ぽん・ぽん・ポンちゃん

慢性腎不全でもがんばる猫ポンちゃんと、飼い主の親子のいろいろなお話

土の下で眠る

2008-03-11 02:33:48 | Weblog
ほとんど自分の感情を出すことのなかった
我慢強いポンちゃん。
顔に似合わず、甘えん坊ではなかったので、
抱っこが嫌いで、脚にスリスリなんて事もしなかった。
ひざに乗ってきた事も15年間一度もなかった。
でも、いつもおばさんの事を気にかけてくれていて
ふと気が付くと、遠くからじっと私を見つめている。
そんな猫だった。

輸液や、投薬や、サポートゴハンの時も、本当は嫌なのに
「おばさんがどうしてもやりたいんでしょ。
 だったら、ボクは我慢するよ」と言っているような
包容力のある男の人のような存在感だった。
だから最後の時も「抱っこしたら嫌だよね」と思って
ただただ寝かした姿勢のまま撫で続けるしかなかった。

そんなポンちゃんが亡くなる2日前に
自分の感情を表した事があった。
静脈点滴のために、朝、病院に連れて行って
入院ケージに入れた後、どうしてもこっちを見てくれなかった。
「ポンちゃん!ポンちゃん! お昼にまた来るからね!」
呼ばれている事はわかっているのに
気づかないふりをして、ずっと奧の壁に向かって座っていた。
こちらに向けられた背中に悲しみと怒りがあった。
「今日もこんな所に置いていくの?
 僕、いろいろがんばっているのに、どうして?」
と言われているようで、泣きそうになった。
体に手をかけてこちらを向かせて、顔を見ながら
「これで良くなるんだからね。今日もがんばろうね」
と言って逃げるように病院を出てきたのに、
その日も良くならなかった。
死の直前にも、静脈点滴の留置針を嫌がって
自分で取ろうと急に動き出した。
ポンちゃんにとって、静脈点滴は
何よりも嫌な事だったのかも知れない。

でも、私はポンちゃんの数値がだんだん悪くなった時に
このまま自宅輸液だけ続けてもっと悪くなって
もし死んでしまったら、
「あの時、静脈点滴をしていたら助かったんじゃないか」
と後悔するかも知れないと考えてしまったのだ。

亡くなって二日たって思い出すのは、
どうしてもあの時の背中。
心の中で「ポンちゃん、心細かったね。ごめんね」
と何度も繰り返してしまう。

日曜日に車で2時間ほどのところにある実家に行って
ポンちゃんを埋葬してきた。
父が老体に鞭打って、深い穴を掘ってくれたので
いつもポンちゃんが愛用していた茶色の楕円ベッドに
毛布を敷いたまま寝かせて、そのまま葬る事ができた。
白い薔薇の花、猫じゃらしみたいな草や、
ポンちゃんの腎不全が発覚した時にりんごの作った
「ポンちゃんボランティア」の会員証、
ポンちゃんが亡くなる前日に突然切れてしまった
ばあやの愛用していたいちご型の携帯ストラップ、
私のハンカチなども一緒に入れた。
お弁当にゆでたささみも持たせて。

ベッドや毛布はアクリル製なので土中で腐らない事は
皆わかっていたけど、誰もそんな事は言わなかった。
親戚の親子も来て、総勢8名でお見送り出来た。
春らしく暖かくて、明るい日差しの中だった。
傍らには、ちょうど母が増やしていた白薔薇の苗を植えた。
後で全員で河川敷に行って、墓石になりそうな石まで
拾ってきた。
今は何も刻まれていないけれど、49日頃になったら
私とばあやとりんごで、石にも描ける特殊な絵の具で
ポンちゃんの名前や何か描いてあげる予定。
土が落ち着いてきたら、園芸の得意な母に
小さな草花を植えてもらう。

私にとってのポンちゃんはあの青い目と
白いふわふわの胸毛があってこそのポンちゃん。
だから自宅付近で荼毘に付すという選択も出来たけれど
それらが焼かれて無くなるというのは耐えられなかった。
恐がりの私には、お骨を見るなんていう事も出来ない。
だからこんなお別れの仕方を選んだ。

両親も動物好きで良かった。
左隣の木の下には、小・中・高校生時代に飼っていた
愛犬「ころ」の亡骸が眠っているらしい。
右隣の木の下には、おととし亡くなった
ばあやのミニうさぎの「まっちゃ」。
田舎で敷地が広いので、母屋からはかなり離れている。
でも優しい仲間がいるからポンちゃんも淋しくないね。

こんなお別れの仕方を選んだので、私の心の中では
ポンちゃんは変わらぬ美しい姿のまま、
ただ土の下でゆっくり眠っているだけ。
そして自由になった体で、行きたい時に行きたい所へ
自由に飛んでいっている。

