ブティックがいっぱい

セントラルアパートの数軒先に「ビオロン」というブテイックがあった。手染めの木綿にレースがついていたりする独特の服で、秋吉久美子さんの姿をみることが多かった。
その上はインディアン・ジュエリーや、革製品のオリジナルの店「ゴローズ」がある。ゴローさんのことはいつか詳しく書きたい。
このふたつの店は、奇跡的に今もこの場所に健在だ。ゴローズの前の歩道には、今でも若者の列ができる。開店を待ちわびていたり、店内の人数を調整するためだが、ゴローさんが今でも若者達のカリスマとして存在しているのはうれしい。その上に「グラス」というブティックがあった。
それから忘れられないブランドに「一つ目小僧」がある。デザイナーは山路さんというお名前だったかしら、私もずいぶん愛用した。私の妹分とでもいおうか、当時私のアシスタントだったのんちゃん（現在スタイリストの中村のんさん）やその友人たちは、いずれも個性的でかわいらしかったが、彼女たちも「一つ目小僧」を愛していた。えっちゃん（当時スタイリストの市田パトラさんのアシスタントで、現在はスタイリストの多田えつ子さん）が買ったものをユミ（撮影衣装制作をしていた斎藤由美子さん）はときどき借りて着たという。
キディランドの少し上、青山通りに近い現在のポールスチュアートのところには、「ビギ」があった。
石垣造りの外観の内部は、洞窟みたいで、壁にアンリ・ルソーふうのプリミティブな絵が描かれていた。これはレーサーだった福沢幸雄さんの妹の福沢エミさんによるものだった。菊地武夫さんとヨシエさんが作り出す服は、まさに新しい時代の風に乗っていた。
鋤田正義さんの「Tレックス写真集」にマークボランとミッキーフィンと並んで写っている私は、メンズそのもののデニムのスリーピースを着ている。これは菊地武夫さんのテイストだ。私がさんざん愛用した後、華奢な友人、通称染吾郎さんに譲った。サディスティック・ミカ・バンドのミカさんといっしょに写っている私はビギのマキシスカートをはいている。ヨシエさんによるものかもしれない。あの時代、新しいブテイックが生まれるたびに服を見つけ、それこそ全身全霊でおしゃれに没頭していた私だった。

写真　（撮影・染吾郎）「ビギ」の石垣の前で。