遺伝屋ブログ

酒とカメラとアウトドアの好きな大学研究者です。遺伝学で飯食ってます(最近ちょっと生化学教えてます)。

花酵母で美味しく!?

2008-03-05 23:35:38 | 
産学協同で新しい酒

野々市の石川県立大と『日栄』の銘柄で有名な中村酒造が組んで野々市の町花ツバキから酵母を分離して新しい清酒を醸造して売り出すそうだ。

花から採った酵母で酒を造れば華やかな香りが楽しめそうなイメージがあるだろうけど、分離して植え継げばどこから分離されようと酵母は酵母だ。当然酒造用の酵母よりはアルコール発酵の力は劣ると思う。日本のほとんどの清酒は『協会6号』か『協会7号』、またはこれらをブレンドした酵母で醸されている。これで十分美味い酒ができるんですよ。以前紹介したけど、東京農大と小堀酒造が組んで造った『花蜻蛉』というお酒があります。これはアベリアという花から分離した酵母で醸したお酒っていうことになってますが、100%ではなくてあくまでもブレンド。使用されている割合は全体の20%だそうだ。けっきょく問題はそんなことではなくて美味いかどうか。そこら辺、小堀酒造はそつが無い。アベリアの花の香りがどんなものか僕は知らないけど、上品な香りでまとめられてます。美味ければOKなのですよ。大事なのはお客の期待に応えること。花から採った酵母っていうだけで気分良く飲めるじゃないですか。実際、吟醸香っていうのは麹カビが造ってくれてるんだよね。酵母の貢献度は低いと思うよ。(笑) お酒の他にも『天然酵母で作ったパン』ってのが売られているけど、それは市販されているイーストを使わずにそこら辺でわいてる酵母を使ったということでしょ。パンを作るのに適した酵母を培養して乾燥したものが『イースト』。人間は酵母菌を作ることはできないのですから『人工酵母』などというものはないのですよ。天然酵母のパンの酵母も、パン生産用に繰り返し使えるように分離された時点で市販のイーストとどれだけ違うものなのか疑問だけど、『天然』っていうだけでなんか美味しい特別なパンをたべてるような気分になれる。食べ物にはこういうことが大事。
この石川県立大と中村酒造のプロジェクト、ポイントは『ツバキから分離した酵母が醸した酒』に期待してそれを飲むお客を中村酒造がどれだけ納得させられるかが勝負だろう。
コメント (2)
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