おばさんの近くにいる時は、
わかるようにどうぞ小さなサインを送ってくださいね。

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11 コメント

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Unknown (のんぼう猫のママchan)
2008-03-11 09:31:21
いちごさん、TAMIさんのところで
ぽんちゃんが亡くなったのを知り、やってきました。
時々拝見させていただいていたのです。
私も2年前にピーちゃんという猫をこの時期に失いました。
気づいた時には、もう危ない状態で3日の入院
家族が見守るの死を選び、でも何もしないとすぐ
いってしまうのではとの不安で、病院通いもさせ
4時間ぐらい病院に点滴のために置いて来てました。
今、あの子はポンちゃんと同じように土の中で眠っています
でも、精一杯のことをしてあげたと思います。
いちごさんの家族は素敵だな~といつも読んでいて思いました。
今はまだたくさん辛いでしょうが、季節や家族が
きっと癒してくれると思います。
ゆっくりお休みください。
ポンちゃんんのご冥福を心からお祈りします。
虹の橋で会いましょう~。
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Unknown (香遊)
2008-03-11 19:14:58
いちごさん、はじめまして。ずっと前にポンちゃんに一目ぼれして以来、家族で読ませて頂いていました。
お悔やみのコメントを…と思いながらも、あまりの悲しみに言葉が出てきませんでした…。

私の愛猫もつい先日…2月22日の猫の日に、20歳の猫生をまっとうして旅立ってしまいました。頑張るポンちゃんの姿は、その後の私の支えでもありました。

ご家族の深い愛情の下、悠々とカッコよく生きたポンちゃん。そして、いちごさんの細やかなケアにも、いつも頭が下がる想いで見ていました。

私の家も田舎なので、愛猫まーちゃんは、窓からすぐ見える場所に埋葬しました。20歳の誕生日の為に作った、王様マントとティアラを身に付けて…。


いちごさんの悲しみが…痛いほどわかります。ポンちゃんにも充分伝わっていますよ。

今頃は虹の橋で、我が家のまーちゃんが丁重にお出迎えしているはずです。そそうのない様、よく言い聞かせときましたから。

ああ…本当に、ほれぼれするほど、カッコ良かったよ。ポンちゃん。

いつかまた、会おうね。
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Unknown (ぴか)
2008-03-12 01:29:03
ポンちゃん、とっても穏やかで
安らかですね。
ふわふわの、かわいいポンちゃんのまま。
大変なたたかいをしたことを忘れてしまいそうです。
楽しい仲間たちと、のんびりしていてね。
好きなところ、もう自由に行けますね。
ひなたぼっこしたり雲と一緒に飛んだりしながら
疲れがとれたらいちごさんのところに、また戻ってきてね。

いちごさん、ポンちゃんが来てくれるとき
きっとわかります。
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Unknown (いちご)
2008-03-12 01:36:48
のんぼう猫のママchanさんへ

初めまして。温かなコメントありがとうございます。
最後は家でゆっくりさせてあげたい気持ちと、まだまだ何か方法があるんじゃないか、諦めたらいけないんじゃないかという気持ちが交差して、本当に不安になりますよね。
今でも静脈点滴をした事はどういう意味があったのか考えてしまいます。獣医さんの「理想的な腎不全の最期でした」という言葉がなかったら、もっと落ち込んでいたと思います。
幸い、もうすぐ本格的に春ですね。泣いてばかりいたら、ポンちゃんも不安になってしまうし、もっと明るいおばさんでいられるようがんばりたいです。

香遊さんへ

コメントありがとうございます。
私もまーちゃんの事を読ませていただいていました。そして、香遊さんのおかげで最期の8分間の事を知ったので、ポンちゃんにも、ずっとずっと話しかけてあげる事が出来ました。
まーちゃん、丸顔でくしゃくしゃの毛で、私好みの猫さんなんです。「猫、触りてぇー」お気持ち、すごくわかります。あんなにかわいい存在が、ある日急にいなくなってしまうなんて、頭も体もまだ理解出来ていない感じです。今はまだ抜け殻状態ですが、ポンちゃんを感じながらも少しずつ社会復帰できるようにがんばりますね。
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Unknown (いちご)
2008-03-12 01:48:57
ぴかさんへ

ポンちゃんが表面的には辛い様子をあまり見せなかったから、静脈点滴に踏み切るのが遅すぎたのかとか、点滴を始めてからも、もうずっと家で過ごさせていた方が良かったのではなかったかとか、今になっていろいろ頭に浮かんでしまいます。
でも最期はとっても良いお顔をしていて、実家の家族も安心していました。
今はポンちゃんが来るのを感じるためにも、心を柔らかくして待っていないと…と、思います。子ども達は、もう「だって、ポンちゃん近くにいるから」と言って笑っています。
ぴかさん、いつも温かな言葉をかけていただいてありがとうございます。
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いまになって・・・ (nest)
2008-03-12 16:07:56
ポンちゃんの画像を拝見してやっと実感が湧いてきて
涙が止まらなくなってしまい、コメントが出来ずにいました。
病院に預ける時の苦しさは私にもわかります。
でも、あの男らしいポンちゃんがそんな事にこだわっているとは思えませんよ^^
だって安らかなお顔が出来るって幸せだった証拠です♪
画像のポンちゃんはまるで寝ているようで
とても幸せそうだもの

