午後の予定が相次いで変更で、結局、ぽっかり穴が空いた。こんな日もあるさ、と透かさずペダルを漕いだ。緩やかな登坂を進み大王方面に向かうことにする。運動をするにはかなり暑いが苦にならない。と言うか、そういう身体になってきた。昨日の夕方は、島茶屋までを往復した。それでも往復10キロほどにしかならない。波切の灯台までは無理なく走れる気がする。
安乗、波切、麦崎と灯台ばかり狙うコースを灯台シリーズと決めているのだが、残念なことに安乗までの道のりは自転車にとって極めて危険である。セットで売れればおいしいのに、観光地として痛いことである。その点、側道のある先志摩への道は安心して走ることができる。排気ガスに耐えなきゃいけないが…。
距離にして片道10キロ、時間にして約25分弱、ややゆったりめの走り。休憩なしで灯台入り口まで駆け登ることが出来た。午後3時過ぎ。そこで見たものは、週末のせいか多めの観光客と、それをはるかに上回るおびただしいとんぼの群れ。赤とんぼのようにも思えるが、絶え間なく移動するので確認できない。でも、しばし心を奪われる光景である。旅行者を慰める、まさに旅先ならではの、日常を超越した景色。
渇いた身体に、
トコロテン
とは何とも甘い誘惑である。エキゾチックな顔立ちのお店の女性から、
「おだしになさいますか、きな粉にされますか?」
「おだしで」
と、大人の選択である。
ところてんの食べ方は地方によって多様であるのは知っている。
- 二杯酢あるいは三杯酢をかけた物に和辛子を添えて
- 黒蜜をかけて単体又は果物などと共に
- 醤油系のタレで
と、まさに何でもありだ。
さて、ここのお店では
お出汁か、きな粉か
である。思わず身を乗り出した。もちろん興をそそられて。待つこともなくほどなく登場。貝のはし枕(箸置き)が心憎い演出。海の響き、磯の香りが漂うようだ。
御つゆ(出汁)をたっぷりかけ、添えられたお酢を控えめにして、これ以上ない上品さでにかっ込んだが、さわやかで、しかも深い味わいがある。酢に弱く少し咽(むせ)たのは愛嬌である。
テングサを海から採ることからすべて自家製という。もともと海女さんのお店だそうだ。天然自然であることの意味を知り、心がけ、それを伝承してきた深みがある。海の恵みが透き通った心太に染み渡ったかのよう。その味をしっかり確かめつつ、瞬く間に平らげたのは、チト哀しい。アイスだったが食後の珈琲も美味く、乳酸値も低下して行きそう。梅雨の合間をぬっての稀少な晴れ間だが、心もさわやか。ちなみにギリシャ彫刻を思わせるお店、福福茶屋の女性だが、kiyoさんの姉さんである。