ゆめ未来     

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悪の猿=四番目の猿

2020年12月07日 | もう一冊読んでみた
悪の猿/J・D・バーカー    2020.12.7    

悪の猿』 の「訳者あとがき」より。

 「The fourth Monkey」(四番目の猿)という原題についてここで少し触れておきたい。三猿の思想は東南アジアを中心に、インド、中東、アフリカなど多くの文化に存在しているが、その由来は古代エジプトのメンフィス神学の「正しくないことは見るな、聞くな、考えるな、口に出すな」という理念から来ており、本来は三猿ではなく四猿だった可能性が高いという。
 また、三猿が「見ざる、聞かざる、言わざる」なのに対し、本書では四猿の手口が「耳、眼球、舌」の順になっているのは、英語では三猿が「hear no evil. see no evil. speak no evil.」として知られているためである。



四猿について。物語では、こう述べられています。

 “四猿”とは、日本の日光にある神社、東照宮の入口の上に彫られている三匹の猿に由来しています。それぞれ耳、目、口を覆った三匹の猿は“見ざる、聞かざる、言わざる”と呼ばれていますが、犯人はそれに四匹目を付け加え、“悪事をしざる”と書いたメモとともに小箱を送りつけてきました。この手口は五年半前の最初の犠牲者カリ・トレメル以来、変わっていません。彼女が誘拐された二日後、トレメル家に郵便で片方の耳が届きました。その二日後には両目が、・・・・・・・

 だが、現実はそうはいかない。数える気にならないほど多くの命が失われるのを見てきたが、彼らのすべてが最後には同じ期待を抱き、戸口をちらちら見て救い主が現れるのを待っていた。そんなものが来るわけはないのに。現実の人生では、窮地を脱するには自分でなんとかするしかない。


普通は、悪いことをしたら、その償いは誰が負うのか。
四猿殺人鬼(4MK)は、誰に償わせたか。

 「子どもができたら、人生は自分だけのものではなくなる。こう訊かれたよ。“エモリーが通りの真ん中に立っていて、車に轢かれそうになったら、自分の命を捨てて助けますか?”とね。一瞬のためらいもなく。わたしは助けると答えた。だが、妻について同じことを訊かれると、ためらった。これは非常に象徴的な例に思えるね。子どもを愛するほど深く、ほかの人間を愛することはできない。自分自身さえそこまで愛せない。親は子どもを守るためならなんでもするものだ」

 しかし、本当はカトリーナと結婚したかった。人生はときどき実に残酷な仕打ちをする。
ときにはより大きな善のために、自分の気持ちを犠牲にしなくてはならんこともある



「やあ 友よ」で始まる日記を、「なんだ、これは?」とつぶやいてポーターは手にする。
この日記が抜群に面白い。
物語の中に、挟み込まれて少しずつ展開されていくのだが。面白すぎて、この日記だけまとめてすべて読んで、振り出しに戻る、で読み直したくなるのを必死に我慢。ページのままに。

 これを書くことにした。事実を分かち合うために。知識を共有してこそ、われわれは成長できる。学ぶべき事はあまりにも多いが、嘆かわしいことに、きみ(つまりこの社会)はどれほど過ちをおかしても学ばない。

 いいか、あんたには貸しがある。返してもらうぞ。その体で償うか? そういう取引なら、あんたにも理解できるだろう? 人のものに手を出せば、つけを払わされるんだよ。あばずれ。ただのものなんかひとつもないのさ!

 まあ、真実はそのうちわかるだろう。真実は常にわかるものだ。

 とろんとした目、ろれつの回らない舌で、あの日、湖でぼくに裸体を見せるつもりだったと告白したときの顔が頭に焼きついている。女性は望まれたいと思うものなの、彼女はそう言った。
 思い出すと、体が熱くなり、血がたぎった。



 “牛乳を買いに行ってくる。すぐ戻るわ。-----ヘザー”

 “はい、ヘザー・ポーターよ。これは留守電。”


何かおかしい。
その理由が、そのうち、追々分かるのですが。

 ヘザーはこう言うだろう。憎しみを克服して、怒りに負けないで。怒っても憎んでも、もうわたしは戻らない。そいいう思いはあなた自身の魂を黒くするだけよ、と。


 第2部 『嗤う猿』 へ招待状は。

 やあ、サム
 ぼくからのささやかな贈り物です。
 あの男の悲鳴を聞かせてあげたかったですよ。



    『 悪の猿/J・D・バーカー/富永和子訳/ハーパーBOOKS 』


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