュリン様ペプチド。まあ、引用した記事にある通り、ざくっと神経か内分泌関係やな。細胞間信号伝達で働いてるもんと言い換えてもいいかな。これらの遺伝子の発現が低下していたのが宇宙での寿命延長に関わっていたことを証明するために、地球上でこれら遺伝子の発現が変異した個体はやっぱり寿命が延びてた。なんでこれら遺伝子の発現が宇宙で低下したかは、神経・筋肉間の信号系で説明してはりました。それとDietary-restriction(摂食制限?)の信号系との関連。そこから寿命延長に向ったメカニズムはもうちょっと他の遺伝子もからめて調べないと分かってこないやうな気がします。

遺伝研、DNAダメージ「DNA鎖間架橋」の修復に関連する複合タンパク質を発見(マイナビニュース) - goo ニュース
gooニュースよりもマイナビニュースに出ている図を見た方が分かりやすいかもしれません。むろん、Molecular Cellのpaperをダウンロードした方がいいです。Molecular Cellの同じ号にフランスのグループのも出てます。合わせると読み応えありますよ。
DNAに損傷を与えたりDNAの複製を阻害したりする化学物質に『架橋剤』ってのがあります。抗がん剤として使われたりしてるんですよ。架橋剤がなんで悪いかってーと・・・鎖をまたいで共有結合で繋いじゃうのでそこから複製できなくなるし、そもそも二重らせんのあるべき高次構造がぶっ潰れでございます。これは紫外線でできるDNA修飾とは違って、いったん架橋された部分を切ってDNAを繋ぎ直さないと修復できません。それを何が請け負ってるかというと、Mcm8/Mcm9複合体だというのがこのお仕事。元々ライセンシングファクターとして知られてるMcm2-7複合体と一緒にくっついてたんで8番と9番の番号をもらったオマケのMcm達の本来の機能が、DNAの修復で必要なヘリカーゼの役割だろうとのことでした。Func遺伝子群やBRCA/Rad51よりは下位で働いているみたいっす。

本日のお酒:なし
コメント
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