高橋靖子の「千駄ヶ谷スタイリスト日記」

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12月4日 原宿巡礼

2005-12-08 | 千駄ヶ谷日記
11月から12月にかけて、お天気の良い日に3日ばかり、原宿・青山をくまなく歩いた。
40年間、表参道から千駄ヶ谷の一帯で生息している私だが、いつの間にか、小動物としてのテリトリーができてしまった。
その範囲は時期によって微妙にずれたりしているけれど、それでも基本的にこの土地から離れることはない。
「表参道のヤッコさん」という本を出版するに当たって、1960年代後半から70年代にかけてのマップを挿入しようということになった。
脳の中にしみこんでいるはずの原宿のひと筋、ひと筋の道から、あの時ここにあれがあった、こんな店があったと、別の風景が立ち上がってくる。
新鮮でもあり、懐かしくもある巡礼の旅だった。

写真は、最初の10数年間住んでいたアパート。
表参道と青山通りの交差点辺りから、住宅街を歩いて、今だったらビームスの裏側、ウラハラの一角まで来たとき、このアパートがあった。
ここに住みたいな、と思って1階のドアを叩くと、中年の男性が顔を出した。
大家さんだった。
「空いてるお部屋ありますか?」
「あります」
それだけの会話で、住むことに決めてしまった。

大家さん一家や、ご近所の住人ととても仲良く暮した。
夏は2、3軒さきの畳屋さんに縁台がでて、夕涼みをした。
アッパッパ(簡単な綿のワンピース)に、貫禄モノのエプロンをしたおばあちゃんが、団扇を仰ぎながら「暑いねー、寄っていきな」というのに応えて、しばらく縁台に腰かけて世間話をする。まるで、タケシのドラマみたいだ。
心がみるみる過激な先祖がえりをして、そうだ、「ALWAYS三丁目の夕日」を観なきゃ、、と思う。
しばらく佇んでいたら、工芸やのおばさんが出てきたので、立ち話をした。
千駄ヶ谷の家にテラスを作ってもらったり、床を張り替えてもらったおじさんが病気で入院中と聞いた。

3軒あったお風呂屋さんは今はもうなく、そのうちの1軒はマイセンという豚カツ屋さん。
教会はラフォーレ原宿に。
ラフォーレの裏には思い切りモダンなDO!Familyが。(数十年前のバンダナは、今でも私の宝物だ)
ドウ!ファミリーのミュージアムで写真展をしていたので覘くと、昔よく使っていた「365 BUSY DAYS」というスケジュール帳が展示されていた。
こんなポップでかっこいいノートは今どこにもないな、と思う。

太陽が金色に輝きだして、今日の巡礼が終わりに近いことを知らせてくれる。
昔ながらのコロンバンで、モンブランとコーヒーをいただいて区切りをつけた。
コロンバンの灰皿は、書かれているフランス語は違っているけど、絵柄はほぼ同じ。
譲ってください、と頼んだけど断わられました。

写真 (撮影・Yacco)

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13 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
表参道 (mase)
2005-12-08 22:32:22
ご無沙汰しております。

いつも楽しく拝見させていただいています。

「表参道」という街は私にとってちょっと遠い存在で、なかなか足を運べないでいるのですが、高橋さんのなかにはとてもたくさんの「表参道」があるのですね。

「表参道のヤッコさん」、とても楽しみです!

関係ありませんが、「アッパッパ」て全国共通なんですか!?誰でも知っている言葉なのでしょうか。うちの母、もしくは家系の造語かと思ってました・・・。
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アッパッパ (Yacco)
2005-12-09 00:01:18
うちの母もよく使ってましたよ。5、60年前ぐらいは全国共通語だったのでは?
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アッパッパ (まみまみ)
2005-12-09 14:36:45
なつかしい言葉なので、検索してみたら、たくさんヒットしました。大正12年にうまれて、社会現象になったようです。永井荷風が墨東綺譚で言及し、佐藤春夫が都新聞で「あっぱっぱ論」を連載したようです。浴衣に腰巻から、女性を解放した衣服だったんですね。でも、冷房中に着るとおなかが冷えます。ご用心!
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アッパッパ論 (邦画ブラボー)
2005-12-11 08:51:58
父方のお祖母ちゃん(明治生まれ)は

生涯着物で通した人で、「アッパッパなんて絶対着ない」と言うのが口癖でした。



母方の祖母(大正生まれ)の

夏の口癖は「アッパッパはやっぱり涼しいねえ」でした。





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恐るべしアッパッパ!! (mase)
2005-12-11 17:01:39
すごいですね。そんなにも歴史があったとは!!

小さいころは家にはまだエアコンなどというものがなく、夏休みになると「アッパッパを着なさい!アッパッパを!!」と母に怒られる毎日で・・・。

子供心にはどうしても着る気になれなず、なぜそんなことで怒られなければならないのかと納得のいかないものだったのですが、大人になると楽でいいかも、と思うようになりました。不思議なものですね。
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青春のタラップを駆け上がれ (ミキベエ)
2005-12-12 01:41:46
こんにちは。

以前飛行機の中で読んだ雑誌でヤッコさんの人生を綴った記事を拝見しました。とてもとても感動したことを覚えています。ご存知か定かではありませんが、日野原さんは私の師匠の師匠です。

頑張ってください!私も頑張ります!
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長寿 (Yacco)
2005-12-12 07:00:43
私も、「日野原先生を見習って、、、」って、できるかな。

でも、自分より、ちょっとでも年上の方がイキイキと人生を送っているのを観るのははげみになります。



何気なく書いたアッパッパということば、私も検索してみました。「ファッション死語辞典」などにもあるんですね。夏のデパートのゆかた売り場などで今でも生きながらえていることをおもいだしました。
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神宮前4丁目の夕日 (sabani)
2005-12-13 02:11:33
セントラルアパートの屋上、洗濯物の陰に青春があった。

原宿での待ち合わせ場所で知っている所は、昼間は

コロンバン、夜はジャズバー・ボロンテールしか無くなってしまった。
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洗濯物 (DLH)
2005-12-14 01:28:01
そういえばまだラフォーレのところに教会があった頃。

竹下通りがただの小さい商店街?というか露地で。

通りに向けて洗濯物が干してあったような憶えが。

遠い昔になってしまいましたが。
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はじめまして (夏野苺)
2005-12-14 13:57:30
Yaccoさん、はじめまして。

先日、あるパーティでえすみくんがYaccoさんという

とても素敵な女性に会ったよ!とメールくれました。

さっそくこのブログアドレスを教えてもらい、遊びに

きました。

私は、写真を撮っています。

お時間ある時に、私のHPにも遊びにいらしてください。

写真だけでなく、エッセイやブログも書いています。



http://www.ichigo-natsuno.com/



いつかYaccoさんにお会いできたら、と思います。



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