ご実家に埋葬されたとの事とても羨ましいです。
すぐ逢いにいけるし、寂しくないし
綺麗なお花や自然に囲まれて眠りにつけるなんて
凄く贅沢な気がしますw
気品あふれるポンちゃんにはふさわしいベットですね。
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Unknown (MMMinMcity)
2008-03-12 17:15:47
はじめまして。
いつもこちらを読ませていただいておりました。

ポンちゃん、ご飯が食べられているということだったので、きっとまた回復してくれるものと思っていましたのに、急なことで驚きました。そして、改めて、意志の強い猫さんだったんだな、と思います。

我が家のくまおも腎不全で、そこからこちらを読ませていただくようになりました。我の強いくまおを「変な猫だなあ」と思っているところがあったのですが、ポンちゃんのおかげで、そういう個性を尊重できるようになった気がします。

いちごさんの、ポンちゃんを尊重する姿勢には学ばなければと思います。

いちごさんご一家やポンちゃんに一言お礼を言いたくて出てきました。ありがとうございました。
返信する
Unknown (sono)
2008-03-12 21:05:23
涙もろい私は、いちごさんのブログにくるたびに
涙がポロポロあふれ出て、お悔やみの言葉が書くことができないまま、
今日まできてしました。ごめんなさい。

ポンちゃん、本当にかわいい猫さんでしたね。
いちごさんのたくさんのたくさんの愛情に包まれていたから、
こんなにおだやかで、やさしい猫さんになったのでしょうね。きっと。
これからも、きっといちごさんのそばにいて、
いちごさんのことをずっと守ってくれると思います。

さみしくなったら、手の平を上にして、
ポンちゃんの名前を読んでみてください。
いちごさんの手の平がぽっと暖かく感じたら、
それがポンちゃんからの
「ボクはここにいるよ!」っていう合図のはずですから。

少し落ち着いたら、
ポンちゃんの話をもっともっと聞かせてくださいね。
返信する
Unknown (いちご)
2008-03-13 00:09:43
nestさんへ

病院に預けるの辛いですよね。ポンちゃんも、もう6~7年ぶりの入院だったので状況がわからなかったと思います。それに、入院の日から転院したので、さらに不安だったと思います。
亡くなってから1日以上、リビングの長座布団の上に寝かせていたんですけど、本当にぐっすり眠っているとしか思えなくて、何度も「今日は起きないね~」と口に出してしまったほどです。
いつかは来るときが来るというのはあったので、漠然と考えてはいたのですが、どうしても焼かれるのは嫌だったので実家にしました。
次に行く時は墓石にペイントして、草花を植えて、かわいいお墓にしてきますね。

MMMinMcityさんへ

はじめまして。コメントありがとうございます。
私も、もしかしたら回復するかも知れないという気持ちを最後まで捨てられませんでした。貧血の数値がさして悪くならなかった事と、ずっとゴハンを食べていて痩せていなかった事など、普通の腎不全末期の猫さんと、かなり様子が違ったからです。
でも、数値から察すると、体の中ではものすごい事が起きていたんですよね。それを表に出さなかったポンちゃんは強かったです。
実は私、くまおちゃんの隠れファンなんですよ。ブログに登場回数が少ないので、いつも「くまおちゃん、もっと出して~!」と思っていました。黒猫らしからぬ体型と、我が道を行く性格がかわいくてかわいくてたまりません。お世話させていただきたいくらいです。

sonoさんへ

ポンちゃん、ほとんど「にゃー」と言った事もないです。いつも無言で見ていました。ゴハンの催促も、じーっ。たま~に遊びたい時は、くるっと転がってお腹を出して、じーっ。目力が強かったですね。
ガブガブ遊びはするのに、シャーもフーも言った事がないです。仕方ないな~という感じで、輸液も投薬も爪切りもドライヤーも、何でもやらせてくれました。人間の言葉がわかっているような錯覚さえ覚えました。
手の平を上にして名前を呼ぶんですね! 来ているような感じがしましたよ! こんな風にいつでも来てくれたら嬉しいです。ポンちゃん、こんなに大勢の方に愛されている事、わかっていたかしら? 本当にありがとうございます。
返信する
ポンちゃん、やすらかに。。 (kitaoka)
2009-11-20 10:21:35
ひさしぶりに寄らせてもらったらポンちゃんが・・ずいぶん遅くなりすみません。みんなに愛されてポンちゃん本当に幸せでしたね。白バラを添えてもらった写真がとってもきれいで涙がでました。
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