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狩人の悪夢 久々の本格ミステリー

2017年04月13日 | もう一冊読んでみた
狩人の悪夢/有栖川有栖  2017.4.13

朝日新聞の書評欄(2017.3.12)で、末國善己氏の「謎解きと人間ドラマ美しく融合」に
「犯罪社会学者の火村英生と著者と同名のミステリー作家(通称アリス)が難事件に挑む人気シリーズの最新作は、著者の作品の中でも屈指の完成度である。」を読み、『狩人の悪夢』を読んでみたくなりました。

本格ミステリーを読む楽しみのひとつは、「犯人は誰か?」を当てることにあると思います。
犯人を推理する上で、手掛かりにするのは、まず、動機。そして、そのことによって誰が一番利益を得るか、です。
これを当てはめてみると、このミステリーでも、ほぼ犯人は搾られます。

ただ、ぼくには火村英生が魅力的な優秀な人物だと読んで実感出来ませんでした。
読まれた皆さんは、いいがだったでしょうか。

本書では、犯人をあぶり出すプロセスが諄々と展開されていて、奇をてらうところもなく、ぼくも、評者と同じく良い作品であると感じました。

悪夢を語る下りやホラー小説の説明は、華やかで煌びやかです。
それにしても、この物語にあるような、悪夢を見続ける人とは、いかなる前世を送られたのでしょうかねえ。
それとも、精神に何らかの不具合がある方なのでしょうかね。

 悪夢にうなされ、悲鳴とともに目覚めるところを、学生時代の下宿で、あるいは旅先の宿で見た。寝汗を拭うのも忘れて自分の両手を茫然と見つめる姿が異様で、私は唖然となり、とっさに眠っているてふりをした。「お化けの夢でも見たか?」と茶化す気にもなれなかった。

 この現実世界とは別の世界があり、そこに生息する者たちがこちら側に<浸潤>を謀っている、というのが作品世界のベースだ。あちら側の者たち……ヨル……がそんな欲望を抱くのは、人間が持つ生命エネルギーを貪婪に食い荒らしたいという本能による。浸潤は容易なことではないため、ヨルは人間が最も無防備になる時に照準を定め、その夢に忍び込む。そして、覚醒した人間を自在にコントロールし、犯罪から戦争までありとあらゆるやり方を駆使して人間社会を崩壊させることこそ目的を達する最短の道だと考えて、実行に移す。

 小説というものは、作者に他意がなくてもどこかで誰かを傷つける可能性がある、ということか。

うぶな中学生を思わせますね。

 愛する異性の手を握るのは極めて特別の行為だ

    『 狩人の悪夢/有栖川有栖/角川書店 』


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